特集 白内障手術の傾向と対策―術中・術後合併症と難治症例
Ⅰ.術中合併症の予防と対処
不完全CCC
永原 幸
1
1東京大学大学院医学系研究科外科学専攻眼科学
pp.40-49
発行日 2004年10月30日
Published Date 2004/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410100788
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傾向
白内障手術において前囊切開は必須の手技であり,不適切な処理が行われるとその後に続く核処理や眼内レンズの挿入に悪影響を及ぼすだけでなく,術後の炎症,眼内レンズの偏位,脱臼など合併症の原因になる場合がある。このような合併症を避けるために,水晶体囊の構造や解剖の知識が必須である。
水晶体囊は胎生期の水晶体上皮細胞が形成した基底膜に由来する。赤道部を境にして前極側を前囊,後極側を後囊と呼ぶが,前囊は加齢とともに厚さが変わる。成人の水晶体では赤道部付近が約20μm,後極の薄いところは約0.2μmである。その構造は囊の表面に平行に,濃淡の周期性をもつ層状構造が形成されている。生化学的には他の組織の基底膜同様にコラーゲン様蛋白(Ⅳ型コラーゲン),プロテオグリカン,糖蛋白などから構成されている。
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