特集 白内障手術の傾向と対策―術中・術後合併症と難治症例
Ⅲ.ハイリスク症例―私はこうする
強度近視眼の白内障
原 優二
1
1はなみ眼科医院
pp.225-227
発行日 2004年10月30日
Published Date 2004/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410100824
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はじめに
白内障手術はもちろん,どんな手術でも私は術前から不安を感じない症例は1例もない。「今日は思わぬ困難な局面に遭遇するのではなかろうか」など,毎回心のどこかにある種の恐怖心を持っている。簡単と思った症例に限って痛い目に遭った経験を持つ術者は私だけではないのではなかろうか。
例えば,皮質混濁の白内障症例では,核は硬くはないものの核分割は困難になり,普段どおりの操作を行っていると,思わず後囊をパンチアウトする危険性をはらんでいる。逆に核硬化の例では核分割はそんなに困難ではないものの,皮質が少なく後囊ぎりぎりまでUSチップ操作を求められる。また白内障自体は厳しくはないものの,緊張の強い方では術野のアプローチから困難となる(例えば,このような症例では眼球が上転して,角膜の下方がやっと見えるような場面もあり,術野の確保すら困難なこともある)。さらに現役の眼科医を手術するときなど患者さんの生活背景など考えてしまうと,容易な症例はそんなに存在するものではない。
困難さが術前より予想される症例では,逆に気合の空回りと思われるように難なく手術を終了するケースもある。ただ,術前に予想されるあらゆる局面を想定するにこしたことはない。「己の敵を知れば,百戦危うからず」である。
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