発行日 2009年8月1日
Published Date 2009/8/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2009299278
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40歳女。妊娠6週から妊娠悪阻による食思不振が出現し、妊娠10週2日から臥床がちとなり、その後呼名に反応しなくなったため救急搬送された。来院時の意識レベルはGCS 5(E3V1M1)で、低Na血症と低血糖を認めた。ブドウ糖液静注にて意識レベルはある程度改善し、重症妊娠悪阻と診断された。補液によりNaは軽度改善したが、その後再度低下傾向を認めたため当科転科となった。転科時の検査成績では白血球増多、好酸球減少、小球性低色素性貧血を認め、血清Naは131mEq/lであった。Dexamethasone投与下の内分泌学的検査では、基礎値では副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、コルチゾール、LH、FSHが低値であり、下垂体4者負荷試験ではACTH、コルチゾール、LH、FSHの低反応、TSHの過剰反応を認め、迅速ACTH負荷試験ではコルチゾールが低反応、アルドステロンは正常反応を示した。頭部MRIでは下垂体前葉は著明萎縮し、トルコ鞍内はempty sellaの所見を示した。副腎不全を強く疑いhydrocortisoneを6時間ごとに静注したところ、意識レベルは著明に改善した。以後はhydrocortisoneを経口投与し、摂食状況や活動性の改善に応じて漸減した。甲状腺ホルモンについてはlevothyroxine投与を開始した。出産直前にはhydrocortisone、levothyroxineを増量し、帝王切開にて分娩後は両薬剤共に漸減した。なお、産後2ヵ月目に月経があり、以後規則的に発来している。
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