臨床雑誌内科 100巻3号 (2007年9月)

冠動脈疾患をめぐる最近の話題

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わが国の脳血管疾患死亡率は1965年をピークに着実に減少しているのに対し、心疾患死亡率は過去40年間ほぼ横這いにとどまっている。また、わが国における冠動脈疾患発症率は、1960年代から2000年にかけて有意な時代的変化はない。2000年4月に開始された前向きコホート研究JCAD Studyにおける冠危険因子の保有率は、高脂血症約55%、耐糖能異常または糖尿病が約40%、高血圧症が約58%、肥満が約33%、喫煙が約39%、冠動脈疾患家族歴が約17%で、こういったハイリスク集団における心血管イベント発症率は、62.8/1,000人・年に達した。ただし、危険因子が重積することによるイベントリスクの上昇率はそれほど高いものではなく、3個以上リスクの重複する群のそれ未満の群に対するハザード比は1.26にとどまった。

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j-CYPHER Registry参加施設のCypherステントの使用頻度は、20%以下の施設から80%を超える施設まで広く分布しており、Cypherステントの適応についてコンセンサスが得られていない現状が示されている。今回のj-CYPHER Registry第5回中間解析結果(2年追跡)では、日本の臨床の現場では欧米に比べステント血栓症の頻度は著しく低く(ARC definite/probable 1年0.62%)、1年以降のステント血栓症の増加傾向も明らかではなかった(ARC definite/probable 2年0.73%)。複雑病変が対象とされることの多い日本の実地臨床でも、再狭窄抑制効果は明らかであった。今後、追跡期間を延長し、追跡率を上げてデータの信頼性を高める必要があるが、現時点での日本の実地臨床では、Cypherステントの安全性への懸念を示唆するシグナルはなく、有効性は明らかである。

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冠動脈疾患の診断と治療に際し、速やかに的確に診断して素早い治療が要求される急性冠症候群と、時間を掛けて的確な治療法を検討する安定狭心症とでは、診断法と治療戦略が大きく異なる。急性冠症候群の診断は、まず12誘導心電図でのST上昇が有用であり、ST上昇を認めない際には、心エコー図による壁運動異常の有無の検査が役立つ。急性冠症候群の治療は、緊急に冠動脈インターベンション(PCI)可能施設へ搬入し、冠動脈閉塞例では、血栓吸引後、冠動脈ステント植込み術を行うのが標準治療である。安定狭心症の診断は、胸痛の症状をていねいに聴取することにはじまる。安定狭心症は、治療のまえに心筋シンチグラムなどを駆使し、虚血領域を明確にして治療に当たるべきである。

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冠動脈疾患発症予防は主にLDLコレステロール(LDL-C)低下治療が第一目標で、そのエビデンスのほとんどがスタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)治療である。スタチンによる冠動脈疾患の一次・二次予防効果は明らかである。その治療効果は、糖尿病を含む高リスク例や冠動脈疾患発症の急性期からの治療においても認められるが、高リスク群では積極的なLDL-C低下治療が必要である。フィブラート系薬剤による冠動脈疾患予防効果のエビデンスも報告されつつあり、中性脂肪が高値でかつLDL-Cが正常もしくは軽度上昇、HDL-Cが低値の例ではその効果が期待される。わが国のエビデンスもいくつか報告され、スタチンによる予防効果が証明された。

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高血圧は他の危険因子との相乗効果により冠動脈硬化を進展させ、冠動脈イベントを発症させる。そのためリスクの層別化に基づいて目標値までの降圧を行い、長期間それを維持していくことが重要となる。長時間作用型Ca拮抗薬は降圧効果に優れ、冠拡張作用、抗酸化作用、抗動脈硬化作用を有する。β遮断薬は主に徐脈化による抗狭心症作用を示し、内因性交感神経刺激作用のない薬剤が有用である。ARB・ACE阻害薬は、心肥大退縮、心室リモデリング抑制、新規糖尿病発症抑制効果に優れ、冠動脈イベントの発生を抑制させる。近年のエビデンスから、冠動脈疾患合併高血圧に対しては、まず確実な降圧を優先し、次いでさらなる心血管保護を考慮することが勧められる。

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糖代謝異常は冠動脈疾患の危険因子である。冠動脈疾患の発症予防として、糖代謝異常の早期発見、厳格な介入が必要である。大規模臨床スタディにおいて、糖尿病治療薬の選択により心血管イベントの発生率に有意差がみられるような報告があり、エビデンスに基づいた検討が必要である。危険因子の重複により冠動脈疾患のリスクが上昇するため、他の危険因子の管理も必要である。

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メタボリックシンドローム(Mets)の縦走的研究のメタ解析では、心血管イベントと死亡の相対リスクは1.78(95% CI 1.58~2.00)だった。脂肪細胞とマクロファージのパラクラインループが、炎症性変化を増大する。Metsとの関連が注目されている炎症・酸化マーカーを紹介し、今後の対策について述べる。Mets特異的バイオマーカーの追求は、心イベント発症予防の創薬につながる可能性がある。

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二次予防において、スタチンによる脂質低下療法は、その低下の程度に相関して心血管事故を低下させ、また、LDL-コレステロール(LDL-C)値100mg/dlまでの低下は心血管事故を確実に減少させる。不安定プラークをもつため予後不良とされる急性冠症候群(ACS)については、スタチンを早期から高用量で投与する積極的脂質低下療法によってLDL-C値を70mg/dlまで低下させ、プラークの退縮・安定化、そして心血管事故の有意な減少が明らかになった。その機序としてLDL-C値低下だけでなく、抗炎症作用も重要な役割を担っている。今後、リスクの層別化、とくに不安定プラークが臨床的に容易に同定できれば、スタチンの適応はさらに広がる可能性がある。

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レニン-アンジオテンシン系(RAS)の亢進は、急性冠症候群(ACS)の動脈硬化病変の形成・進展、プラークの不安定化・破綻、血栓形成、および心筋梗塞後リモデリングのすべての過程において促進的に作用することで、病態の悪化に寄与している。アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を用いた、RAS阻害によるACSの予後改善効果は、これまで多くの動物実験および大規模臨床試験によって実証され、確立されている。RAS阻害薬は、ACSの予防および治療の中心となる薬剤の一つである。

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抗血栓療法は、現在現れている症候を軽減する治療ではない。急性冠症候群、安定労作狭心症のいずれにおいても将来起こりうる心血管死亡、心筋梗塞、脳梗塞などの重篤な心血管イベントを予防することに薬物投与の目的がある。止血機能を阻害し、不可避的に出血イベントを惹起する抗血栓療法の使用においては、対象とする症例群における出血/血栓リスクの案分に基づいた適応決定が不可避である。

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薬剤溶出ステント(drug-eluting stent:DES)は、虚血性心疾患治療の中心となっている冠動脈ステント植込み術の問題点とされてきた再狭窄の問題を劇的に改善し、日本でも2004年より発売されるやいなや、冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)の中心的デバイスとなった。しかし糖尿病や透析患者での成績や分岐部、とくに左主幹部病変に対する対応に関しては、改善の余地がある。さらに最近、頻度はそれほど高くないものの、致命的な合併症である植込み1年以降の遅発性ステント血栓症という問題点が課題として上がってきた。ticlopidineなどの抗血小板療法も長期に必要とされ(ガイドライン上は12ヵ月)、適切な中止時期もいまだ確立されていない。これらの問題を克服するために工夫を凝らした第二世代のDESを用いて臨床試験が行われており、今後のデータに期待したい。

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急性心筋梗塞に対する血栓吸引の成績は、報告によってばらつきがある。吸引器具を使うことにより、再灌流までの時間が長くかかる器具では、心機能を逆に悪化させる。吸引器具を使っても再灌流までの時間が同等であれば、よりよい成績が出せる可能性がある。血栓が著しく多い病変、時間が12時間以上経過し硬くなった血栓など、吸引の有効なサブグループが今後明らかになってくるものと考えられる。

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医療機器の進歩により、冠インターベンション(PCI)は通常行われる手技において格段に容易となってきた。しかしながら慢性完全閉塞(CTO)については、現在でもPCIの大きな壁となっている。近年、薬剤溶出性ステントの登場によりひとたびPCIが成功すると、長期にわたる良好な改善が期待できるようになった。CTOへのPCIにおいては、伏在静脈グラフトを経由したretrograde approachにて通常狭窄病変の治療報告にはじまり、その後この逆行性アクセスへの改良がなされCART法と呼ばれる方法が確立した。また近年、64列の検出器を有する多列CT(MDCT)を用いることでさらに治療の成功率が高くなっている。

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近年、使用器具の改善と薬物療法が進歩したことにより、左主幹部病変に対する冠インターベンション(PCI)は新たに注目を集めている。冠動脈バイパス手術(CABG)は薬物療法と比較し有意に死亡率を低下させ、標準的治療法である。薬物溶出性ステント(DES)留置術の成績は期待できるが、多くの未解決の問題がある。とくに血管径のある回旋枝に病変を認める場合は予後がわるく、最善の治療法は未定である。現在CABGとPCIとの比較試験が行われており、今後の治療指針に大きな影響を与えるだろう。PCIの適応や手技等は、現在めまぐるしく変化している。治療方針は、個々の症例において各治療法を十分に検討したうえで決定されるべきである。

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冠動脈バイパス術(CABG)は2002年をピークに、2005年には17%減少した。これは本邦での経皮的冠動脈インターベンション(PCI)に、薬物溶出ステント(DES)が導入されたことによる。DESは再狭窄率を下げはしたが、遠隔予後としては従来のステントに比べて、死亡率が年間0.5~1.0%高まるとの報告があり、CABGは冠動脈血行再建の重要な手術手技であることに変わりはない。ここ10年間に、人工心肺を使用しないCABGが急速に普及し、60%以上の症例に行われるようになり、動脈グラフトが75%のグラフトに使用されるようになった。これからのCABGは、より低侵襲化の方向に向かうものと考えられる。

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破綻しやすいプラーク(不安定プラーク)の形態学的、細胞生物学的特徴として、(1)大きな脂質コア(lipid core)、(2)線維性被膜の菲薄化、(3)高度な炎症性機転、(4)平滑筋細胞のアポトーシスの増加、(5)細胞外マトリックスの代謝異常、(6)酸化ストレスの亢進、などがあげられる。致死的冠動脈血栓症の約60%は、不安定プラークの破裂に起因しており、粥腫の内的要因に加え、血管壁へかかるズリ応力や張力など血行力学的な外力がトリガーとなり、プラークの破綻が生じると考えられている。急性冠症候群をきたす症例では、プラーク破綻は冠動脈責任病変の局所だけに発生するのではなく、全身的にも不安定なプラークを多数認める。そのため、急性冠症候群のリスク評価は、血管局所にとどまらず、"vulnerable patient"として、個人全体をトータルに評価すべきである。

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冠動脈ステント留置術は、安定した大きな内腔拡大効果が獲得可能で、冠動脈インターベンション(PCI)の中心的手技となっている。しかしながら血管壁に与える多大な機械的ストレスとその起炎性により、高度の新生内膜の増生反応をもたらし、難治性ステント再狭窄に陥る症例も存在する。薬剤溶出性ステント(DES)は、新性内膜の増生を強力に抑制することにより、現在もっとも優れた再狭窄防止効果を示している。しかしながら留置部における内皮細胞の再生反応も抑制(遅延)するため、(遅発性)ステント血栓症の危険性などに関して、注意深い検討が必要である。

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血小板血栓の形成には、低ずり応力下でのアゴニスト凝集に加えて、血管狭窄部で生じた高ずり応力下でのvon Willebrand因子(vWF)依存性の血小板凝集が重要である。生体内で、内皮細胞が傷害されると速やかに血小板は活性化され、血管内皮下組織に粘着し、受容体からのシグナルが血小板の細胞内に伝達される。血小板の活性化誘発に従い、形態変化、凝集・放出反応を引き起こし血小板血栓を形成する。血小板の活性化が進むと、プロトロンビナーゼ活性が出現し、血小板に凝固の初期反応が起こる。血小板はルーズな凝集塊を形成したのち、接触依存型シグナル伝達を通じて血小板血栓が成長し、密なる止血血栓が完成する。炎症は、内皮細胞機能を介して血栓形成を促進するが、活性化血小板は炎症の調節因子となる複数の物質を産生し、これらも血栓形成に寄与している。

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画像診断技術の進歩に伴い、血管石灰化の臨床的重要性が明らかになりつつある。血管石灰化は、これまで細胞の変性に伴って生じる受動的な現象と考えられてきたが、現在では、能動的なプロセスにて形成される病態であると考えられるようになった。血管石灰化の病理には内膜石灰化、中膜石灰化、外膜石灰化、弁膜石灰化があり、それぞれに異なるメカニズムが存在する。血管石灰化の治療に、骨粗鬆症の治療薬であるビスホスホネートの使用が試みられている。

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急性冠症候群の主因がプラークの破綻であるという認識が広まるにつれ、破綻しやすいプラーク(vulnerable plaque)を破綻する前に同定できる技術の登場が望まれつつある。その中で、生体での冠動脈プラークが直接観察可能である技術の一つである血管内超音波法(IVUS)により、不安定プラークが同定できるのではないかと期待が高まっている。IVUSによる不安定プラークの同定法には、大きく分けて二つの方法がある。一つはVHやIB-IVUSなどプラークの組織性状を分類表示する方法と、もう一つはelastographyなどプラークの脆弱な箇所を描出する構造力学的な表示法である。

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multi detector CT(MDCT)は、冠動脈有意狭窄病変の検出率において、従来の選択的冠動脈造影と比較して非常に高い感度、特異度をもつようになってきた。本稿では、冠動脈狭窄病変の検出から冠動脈壁プラーク診断へ、MDCTの冠動脈プラーク診断の現状と限界、そして、最新の情報を、今後の不安定プラークvulnerable plaque(patients)検出の可能性を踏まえ、プラークの性状評価、定量評価、形態評価の観点から考えてみる。

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造血性サイトカインであるG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)は、急性心筋梗塞後の左室リモデリング抑制作用を有することが、動物モデル、およびヒト臨床試験で明らかになってきた。保護作用の機序の主なものは、骨髄細胞動員などではなく、心筋細胞に発現しているG-CSF受容体を介したアポトーシス抑制や、血管新生作用である。G-CSFが動脈硬化進展抑制作用を有する可能性も、明らかになってきている。急性心筋梗塞のみならず、慢性虚血性心疾患や、心不全の新たな治療薬となりうるものとして期待されている。

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心筋梗塞への再生医療として、末梢血単核球あるいは骨髄単核球を利用した血管新生治療が臨床応用されている。急性心筋梗塞(AMI)のPCI治療後に骨髄単核球を冠動脈から注入する血管新生治療が、欧米で2001年ごろからスタートした。初期のオープンラベル臨床試験では半年後の心機能が10%前後と改善し世界中の注目を浴びたが、最近の二重盲検試験では有意な改善がみられないとの報告もあり、適応症例の選択が必要になった。造血性サイトカイン(G-CSF)をAMI後に投与して、心機能を改善させる臨床試験も実施されている。一方、陳旧性心筋梗塞(OMI)への骨髄単核球の直接心筋移植は、有効例が多く報告され、開胸・カテーテルを利用した再生医療が期待されている。ヒト心筋からの多能性幹細胞も分離され、低心機能の重症心筋梗塞への移植もまもなくである。心筋梗塞への再生医療の、最新の臨床試験の成績を中心に述べ、将来展望についてもふれてみたい。

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34歳女。患者は低K血症を主訴とした。1999年から尿蛋白を指摘されていた。検査所見では血圧正常、低K血症、尿中K上昇、代謝性アルカローシス、高レニン症、高アルドステロン血症を呈し、Gitelman症候群が疑われた。生下時・発育に問題はなく、低Mg血症、尿中Ca排泄の減少を認めた。サイアザイド負荷試験では、尿中Na、Cl排泄率は変化せず、尿中K排泄のみが上昇し、Gitelman症候群に一致する所見であった。持続尿蛋白陽性が、本症候群に起因するのかを鑑別するため、腎生検を施行した。その結果、同症候群に合致する所見と、巣状糸球体硬化症(FGS)を疑わせる所見を認めた。低K血症に対しK製剤投与を開始したが血清Kコントロール不良で、spironolactoneを併用したところ、良好なコントロールが得られた。更にdilazep投与も行ない、尿蛋白は減少、血清Crの上昇もなく経過良好である。尚、Gitelman症候群に腎糸球体疾患を合併した既報は、国内外を通じて1例のみであった。

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61歳女。患者は歩行困難を主訴とした。高血圧症の既往があり、2006年からは転倒による右下肢痛のため甘草2g(グリチルリチン80mg)を内服していた。今回、低K血症を認め、精査によりグリチルリチンによるコルチゾールからコルチゾンへの変換障害が疑われた。所見では血漿レニン活性、アルドステロン濃度は抑制される一方、血中ならびに尿中ミオグロビンは測定限界以上を示し、筋原性酵素であるアルドラーゼの上昇を認めた。心電図ではT波の平低化を認め、甘草による偽性アルドステロン症、低K血症による横紋筋融解症と診断された。対処としてK製剤を経口・経静脈的に投与し、腎不全予防のため補液による強制利尿を行なった。その結果、血清Kの正常化とともに徐々に運動機能は回復し、麻痺を残さず患者は退院なった。

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53歳女。患者は全身倦怠感を主訴とした。検査所見によりフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病と診断された。第4病日、第29病日に発熱があったが、抗菌薬投与等で解熱した。第9病日から寛解導入療法を、第14病日からimatinib内服を開始した。第35病日に発熱が出現し、薬剤投与でいったんは解熱したが、再度発熱した。その直後、喀血が出現した。胸部X線では右中肺野にわずかに透過性の減弱を認めたが、特異的な腫瘤影は認めなかった。喀血の性状も泡沫血性状で、肺出血と考えた。前日の血液検査所見と比較して、ヘモグロビン、血小板の減少、CRP上昇を認め、緊急に血小板輸血、赤血球輸血を施行したが、急激に低酸素血症が進行し、肺からの出血が次第に増悪して、初回喀血から4時間後に死亡した。尚、血液培養では緑膿菌が検出され、肺出血については寛解導入療法後の好中球減少時に、敗血症に伴う播種性血管内凝固症候群やdiffuse pulmonary damageによって血小板減少状態を背景に大量出血を来したと推察された。

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62歳男。患者は20歳過ぎから末端肥大が出現し、再発性成長ホルモン(GH)産生性脳下垂体腺腫の経蝶骨洞摘出術を受けたが、以後は放置していた。その後、労作時息切れが徐々に悪化し、突然呼吸困難を来して心不全と診断され、諸検査の結果、下垂体腺腫の再発による末端肥大症に伴う心筋症と診断された。治療として、まず心不全に対してはcarvediol、enalapril、furosemide等を投与し、心機能の改善が得られた。更にcarvediolのみを継続したところ左室拡張末期径はより改善し、増悪もみられず保たれている。一方、下垂体腺腫に対しては、心不全のため再摘出術ではなく、放射線治療後にoctreotideを100mgないし200mgを1日2回に分けて皮下注し、目下はoctreotide徐放剤20mgを月1回筋注に変更、GHの抑制を得ている。尚、腺腫もMRI検査においては増大を認めていない。

基本情報

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臨床雑誌内科
100巻3号 (2007年9月)
電子版ISSN:2432-9452 印刷版ISSN:0022-1961 南江堂

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