皮膚科の臨床 60巻8号 (2018年7月)

  • 文献概要を表示

症例1:57歳,男性。糖尿病あり。左足の胼胝性潰瘍を契機に,左第3趾の黒色壊死,膿瘍が出現した。壊死組織のデブリードマン,抗菌薬投与,インスリン療法を再開した。整形外科に転科し左第2趾MP関節,左第3~5趾リスフラン関節を切断した。症例2:56歳,男性。糖尿病あり。右第5趾の壊疽,骨髄炎が出現した。右第5趾MP関節離断術を施行し,陰圧閉鎖療法,縫縮術により治癒した。糖尿病性足病変は下肢大切断に至ることが多い。QOLの低下を招くため,可能な限り下肢大切断は避けるべきである。自験2例はともに下腿切断の可能性があったが,踵の温存に成功した。不必要な大切断を防ぐためには,皮膚科医も糖尿病性足病変の治療戦略に習熟する必要がある。

  • 文献概要を表示

79歳,女性。既往に糖尿病,慢性心不全あり。左下腿蜂窩織炎疑いで入院し,入院2日目に試験切開して壊死性筋膜炎と診断した。起因菌はSerratia marcescensであった。抗菌薬とデブリードマンで解熱したが,壊死範囲は緩徐に拡大した。左足趾の冷感があり,magnetic resonance angiographyにて左膝窩動脈から前脛骨動脈の血流低下を認め,閉塞性動脈硬化症と診断した。カテーテルによる膝窩動脈拡張術を行うも,同日より全身状態が悪化し死亡した。救命のための下肢切断の必要性を再認識した。

  • 文献概要を表示

現病歴 肛門周囲に発赤を伴う結節が出現した(第1病日)。第2病日に当院小児科外来を初診した。第3病日に拡大傾向であったため,小児科に緊急入院となり,切開排膿後,ホスホマイシン(90mg/kg/日)の内服が開始された。第4病日に当科を紹介受診した。

  • 文献概要を表示

35歳,男性。左頭頂部脳内出血術後2カ月目に発熱が出現し,当院に入院した。全身にびまん性紅斑を認め,特に手指の浮腫と手掌の紅斑が顕著であった。入院3日目に頭頂部術後創部より排膿を認め,頭部MRIにて硬膜下膿瘍と診断した。開頭膿瘍除去術を施行し,メロペネム,バンコマイシン塩酸塩の点滴を行ったところ,術後2日目には皮疹はほぼ消退した。創部培養からはtoxin産生株のMRSAが検出された。自験例では,頭頂部術後創部のMRSA感染によりtoxinが全身に散布され,全身性びまん性紅斑をきたしたtoxin-mediated diseaseと考えた。早期治療により,toxic shock syndromeの診断基準を満たす前に症状が軽快したものと考えた。

  • 文献概要を表示

現病歴 1週間前から左下腿に発赤と疼痛が出現し,4日前から起床困難となった。その後発熱し,当科へ搬送された。

  • 文献概要を表示

52歳,女性。神経Behçet病に対し,プレドニゾロンとアダリムマブを投与中であった。砂利道で転倒し,左膝に生じた擦過傷が難治性となった。各種検査結果より壊疽性膿皮症と診断し加療を行うも,皮膚症状は増悪した。4回目の培養でNocardia brasiliensisが検出され,皮膚ノカルジア症の診断に至った。抗菌薬の投与で瘢痕治癒したが,投与終了後四肢に皮下結節が再燃し,病巣切除と抗菌薬の投与を再開した。ノカルジア症は通常より培養に時間を要するため,陰性と判断されやすい。免疫不全患者に難治性の皮膚症状が生じた際は,本疾患を念頭に適切な情報提供を行い,検査方法を考慮することが重要であると考えた。

  • 文献概要を表示

6カ月,女児。生後5カ月で左上腕にBCG接種をした。その1カ月後より,全身に丘疹,BCG接種部位周辺に紅斑が出現し,38°C以上の発熱が持続した。病理所見では類上皮細胞肉芽腫がみられず非特異的炎症像だったものの,結核菌の検出もなく臨床像から丘疹状結核疹と診断した。経過観察のみで1カ月半後に皮疹はほぼ消退した。BCG接種後副反応については必要に応じて菌検索などの精査を行い,慎重に経過をみることが重要であると考えた。

  • 文献概要を表示

44歳,米国籍女性。フィリピン,セブ島出身。42歳頃顔面の皮疹に気づき,約1年後に近医でハンセン病と診断され治療を開始し,その1カ月後に当科を受診した。顔面・四肢に知覚低下を伴う紅褐色斑が多発し,組織学的に真皮から皮下組織に類上皮細胞肉芽腫と泡沫細胞を認め,皮膚スメア検査でらい菌を検出した。BL型ハンセン病と診断し,多剤併用療法を開始した。経過中軽い神経炎を認めたが徐々に改善,米国に帰国することとなったため同国医療機関に継続加療を依頼した。ハンセン病は早期発見・治療により重篤な後遺症を残さないことが重要である。また治療開始後は治療薬の副作用やらい反応,末梢神経障害に伴う症状などを注意深く観察する必要がある。

巻頭言

皮膚科のバトンをつなげる 樋口 哲也
  • 文献概要を表示

まだ記憶に新しい平昌オリンピック・スピードスケート女子団体追い抜き(金メダル)の一糸乱れない隊列は,個人種目だけではない日本のチーム力を感じました。また,2年前のリオデジャネイロオリンピックでの男子400mリレー(銀メダル)では,完璧なバトンワークに感動しました。大舞台に向けての並々ならぬ努力の結晶であることは間違いありませんが,日本人というのはうまく調和することで,個人の力を凌駕するチーム力を出せる民族なのではないかと思ってしまいます。個人の皮膚科医の力をうまくまとめればよいチームになる,そう信じて現在の職位を全うしようと思っています。よい皮膚科チームの一員になるための,若い皮膚科の先生へのメッセージになるようにまとめてみたいと思います。

  • 文献概要を表示

現病歴 約10年前より右口角にびらんが出現した。2年前に疣状の隆起が出現したため2014年1月,近医を受診した。皮膚生検で白板症と診断され,凍結療法が行われた。病変が拡大したため2015年4月,再度皮膚生検が施行されたところ,病理組織学的に有棘細胞癌であったため当科を紹介受診した。

臨床講義

薬疹 阿部 理一郎
  • 文献概要を表示

薬疹とは「全身投与された薬剤またはその代謝産物の直接的・間接的作用により誘導される皮膚粘膜病変」と定義される。近年,さまざまな新規薬剤が多岐に使用されており,薬疹の研究も進むなか,これまで認識されてこなかった新しい薬疹の概念も確立してきた。さらに重症な薬疹であるStevens-Johnson症候群(以下SJS)や中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrosis,以下TEN)については2016年に診療ガイドラインが発表され,また発症機序の解明も進む。本稿では重症薬疹について主に解説するとともに,近年明らかになってきた発症機序についても解説する。

  • 文献概要を表示

2010年9月~2017年10月にかけて大牟田市の一診療所を訪れた患者のうち体部白癬と診断された症例35例を対象に真菌培養を試みた。母集団は苛性カリによる顕微鏡検査にて真菌を確認した症例で顔面から四肢(股部を除く)に病変を形成したものを対象とした。その結果,体部白癬は高齢者に多かったこと,原因菌はTrichophyton rubrumが圧倒的に多いこと,足白癬の合併が過半数(35例中26例)だったことが判明した。近年Trichophyton tonsuransMicrosporum canisによる感染症が注目されているが,高齢者の多い母集団では,近年よく話題となっているTrichophyton tonsuransMicrosporum canisによる体部白癬は極めてまれと考えられた。

  • 文献概要を表示

前回,iPhone®にデジタルカメラ(以下デジカメ)用のLEDリングライトを取り付けて臨床写真の撮影に使用したところ,光量が不足する病室内でもクリアな写真が撮影できるようになったことを報告1)した。その後,iPhone®専用のLEDリングライトが発売されたため,実際に褥瘡の撮影に使用したところ,良好な結果が得られたので,あらためて紹介する。

ちょっと一息 医局ラウンジ

第7回 福岡大学
  • 文献概要を表示

51歳の今福教授をはじめ医局のメンバーは全体的に若いため,非常に和気あいあいとしてアットホームな医局です。また小所帯の医局のためカンファレンスでも皆自由に遠慮なく意見を出し,知識を共有して次の診療に生かせるようにしています。さらに当科ではしばしば日々の臨床から生じた疑問をヒントに研究テーマにして,将来的に患者様に還元できるような臨床研究,基礎研究を行い成果をあげています。また,ボスのモットーは “work hard, play hard” であり,皆,仕事のみならず,プライベートも充実しています。九州という土地柄,酒好き,飲み会好きの医局員が多いのも特徴です。

Dr.斎田の皮膚科診断講座

  • 文献概要を表示

症例情報 72歳,女性。10年ほど前に気づいた右頰の小さなシコリが徐々に増大してきたという。初診時,右頰上方部に径4mmの皮内結節が触知された。境界明瞭な弾性硬の皮内結節で(図1:矢印で囲む部分),下床とは可動性であった。硬結部の表面は白色ないし淡紅白色で,中央部がわずかに陥凹する(図1)。上方部など周辺の一部に淡褐色斑を伴うが(図1:#印),同様の小褐色斑は顔面全体に散在性に認められる(図1:*印)。図2は本病変部のダーモスコピー像である。

  • 文献概要を表示

65歳,男性。略全身に膿胞・鱗屑を伴う紅色~紫紅色局面が多発していた。上腕の強く浸潤を触れる紅色局面から皮膚生検した。真皮から皮下脂肪組織に,血管周囲に強く,島状に好中球主体の細胞浸潤を認めた。Sweet病,Behçet病の診断基準を満たさず,診断を好中球性皮膚症にとどめた。ヨウ化カリウムなどの治療では改善に乏しく,プレドニゾロン15mg/日にて軽快した。好中球性皮膚症は,非感染性で真皮への好中球浸潤を特徴とする,Sweet病,Behçet病などを包括する概念だが,各疾患としては非典型的で,好中球性皮膚症としか診断できない例が存在する。重症度に幅のある好中球性皮膚症の治療強度をどのように決定すべきか,今後の検討が必要である。

  • 文献概要を表示

症例1:82歳,男性。症例2:85歳,女性。2例とも意思疎通が困難な居住系高齢者施設入居者で,仙骨部褥瘡の外科的治療を目的に往診医より当科を紹介され,短期入院によるポケット切開とデブリードマンを計画した。症例1は入居後1カ月で,家族の “患者への関心と褥瘡治療への理解” が高く,当科での治療を円滑に施行できた。一方,症例2は入居後6年以上経過しており,家族の “患者への関心と治療への理解” が低く,当科では十分な治療ができなかった。自験2例の経験から,居住系高齢者施設の褥瘡患者を病院で受け入れる場合,家族要因として患者への関心と治療への理解について十分評価したうえで治療を計画することが重要と考えた。

  • 文献概要を表示

11歳,女児。1カ月前と1週間前に腋窩,大腿,腰部に褐色斑が出現した。症状出現前に上気道炎に対しカルボシステインを含む多数の薬剤を内服していた。初診時,腋窩,大腿,腰部に比較的境界明瞭な褐色斑がみられた。固定薬疹を疑いカルボシステインとチオジグリコール酸によるパッチテストおよび内服誘発テストを施行した。パッチテストは陰性で,カルボシステイン朝内服では皮疹は誘発されず,朝昼夕内服にて2日目の夜に褐色斑上に紅斑が出現した。以上より,カルボシステインによる固定薬疹と診断した。本薬による固定薬疹の内服誘発テストでは,症状の出現に夜間の主要代謝産物であるチオジグリコール酸がある程度の量必要であるため,夕も含めて数日間連続した内服を要する。

  • 文献概要を表示

77歳,男性。全身性強皮症による右足趾潰瘍に合併した骨髄炎に対してメトロニダゾール投与を開始した。治療開始94日目から嚥下障害,舌音主体の構音障害,傾眠が出現し,頭部MRIでは小脳歯状核,脳梁膨大部に左右対称なT2強調画像/FLAIR高信号域がみられた。メトロニダゾール中止後5日目には嚥下障害は著明に改善,10日目の頭部MRIで高信号域はほぼ消失し,特徴的な臨床経過と画像所見よりメトロニダゾール脳症と診断した。メトロニダゾールを投与中の患者に小脳失調や構音障害の症状が生じた際は,メトロニダゾール脳症の可能性を念頭に置く必要がある。

  • 文献概要を表示

症例1:27歳,女性。帝王切開直後より発熱,術後2日目に手術創の発赤,潰瘍が出現した。近医産婦人科で抗菌薬を投与されるも無効であった。病理組織学的に高度の好中球浸潤があり壊疽性膿皮症を疑い,プレドニゾロン40mgの内服を開始し,潰瘍は4カ月後に上皮化した。症例2:29歳,女性。帝王切開の翌日より発熱し,近医産婦人科で抗菌薬を投与されたが,手術創は水疱と膿疱を伴って潰瘍化した。病理組織学的に高度の好中球浸潤があり壊疽性膿皮症を疑い,プレドニゾロン30mgの内服を開始し潰瘍は2カ月後に上皮化した。帝王切開後の術後創部に発赤,潰瘍を生じた際には,細菌感染症のほかに,鑑別として壊疽性膿皮症を考慮する必要がある。

  • 文献概要を表示

発端者は67歳,女性。30歳代後半から間擦部位に紅斑が出没するようになり,患者は,皮疹が夏季に増悪することを自覚していた。2カ月前より頸部,腋窩および鼠径部に紅斑と小水疱が出現し,次第に増悪してびらんとなった。病理組織学的には,表皮内に裂隙がみられ,棘融解をきたしていた。ATP2C1遺伝子に既知のナンセンス変異をヘテロ接合体で同定し,Hailey-Hailey病と診断した。皮疹は,ステロイド外用により色素沈着を残して改善した。血縁者に皮疹を自覚する者はいなかったが,診察すると,姉,長女および次男は間擦部位に淡い紅斑を示していた。この3名は,ATP2C1遺伝子に発端者と同一の変異を有しており,遺伝子検査により家族内発症を確認できた。

  • 文献概要を表示

60歳,女性。約4カ月前より前胸部に紅色丘疹が出現し,徐々に拡大した。前胸部中央から左乳房下部にかけて半米粒大の紅褐色丘疹が多発し,一部の丘疹は環状に配列して中央に淡紅色の萎縮を伴っていた。病理学的所見では,真皮に帯状のリンパ球浸潤があり,表皮基底層に液状変性とCivatte小体がみられ,臨床像とあわせて,papule-formed ring型の環状扁平苔癬と診断した。治療としてベタメタゾン吉草酸エステル軟膏外用を行ったところ,皮疹は平坦化した。丘疹の分布が下着の当たる部位に一致していたことにより,発症機序として下着の圧迫や摩擦によるケブネル現象が考えられた。

  • 文献概要を表示

77歳,男性。3カ月前より手指潰瘍が出現,その後皮膚硬化が出現し急速に進行した。採血検査とあわせて抗トポイソメラーゼⅠ抗体陽性全身性強皮症と診断した。初診2カ月後より労作時息切れが出現し,心臓超音波では心囊液の著明な貯留を認め,全身性強皮症による心外膜炎および心タンポナーデと診断した。心囊液の穿刺排液とプレドニゾロン20mg/日の内服を行ったが心囊液の再貯留を認めた。プレドニゾロンを40mg/日に増量し,シクロホスファミドパルス療法を施行したところ,心囊液は減少し臨床症状も改善した。全身性強皮症による心外膜炎に対してステロイド全身投与およびシクロホスファミドパルス療法が有効と考えられた。

  • 文献概要を表示

16歳,女性。3歳時に背部に皮疹が出現,5歳頃に中心部が白色調に変化した。上背部に56.5×53.5mm大の辺縁が褐色調を呈し,中央が陥凹した萎縮局面を,腰部には64.9×26.9mm大の紫色~淡褐色調の萎縮性局面を認めた。病理組織では膠原線維の増生を認め,真皮中層では膨化,均質化した膠原線維に汗腺が取り囲まれていた。他方,Elastica van Gieson(EVG)染色では病変部に弾性線維の減少や断裂,変性は認められなかった。以上の所見よりPasini-Pierini型進行性特発性皮膚萎縮症と診断した。斑状強皮症との鑑別にはEVG染色による検討が不可欠と考えられた。

  • 文献概要を表示

68歳,男性。糖尿病,慢性腎臓病のため9年前から血液透析を受けている。2週間前から,両側の肩甲骨部から上腕,側腹部にかけて4.5~13mm大の,中央に黄色壊死物質が固着する丘疹,結節が多発散在してみられ,激しい瘙痒を伴っていた。一部ではケブネル現象が陽性であった。病理組織所見では病変の中央部でカップ状に陥凹し,好塩基性に染まる壊死物質が堆積し,周囲の表皮は軽度肥厚していた。Elastica van Gieson染色では変性した膠原線維束が経表皮性に排出していた。自験例を後天性穿孔性皮膚症と診断した。治療は前医の内服外用を変更しなかったが,血液透析の条件を変更した結果,瘙痒は軽快し,掻破しないことで比較的早期に皮疹が軽快した可能性が示唆された。

  • 文献概要を表示

81歳,女性。約10年前より右口角にびらんが出現した。病変は疣状の隆起を伴い,右口角をまたぎ右下口唇から右上口唇に及び,頰粘膜方向にも進展していた。病理組織は有棘細胞癌の診断であった。画像上,右頸部には複数のリンパ節腫大がみられた。治療としてテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合内服と放射線治療の併用を選択した。原発巣および頸部リンパ節に総線量64Gy/32回照射したところ腫瘍は消失した。自験例のように口角をまたぎ頰粘膜へ進展を認める口唇癌は外科切除が困難である。自験例では前述の配合剤を用いた化学放射線療法を行い,完全奏効が得られ,極めて有用な治療であると思われた。

  • 文献概要を表示

58歳,男性。右陰囊に生じた15mm大の紅色結節を切除し,病理組織学的にacantholytic squamous cell carcinoma(ASCC)と診断した。また,腫大した右鼠径リンパ節を摘出し,リンパ節転移と診断した。ASCCは腫瘍径が小さくても転移を生じやすいとされている。自験例と当科で経験した転移を生じた有棘細胞癌の症例を比較した結果,E-cadherinの発現低下が転移の生じやすさに関連している可能性が示唆された。

  • 文献概要を表示

28歳,男性。両側鼠径部の20cm大の皮下腫瘤に対し,2004年に切除術を施行した。病理学的には脂肪腫であった。頸部,腰背部にも同症状があり,徐々に拡大傾向にあったため,2012年1月に当科を受診した。初診時,後頸部,両肩,腰背部,鼠径部に左右対称性に弾性軟で境界不明瞭な皮下腫瘤がみられた。頸部MRIでは,後頸部にT1・T2強調画像において高信号を呈し,脂肪抑制にて信号低下を呈す多房性の巨大な皮下腫瘤がみられ,脂肪腫と診断した。後頸部の腫瘤に対し,切除術を施行した。被膜のない,5~10cm大の脂肪組織が複数散在しており,可及的に摘出した。組織学的には脂肪腫であった。本疾患の多数は飲酒歴や合併症を有する症例が多いが,自験例では飲酒歴も合併症も有さなかった。

  • 文献概要を表示

症例1:55歳,女性。後頸部に12×8mm大,淡紅色調の結節がみられた。症例2:31歳,女性。大腿内側に6mm大,茶褐色調の小結節がみられた。ともに病理組織学的に,真皮内で紡錘形細胞が表皮と平行に走行する像を認めた。また,Elastica van Gieson染色にて病変部では弾性線維が増加していた。腫瘍細胞はfactor XIIIaが陰性であった。皮膚筋線維腫は,前述の所見により,皮膚線維腫,隆起性皮膚線維肉腫,瘢痕と鑑別可能である。

  • 文献概要を表示

75歳,男性。慢性骨髄単球性白血病の診断で,1年前から当院血液内科にて定期観察中であった。また,3カ月前より水疱性類天疱瘡の診断でプレドニゾロン内服中であった。2016年10月中旬頃より,左上肢の疼痛,発赤,腫脹,硬結が出現した。白血病の皮膚浸潤や,蜂窩織炎・壊死性筋膜炎,帯状の分布から帯状疱疹などが鑑別となった。皮膚生検にて浸潤する細胞は核小体明瞭,核型不整なblastoid cellが主体であった。免疫組織化学的に浸潤する細胞は芽球様細胞にCD33,KP-1が陽性であった。慢性骨髄単球性白血病が急性転化し皮膚浸潤をきたしたと診断した。化学療法を開始し末血の白血球は減少したが,投与後7日目に肺への浸潤により死亡した。白血病では特異疹の出現はまれであるが,急性転化の前兆ともいわれ,予後は不良とされている。早急な診断・治療のために生検を積極的に行うべきと考えた。

  • 文献概要を表示

87歳,女性。2011年頃,右頰部の角化性紅斑に気づいた。2013年,近医で日光角化症と診断されたが無治療だった。2016年8月,紅斑部に結節が出現し,徐々に増大するため当科を受診した。初診時,右頰部に12×9mm大の周囲に紅斑を伴う弾性硬の暗紅色結節を認めた。病理組織で紅斑部は日光角化症,結節部はMerkel細胞癌の所見だった。結節は生検1カ月後より自然消退傾向を示し,約3カ月後に平坦化した。その後,半年を経過したが再発はない。高齢化に伴い,今後Merkel細胞癌の発生頻度が増加することが予想される。消退後の治療については,個々の症例について日常生活動作(ADL)などを考慮し十分な検討が必要である。

憧鉄雑感

第76回 診療対価 安部 正敏
  • 文献概要を表示

保険診療を行ううえでは保険点数を熟知せねばならぬ。医療は当然患者の症状を診ながら検査と治療を進めていくので,明朗会計はなかなか難しい。患者側からは “会計時まで値段が分からぬのは不安であり,まるで高級寿司屋と同じである” などの新聞投書を見たことがある。言わんとすることはわかるが,医療はルールに則って点数を算定している。以前,テレビ番組で値札のない高級寿司屋に,接待を思わせる中年男性,OL,学生のそれぞれ2人連れを潜入させ,同じネタを食べた際の値段の差異を抜き打ち調査していたが,接待>OL>学生の順であった。しかし,これには寿司屋も言い分があり,時価である以上同じトロであっても,提供する部位で差があるとのことであった。他方,医師側からすると時間がかかる処置より,迅速にできるそれのほうが点数が高いこともあり,一筋縄にはいかないものである。

  • 文献概要を表示

現病歴 職業は解体業。前日の作業中,石材・タイル用洗浄剤リストンマックス[酸性フッ化アンモニウム(フッ化水素アンモニウム)を25%含有]を使用していたところ,装着していたゴム手袋のなかに同剤が入ってしまった。すぐに手袋を外して洗浄したが,次第に疼痛が増強してきたため救急外来を受診した。

  • 文献概要を表示

現病歴 10年以上前からアレルギー性鼻炎,蓄膿症で耳鼻科に通院している。3年前から数回右手背が赤くなったことがある。5年前からカルボシステイン(250mg)1日6錠,フェキソフェナジン塩酸塩などの抗アレルギー薬,数種類の抗菌薬を時々処方されている。最後に右手背に紅斑を生じたのは数カ月前のことである。

  • 文献概要を表示

現病歴 前立腺癌に対し,6カ月前にリュープロレリン酢酸塩1カ月製剤(リュープリン®)を,5カ月前に6カ月製剤(リュープリン® PRO)を,腹部に皮下注射を開始した。10日前より左下腹部に皮下腫瘤が出現し,精査・加療目的に当科を紹介受診した。

  • 文献概要を表示

現病歴 生下時から鼻に有毛性の黒色結節を認めた。初診までに100本以上抜いているがすぐに生えてくるため,両親の切除希望で当科を受診した。

--------------------

目次

英文目次

著作財産権譲渡同意書

投稿規定

Information

次号予告

編集後記

基本情報

00181404.60.08.cover.jpg
皮膚科の臨床
60巻8号 (2018年7月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0018-1404 金原出版

文献閲覧数ランキング(
5月25日~5月31日
)