特集 白内障手術の傾向と対策―術中・術後合併症と難治症例
Ⅱ.術後合併症の予防と対処
水疱性角膜症
子島 良平
1
,
原田 大輔
1
,
宮田 和典
1
1宮田眼科病院
pp.114-118
発行日 2004年10月30日
Published Date 2004/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410100800
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傾向
水疱性角膜症は角膜内皮障害により,内皮細胞のポンプ機能が低下し,角膜の上皮・実質に浮腫が生じた状態である。生体内では角膜内皮細胞は増殖しないため,傷害を受け水疱性角膜症が生じると全層角膜移植術を行わない限り治療の方法はない。わが国での全層角膜移植術のなかで水疱性角膜症の占める割合は全国的に増加してきている1,2)。
宮田眼科病院における過去6年間の手術症例301例の内訳を検討してみると,角膜白斑157例,水疱性角膜症97例,円錐角膜24例と全症例のなかで水疱性角膜症がかなりの割合を占めている(表1)。水疱性角膜症に対する全層角膜移植術の内訳では,白内障術後が最も多く33例で30%以上となっている(表2)。また水疱性角膜症を生じた白内障の術式では,前房レンズや囊外摘出術(extracapsular cataract extraction:ECCE)といった過去に多く行われていた術式よりも,現在の白内障手術の主流を占める水晶体乳化吸引術(phacoemulsification and aspiration:PEA)+IOLが最多であり,全体の約半数を占めている(表3)。また角膜移植術の適応患者のうち白内障術後の水疱性角膜症の占める割合は宮田眼科病院の1990年と2000年を比較しても15%前後とほとんど変化がない(表4)。
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