臨床眼科 67巻6号 (2013年6月)

特集 第66回日本臨床眼科学会講演集(4)

原著

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要約 目的:サルコイドーシスの治療中に視野異常が突発した症例の報告。症例:30歳女性が右眼の霧視で受診した。2か月前に左側の顔面麻痺が生じ,プレドニゾロン内服で軽快していた。所見:矯正視力は左右眼とも1.0で,右眼圧が58mmHgであった。両眼に虹彩炎の所見があり,眼底に乳頭の発赤浮腫と静脈周囲炎があった。ツベルクリン反応は陰性で,両肺門部にリンパ節腫脹があり,生検で非乾酪性類上皮細胞肉芽腫があった。多尿があり,尿崩症と診断された。さらにサルコイドーシスによるぶどう膜炎と中枢神経症,続発緑内障と診断し,プレドニゾロン内服で寛解した。初診から5か月後に右眼視野障害が生じ,造影MRI検査で下垂体鞍上部に直径20mmの肉芽腫が発見された。以後12か月間,ステロイド単独下では漸減時再発・悪化を繰り返したが,メトトレキサートを併用してからは順調に減量でき,病状も軽減している。結論:サルコイドーシスで中枢神経に肉芽腫が生じることがある。

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要約 目的:真菌性副鼻腔炎が原因と推定された両眼の内因性眼内炎の症例の報告。症例:69歳女性が両眼に白内障手術を受けた。経過は良好で,8週後に左右眼とも1.2の視力を得た。手術から10週後に両眼の前房に混濁が生じ,さらに2週後には硝子体混濁が併発し,眼圧が上昇し,視力は右0.3,左0.2に低下した。複数の抗生剤点眼は奏効せず,手術の3か月後に右眼硝子体の生検を行った。悪性リンパ腫は否定され,真菌が証明された。抗真菌薬で眼内炎は軽快した。全身検査で左上顎洞炎があり,手術で真菌塊が存在し,アスペルギルス副鼻腔炎と診断された。発症から15か月後の現在まで経過は良好で,右1.2,左1.0の視力を維持している。結論:無症候性の真菌性副鼻腔炎が白内障術後の内因性眼内炎の原因となった可能性がある。

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要約 目的:片側性の先天眼瞼下垂の1例に前頭筋吊り上げ術を行い,その前後での自発性瞬目を検索した報告。症例と方法:症例は右側に先天眼瞼下垂がある38歳男性である。眼瞼挙筋の機能は患側にはなく,健側では正常であった。毎秒1,000コマの瞬目解析装置で,自発性瞬目とMRD(marginal reflex distance)を,術前と術後45日と60日後に測定した。結果:患眼の上眼瞼移動距離,最大速度,瞬目時間は,開瞼と閉瞼時ともに術前では健眼よりも有意に低値であり,術後には有意に改善し,手術の60日後には健眼と等しくなった。MRDは患眼では改善し,健眼では低下した。結論:先天眼瞼下垂に対する前頭筋吊り上げ術で,眼瞼下垂と自発性瞬目が改善した。

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要約 目的:全科用電子カルテと連携する眼科用電子カルテ機能の施設間比較を行うこと。対象と方法:電子化された3つの病院眼科を対象とし,電子化への対応とスタッフに対する電子化の機能要求に関する聞き取り調査を行った。結果:対応が同じものとして視力検査,限界フリッカ値,Schirmer試験,眼圧検査があり,異なるものとしてレフラクトメータ,ケラトメータ,静的視野検査,眼位検査,眼球運動,両眼視機能があった。機能要求としては,静的視野の電子化対応,スケッチ描画のクリック数減少,テキスト検査結果のカルテ取り込み自動化などがあった。結論:眼科専用開発の電子カルテ導入あるいは全科用電子カルテに実装される眼科専用の機能開発が望ましい。

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要約 背景:Macular Integrity Assessment(maia®,Topcon社)は,眼底を共焦点走査レーザー検眼鏡で観察する微小視野装置である。刺激幅が広く,眼底像が鮮明で,検査時間が短い。目的:特発性黄斑上膜に対して行った硝子体手術後早期の中心網膜感度をmaia®で測定した報告。対象と方法:5か月間に25G小切開硝子体手術が行われた黄斑上膜26例29眼を対象とした。術前と術後にmaia®により,中心20°以内の89点の網膜感度を測定した。視力はlogMARで評価した。結果:89点の網膜感度の平均は,術前21.1dB,術後1か月22.6dB,術後3か月23.4dBであり,術後3か月で有意に増加した。視力はそれぞれ0.42,0.20,0.17で,術後1か月から有意に改善した。結論:特発性黄斑上膜に対する硝子体手術では,網膜感度が3か月後から改善する。

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要約 目的:開放性眼外傷の統計報告。対象:2011年までの10年間に徳島大学病院と徳島赤十字病院で手術をした開放性眼外傷90例91眼を対象とした。結果:男性55例,女性35例で,年齢は3~99歳(平均62歳)であった。症例の内訳は,眼球破裂42眼(46%),眼球穿孔49眼(54%)であった。穿孔は裂傷29%,眼内異物23%,二重穿孔2%であった。平均年齢は眼球穿孔が48歳,眼球破裂が77歳で,有意差があった(p<0.01)。眼球破裂の原因は転倒が多かった。眼球破裂で硝子体手術が行われた6眼では,0.5以上の矯正視力が得られた。結論:眼球破裂では硝子体手術により視力転帰が改善することがある。

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要約 目的:回折型多焦点眼内レンズ挿入眼に発症した黄斑上膜に対して硝子体手術を行った報告。症例:65歳男性に右眼視力低下と変視症が生じた。2年前に右眼に白内障手術を受け,回折型多焦点眼内レンズが挿入されていた。所見:右眼の矯正視力は,遠方0.6,近方0.4であった。眼底に黄斑上膜があり,光干渉断層計(OCT)による検査で黄斑陥凹が消失していた。23G硝子体手術を行った。接触型のフラットコンタクトレンズでは膜に焦点が合わず,広角観察システムで倍率を上げて膜を剝離した。6か月後に1.2の遠方視力を得た。結論:回折型多焦点眼内レンズ挿入眼での黄斑上膜に対する硝子体手術で,広角観察システムが有用であった。

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要約 目的:黄斑上膜の術後の長期経過の報告。対象と方法:過去44か月間に手術を行った特発性黄斑上膜95例97眼を対象とした。男性39眼,女性58眼で,年齢は42~85歳(平均67歳)である。平均18か月の術後経過を追った。86眼では水晶体乳化吸引と眼内レンズ挿入を行った。視力はlogMARで評価した。結果:黄斑上膜の再発はなかった。視力改善は,70%の症例で術後2か月以内に起こった。術前視力と術後視力には正の相関があった(p<0.01)。高齢であるほど術後視力が不良であった。発症から手術までの平均罹病期間は,視力が改善した症例では9.5か月,改善しない症例では22.4か月で有意差があった。両群の間に中心窩厚に差はなかった。術前に光干渉断層計(OCT)でCOSTラインが見える症例では,術後視力が良好であった。結論:特発性黄斑上膜への硝子体手術では,術前視力が良好であり,年齢が低く,COSTラインが見える症例で視力転帰が良好であった。

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要約 目的:真菌性眼内炎に続発した脈絡膜新生血管にラニビズマブの硝子体注射が奏効した症例報告。症例:55歳女性が右眼の視力低下で受診した。5か月前に潰瘍性大腸炎の手術を受け,その1か月後に中心静脈カテーテル留置によると推定される真菌血症が発症し,抗真菌薬が投与されていた。所見:矯正視力は右0.8,左1.2で,両眼に黄白色斑が散在していた。右眼黄斑部に網膜剝離を伴う脈絡膜新生血管があった。右眼にラニビズマブの硝子体注射を行い,その1か月後に網膜剝離と脈絡膜新生血管は退縮し,1.2の視力を得た。1年後の現在まで再発はない。結論:真菌性眼内炎に続発した脈絡膜新生血管にラニビズマブの硝子体注射が奏効した。

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要約 目的:潰瘍性大腸炎に対するプレドニゾロン減量中に網膜中心動脈閉塞症が発症した症例の報告。症例:41歳男性が1か月前からの左眼視力低下で受診した。2年前に潰瘍性大腸炎が発症し,ステロイド内服で寛解した。5か月前に潰瘍性大腸炎が再発し,プレドニゾロンを1日量50mgの内服を開始し,10mgまで減量中であった。所見:矯正視力は左右眼とも1.2であり,左眼に切迫型の網膜中心動脈閉塞症の所見があった。プレドニゾロンを40mgに増量し,その2か月後に眼底所見が正常化した。結論:潰瘍性大腸炎に対するプレドニゾロン減量中に網膜中心動脈閉塞症が発症し,増量後に寛解した。

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要約 目的:加齢黄斑変性に対する光線力学療法の長期成績の報告。対象と方法:17か月間に光線力学療法を行った加齢黄斑変性35例35眼を対象とした。男性24例,女性11例で,年齢は50~90歳(平均75歳)である。治療後1~5年(平均3.8±1.5年)の経過を追った。視力はlogMARで評価した。結果:1年後では改善13眼(37%),不変15眼(43%),悪化7眼(20%)であり,3年後では改善8眼(31%),不変11眼(42%),悪化7眼(27%)であり,5年後では改善3眼(15%),不変10眼(50%),悪化7眼(35%)であった。結論:加齢黄斑変性に対する光線力学療法で,65%の症例で5年後の視力が維持された。効果は1年後,3年後,5年後の順に低下した。

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要約 目的:急性緑内障発作眼に対する水晶体摘出後の屈折値の報告。対象:過去3年間に水晶体摘出と眼内レンズ挿入を行った急性緑内障発作中の14眼を対象とした。男性4例,女性10例で,平均年齢は68歳である。結果:平均眼圧は術前52.5mmHg,術後15.2mmHgであった。平均眼軸長は22.3±0.77mmであった。角膜曲率半径(K1,K2)は,術前値がそれぞれ7.72mmと7.49mm,術後値がそれぞれ7.63mmと7.50mmであり,有意差がなかった。術前の目標屈折度と術後の屈折度に有意差がなかった。結論:水晶体摘出と眼内レンズ挿入を行った急性緑内障発作眼では,術前の目標屈折度と術後の屈折度に有意差がなかった。

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要約 目的:軽症ドライアイに対するヒアルロン酸ナトリウム点眼をジクアホソルナトリウム点眼に切り替えた効果の報告。対象と方法:軽症のドライアイ46例89眼を対象とした。男性5例,女性41例で,平均年齢は69歳である。1か月以上ヒアルロン酸ナトリウム点眼液(ヒアレイン®)で治療したあと,3%ジクアホソルナトリウム点眼液(ジクアス®)に切り替え,12週間の自覚所見と他覚所見の経過を追った。結果:角結膜上皮障害染色スコア,涙液層破壊時間,涙液メニスカス高,12項目のドライアイ自覚症状が改善した。結論:ヒアルロン酸ナトリウム点眼で角結膜上皮障害が完治しないか,自覚症状が残るドライアイに対し,ジクアホソルナトリウム点眼が奏効する可能性がある。

翼状片手術後の結膜充血 芳賀 照行
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要約 目的:翼状片手術後の結膜充血の原因と予防の報告。対象と方法:翼状片手術を受けた49例56眼を対象とした。男性後23例,女性26例で,年齢は35~95歳,平均69歳である。上方から有茎結膜弁を作製し,強膜に固定する手技を用いた。術中に0.04%マイトマイシンCを点眼し,術後1か月以上ステロイドを点眼した。手術から1年以上,平均2年5か月の経過を追った。結果:3眼で翼状片が再発し,この3眼を含めた6眼(11%)で結膜充血が顕著であった。結膜弁の幅が広く弁が確実に強膜に縫着できた46眼中1眼(2%)が再発した。9眼では結膜が脆弱または出血があったため,予定通り弁の作製または縫着ができず,うち2眼で再発し,これを含む5眼で充血が顕著であった(56%)。結論:翼状片手術では有茎結膜弁の幅が広く,確実に強膜に縫着できた症例で再発が少なく,1年後の充血が少なかった。

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要約 目的:迷入した眼窩異物がガラスか木片で術後経過が異なった幼児の2症例の報告。症例と所見:症例1は2歳11か月の女児で18か月前に左下眼瞼に外傷の既往がある。CT検査で左眼窩内に高吸収の異物が認められたために,眼窩手術を行ってガラス片を摘出した。術後には眼合併症はなかった。症例2は2歳1か月男児で1か月前に草地で転倒し,以後左下眼瞼に膿瘍を伴った肉芽形成と左眼の内方偏移を認めた。MRIで左外直筋付近に異物が確認され,眼窩手術により多数の植物性異物を摘出した。左外転障害に対して2回の斜視手術を行って眼球運動は改善した。結論:眼窩内への異物の迷入が疑われる幼児の眼部外傷例に対しては,画像診断による異物の確認が必要である。

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要約 目的:眼外傷症例の予後不良因子の検討。対象と方法:対象は2009~2011年に,眼外傷で獨協医科大学眼科を受診し,入院加療を要した71例71眼。眼外傷症例の患者因子や病態(年齢,術前視力,病態,角膜穿孔,前房出血,水晶体損傷,水晶体または眼内レンズ脱臼・脱出,硝子体出血,硝子体脱出,網膜剝離,眼手術既往)と術後視力の関係をレトロスペクティブに解析した。結果:術後視力不良因子は,年齢60歳以上,術前視力0.01未満,眼球破裂,水晶体または眼内レンズ脱臼・脱出の合併,眼手術既往であった。結論:高齢者,術前視力不良,眼球破裂,水晶体または眼内レンズ脱臼・脱出,眼手術既往のある眼外傷症例の視力予後は不良である。

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要約 目的:頭蓋内圧亢進症の1例の報告。症例:34歳の女性が複視を主訴として受診した。所見:矯正視力は左右眼とも1.5で,両眼に乳頭腫脹,盲点拡大,外転制限があった。身長148cm,体重57kg,BMI値26であった。脳脊髄液圧は280mmH2Oで,脳液組成は正常であった。頭蓋内占拠性病変と脳室拡大はなかった。磁気共鳴血管造影で両側の横静脈洞の血流障害があり,脳静脈洞血栓症は否定された。以上より頭蓋内圧亢進症と診断された。アセタゾラミドの内服で乳頭浮腫は改善し,2か月後に複視は消失した。結論:日本人での頭蓋内圧亢進症の報告は少ない。横静脈洞の血流障害の左右差が静脈灌流異常を示し,頭蓋内圧亢進の原因になったと推定される。

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要約 目的:視線追跡装置であるアイトラッカーを用いて,先天性眼振の強度と波形を検索した報告。対象と方法:外来に通院中の先天性眼振4症例を対象とした。男児3名,女児1名で,3例が乳児眼振,1例が先天周期性交代性眼振であった。年齢はそれぞれ4,5,6,17歳であった。矯正視力は全例が0.6以上,2例が1.0以上であった。装置の中に指標を9方向に提示し,3~6秒ずつ注視させ,他覚的に眼振の強度と波形を解析した。結果:全例で眼振の強度と波形が解析できた。結論:アイトラッカーは先天性眼振の眼球運動の記録に有用であり,診断と治療の補助として使える可能性がある。

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要約 目的:腫瘍壊死因子α(TNF-α)阻害薬で加療中に外転神経麻痺を含む脳神経麻痺が多発した症例の報告。症例:41歳男性が3週前からの複視で受診した。Crohn病があり,4か月前からTNF-α阻害薬であるアダリムマブの全身投与を受けていた。所見:右眼の外転制限が主な病的所見で,視力を含む眼科的所見には格別の異常がなく,右眼の外転神経麻痺と診断した。初診の18日後に右眼の閉瞼が困難になり,25日後に右三叉神経第1枝麻痺と顔面神経麻痺が生じた。アダリムマブ投与を中止し,3か月後には外転神経麻痺は治癒し,1年後には脳神経麻痺は寛解した。結論:外転神経麻痺が多発性脳神経麻痺の初発症状として生じた。アダリムマブ投与が脳神経麻痺を誘発した可能性がある。

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要約 目的:黄斑浮腫がある眼に対する白内障硝子体同時手術で,超音波で測定した眼軸長を,中心窩厚を考慮して補正した結果の報告。目的:黄斑浮腫を伴う網膜静脈分枝閉塞症に対して白内障硝子体同時手術を行った47例47眼を対象とした。手術眼と僚眼の中心窩厚の差を浮腫厚として眼軸長を補正した。術後の屈折値を,常用されている他の2方法によるそれと比較した。結果:術後の屈折誤差の平均値と標準偏差は,Aモード:-0.83±0.75D,IOLマスター®:-0.12±0.65D,今回の補正法:-0.15±0.65Dであった。IOLマスター®と今回の補正法による結果には有意差がなかった。結論:黄斑浮腫がある眼に対する白内障硝子体同時手術では,中心窩厚を考慮して眼軸長値を補正し,眼内レンズの度数を決定する方法が有用である。

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要約 目的:乳頭浮腫型のVogt-小柳-原田病(VKH)がくも膜下出血の高齢者に発症した報告。症例:81歳女性が5日前からの両眼視力低下で受診した。矯正視力は右0.5,左0.4で,両眼に乳頭の発赤腫脹があった。頭部のCTでくも膜下出血があり,脳神経外科に入院した。19日後に左右眼とも視力が0.2に低下した。両眼の前房に炎症の所見があり,脈絡膜剝離があった。髄液に単核球を主とする細胞増加があり,VKHと診断した。ステロイドパルス療法で,4か月後に視力が左右眼とも0.6に改善した。以後1年後の現在まで再発はない。結論:くも膜下出血にVKHが併発したと解釈される症例である。

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要約 目的:Vogt-小柳-原田病(原田病)の病型別の統計報告。対象と方法:過去3年間に初診として受診した原田病24例を対象とした。男性15例,女性9例で,年齢は26~69歳,平均45歳である。9か月以上の経過を追い,病型,夕焼け状眼底の程度,視機能を検討した。結果:後極部剝離型は16例,乳頭周囲浮腫型は8例にあり,平均年齢はそれぞれ37歳と62歳で,後者が有意に高齢であった。早期治癒は15例,遷延例が9例で,平均年齢はそれぞれ40歳と54歳で,後者が有意に高齢であった。夕焼け状眼底が中等度以上の症例では,58%が遷延化し,これが軽度な症例よりも脈絡膜が有意に菲薄化し(p=0.01),青色錐体感度視野が有意に低かった(p=0.006)。結論:炎症が遷延し,夕焼け状眼底の程度が強い原田病では,視機能障害が強い。

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要約 目的:後天性免疫不全症候群(AIDS)患者が免疫再構築ぶどう膜炎(IRU)を発症,黄斑上膜を形成し,硝子体手術を行った症例の報告。症例:25歳男性,右眼の視力低下,視野狭窄を自覚し受診した。所見:視力右(0.5),右眼に網膜血管炎を認め,サイトメガロウイルス(CMV)網膜炎を疑った。血液検査でAIDSと判明しCMV網膜炎と診断した。バルガンシクロビル内服と抗HIV療法(ART)を開始しCMV網膜炎は沈静化し,視力(0.9)と改善した。2か月後にIRUを発症し,その後,黄斑上膜の形成を認めた。黄斑の牽引が強くなり,視力(0.06)と低下したため硝子体手術を行った。術後6か月経過し,黄斑部の下方偏位は残存するも,視力(0.4)と改善した。結論:ARTによりAIDS患者の生命予後は改善したがIRUを発症し,硝子体手術を施行する症例の増加が予想される。

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要約 目的:高齢者の細菌性結膜炎から分離された病原体,治療期間,薬剤感受性と耐性化についての報告。対象と方法:2011年までの41か月間に細菌性結膜炎と診断され,24週間以上の経過を追えた60歳以上の105例160眼を対象とした。結果:計151株の細菌が分離された。メチシリン耐性の表皮ブドウ球菌と黄色ブドウ球菌には,クロラムフェニコールとバンコマイシンが有効で,キノロン系で初期治療を受けていた症例では耐性化と混合感染が多かった。このような場合でも,テトラサイクリンが比較的有効であった。全体にクロラムフェニコール,セフメノキシム,バンコマイシンへの感受性が高く,レボフロキサシンには低かった。結論:高齢者の細菌性結膜炎には,セフメノキシムとクロラムフェニコールが第1選択である。

Special Interest Group Meeting(SIG)報告

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 再生医療は従来の対症療法的な治療方法を,培養細胞やマテリアルを用いた根治療法へ変貌させる可能性を秘めており,次世代の医療として期待されている。第66回日本臨床眼科学会では,SIGとして「再生医療研究会」が開催された。本研究会は眼科の再生医療領域を中心として多くの研究者が集まり,毎年最新の知見について意見交換がなされている。今回は以下の3演題が発表され,活発な議論が交わされた。

連載 今月の話題

緑内障患者の検出力改善 朝岡 亮
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 Fourier domain光干渉断層計(OCT)が開発され,緑内障患者の診断精度が向上した。筆者らはOCTの測定結果を機械学習法の一種である「Random Forest法」を用いて統合・解釈することで,緑内障患者の検出力が改善されることを明らかにした。本稿ではこの結果も含めて,緑内障診療におけるOCTの近況を概説する。

連載 何が見える? 何がわかる? OCT・第6回

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Point

◎網膜が変性するすべての病気で生じうる

◎原因として遺伝性網膜変性疾患・炎症性疾患に大別される

◎光干渉断層計のB-scanだけでなく,C-scanも撮影することが重要である

連載 基礎からわかる甲状腺眼症の臨床

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はじめに

 Basedow病と診断されただけでも涙を流してしまう方が「私も目が出てくるのでしょうか……」と不安そうに質問されます。Basedow病の治療中にも,眼症状が変動することがあります。失明に至ることがないように注意を払いながら,甲状腺治療を選択するように心がけております。内科の立場からBasedow病の治療方針について,少しでもお伝えできたら幸いです。

連載 つけよう! 神経眼科力・39

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はじめに

 視機能の生理と病理を扱う臨床医学が,神経眼科学だと捉える考え方がある。神経眼科が扱う眼瞼機能,眼位変化や眼球運動,調節や瞳孔反応は,いずれも最適な視覚を得るために必須な機能である。そして,眼球に入力された外界からの視覚情報が,眼球から視路を介して視覚中枢に到達し,さらに高次脳機能で認知される経路は,まさに神経眼科の領域といえる。

 一方,心療眼科は心身医学(psychosomatic medicine)に属するものとみなすこともできるが,われわれは,「視覚や眼のさまざまな不都合,不快な症状や,それに伴う心理的負担に対する医学的,心理学的対応,また,精神疾患や薬物使用に伴うさまざまな視覚や眼部症状に対する医学的対応を行おうとする,より実践的対応」を目指しつつ,心療眼科の蓋然性,必需性を訴えてきた経緯がある1,2)

 表1には心療眼科を必要とする理由と神経眼科との関連を示した。心療眼科の考え方は,眼科全般に必要なことではあるが,表の内容を見れば,神経眼科的スタンスをとりながら,心療眼科学を発展させることの意義を読み取っていただけるであろう。

 本稿では神経眼科と関連の深い心療眼科学の2大テーマとして,「器質的異常が検出されない視覚異常」と「眼部快適性が欠如する病態」について取り上げて,考察する。

今月の表紙

円錐角膜 永野 幸一 , 鈴木 康之
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 症例は16歳,男性。約2年前より学校健診で視力低下を指摘され,精査を勧められるも放置していた。3日前より急激な視力低下を自覚して前医を受診し,加療目的で紹介となった。視力は右0.2(矯正不能),左指数弁であった。細隙灯顕微鏡所見では,左眼角膜中央部の著明な菲薄化と角膜浮腫を認め,急性水腫の診断で点眼および内服加療を行った。約3週間の加療で状態は落ち着き,左眼の混濁は残存するものの,本人および家族に角膜移植術の希望はなく経過観察を行っている。

 撮影にはトプコン社製SL-D7(Nikon D300搭載)を使用した。撮影光路を角膜のほぼ真横に,照明光路はこれと直角に交わるように角膜のほぼ正面に配した。角膜を山に見立て,真横から見たときに山の稜線がスリット光(0.1mm)で浮かび上がることをイメージして照明した。背景照明は使用していないが,後方に青のアクリル板を置き,背景が青味を帯びるように撮影した。

やさしい目で きびしい目で・162

やさしい目で 淵澤 千春
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 「やさしい目で きびしい目で」という本欄の存在を原稿依頼をいただくまで知りませんでした(すみません……)。執筆にあたって,これまで多くの女性医師のみなさんが書かれた記事を読みました。なかでも特に共感を覚えるのは,育児中のご苦労を書かれた記事でした。私自身も9歳と6歳の2児の子育てにかかわりながら大学病院で勤務医をしております。結婚が遅かったので,30歳代後半で出産しました。

 私は卒後10年ほどして,独身のとき,一度医局長を経験しました。今だからわかるのですが,子育てをしながらの勤務がどれほど大変なものなのか,当時の自分はまったくというほど理解していませんでした。今なら,子育て中の先生にもっと「やさしい目」で言葉をかけたりお手伝いして差し上げられると思うのですが,当時の私は子供さんの体調のため早退されたり,代診を希望されたりする先生の気持ちをちゃんとわかっていませんでした。

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 “M-Test”とは,初めて耳にする方も多いことと思う。副題に『経絡と動きでつかむ症候へのアプローチ』とあり,東洋医学的な診断法や治療に関する書であろうことがわかる。

 著者である向野義人氏は内科医であるが,長年にわたり鍼灸治療の西洋医学への応用を模索されておられ,従来からの手技を用いて内科診療の中に鍼治療を応用されていた。本書のタイトルである“M-Test”の開発は,著者が現職である福岡大学でスポーツ医学に携わるようになってからであり,あるスポーツ選手を診療したときにひらめいた“症候へのアプローチ”であったとのことである。すなわち,従来の鍼治療の方法である“症状とツボ“との関係で治療を行うのではなく,症状発現の誘因,原因となっている部位や関連する経穴への施術の試みが劇的な効果を示した1例からヒントを得てこの方法の開発につながったというエピソードが,本書の序論につづられている。その後,著者の指導の下で福岡大学の研究グループにより,M-Testはスポーツのみならずさまざまな領域での応用が試みられ,治療法として体系づけられるようになって成果を上げており,近年はその治療効果が海外からも非常に注目されている新しい方法である。

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 テレビ・シリーズの『大草原の小さな家』に,たしかこんなシーンがあった。ローラが学校から家に帰ってくると,姉のメアリーが本を読んでいる。ローラが「何,読んでるの?」と尋ね,メアリーが「歴史の本よ」と答えると,ローラは次のように言って,そそくさと外に遊びに行ってしまう。「そんな死んだ人たちの話なんか読んで,何が面白いの。ぞっとしちゃう」。

 勉強しないで遊びに行くことを正当化するために,たぶんローラはそう言ったのだが,ローラのこの言葉はなかなか本質をついている。人間は今を大切に生きるべきであって,その今を昔のために費やすことに一体,何の意味があるのか。ローラに歴史の本を読ませるのは大変だ。今の自分につながる歴史の本でなければ,ローラは決して読んでくれないだろう。

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要約 目的:白内障手術での眼内レンズ(IOL)度数の各種計算式の精度をLenstar®で比較評価した結果の報告。症例と方法:白内障手術を行い,Tecnis® ZA9003を挿入し,1.0以上の術後矯正視力が得られた104眼を対象とした。IOL度数決定のための術前検査にはLenstar LS 900®を用いた。計算式の術後屈折値誤差はその絶対値の平均で検討した。結果:術後の屈折値誤差とその標準偏差は,Haigis式0.29±0.22,Olsen式0.32±0.27,HalladayⅡ式0.36±0.32,SRK/T式0.37±0.32であった。Haigis式とSRK/T式の値に有意差があった(p=0.033)。結論:IOL度数の予測には,計算式により術後の精度に差がある。

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要約 目的:原発閉塞隅角症に対する白内障手術時にエンドミラーによる新しい隅角観察法を行い,ヒーロンV®による隅角開大の効果を確認したので報告する。対象と方法:水晶体乳化吸引術+眼内レンズ挿入術を施行した閉塞隅角症例でヒーロンV®による隅角開大をエンドミラーで確認できた4例5眼である。眼内レンズ挿入後,隅角方向にヒーロンV®を注入し,エンドミラーを用いて隅角を観察した。結果:全例で隅角所見が明瞭に観察でき,観察可能な範囲で隅角は開大していた。平均眼圧は術前23mmHgから術後13mmHgに下降し,平均角膜内皮減少率は1.2%であった。結論:エンドミラーを使用した隅角観察法は簡便かつ視認性も良好で,有用な方法である。

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要約 目的:水晶体亜脱臼を伴う低眼圧黄斑症に対し,硝子体手術と眼内レンズ縫着を行った症例の報告。症例:23歳男性が手拳で殴打され,即日受診した。右眼には-12Dの近視があり,矯正視力は0.1であった。左眼視力は-6.5Dの矯正で1.2であった。右眼に前房出血,硝子体の前房内脱出,散瞳,水晶体亜脱臼,耳側の6~10時にかけて毛様体解離があった。極端な低眼圧と後極部眼底の浮腫が生じ,矯正視力が0.09に低下した。受傷から10週後に硝子体手術,水晶体切除,眼内レンズ縫着を行った。手術の6週後に眼圧は16mmHgとなり,視力は-5.5Dによる矯正で0.4に改善した。受傷から11か月後まで経過は良好であり,黄斑浮腫は消失している。結論:外傷後の水晶体亜脱臼と低眼圧黄斑症に対し,硝子体手術と眼内レンズ縫着が奏効した。

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欧文目次

第31回眼科写真展 作品募集

べらどんな ヘビの目
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 「子ども電話相談」という番組がある。車で走りながらラジオで聞いていると,思いがけない勉強になることがある。

 「シャボン玉はなぜいろいろな色がでるのですか」という質問があった。回答者の先生は「違った波長の光が反射するので,あのような色になる」と返事をした。ところがその直後にある物理学者から電話が入った。「あれは波長の問題ではなく,ごく薄い膜から反射する光の干渉では」という指摘である。

べらどんな 一犬が虚を吠えれば
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 新しいことを主張するには,それが事実であっても大きな勇気が要る。しかし誰かが以前に言ったことなら,安心して口にできる。

 脳脊髄液のほとんどは側脳室から分泌され,脊髄腔を循環する。それから大脳の表面にあるクモ膜腔に流れ,クモ膜絨毛にあるクモ膜果粒で吸収されて静脈に入る。これが定説である。

ことば・ことば・ことば Baka
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 病気には原発性と続発性とがあります。この区別は固定したものではなく,疾患の解釈が変わると変化することがあります。

 高安病が最初に報告されたのは明治41年(1908)でした。当時は「網膜血管の変な病気」と思われていたのが,1948年に清水健太郎が「脈なし病」の病名を提案し,全身病の眼病変であることを示しました。さらにその後,「大動脈症候群」の概念があらわれ,いまでは自己免疫性疾患と解釈されています。

べらどんな ミサゴ
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 昔から,鵜と鷹は視力が良い鳥のように思われている。

 「鵜の目鷹の目」の成句は,1603年に刊行された『日葡辞書』にも出ている。イエズス会から派遣された宣教師のために作られた辞書で,当時の西日本で使われていた日本語の姿を知ることができる。見出し語はすべてローマ字である。

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次号予告

あとがき 鈴木 康之
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 「臨床眼科」6月号をお届けします。今月号も引き続き第66回日本臨床眼科学会講演の内容が主体となっていますが,朝岡先生の今月の話題や連載記事など興味深い内容になっています。学会中も頑張っていろいろ講演を聴いたりポスターを見たりしましたが,学会では多くの発表やシンポジウムが重なっていますし,人間の記憶力にも限界があります。こうやってきちんと論文の形で読ませていただけるのは有り難い限りです。特に盛論文「特発性黄斑上膜の術後経過」は多くの黄斑上膜の症例をまとめた力作で内境界膜剝離併用硝子体手術により良好な視力予後が得られたことが報告されています。改善例が63.9%で,その70%以上が術後2か月以内に2段階以上の視力改善が得られていたこと,術後最高視力に至るまでの期間は平均10.6か月であったことや,年齢の影響やcone outer segment tip(COST)ラインの確認の有無の影響など臨床上とても参考になります。その他にも黄斑上膜に関する論文が逢坂論文,半田論文,松尾論文と掲載されており,併せて読んでいただけるとより理解が深まるでしょう。

 さて,今このあとがきを書いているのは4月の終わりですが,日眼やら新年度やらで忙しかった4月も,あっという間にもう終わりです。5月はもう少し腰を落ち着けて仕事やら何やらできるのではと個人的には期待していますが,臨眼の抄録締め切りも迫っていますし,緑内障学会や眼薬理学会の締め切りも,さらには来年のWOCの締め切りももうすぐです。締め切りがあると仕事がはかどることを締め切り効果と言うそうですが,その締め切り効果を思いっきり効かせて,みなさん日々頑張りましょう。

基本情報

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臨床眼科
67巻6号 (2013年6月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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