特集 白内障手術の傾向と対策―術中・術後合併症と難治症例
Ⅲ.ハイリスク症例―私はこうする
強度近視眼の白内障
佐々木 洋
1
1金沢医科大学眼科学教室
pp.220-224
発行日 2004年10月30日
Published Date 2004/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410100823
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手術適応と症例の選択
強度近視眼では加齢白内障に比べ,40~50歳代の壮年期から比較的進行した白内障を発症する。近年の疫学調査でも強度近視眼は白内障の危険因子であることが報告されている1,2)。強度近眼での白内障手術の意義は混濁水晶体の除去による中間透光体の透明性の回復だけではなく,眼内レンズ移植による屈折矯正手術としての効果を有する。LASIK(laser in situ keratomileusis)に代表される屈折矯正手術がそれのみで有効性が認められているなか,最近では屈折矯正を目的に透明水晶体眼に対する水晶体摘出術および眼内レンズ移植術を行う術者も増えている。強度近視眼に対する白内障手術はまさに一石二鳥の手術であり,その手術適応も屈折異常を伴わない白内障眼のそれとは異なってくる。水晶体混濁が比較的軽度であっても手術行う場合があること,手術は術後不同視を考慮し,多くの症例で両眼の手術を行うことになる。なかには弱視の症例もあるため,術後視力の説明に際し注意が必要である。
強度近視眼では網脈絡膜萎縮を合併していることもあり,それらの症例では術後視力はあまり期待できないことも多いので手術適応は慎重を期すべきである。高度の黄斑萎縮がある場合は屈折矯正を主眼においた白内障手術は行うべきではない。また,強度近視眼では緑内障の合併のリスクが高いが,視神経乳頭の形状から緑内障の診断をするのが難しいこともあり,疑い例については術前視野の評価も行い手術に臨むべきであろう。
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