臨床眼科 58巻6号 (2004年6月)

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 糖尿病黄斑浮腫13例20眼に硝子体手術を行い,手術終了直前にトリアムシノロン4mgを硝子体腔に注入した。術後6~9か月の観察で,2段階以上のlogMar視力の改善が13眼にあり,不変が7眼であった。これら7眼はすべて囊胞様黄斑浮腫(CME)と輪状網膜症が術前にあった。術前のCMEの内腔の高さが大きいほど術後視力が不良であった。以上,トリアムシノロン併用の硝子体手術は糖尿病黄斑浮腫に有効であるが,顕著なCMEまたは輪状網膜症がある場合には視力改善が困難であると結論される。

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 トリアムシノロンアセトニドを併用して硝子体手術を行った45眼について合併症を検索した。糖尿病網膜症15眼,網膜剝離13眼,黄斑円孔5眼,黄斑円孔網膜剝離4眼,黄斑浮腫4眼,黄斑上膜3眼,硝子体出血1眼である。トリアムシノロンを使用しないで硝子体手術を行ったほぼ同様な内容の症例45眼を対照とした。術中合併症として周辺部網膜裂孔が対象群1眼(2%)と対照群5眼(11%)に生じ,有意差があった(p<0.05)。術後3か月またはそれ以上の期間に生じた合併症には,新裂孔による網膜剝離,血管新生緑内障,遅延性角膜上皮障害,眼内炎があったが,両群間に有意差はなかった。術後の黄斑パッカーは対象群にはなく,対照群2眼(4%)に起こった。以上,トリアムシノロンを硝子体手術に使用することによる特有な術中と術後の合併症はなかった。

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 網膜中心静脈閉塞症9例9眼に対して放射状視神経切開術(radial optic neurotomy)を行った。年齢は43~79歳(平均63歳)であり,発症から手術までの期間は28~151日(平均66日)であった。術後の経過は6か月以上観察した。4眼は虚血型,5眼は非虚血型であった。LogMARで評価した術後視力は術前より改善する傾向があった(p=0.051)。中心窩厚は有意に減少した(p=0.001)。術前・術後の視力と中心窩厚の変化については,虚血群と非虚血群とで差がなかった。腕網膜循環時間,網膜循環時間,網膜感度,限界フリッカー値には変化がなかった。術後合併症として,網膜動脈分枝閉塞症が2眼に生じた。以上,網膜中心静脈閉塞症に対する放射状視神経切開術は慎重に行うべきであるが,従来の他の治療法よりも視力改善効果がある可能性がある。

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 巨大裂孔網膜剝離14例14眼を過去5年間に経験した。その他眼の所見と,7~132か月(平均35か月)の経過を検索した。巨大裂孔は円周方向で90°以上に及ぶものと定義し,外傷性と医原性は除外した。男性13例,女性1例であり,年齢は6~54歳(平均28歳)であった。他眼に裂孔原性網膜剝離が発症したのは8例(57%),うち5例は1年以内であった。両眼性の巨大裂孔は4例にあり,アトピー性皮膚炎が1例,Marfan症候群が1例,白内障手術の既往が2例4眼,格子状変性が1例にあった。巨大裂孔でない他の4例は毛様体裂孔が3例,弁状裂孔が1例で,アトピー性皮膚炎が2例,白内障手術の既往が1例にあった。14例中他眼に網膜剝離が発症しなかった6例のうち,1例にアトピー性皮膚炎があった。以上,巨大裂孔網膜剝離では他眼にも網膜剝離が生じる頻度が57%と高いことと,鋸状縁または毛様体に裂孔が好発することが結論される。

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 点眼薬で治療中の緑内障85例142眼に1%ブリンゾラミドを1日2回追加点眼し,3か月間の効果と副作用を検索した。緑内障の病型は,原発開放隅角緑内障75眼,正常眼圧緑内障48眼,その他19眼である。追加点眼前では,1剤投与が32眼,2剤以上が110眼であった。平均眼圧は,追加投与前17.4±3.1mmHg,投与開始1か月後15.0±2.9mmHg,2か月後14.9±2.9mmHg,3か月後14.9±2.9mmHgで,いずれも投与前よりも有意に低下した(p<0.0001)。原発開放隅角緑内障,正常眼圧緑内障,追加点眼開始前に1剤および2剤以上の症例のすべてで,投与開始から1,2,3か月後の眼圧は投与前よりも有意に低下した(p<0.0001)。霧視や異物感などの副作用が8例(9%)に生じた。ブリンゾラミドの追加点眼は安全であり,緑内障の病型あるいはそれまでの緑内障点眼薬の薬剤数にかかわらずいっそうの眼圧下降効果があると結論される。

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 25ゲージ経結膜無縫合硝子体手術(transconjunctival sutureless vitrectomy system:以下,TSV25TM)を施行された33例35眼の手術成績を検討した。術中合併症として網膜下出血,前房内空気迷入を,術後合併症として一過性低眼圧,高眼圧,網膜剝離を認めた。TSV25TMは,術中に出血しやすい脈絡膜新生血管などの疾患には不向きであるが,周辺硝子体を十分に切除する必要のない疾患には,よい適応であると考えられた。

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 Down症候群がある26歳女性が,12日前からの右眼充血と角膜混濁で受診した。左右眼とも-16Dの近視で,矯正視力は右0.3,左0.5であった。両眼に円錐角膜があり,右眼にはDescemet膜破裂による急性水腫があった。右眼は水疱性角膜症になり,初診から2年4か月後に全層角膜移植術が行われた。角膜の電子顕微鏡所見として,上皮基底膜の不整と一部消失,Bowman膜の厚さの減少と高電子密度物質の出現,実質膠原線維束の走行不整,実質細胞の多形化,Descemet膜の屈曲,内皮細胞の破壊があった。これらの所見は,臨床的にある角膜実質と上皮浮腫に一致した。

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 急性網膜壊死13例13眼の経過を検索した。男6例,女7例で,年齢は14~72歳(平均50歳)であった。経過は6~97か月(平均37か月)観察した。初期治療としてアシクロビル点滴を行い,その硝子体手術を全例に行った。12眼にはシリコーンオイルを注入し,11眼には強膜輪状締結術を行った。6眼には硝子体手術,シリコーンオイル注入,強膜輪状締結術を同時に行った。最終観察時点で網膜は9眼(69%)復位し,7眼にはシリコーンオイルが残留していた。最終視力は0.7が2眼,これを含む0.1以上が5眼(38%),0.1未満が8眼(62%)であった。

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 眼瞼脂腺癌4例を経験した。38歳,62歳,71歳の男性と,79歳女性であり,いずれも繰り返す霰粒腫として近医で2~5年間加療されていた。4例すべてに眼瞼全層の広範囲切除を行い,迅速病理診断で断端に腫瘍細胞がないことを確認したのち切除量に応じて眼瞼を再建した。平均4年間の術後観察で再発または転移はなく,眼瞼の開閉機能と整容面はともに良好である。再発する霰粒腫では,年齢にかかわらず脂腺癌を疑い病理学的に検索をする必要がある。

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 37歳男性の右眼に兎眼性角結膜炎が7年前に発症した。その1年前に交通事故による頭部外傷があり,右眼は眼球癆になっていた。過去7年間にレボフロキサシンとオフロキサシンの点眼を受けていた。当科初診時の視力は右0,左0.7であった。結膜培養でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)が分離された。0.63%ポビドンヨード液の点眼を1日4回行った。その1か月後にMRSA陰性になり,眼球内容除去術と眼瞼縫合術を行った。さらに2か月間ポビドンヨードの点眼を行い,義眼を作製し,経過は良好である。

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 硝子体手術を行った特発性黄斑円孔78眼につき,内境界膜を剝離した45眼と剝離しなかった33眼に分けて術後成績を検索した。両群の間には,術前視力,円孔のstage分類,円孔径,眼軸長などの背景因子に差がなかった。初回手術で円孔閉鎖が内境界膜剝離群の100%,非剝離群の79%で得られた。視力はlogMARで評価した。0.2以上の最終視力の改善が,剝離群の64%,非剝離群の73%で得られた。以上,内境界膜剝離を併用することで黄斑円孔の閉鎖率が有意に向上し,術後視力については両群間に有意差がなかった。

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 硝子体手術を行った裂孔原性網膜剝離60眼を回顧的に検索した。全例が50歳以上で,平均59歳であった。黄斑円孔網膜剝離とC2以上の増殖硝子体網膜症は除外した。全例に後部硝子体剝離があった。初回手術で55眼(92%)が復位し,最終的に58眼(97%)が復位した。復位しなかった2眼は,観察期間終了時にシリコーンオイルが未抜去であった。平均視力は,黄斑非剝離眼では術前0.86,術後0.81であり,黄斑剝離眼では術前0.01,術後0.37であった。以上,後部硝子体剝離に伴う裂孔原性網膜剝離に対する硝子体手術の成績はおおむね良好であった。増殖硝子体網膜症が発症して再手術を行った症例と術前の黄斑剝離期間が長い症例では,復位が得られても術後視力が不良であった。

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 73歳女性左眼の黄斑円孔と網膜剝離に対して,超音波乳化吸引術,眼内レンズ挿入術,硝子体手術,眼内光凝固,SF6ガス注入,トリアムシノロン注入を行った。手術の翌日に,直径約6mmの円形で濃淡のある白色塊が角膜後面に沈着していた。これはトリアムシノロンであると推定されたが,5日後には消失した。網膜剝離は復位し,以後6か月間重篤な角膜障害は生じていない。トリアムシノロンを使った硝子体手術では,網膜に対するだけではなく,角膜への影響を考慮する必要があることを本症は示している。

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 黄斑浮腫14眼に対して硝子体手術を行い,その際にトリアムシノロンを硝子体と後部テノン囊下に同時注入した。症例は,網膜中心静脈閉塞症8例8眼と糖尿病網膜症4例6眼である。男性5例6眼,女性7例8眼で,年齢は50~76歳(平均67歳)である。トリアムシノロンの注入量は硝子体内4mg,後部テノン囊下20mgとした。網膜中心静脈閉塞症眼には放射状視神経切開術,糖尿病網膜症眼には網膜光凝固を同時に行った。術後1か月の時点で,全症例で黄斑浮腫が消退し視力が改善した。光干渉断層計(OCT)で測定した中心窩厚は術前平均600±150μm,術後1か月平均216±57μmで,有意差があった(p<0.0001)。黄斑浮腫の再発が網膜中心静脈閉塞症4眼(50%)にあった。以上,黄斑浮腫に対するトリアムシノロンを硝子体と後部テノン囊下の注入は,術後早期に著効があったが,網膜中心静脈閉塞症での再発が問題である。

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 31歳男性が前日からの右眼の暗点で受診した。両眼に白濁する網膜病変があった。蛍光眼底造影で両眼に網膜小動脈からの色素漏出が多発していた。動脈炎性の網膜動脈分枝閉塞症と推定した。プレドニゾロンの内服などでいったん軽快したが,初診から10週後に左眼に再発し,さらに4週後に右眼に再発した。膠原病を疑い,血液検査,頸動脈の超音波検査などを行ったが異常は検出されなかった。本症例には,全身的な異常がない,限局性で動脈炎性の網膜動脈分枝閉塞症が両眼にある,副腎皮質ステロイド薬に良好に反応するが減量すると再燃するなどの特徴があり,新疾患である可能性がある。

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 25歳女性が8週前からの右眼耳側視野欠損で受診した。視力は左右とも1.5で,瞳孔の直接対光反応は右遅鈍,左迅速であり,相対的求心性瞳孔障害が右眼で陽性であった。視野検査で盲点拡大が右眼にあった。眼底検査,蛍光眼底造影,視覚誘発電位,磁気共鳴断層撮影で異常所見はなかった。多局所網膜電図で,視野欠損部に対応する部位に応答低下があった。これらの所見からacute zonal occult outer retinopathyと診断した。視野欠損は自然回復した。相対的求心性瞳孔障害が陽性であったのは網膜障害の結果であると推定した。

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 64歳女性が両眼の視力低下で受診した。4年10か月前に乳癌の手術を受け,以来1日量20mgのタモキシフェンを内服していた。総量は35.8gと推定される。1年前の視力は0.8~0.9であった。初診時の矯正視力は右0.3,左0.5であり,光沢のある白色沈着物が両眼の後極部に散在していた。蛍光眼底造影で左眼黄斑部に窓状欠損があったが,光干渉断層検査(OCT)で浮腫はなかった。ゴールドマン視野検査で異常はなかった。走査レーザー検眼鏡(SLO)で白色沈着物は網膜浅層にあることが確認された。黄斑浮腫を伴わないタモキシフェン網膜症と診断し内服を中止させたが,以後7か月間に視力は不変である。

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 乳頭周囲の網膜神経線維層(retinal nerve fiber layer:RNFL)の厚さを光干渉断層計(OCT3)で測定した。対象は正常眼29眼と緑内障眼44眼で,全例が視力0.9以上であった。正常眼のRNFL厚は平均106μmであり,耳側と鼻側が薄く上下側が厚い2峰性を示した。緑内障眼でのRNFL厚はAulhorn分類Greve変法による病期間には有意差がなく,正常とⅠ期の間にのみ有意差があった(p<0.01)。Humphrey視野のMD値は病期の進行に伴って減少し,RNFL厚とMD値の間に有意な相関があった(r=0.74,p<0.001)。

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 80歳女性が転倒して左眼を打撲した。過去に高度近視があり,白内障手術後に無水晶眼になっていた。2日後に受診時の左眼視力はゼロであった。強い前房出血があった。受傷5日後の硝子体手術で,上方の輪部に180°に及ぶ強膜裂創があり,虹彩はなく,受傷時に脱出したと推定された。2か月後の左眼視力は0.06であった。無水晶体眼であったことが網膜剝離を生じなかった原因であると推定された。

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 1歳女児が1か月前からの眼位異常で受診した。右眼優位の内斜視があり,左眼固視が不良であった。外転制限はなく,他の神経症状もなかった。斜視弱視として治療を行ったが効果は乏しかった。4か月後に左眼乳頭が蒼白化し,視覚誘発電位検査(VEP)で左眼視神経障害が疑われ,CT検査で頭蓋咽頭腫が発見された。手術を行い,2歳6か月の現在,経過は良好である。脳腫瘍が斜視として初発することがあることを示す症例である。

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 74歳女性が60歳の頃から進行してきた内斜視で受診した。幼少時から強度近視があり,20年以上前に両眼に白内障手術を受けている。矯正視力は右0.4,左指数弁で,眼軸長は左右とも約30mmであった。左眼が45°以上内下転し,全方向に眼球運動制限があった。磁気共鳴画像検査(MRI)でぶどう腫化した眼球後部が上直筋と外直筋を押し分けて筋円錐外へ脱臼していた。治療として上直筋と外直筋の筋腹を縫着した。眼位はほぼ正位になり,眼球運動は全方向で改善した。MRIで眼球が筋円錐内に整復され,上直筋と外直筋の偏位も軽快していた。強度近視に伴う固定内斜視に直筋の縫着が有効であった症例である。

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 67歳女性の左眼白内障に対して手術を計画した。幼児期から約10.5Dの遠視があり,21か月前にLASIKが行われ,約5Dの矯正効果が得られていた。手術直前には+9Dの遠視があった。眼内レンズの度数決定に3つの方法を検討した。Clinical history法を利用して求めた角膜屈折値を使ってSRK/T式で計算する方法,LASIKが行われている角膜をOrbscan(R)で測定して得られる角膜前後面像を利用し光線追跡法で求める方法,同じく角膜前後面像を利用しSRK/T式で求める方法である。以上のうち,clinical history法が適当であると判断し手術を行った。術後6か月の時点で等価球面度数-1.25Dに相当する矯正で0.8の視力が得られた。

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 横浜市にある2眼科施設において,1年間にコンタクトレンズ(CL)使用者55,056人を解析した。男性が41.6%,女性が58.4%であり,平均年齢は28.8±10.0歳であった。コンタクトレンズの種類は,ソフトCLが16.5%,ハードCLが9.2%,頻回交換型CLが48.0%,使い捨てソフトCLが26.4%であった。ソフト系CLと同時に購入されたケア用品は,過酸化水素水消毒液が多かった。1日使い捨てソフトCLと同時にケア用品を求めた人は3,052人もおり,より適切な指導が必要であると判断された。

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 超音波生体顕微鏡(ultrasound biomicroscope:UBM)が眼異物2例の診断に有用であった。25歳男性が釘を打つ作業中に右眼に違和感を自覚し,同僚に眼が赤いことを指摘されて受診した。右眼の耳側球結膜に出血と裂傷があった。X線撮影とBモード超音波検査で異常所見はなかった。UBM検査で球結膜の裂傷部に高輝度の異物が同定され,受診当日に異物を摘出できた。66歳男性が草刈り機を操作中にその刃が石に当たり,左眼に眼痛と流涙が生じ,ただちに受診した。鼻側輪部から4mm後方に鉄片異物があった。Bモード超音波検査では異物は同定されず,CT検査では鉄片異物はあるが眼球内に及ぶかどうかは判定できなかった。UBM検査で異物の先端が強膜内にあることが確認された。これら2症例では,X線撮影やCT検査で決定的な診断ができない小さな前眼部異物でも,UBM検査が有用であった。

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 硝子体手術を行った糖尿病黄斑浮腫48例66眼の経過を検索した。35眼には内境界膜除去を併用し,31眼には行わなかった。6か月以上の経過観察で,術後最高視力,最終視力,最高視力到達日数のすべての項目につき,内境界膜除去を併用した群としなかった群との間に有意差はなかった。糖尿病黄斑浮腫に対する硝子体手術で,内境界膜除去を併用することが有用でないことを示す結果である。

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 73歳女性が左眼の眼底異常を偶然に発見されて受診した。矯正視力は左右とも0.7であり,左眼眼底後極部の網目状の色調変化と,上方に黄白色の小結節が散在していた。硝子体混濁はなかった。蛍光眼底造影では後極部から中間周辺部にかけて網目状の低蛍光と過蛍光が混在していた。11か月後の再診時に,左眼眼底の下耳側の網膜下に腫瘤が発見され,両眼に硝子体混濁があった。両眼の硝子体生検の結果は陰性であったが,悪性リンパ腫を疑い放射線照射を行った。左眼の腫瘤は消失し網脈絡膜萎縮巣になった。右眼の硝子体混濁に対し硝子体切除術を行い,病理組織学的所見と,硝子体内のIL-10/IL-6比が高いことから,眼内悪性リンパ腫と診断した。網膜の黄白色小結節が眼内悪性リンパ腫の初発病変であった可能性がある。

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 急速に進行した悪性黒色腫の1例を報告する。68歳女性が右眼視力低下で受診した。矯正視力は右0.5,左1.2で,右眼の視神経乳頭近くに色素沈着がある3乳頭径大の隆起性病変があった。蛍光造影の初期には低蛍光,後期には過蛍光と低蛍光が混在した。6か月間に急速に大きくなり,硝子体出血が併発した。超音波検査で茸状の隆起性病変であり,悪性黒色腫が疑われた。術中の生検で悪性黒色腫の診断が確定し眼球を摘出した。腫瘍はブルッフ膜経由で網膜に浸潤するメラニン色素が豊富な類上皮型悪性黒色腫であった。視神経への浸潤はなく,以後1年間の経過は順調である。類上皮型脈絡膜悪性黒色腫は頻度は低いが,急速に進行することがある。

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 35歳男性が視力低下で受診した。顔面に神経線維腫が多発し,全身皮膚にcafé-au-lait斑があることから,神経線維腫症1型と診断されている。家族内に問題はない。矯正視力は右0.01,左指数弁であった。眼軸長は右32.2mm,左33mmで,右眼には-11Dの近視があった。左眼には固定内斜視があり,患者の成長に伴って進行したという。右眼に白内障手術を行い0.2の矯正視力を得た。左眼には垂直筋の前後転術を行い眼位が改善した。神経線維腫症1型に固定内斜視が合併することは稀であるが,眼窩内に神経線維腫があったことが原因であると推定した。

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 男児が在胎27週,体重1,038gで出生した。両眼の未熟児網膜症に対し,生後6~8週後に半導体レーザーによる汎網膜光凝固が行われた。その後水晶体後面の周辺に輪状の増殖膜が生じ,生後6か月に両眼に閉塞隅角緑内障が発症した。両眼に経毛様体扁平部水晶体切除術を行い,眼圧は正常化した。本症例の緑内障は,水晶体後面の増殖膜収縮で水晶体が前方に偏位したことと,前後房間の交通が増殖膜で遮断されて悪性緑内障が起こったことで発症した可能性がある。

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 アスタキサンチンの視機能への影響を,40歳以上の健康人49人49眼について検索した。全例を年齢と性別が同じような4群に分け,それぞれに1日1回,0mg, 2mg, 4mg, 12mgのアスタキサンチンを28日間内服させた。4mg群,12mg群で遠見裸眼視力が有意に改善した。4mg群と12mg群では調節緊張時間が有意に短縮した。屈折値,フリッカー融合頻度,瞳孔反応には変化がなかった。

専門別研究会

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 本年は一般口演が8題,座長は例年の如く小暮文雄(日本失明予防協会)と赤松恒彦(赤松眼科)が務めた。

 1.世界保健機関失明予防協力センターとしての国際保健医療協力の現状と展望(ラオス編)

 小野浩一・他(順天堂大学)

 演者らの教室は1980年より世界保健機関(WHO)の指定失明予防協力センターとして西太平洋地域で失明予防活動を行ってきた。今回はラオスを例に挙げその活動報告と今後の方向性について論じた。

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 ■座長のことば

 小児の視覚発達を阻害する因子となる斜視,屈折異常などの早期発見は,わが国の小児眼科医療にとって重要な課題である。そして,その効果的な方法として望まれるのは,保健所における1歳6か月児と3歳児の健康診査(以下,健診)の充実である。幸い1990年から3歳児健診に視覚検査が採用され,そのスクリーニング効果が大いに期待された。ところが,所轄が都道府県から市町村に移管されたこともあって,現状ではいくつかの問題点も現れ,残念なことに眼科健診,ことに視覚検査の価値に疑問を持たれる傾向も出てきた。このことは日本小児眼科学会でも問題となっている。

 いくつかの問題点のなかで注目すべきは健診スタッフの問題である。一応医師,ことに眼科医の出務の問題もあるが,健診の質と能率の向上に期待されているのが専門職である「視能訓練士」である。そして,すでに全国各地でいろいろな形で健診に出務している実態もあるが,出務の形態も業務内容もまったくまちまちであり,解決すべき多くの問題点を抱えている。

連載 今月の話題

緑内障神経保護治療の展望 中村 誠
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 十分な眼圧下降を行っても,視神経障害の進行する開放隅角緑内障症例に対しては,網膜神経節細胞の再生が困難である以上,さらなる進行を食い止める神経保護治療にかかる期待は大きい。しかしその一方で,臨床治験まで行われ薬効の確認された神経保護薬はいまだ存在しない。神経保護治療薬の候補はいかなる条件を備えていなければならないのか,そして,臨床へ応用するには何が問題なのかを中心に,現在の緑内障治療における神経保護の立場について概説したい。

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 1990年,コロイデレミアの原因遺伝子であるRab escort protein-1(Rep-1)の一部が単離され,1994年にその全構造が明かになった1,2)。Rep-1はXq21に存在し,15個のエキソンで構成され,653個のアミノ酸をコードする。Rep-1は網膜色素上皮で豊富に発現するほかに,網膜,脈絡膜,脳,肝臓,筋,リンパ球などの諸臓器でも発現する3~5)

 REP-1は,細胞内の小胞輸送にかかわる低分子量guanosine 5'-triphosphate(GTP)結合蛋白質の一種であるRabの補助蛋白質である。REP-1の結合したRab蛋白はゲラニルゲラニル化される。そこで疎水性を獲得したRab蛋白は輸送小胞を形成して,細胞内での代謝産物輸送に関与する。

 今回筆者らは,コロイデレミアの1家系患者3例,保因者1例にRep-1遺伝子402delT変異を確認したので,臨床像と合わせて報告する6)

連載 日常みる角膜疾患15

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 症例

 76歳,女性。幼少時に罹患した陳旧性角膜実質炎(梅毒性)に加え,白内障の進行により徐々に視力低下をきたしたため,1999年5月に近医で白内障手術(両眼)を施行された。その後,両眼に水疱性角膜症を発症したため,2000年に当科を紹介され受診した。初診時視力は左右とも指数弁(矯正不能)であった。2000年10月に左眼の水疱性角膜症に対し全層角膜移植術を施行した。角膜の透明性は回復したが近視性の網脈絡膜萎縮のため視力は左0.06(0.15)であった。

 2002年7月に左眼の視力低下と充血を主訴に当科を受診した。左眼の視力は0.06(0.08),眼圧は14mmHgであった。角膜は下方耳側を中心に実質浮腫をきたしており(図1a,b),移植片中央に9時から3時方向にかけてKhodadoust線を認めた。左眼内皮型拒絶反応と診断し,ステロイド点滴漸減療法(リンデロン(R)8~4mg),ベタメタゾン(リンデロン(R))点眼1日4回,フルオロキサシン(クラビット(R))点眼1日4回を開始した。治療に反応し視力は徐々に改善したため当科を退院した。再診時,左眼視力も0.08(0.1)を維持しており,移植角膜片も高い透明性を維持している(図1c,d)。

連載 緑内障手術手技・12

隅角癒着剝離術(2) 黒田 真一郎
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 癒着解離

 解離針の先を癒着部境界ぎりぎりのところにあてがいゆっくりと下方に押し下げ,毛様体が確認できたところで止める(図1)。それ以上強く解離すると,虹彩根部から出血したり,毛様体解離を起こしたりするので注意を要する。解離針の方向はどちら向きでもよいが,術者が操作しやすい方向のものを使用する。癒着部位を順次連続的に解離していき,プリズムを回しながら一度にできるだけ広い範囲で解離するように努める。

 しかし,これらの操作は必ず直視下で行うことが原則であり,見えにくい部位を盲目的に解離することは併発症を起こす危険があるため絶対に行ってはならない。癒着部位が高い場合は,一度見える範囲全体を途中まで解離し(図2a),その後毛様体が確認できるまで解離するように2回に分けて解離すると安全である(図2b)。

連載 あのころ あのとき41

人生の転換 武田 忠雄
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 出生と環境

 武田忠雄は大正13年1月2日,宮城県丸森町に生まれた。月日が経つのが早くいつしか傘寿になってしまった。父は農蚕業を主業としていたが,冷害や水害でしばしば痛めつけられた。小学4年生のときだったろうか,数名が家に来て味噌桶に赤札を貼って行った。

 昭和9年は東北地方が大冷害に見舞われ苦境のどん底に陥り,娘の身売り,欠食児の増加など社会的不安が多発した。わが家は堤防の外にあったので長期の降雨で増水し,床上30cmにも浸水したことがたびたびあった。ご下賜金で郷倉が部落ごとに作られたのもこのときだったと思う。増水すると丸森橋近くの堤防兼県道が揺れ恐怖を感じた。

 小学6年生のとき,受持ちの鈴木重吉先生から中学に進学するよう勧められたが,家の経済事情を考えて,誰にも相談せず断った。兄は農蚕学校に進んでいたので,自分もその程度にしか考えていなかった。小学校高等科1年の農業科で屎尿の運搬をさせられ,私には向かないと感じた。

連載 他科との連携

研修医時代の経験を生かして 峯 正志
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 私は現在,眼科医として2年目ですが,眼科に入局する以前,研修医時代の2年間をローテートの研修医として過ごしました。研修医時代には,内科をはじめとして外科,麻酔科,小児科などいくつかの診療科を回りました。私の受けた研修プログラムではある程度の選択の幅が認められていたため,内科の期間を長く取り,急性期の対応から終末期医療,外来診療などさまざまな経験ができました。

 眼科医1年目

 その研修を終えたあと現在の眼科に入局したのですが,諸般の事情から1年目ですぐに公立病院へ研修を終えた眼科医として赴任することになってしまいました。もちろん,最初は眼底をみることもできなければ,手術の道具も見たことのないものばかりでした。そのようにわからないことばかりでしたので,自分としてもかなり大変でしたが,それ以上に周囲のスタッフや患者の方々に大いに迷惑をかけたのではないかと思います。無知ゆえの恐ろしさというのか,その当時はあまり感じなかったのですが,今思えばかなり危うかったと反省することも少なからずあります。それでも,上司の先生方や周囲のスタッフのサポートのおかげで,何とか大きな失敗もせずに今までやってくることができました。

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 眼内レンズ挿入術後に発症した急性眼内炎6例6眼に手術を行い,その成績を検討した。白内障手術から眼内炎が発症するまでの期間は2~7日で,全例で眼内炎と診断されてから6時間以内に手術を行った。全6眼で眼内レンズを摘出し,5眼には硝子体手術を行った。手術中の灌流液には抗生物質を添加しなかった。眼内炎手術直前の視力は5眼が手動弁であり,最終視力は5眼が1.0以上であった。培養で起因菌が2例で同定された。炎症の再燃は皆無であった。眼内レンズ挿入術後に発症した急性眼内炎に対して,早期の硝子体手術が有効であると結論される。

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 目的:成人鼻涙管閉塞に対して2種類の管(stent)を留置し,その表面形状を比較すること。対象と方法:50歳代の女性6例に涙道チューブ留置術を行った。3例にはヘパリンで表面処理をしたポリウレタン管,他の3例にはシリコーン管を使用した。1か月後に抜去し,その表面形状を走査電子顕微鏡で検索した。結果:全6例で流涙と眼脂が改善し,2群間で臨床所見に差がなかった。走査電子顕微鏡では,ヘパリンで表面処理をしたポリウレタン管のほうが表面が平滑であった。結論:ヘパリンで表面処理をしたポリウレタン管のほうがバイオフィルムの付着が少なく,留置後の症状改善や肉芽形成が少ないなどの可能性がある。

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 64歳男性が3年前に左眼の霧視を自覚し,ぶどう膜炎として点眼治療を続けていた。視力がさらに低下し,当科を受診した。矯正視力は右1.2,左手動弁であり,両眼に虹彩炎と周辺虹彩前癒着があった。左眼に硝子体混濁を認めた。全身検査所見からサルコイドーシスと診断した。左眼に白内障と硝子体手術を行った。採取した黄斑前膜の病理組織学的検索で,類上皮細胞肉芽腫を伴う線維血管膜が同定された。類上皮細胞肉芽腫があることで,増殖サルコイド網膜症の診断を確定することができた。

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 塩酸ブナゾシン点眼が網膜と脈絡膜血流に及ぼす影響を検索した。被検者は健康な男性篤志者15名で,年齢は19~30歳,平均22歳である。片眼に0.01%塩酸ブナゾシン,他眼に生理食塩水を点眼した。血流測定にはレーザードップラ眼底血流計とLangham OBF tonometerを用いた。点眼前,点眼90分後,1日2回の点眼をした14日目に,血圧脈拍,眼圧,網膜動脈径,網膜動脈速度,網膜動脈血流量,拍動性眼血流量を測定した。点眼前に比べ,14日目には塩酸ブナゾシン点眼群で眼圧が有意に低下し,網膜動脈速度,網膜動脈血流量が有意に増加した(p<0.05)。拍動性眼血流量に変化はなかった。塩酸ブナゾシン点眼で網膜血流が増加する可能性がある。

基本情報

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臨床眼科
58巻6号 (2004年6月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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