臨床眼科 67巻5号 (2013年5月)

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要約 目的:漿液性網膜剝離が脈絡膜血管腫に併発したSturge-Weber症候群2症例の報告。症例と経過:それぞれ7歳男児と15歳男性で,出生時にSturge-Weber症候群と診断されている。いずれも片側の三叉神経第1枝の領域に血管腫があり,同側の眼底に脈絡膜血管腫があった。1例は17年間,ほかの1例は12か月間の経過を追った。1例には漿液性網膜剝離が生じ,矯正視力は初診時の0.6から光覚弁に低下した。ほかの1例では漿液性網膜剝離が増減を繰り返した。結論:Sturge-Weber症候群に併発する漿液性網膜剝離は特発性に増減し,視力が低下することがある。

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要約 目的:急性網膜壊死が片眼に発症し,16年後に僚眼が罹患した症例の報告。症例:23歳女性の右眼に単純ヘルペスウイルスによる急性網膜壊死が発症した。抗ウイルス療法と硝子体手術を行い,網膜剝離は復位した。その16年後,39歳時に左眼が充血し,2週後に受診した。矯正視力は右0.04,左1.2で,左眼に前房混濁と下鼻側の網膜血管周囲に白濁があり,急性網膜壊死が疑われた。前房穿刺で単純ヘルペスウイルスが証明された。アシクロビルを投与し,複数の網膜裂孔に対し硝子体手術とシリコーンオイル注入を行った。左眼の発症から22か月後の現在,左眼の視力は0.3で安定している。結論:片眼性の急性網膜壊死が16年後に僚眼に発症することがある。

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要約 目的:先天鼻涙管閉塞に対する色素残留試験の有用性を検討する。対象と方法:2011年から1年間に先天鼻涙管閉塞の疑いで初診した5歳未満の76例に色素残留試験を行った。このうち先天鼻涙管閉塞開放術を予定した31例に通水試験を行い比較検討した。結果:色素残留試験陽性例の13.3%は通水が通った。通水不通例の17.2%は先天鼻涙管閉塞ではなかった。先天鼻涙管閉塞に対する色素残留試験の感度は95.2%であった。先天鼻涙管閉塞に対する色素残留試験の偽陽性は30.0%であった。結論:色素残留試験は小児流涙症から涙道閉塞以外を除外するスクリーニング検査に適している。しかし色素残留試験のみで先天鼻涙管閉塞は確定できない。

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要約 目的:正常眼圧緑内障(NTG)と原発開放隅角緑内障(POAG)患者の使用薬剤を調査する。対象と方法:2012年3月12~18日に受診したNTGとPOAG患者の使用薬剤を2007年,2009年の調査と比較した。結果:薬剤数はPOAG(1.7±1.0剤)がNTG(1.3±0.7剤)より多かった。単剤例は両病型ともラタノプロスト,トラボプロストの順で多かった。2剤例は両病型でプロスタグランジン関連薬+β遮断薬が最多であったが,調査ごとに減少していた。配合薬は単剤例でNTG 6.5%,POAG 15.1%,2剤例でNTG 17.8%,POAG 32.6%であった。結論:ラタノプロストが最多で,配合薬が使用されつつある。NTGとPOAGでは使用薬剤に差がみられた。

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要約 背景:前眼部毒性症候群は,白内障など内服手術後早期に発症する非感染性の前眼部炎症である。目的:連続する3手術日に多発した前眼部毒性症候群の報告。症例:前眼部毒性症候群が白内障手術を行った5例中4例,その翌日に4例中3例,さらにその翌日に4例中3例に発症した。いずれもその日の第2例目以降であった。原因の同定と予防に注意したが,第2術日以降の発症を阻止できなかった。手術室の空調の不調が唯一の原因と推定され,その点検と整備をすることで,以後の発症はなくなった。結論:白内障手術後に連続して発症した前眼部毒性症候群の原因として空調の不調が推定され,以後の発症を阻止することができた。

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要約 目的:眼内レンズ度数計算式による白内障術後予測屈折誤差を比較した。対象と方法:水晶体再建術を施行した152例217眼を対象とした。4つの眼内レンズ度数計算式(Holladay式,SRK/T式,Hoffer Q式,Haigis式)で術後予測屈折値を算出した。屈折誤差は,術後自覚等価球面値と予測屈折値の差とした。結果:屈折誤差の絶対値は,Holladay式0.38±0.33D,SRK/T式0.42±0.36D,Hoffer Q式0.37±0.29D,Haigis式0.37±0.29Dであった。誤差の絶対値は,Haigis式が1.23Dで最小であった。結論:Haigis式の予測屈折誤差が4つの計算式の中で最小であった。

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要約 目的:裂孔原性網膜剝離に対して硝子体手術を行い,同時に46年前に飛入したガラス片を除去し,ガラス片周囲の網膜硝子体に組織反応がなかった症例の報告。症例:70歳女性。左眼視力低下で受診。既往歴は46年前に照明灯の破損による眼外傷で水晶体摘出術を受けた。所見:矯正視力は左眼指数弁。左眼角膜中央部に約6mmの裂傷痕を認め,無水晶体眼。黄斑部を含む下方2象限に網膜剝離があった。左眼に強膜バックリング併用硝子体切除術を施行。異物はガラス片で,網膜剝離の原因裂孔は6時の周辺部変性の萎縮円孔で,異物周囲の硝子体や網膜に影響はなかった。術後の合併症はなく,術後視力は0.15を得た。結論:ガラスが長期間眼内滞留した後も網膜硝子体に組織反応がなかった。

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要約 目的:高速回転切除装置を内在する硝子体手術装置の成績の報告。対象と方法:過去23か月間に硝子体手術を行った68眼を対象とした。増殖糖尿病網膜症25眼(36.8%),黄斑上膜11眼(16.2%),裂孔原性網膜剝離10眼(14.7%)などである。前半の40眼には在来の装置を用い,後半の28眼には高速回転装置を用いた。視力はlogMARで評価した。結果:術前の平均視力は,在来装置群1.02,高速回転群0.69で,術後視力はそれぞれ0.29と0.16であった。手術時間の平均は,それぞれ83.8分と74.2分であった。合併症として医原性裂孔がそれぞれ5.0%と3.6%に生じた。術後の低眼圧と網膜剝離はなかった。結論:高速回転切除装置を用いる硝子体手術の成績は,在来の装置と比較し,視力の転帰,手術時間,術中と術後の合併症について,差がなかった。

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要約 目的:14番染色体長腕q32の端部欠失があり,脈絡膜コロボーマと角膜混濁が生じた1症例の報告。症例:生後4か月の女児で,生下時体重は1,014gであった。出生時から頭蓋骨の早期癒合,顔面正中部の低形成,耳介の低位があった。染色体検査で,q32領域の端部欠失を伴う14番染色体異常があった。環状形成はなかった。眼科的には,片眼の角膜混濁と瞳孔偏位,両眼の虹彩脈絡膜コロボーマがあった。結論:本症例での虹彩脈絡膜コロボーマは,眼胚裂の閉鎖不全によると考えられる。角膜混濁を含め,本症例の眼科的異常所見が14番染色体異常とどのように具体的に関係するのかは明らかではない。

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要約 目的:ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)に黄斑部脈絡膜陥凹と網膜下液を合併した症例において,ベバシズマブ硝子体注入(IVB)併用光線力学療法(PDT)後に,陥凹の改善と網膜下液の吸収を認めたので報告する。症例:70歳,男性。3年前からの右眼の視力低下を訴えて来院した。所見:右眼の黄斑は暗赤色調で周囲に多発性のPCVを認め,フルオレセイン蛍光眼底撮影では黄斑部はwindow defectを呈した。光干渉断層計(OCT)にて黄斑部脈絡膜陥凹および網膜下液を認めた。IVBおよびPDT術後にポリープ状病巣の消失と網膜下液が吸収し,徐々に右眼の陥凹所見の改善と視力改善が得られた。結論:PCVを伴う黄斑部脈絡膜陥凹にはIVB併用PDTが有効であった。

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要約 目的:加齢黄斑変性に対するラニビズマブの硝子体内投与後1年間の成績の報告。対象と方法:加齢黄斑変性82例86眼を対象とした。男性50眼,女性36眼で,平均年齢は74歳である。PrONTO studyに準じて投与を行った。光線力学的療法(PDT)の既往は28眼にあり,58眼ではなかった。結果:治療開始から2か月以降は,PDTの既往がある群よりもない群のほうが有意に視力が良好で,治療開始前の視力が維持された。Classic CNVがある17眼では,治療開始から9か月まで視力が有意に改善し,12か月まで治療開始前の視力が維持された。これがない20眼では,治療開始から12か月まで視力の改善はなかった。中心網膜厚はいずれも有意に減少した。結論:ラニビズマブの硝子体内投与では,光線力学的療法の既往がないほうが視力の転帰が良好で,classic CNVがある症例で視力が改善した。

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要約 目的:トーリック眼内レンズの推奨モデルと,推奨モデルより1段階乱視矯正効果の強いモデルを挿入した群の自覚乱視を比較した。対象と方法:推奨モデルSN6AT4の20例(以下,推奨T4群),SN6AT4推奨を変更しSN6AT5の12例(以下,強矯正T5群)において,術後3か月の自覚乱視を比較した。結果:術後自覚乱視が1.0D以下となる割合は推奨T4群13/20(65%),強矯正T5群12/12(100%)であった。有意に強矯正T5群の割合が高かった(p=0.02303)。結論:推奨モデルより1段階乱視矯正効果の強いモデルへ変更したほうがよい。

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要約 目的:単独または硝子体手術と同時に行う白内障手術後の屈折安定性を,3種類のアクリル眼内レンズ間で比較した。対象と方法:対象は白内障単独手術を施行した107眼と硝子体同時手術を施行した123眼。眼内レンズはAlcon AcrySof® SN60WF,HOYA NY-60,HOYA YA-60BBRを挿入し,術後12か月までの屈折誤差の変化を比較した。結果:白内障単独手術と硝子体同時手術いずれにおいても3種類の眼内レンズで術後屈折は安定していた。硝子体同時手術後はどの眼内レンズでも約0.2D近視化した。結論:硝子体同時手術では近視化を考慮に入れて眼内レンズ度数の選択を行うべきである。

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要約 目的:Vogt柵(palisades of Vogt)の上方,水平,下方輪部での特徴と結膜下出血後の変化の報告。対象と方法:外来患者89名134眼を対象とした。年齢は6~93歳である。さらに結膜下出血で受診した48例48眼を検索した。年齢は7~91歳である。角膜輪部を上方,瞼裂部,下方の順に細隙灯顕微鏡に装着したカメラで動画を撮影し,画面上で計測した。計測値は全眼数に対する割合(%)で表現した。結果:上方,瞼裂部,下方の順に表現すると,Vogt柵は並列柵状が91%,1%,93%で,縮緬皺状が9%,99%,7%であった。0.5mm当たりの平均本数は,3.8,4.2,4.0で,長さは2.0mm,1.4mm,1.4mmであった。虹彩反帰光線で照明される長さは,1.3mm,0.5mm,0.7mmで,血管新生は11%,14%,17%にあり,色素沈着は9%,2%,23%であった。上方の輪部のVogt柵上に格子状混濁と水玉模様があった。結膜下出血の部位にはVogt柵が見え,隣接する非出血部位には見えなかった。結膜下出血があるときに見えたVogt柵は,出血が消退した後には見えなかった。結論:Vogt柵は上方と下方の輪部では柵状で,瞼裂部では皺状である。Vogt柵の数と長さは年齢と有意に相関して減少する。Vogt柵は上方で有意に長い。結膜下出血時に見えるVogt柵は出血消退後では見えなくなる。

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要約 目的:淋菌性角結膜炎に関節炎症状を伴った症例の報告。症例と所見:27歳男性が両眼の眼脂と充血,多関節痛で受診した。両眼瞼および球結膜は腫脹し,クリーム状の膿性眼脂が多量に付着,右眼角膜潰瘍があった。左肩と左足背,背部胸椎棘突起に圧痛があり,左足背には腫脹があった。臨床症状から淋菌感染症として,抗菌薬点滴静注および頻回点眼を開始し,角結膜炎は軽快した。治療中,眼脂PCRにて淋菌DNAが検出された。その後も多関節炎と炎症反応は遷延したため,反応性関節炎としてステロイド薬と抗リウマチ薬の内服加療を開始し,緩徐に改善した。結論:淋菌感染症ではさまざまな全身症状に注意し,適切な治療を選択する必要がある。

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要約 目的:再発を繰り返すヒトパピローマウイルス(human papilloma virus:以下,HPV)陰性の結膜乳頭腫に対してインターフェロンα-2b(IFNα-2b)の点眼が奏効した症例の報告。症例:右下眼瞼結膜に有茎性腫瘍を認めた28歳男性。単純切除の病理結果は扁平上皮乳頭腫であった。その後乳頭腫の再発を認め,IFNα-2b点眼を開始した。切除標本のHPVは陰性であった。結果:点眼開始後1週間で乳頭腫の著明な縮小を認め,残存した乳頭腫は切除した。点眼中止後,6週間で再発したため点眼を再開した。以後12か月の点眼継続にて再発は認められない。結論:HPV陰性の多発性に再発する乳頭腫にIFNα-2bの点眼は有効と考えられる。

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要約 目的:抜去した涙管チューブの菌検査を行い,涙囊鼻腔吻合術(DCR)鼻外法におけるチューブ管理について考察した。対象と方法:DCR鼻外法施行144名154例を対象に,抜去した涙管チューブの菌検査を行い,チューブ留置期間と菌の検出率について検討した。結果:菌の検出率は,チューブ留置期間が1か月以内で81%,2か月以内で79%および2か月以上で100%であった。また,最も多く検出された菌種は表皮ぶどう球菌50%であり,そのうち26%がレボフロキサシン耐性であった。続いて,真菌類14%,黄色ぶどう球菌12%,メチシリン耐性黄色ぶどう球菌11%などが検出された。結論:中鼻道に留置されたチューブからの菌検出率は比較的早期から高率なため,チューブ抜去は鼻腔側から行う方がよい。また,抜去直後に十分な涙道洗浄を行うことが大切である。

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要約 目的:外傷後に発症した鼻涙管閉塞に鼻内法による涙囊鼻腔吻合術を行った3症例の報告。症例:3症例とも男性で,年齢はそれぞれ29,34,46歳であった。外傷の原因は,交通事故,転倒,電柱からの転落で,3例すべてに多発性顔面骨折があり,鼻涙管閉塞はいずれも片側性であった。受傷から受診までの間隔は,それぞれ28か月,12か月,27か月であった。全例とも局所麻酔下で鼻内法による涙囊鼻腔吻合術が行われ,涙道が開通した。以後1年から30か月間,再閉塞はない。結論:多発性顔面骨折に併発した鼻涙管閉塞に,鼻内法による涙囊鼻腔吻合術は有効であった。

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要約 目的:小児の心臓外科手術後に発症したHorner症候群による眼瞼下垂に対して,経結膜的Müller筋短縮術により改善した症例を経験したので報告する。症例:1歳7か月女児。生後23日目に受けた心臓手術直後からの眼瞼下垂が改善しないため,当院へ紹介受診となった。結果:フェニレフリン点眼試験で,眼瞼下垂の改善と瞳孔散瞳を認め,Horner症候群と診断した。経結膜的Müller筋短縮術で眼瞼下垂は改善し,経過は良好である。結論:小児の心臓手術後に生じたHorner症候群による眼瞼下垂に対して,経結膜的Müller筋短縮術が有効であった。

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要約 背景:神経サルコイドーシスが眼球運動障害で初発する症例は多くない。目的:複視を初発症状とし,γグロブリン療法が奏効した神経サルコイドーシスの症例の報告。症例:73歳女性が複視と左下肢の挙上困難を主訴として受診した。矯正視力は左右眼とも1.2で,前眼部,中間透光体,眼底に異常はなかった。右眼に外転神経麻痺と動眼神経不全麻痺があった。MRIで眼窩と頭部に異常はなかった。下肢筋力の低下があり,慢性炎症性脱髄性多発性神経炎の診断でγグロブリンの静注を開始した。9日目に複視が改善し,外眼筋麻痺が消失した。胸部CTで肺結節があり,生検で非乾酪性肉芽腫性病変が証明され,サルコイドーシスの診断が確定した。結論:γグロブリンの全身投与は眼球運動障害を伴う神経サルコイドーシスに有効であった。

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要約 目的:強度近視眼を対象に外・上直筋プリーを連結する眼窩結合組織(LR-SRバンド)の形態と外転障害との関係の報告。対象と方法:正中位よりも外転が可能な軽度の外転障害群14眼,正中位まで外転しない重度の外転障害群10眼,外転障害のないコントロール群10眼を対象にMRIを用いた眼窩撮像画像から外転障害の程度とLR-SRバンドの性状とを比較した。結果:軽度障害群の14眼(100%),重度障害群の10眼(100%),コントロール群の9眼(90%)に,LR-SRバンドの耳上側への偏位,菲薄化,連続性の欠如を認めた。結論:強度近視眼では外転障害の程度に関係なくLR-SRバンドに形態異常がみられる。

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要約 目的:外転神経麻痺を初発症状としたくも膜下出血の1例の報告。症例:56歳男性が前日からの複視で受診した。糖尿病があり,慢性腎不全で透析中であった。開放隅角緑内障で加療していた。所見:矯正視力は右0.4,左1.0で,左眼に外転制限があった。MRIで左橋の外側に占拠性病変があり,くも膜下出血が疑われた。病変は自然寛解し,6か月後に複視は消失した。結論:頭痛や意識障害を伴わず,外転神経麻痺を初発症状としてくも膜下出血が発症することがある。

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要約 目的:ガンシクロビル硝子体注射が奏効した小児のサイトメガロウイルス網膜炎の報告。症例:5歳女児。急性骨髄性白血病で血縁者間同種骨髄移植が施行された。移植後から移植片対宿主病予防のために免疫抑制剤とステロイドが投与されていた。所見:移植3週後に左眼底に網膜出血と滲出斑が出現した。前房水からサイトメガロウイルスが検出され,サイトメガロウイルス網膜炎と診断した。ガンシクロビル硝子体注射を施行した。その3週間後に網膜炎は瘢痕を残して鎮静化し,発症から7か月後も左眼の視力は1.5を維持している。結論:小児のサイトメガロウイルス網膜炎に対し,ガンシクロビル硝子体注射が奏効した。

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要約 目的:横浜市大附属病院眼科における高齢者のぶどう膜炎の統計と解析。対象と方法:2009年4月~2012年3月の間に受診した70歳以上のぶどう膜炎患者111例をレトロスペクティブに調査した。結果:男性54例,女性57例で,汎ぶどう膜炎が最も多かった。66例(59.5%)に確定診断がつき,サルコイドーシス15.3%が最多であり,次いで悪性リンパ腫5.6%,原田病4.5%の順で多かった。Behçet病はいなかった。同定不能症例は45例(40.5%)であり,サルコイドーシス疑いが最も多かった。結論:70歳以上のぶどう膜炎では,全年齢層と同様にサルコイドーシスが最多であり,次いで悪性リンパ腫が多かった。同定が不能な症例でもサルコイドーシス疑いが最も多かった。

Special Interest Group Meeting(SIG)報告

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 今まで専門別研究会として行われてきたオキュラーサーフェス研究会の講演は,2012年からSIGとして,引き続きドライアイ研究会と日本眼科アレルギー研究会との合同企画で開催された。シンポジウム3題,ドライアイリサーチアワード受賞講演2題,日本眼科アレルギー研究会優秀賞受賞講演1題,特別講演1題である。

連載 今月の話題

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 iPS細胞の誘導法が確立されることにより,近年再生医療が新たに脚光を浴びるようになった。といっても,再生医療研究自体は新たに始まったものではなく,ES細胞を用いた再生医療研究の流れを次ぐものである。ただ,移植治療といえば,拒絶が大きな問題となるなかで,最良の生体材料ともいえる自己由来の元気な細胞を移植ソースとして用いることができるようになった,という意義は科学的にも倫理的にも大きい。本稿では,筆者らが行っている色素上皮,および視細胞の移植再生プロジェクトについて紹介する。

連載 何が見える? 何がわかる? OCT・第5回

OCT機種間の再現性 山下 高明
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Point

◎機種間の再現性は一定の条件下で,限られた機種間の限られた項目についてのみ可能である。

◎機械内の再現性を向上させることが重要である。

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はじめに

 正確に数えたわけではないのですが,札幌医科大学の神経眼科外来に紹介される患者の約7割は甲状腺眼症だと思います。それらのなかには軽症もあれば重症もあり,さまざまです。この疾患が一般眼科医の手から離れていく最大の要因は,病気の活動性を把握するのが困難なため,患者をどのように扱ってよいのかわからないところにあるのだと思います。そこで甲状腺眼症の客観的な評価法として,CT,MRIによる画像診断があるわけです。

 今回は,眼窩部におけるCT,MRI検査の撮り方,見方のコツも入れつつ,甲状腺眼症の画像診断についてreviewも交えながら述べてみたいと思います。

連載 つけよう! 神経眼科力・38

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はじめに

 麻痺性斜視や機械的眼球運動制限に伴う斜視では,数回にわたり手術を行っても複視の完全な消失は困難である。また,患者自身が手術を希望しない場合や偏位角(斜視角)が小さく手術適応とならないこともある。筆者らの施設ではこのような場合にプリズムを用いた光学的治療を試みている。麻痺性斜視に対する光学的治療に関しては,鈴木利根先生らが詳細な解説を神経眼科誌に掲載1)されており,参考にされたい。ここではプリズムでも,特にFresnel膜プリズム(以下,膜プリズム)の光学特性と,その処方のポイントについてまとめてみたい。

今月の表紙

Fabry病 鶴留 康弘 , 寺崎 浩子
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 症例は22歳,女性。右眼(a),左眼(b)の前眼部写真を示す。両眼の角膜上皮に,形状の異なる渦巻き状の,角膜混濁を認める。視力は右眼(1.5),左眼(1.5)。アレルギー性結膜炎はあるが,中間透光体,後極部は特記すべきことなし。

 撮影には,TOPCON社製SL-D7+写真撮影装置SL-PT54Nを用い,スリット幅約10~12mm,アームを耳側に約40°に振り,長さ7mm,背景照明オフ,絞り9,16倍に設定した。角膜の全体像を観察するため,スクレラル・スキャッター法にて撮影した。渦巻き状の角膜混濁は,淡く写し出されるため,ピント合わせと露出のコントロールが難しい。露出アンダーや,スリットの位置がずれると,角膜周辺部まで写し出されない。露出オーバーだと,白とびを起こす。虹彩,瞳孔を背景に白い混濁とのコントラストをつけ,中央から周辺にかけての渦巻き状混濁が引き立つようピント合わせをした。

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 本書は,呼吸器内科を専門とする医学者が14年にわたり,明治期以降日本の近代医学・医療の発展に貢献した3,762名(物故者)の履歴を調べあげた成果である。評者のように,明治期以降の医業関係誌を参照する機会の多い者にとっては,このように便利かつ確度の高いレファレンスが完成したことは,大変喜ばしいことであり,そのありがたみは今後随所で感じられることになるであろう。編者の長年のご苦労に感謝したい。

 とはいえ,本書を単に事典として理解するとすれば書評の対象とする必要はないかもしれない。そこで以下では,本書を約800ページの読物と解してその意義を考えてみたい。

やさしい目で きびしい目で・161

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 白内障手術がようやく1人で出来るようになった頃,手術当日はそれ以外のことはどうでもいい気持ちで,無事終わったときの達成感は甚大だったのを思い出します。硝子体注射にしても数回やるまでは心拍数が恐ろしく上がっていましたが,そのうちなんともなくなっていました。慣れるとは素晴らしいことで,感動は少なくなりますが,平常心でこなせることが増えるのは仕事を続けるうえで嬉しいことです。

 私は強度近視であり,子供の頃から眼科に行くことが多かったため,親近感があって眼科を選びました。けれども入局してみると細かい部分を見なければならないし,細かい作業が多く,眼科医に向いていないと思い始めました。私が子供のころは眼鏡をかけると目が悪くなる,と言われていたこともあって眼鏡を買ってもらえず,中学生になるまでピンボケの世界で過ごしていたため,目からの情報処理能力が低くなったのではないかと思ったほどです。特に顕微鏡下の作業や手術は全く思うようにいかず,しかも機械も苦手で苦労しました。外来ではよくわからない病気に遭遇して戸惑い,手術も怖いし,かけだしの頃は毎日とても辛く,「毎日新しいことを経験し,成長が感じられて仕事が楽しいです」などという感想を書く人を見て信じられない思いでした。そして大企業に就職した高校時代の友人に「向いてないからやめたいわー」とよく電話で相談しました。今でも「やめたらあかんよ,もったいないから絶対やめたらあかんよ」と一生懸命言ってくれた彼女の言葉を思い出します。彼女は非常に美人でしたがどんくさいところがあり,出身大学がT大だったため「T大卒なのにあれもできない,これもできない」と言われるのがとても辛く,結婚を機に仕事を辞めてしまいました。その後子供が生まれ,私の名前を使わせてほしいと言われました。古くさい名前で好きでなかったのに…とも言えず,なんだか照れくさいやら嬉しいやら心配やら複雑な気持ちでしたが,友人の娘さんも「禎子」になりました。読み方は違いますが,毎年年賀状を見るたび分身のように思えて,写真を見るたび元気に大きくなって,と願ってしまいます。そしてきっと医者であることも含め私を認めてくれて娘に同じ名前をつけてくれた(と思う)友人を裏切らないよう,しっかりしないといけないな,と思います。

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要約 目的:Aggressive posterior retinopathy of prematurityが発症した在胎34週で出生した極低出生体重児の報告。症例:在胎34週0日の女児で,生下時体重は1,246gであった。高濃度酸素を10日間継続使用し,日齢18で眼科を受診した。所見:黄斑部近くまで無血管野があり,zone Ⅰに相当した。眼底後極部の網膜血管は強く拡張蛇行し,円周方向に環状に走る血管吻合があり,aggressive posterior retinopathy of prematurityと診断し,翌日にレーザーによる汎網膜光凝固を行った。網膜剝離と牽引乳頭は生じなかった。結論:新生児では,在胎週数や生下時体重に関係なく,aggressive posterior retinopathy of prematurityが発症することがある。

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要約 目的:トリアムシノロンの硝子体内注入後にサイトメガロウイルス(CMV)網膜炎が発症した1例の報告。症例:8年前に帯状疱疹の既往がある75歳男性が6か月前からの右眼視力低下で受診した。所見:矯正視力は右0.2,左1.0で,右眼に黄斑浮腫を伴う網膜静脈分枝閉塞症があった。トリアムシノロンの硝子体注入を行い,2日後に偽前房蓄膿が生じ,前房と硝子体洗浄を行った。3か月後に前部ぶどう膜炎が生じ,2か月後の硝子体培養でCMVが検出され,CMV網膜炎と診断した。以後5年間の経過は良好で,0.7の最終視力を得ている。結論:免疫正常者であっても,トリアムシノロンの硝子体注入後にCMV網膜炎が発症することがある。

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要約 目的:光線力学的療法が奏効した網膜星状細胞腫の症例の報告。症例:27歳女性が2年前からの右眼視力低下で受診した。矯正視力は右0.7,左1.2で,右眼の乳頭耳側に2.5乳頭径の黄白色の隆起があり,光干渉断層計(OCT)で網膜剝離を伴っていた。5年後に腫瘤の隆起は3.5mmになり,眼底下方の胞状網膜剝離が生じ,視力が0.03に低下した。眼底所見とその経過から網膜星状細胞腫と診断した。計3回の光線力学的療法を行い,5か月後に腫瘤の高さが1.5mmに減少し,網膜剝離は消失し,視力は0.03に維持された。結論:網膜星状細胞腫に対する光線力学的療法は有効であった。

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欧文目次

第31回眼科写真展 作品募集

べらどんな 麦粒腫の治療法
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 四国には八十八か所の霊所をめぐる巡礼がある。弘法大師(空海)にゆかりがある88の寺を巡拝するもので,徳島県鳴門にある霊山寺を一番として,時計まわりに四国を一周する。全行程は1,400km以上あり,歩くと60日になる。タクシーだと5日でまわれるが,ご利益は薄い。平地だけでなく,岩だらけの海岸や山岳地帯を歩くのが修行になるからである。

 四国では巡礼者のことをお遍路という。昔のお遍路には「門付け(カドヅケ)」をする義務があった。どんなに富裕な人でも,一日に一回は家の前に立ち,物乞いをするのである。

べらどんな C 61復活
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 蒸気機関車,いわゆるSLが一台,現役に復帰した。C 61である。

 この型の機関車は旅客用で,昭和22年に登場した。「デコイチ」の愛称がある貨物用の名機D51の改造機である。架台やボイラーはそのままとし,3軸で1,750mmの大きな動輪を採用した。前輪と従輪がどちらも2軸の2-C-2形式にして,線路にかかる重量を軽減した。

べらどんな グレラン
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 物理学者であった寺田寅彦のファンは多い。

 熊本の第五高等学校(旧制)のときから夏目漱石の弟子であった。上京してから寅彦が提供した話題は,「猫」や「三四郎」に出てくる。漱石の研究者は寅彦を読まなければならない。

ことば・ことば・ことば ネズミ
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 遊びに来た医学部の学生からびっくりする話を聞きました。解剖の授業で,「筋肉はラテン語ではmusculusで,ネズミのこと」と教えていないというのです。

 英和辞典でmouseを引くと,「日本語ではイエネズミで,学名はMus musculus」とあります。日本では区別しませんが,あちらでの,カイウサギのrabbitとノウサギのhareは別物という考え方とも関係がありそうです。ついでですが,「兎眼症」lagophthalmosのウサギはノウサギのほうです。

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次号予告

あとがき 寺崎 浩子
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 厳寒の日本列島,寒さに震えていたところ,東京ではいきなり桜の満開の声を聴き,驚いているところです。本号が皆さんのお手元に届くころはどんな季節になっているのでしょう。もしかしたら,真夏日になっているかもしれません。

 さて,本号ではREVIEWとして,皆さんの関心事であるiPS細胞(人工多能性幹細胞:induced pluripotent stem cells)の現状と将来について理化学研究所の万代先生に書いていただいております。動物のES細胞(胚性幹細胞:embryonic stem cells)を用いた研究はこれまでもたくさん行われ,神経網膜再生への道も探られていましたが,iPS細胞という自己の細胞から再生されるとあれば,急に現実味を帯びてまいります。ES細胞は,受精卵のある時期から作られた多能性をもった細胞塊で,動物において網膜前駆細胞を網膜下に移植したところ,本来の網膜組織に生着することがロンドンのグループから報告されています。もっと破壊された網膜への移植法を目指して立体的な網膜組織を分化培養されたことも報告されており,再生医療への幹細胞の可能性がすでに示されていました。したがって,iPS細胞でも同じことが期待されます。国家を挙げてのプロジェクトのなかで,まず最初のトライアルの適応として眼疾患(加齢黄斑変性)が選ばれたことは大きなチャンスだと思います。

基本情報

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臨床眼科
67巻5号 (2013年5月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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