特集 白内障手術の傾向と対策―術中・術後合併症と難治症例
Ⅰ.術中合併症の予防と対処
脈絡膜下出血
雑賀司 珠也
1
1和歌山県立医科大学眼科学教室
pp.96-98
発行日 2004年10月30日
Published Date 2004/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410100797
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傾向
本疾患は,眼手術中に突然,脈絡膜血管の破綻に伴って出血性脈絡膜剝離(脈絡膜下出血)を起こすというもので,局所麻酔下での手術では発症時に患者が中等度ないし高度の眼痛を訴えることが多い。白内障手術のみならず,術中に急激な眼圧の変動をきたす手術は,脈絡膜下出血を起こす危険を伴う。術中の眼圧変化が大きいとリスクが上がるが,これには,術中の極度の一過性低眼圧以外に術前の高眼圧も含まれる。すべての内眼手術では,患者と患者関係者に,術前にこの合併症に対する理解を得ておくことが必須である。本合併症は稀ではあるが,囊外水晶体摘出や囊内水晶体摘出では強角膜創が大きいため,網膜脱出に至るいわゆる駆逐性出血に至ることもあるが,超音波白内障手術あるいは硝子体手術では発症自体が稀であると同時に,自己閉鎖創手術の場合,出血に伴う眼圧上昇が止血に働くと考えられるため,網膜の眼外脱出を伴った駆逐性出血にまで至らず,眼底に高度の出血性の脈絡膜剝離を形成するのがよくあるパターンである。
全身的背景が本症発症の危険を高くする。高血圧と動脈硬化がよく知られているが,術前の血圧に異常が検出されなくても,患者の緊張や不十分な局所麻酔での術中の痛みに対する反応で血圧が急激に上昇することがあり,脈絡膜下出血の原因となりうるので注意が必要である。また,全身麻酔下でのバッキングも原因となりうる。また,局所のハイリスク患者(高度近視,緑内障など)では,特に術前のインフォームド・コンセントで対応することが肝要である。
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