冠動脈疾患をめぐる最近の話題
冠動脈プラークとプラークラプチャーの基礎 急性冠症候群と不安定プラークの発生病理
乙井 一典
1
,
鷲見 宜彦
,
安積 啓
,
寺島 充康
,
井上 信孝
1国立循環器病センター研究所 脈管生理部
キーワード:
冠状動脈血栓症
,
病的血管新生
,
細胞外基質
,
動脈硬化症-アテローム性
,
血管平滑筋
,
アポトーシス
,
酸化ストレス
,
リスク評価
,
ずり応力
,
平滑筋細胞
,
急性冠動脈症候群
Keyword:
Coronary Thrombosis
,
Extracellular Matrix
,
Neovascularization, Pathologic
,
Muscle, Smooth, Vascular
,
Apoptosis
,
Risk Assessment
,
Oxidative Stress
,
Myocytes, Smooth Muscle
,
Atherosclerosis
,
Acute Coronary Syndrome
pp.483-489
発行日 2007年9月1日
Published Date 2007/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2007325579
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
破綻しやすいプラーク(不安定プラーク)の形態学的、細胞生物学的特徴として、(1)大きな脂質コア(lipid core)、(2)線維性被膜の菲薄化、(3)高度な炎症性機転、(4)平滑筋細胞のアポトーシスの増加、(5)細胞外マトリックスの代謝異常、(6)酸化ストレスの亢進、などがあげられる。致死的冠動脈血栓症の約60%は、不安定プラークの破裂に起因しており、粥腫の内的要因に加え、血管壁へかかるズリ応力や張力など血行力学的な外力がトリガーとなり、プラークの破綻が生じると考えられている。急性冠症候群をきたす症例では、プラーク破綻は冠動脈責任病変の局所だけに発生するのではなく、全身的にも不安定なプラークを多数認める。そのため、急性冠症候群のリスク評価は、血管局所にとどまらず、"vulnerable patient"として、個人全体をトータルに評価すべきである。
©Nankodo Co., Ltd., 2007