特集 白内障手術の傾向と対策―術中・術後合併症と難治症例
Ⅰ.術中合併症の予防と対処
創口作製不備
松島 博之
1
1獨協医科大学眼科学教室
pp.20-26
発行日 2004年10月30日
Published Date 2004/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410100785
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傾向
創口作製は白内障手術操作で麻酔の次に行う早い過程での手技であり,白内障手術工程のなかで最も大切な手技の1つである。近年foldable眼内レンズの進歩やインジェクターの開発により切開創はますます小さくなり,ほとんどの症例で自己閉鎖創による小切開水晶体超音波乳化吸引術が行われるようになってきた。小切開無縫合白内障手術のおかげで手術時間は短縮し,術後成績が向上している反面,計画的囊外摘出術などの大きい強角膜切開や強角膜縫合を行う機会が減少していて,若手医師の創口作製不備に対する経験不足が懸念される。
ほんの3~4mmの切開創であるが,創口作製の不備はその後の手術の流れに大きく影響する。早期前房穿孔を生じると虹彩の嵌頓から毛様痛を生じ,縮瞳,硝子体圧上昇を引き起こし,白内障手術の難易度が急激に上昇する。切開創に関しては不備な切開創にならないように細心の注意を払うことが一番ではあるが,創口作製の不備が生じると視認性の増悪から術中眼内操作に影響し,次の合併症に連鎖しやすくなる(図1)。生じた合併症が連鎖反応式に進まないように,早期より正しく対応して続発する合併症を断ち切ることが大切である。他方,手術指導医も,予期せずして生じる合併症とその後に連鎖する可能性のある合併症の対策方法を事前に知ることで,手術指導時に冷静に対応できる。白内障手術が強角膜切開,角膜切開から始まることを忘れてはならない。
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