総合診療 29巻12号 (2019年12月)

特集 困っている“あなた”に届く 認知症診療

片岡 仁美 , 寺田 整司
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医師にとって認知症診療は、実は治療している実感が持ちにくく、また診る時のコツや、患者への言葉かけもよくわからず、無力感や苦手意識を感じてしまいがちなテーマではないでしょうか。すなわち、「患者さんに届いているのか?」がわかりにくいと言い換えてもよいでしょう。総合診療医は外来で定期的に診察するなど認知症患者に出会い、診療する機会が少なくありません。本特集では、診療を時間軸で見る「step by step」、典型的な、または稀であっても是非知っておきたい事例で見る「case by case」を通して、具体的にどんな診療や対応を行えばよいのかについて詳しく解説し、どうすれば「患者さんに届く」診療ができるのか、考えてみたいと思います。

今月の「めざせ! 総合診療専門医!」問題
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本問題集は、今月の特集のご執筆者に、執筆テーマに関連して「総合診療専門医なら知っておいてほしい!」「自分ならこんな試験問題をつくりたい!」という内容を自由に作成していただいたものです。力試し問題に、チャレンジしてみてください。

【総論】

一目でわかる認知症マップ 寺田 整司
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1 まず、押さえておくべきこと

病歴聴取

▶典型的なAlzheimer病を想定しながら聞く

 ・高齢で、非常に緩徐な進行

 ・記憶障害のみ目立ち、身体は元気いっぱい

▶想定と合わない点に注意し、確認する

 ・卒中歴・麻痺、Lewy小体病関連症候、異常行動 等

▶現在の症状は?(認知、身体/ADL、BPSDという3面評価)

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何を「治そうとする」のか?

 認知症を診る時、私たちは何を「治そうとする」ことが必要なのだろうか? 言い換えれば、治療目標は何か?

 認知症を悪くしない。少しでも良くするように努力する。また、怒りっぽいとか暴言などの行動・心理症状(BPSD : behavioral and psychological symptoms of dementia)を、なんとか抑え込もうとすることであろうか。これは従来の「医学モデル」に則った態度である。通常の内科・外科疾患ならば、これでよい。あるいは精神科的問題でも、うつや不安や不眠ならこれでよい。

【認知症診療step by step】

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Case

急速に認知症状態を呈した1例

患者:80歳、女性。

既往歴:高血圧症、洞不全症候群に対し、ペースメーカー植え込み術後。

現病歴:夫と2人暮らしで、これまで年齢なりの物忘れはあったが、認知症は疑われていなかった。夫が入院し独居となった5日後、居住するマンションで自室がわからず、他住民に連れ帰ってもらった。夜中に物を出したりしまったりと落ち着かず、嫁の悪口や「死にたい」と言ったりし、食事をあまりとれないため、かかりつけ医院で点滴を受けた。認知機能が低下した状態が続くため、認知症の疑いでドネペジルの投与が開始され、少し良くなったような印象があった。調子を崩してから3週後に当院物忘れ外来を初診し、頭部CTを施行したところ、右中大脳動脈〜後大脳動脈支配領域に広範な亜急性の脳梗塞を認めた。

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Case

患者:82歳、男性。

生活歴:音楽教師を定年まで務めた。退職後は、地域で音楽サークルや子どもたちの音楽活動の指導を、当科初診直前まで精力的に行っていた。

現病歴:当科初診の約1年前から、物忘れと易怒性の亢進を認めた。当科初診時のMMSE(Mini-Mental State Examination)は20点(時間見当識:-4点、場所見当識:-2点、遅延再生:-3点、図形:-1点)だった。認知症の精査および易怒性を中心としたBPSD(behavioral and psychological symptoms of dementia)のコントロール目的で当科入院となった。

 当科病棟は小児から高齢者までの混成病棟であり、参加可能な全患者を対象に、音楽などのレクリエーションが行われていた。患者は、レクリエーションの時間や自由時間に、小児患者に対して持ち前の優しさのある関わりをしていた。傷つき体験を持つ小児たちは、患者からの「君はいい子だ」「こんなに上手にできてすばらしい」などの声掛けや、分け隔てなく穏やかに接してもらえることに、強い安心と信頼を寄せるようになった。これらの関わりの中で、患者の易怒性は認めなくなり、病棟で安定して過ごしていた。精査が終わり、精神状態も安定したため退院となった。退院当日は、小児患者たちが泣きながら患者を見送り、患者は子どもたちへの愛情を備えた笑顔で、一人ひとりと握手しながら、「君たちはいい子だから、頑張るんだぞ」と伝えていた。

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Case

患者:初診時69歳、女性。主婦。

既往歴:高血圧、2型糖尿病。

生活歴:喫煙なし、飲酒なし。

現病歴:1年前より、夫からもの忘れを指摘されるようになったが、日常生活には支障はなく、買い物、炊事や洗濯なども以前と変わりなく行っていた。最近になり、直前のことすら覚えておらず、確認することが増えてきたため受診となった。MMSE(Mini-Mental State Examination)28点で、遅延再生で2点の減点があった。軽度認知障害と診断し、生活習慣病の治療継続とともに生活習慣の見直しを図る方針とし、3カ月ごとの定期受診をしていた。1年後には、家事仕事に支障はないもののMMSEが24点と低下していた。抗認知症薬の導入を議論したが、もうしばらく経過観察する方針となった。しかし、その3カ月後には友人に誘われてもカラオケを断るようになり、自宅へ閉じこもりがちになるなど、生活の様子が変化してきた。薬物治療への同意が得られ、ドネペジル内服治療が始まった。治療1カ月後には、失われていた活気が戻り、カラオケも楽しめるようになった。治療3カ月後のMMSEは25点と横ばいで、副作用もなく治療継続とした。治療10カ月後のMMSEは27点となり、家族からは「多少のもの忘れがあるが、以前のように活気があり、生活を楽しめている」との報告があった。しかし、治療開始18カ月後には、再び外出する機会が減り、室内の炬燵にあたってテレビを見ながら寝てしまうことが徐々に増えてきた。夫と2人で楽しんでいた買い物をしなくなり、料理も品数が極端に減った。MMSEは18点で、認知機能低下とともにADLに変化があったため、メマンチンを追加した。併用治療3カ月後には生気が徐々に戻って、夫とともに近所の書店や買い物に出掛けるようになり、料理の品も少しずつ増えていった。MMSEは21点と増悪傾向はなかった。

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Case

医療介護の介入を拒否する高齢独居女性

患者:83歳、女性。

生活歴:1歳年上の夫との2人暮らし。子どもは独身の長男がいるが遠方。経済的には問題なし。

現病歴:X年頃からもの忘れがあり、少しずつ家事をしなくなった。また社交的ではあるが、外へ出ることを極端にいやがるようになった。このような状態が4年ほど続いたが、何とか夫と暮らしていた。X+5年に夫が脳梗塞で入院、ベッド上生活となった。本人は夫の入院を十分理解できない状態で、近所の人たちが夫の見舞いに連れて行ってくれていた。長男も1人では置いておけない状態とはわかっていたが、本人に病識が全くなく、受診も含め介護も拒否するため、手を出せない状況であった。

【認知症診療case by case】

Alzheimer病 福井 俊哉
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Case

進行性のもの忘れを主徴とした1例

患者:初診時68歳、男性、右利き。

既往歴:高血圧、心房細動、糖尿病、高尿酸血症。

現病歴:初診2年前(66歳時)に、人の名前が出てきにくいことに気がつき、その傾向はその後緩徐に悪化した。初診1年前から所持品を片付けた場所を忘れ、また、大事な約束・予定や、孫の誕生日などを思い出せないこと、また車の操作ミスが増えた。初診2カ月前には、通い慣れていたスーパーマーケットへの行き方がわからなくなった。

初診時所見:礼節は保たれ、診察には協力的であるが、本人には病感があるうえに、妻が過干渉・叱責的であるため、ややイライラしている。Montreal Cognitive Assessmentは20/30点(遅延再生0/5)、記憶障害・視空間認知障害を認める。手首固化徴候を含めて身体症状はなく、血液検査上も異常を認めない。脳CT上軽度の海馬萎縮を認め、脳外科的疾患も否定的なため、Alzheimer型認知症と診断。ドネペジルで治療開始後、改訂版長谷川式簡易知能評価スケール上29/30点得点可能となり、糖尿病に対する運動・食事療法も自己管理できている。

 一方、患者本人の能力を過小評価しがちである妻との夫婦げんかが絶えない。本人の能力を尊重するように妻へ指導を行った。

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 6年前、私が39歳の時に大学病院で何週間も検査入院をして、「若年性Alzheimer型認知症」と診断されました。その後、病院では「進行を遅らせるために」と薬を出してくれましたが、その他の情報はありませんでした。この先どのように生活していったらよいのかわからなかったので、国からの支援がないかと思い区役所へ行ってみましたが、「40歳以下の場合、介護保険が使えないので何もありません」と言われ役所から帰ってきました。

 その後も地域包括支援センターなどで話を聞いても、言われるのは介護保険の話だけ。冊子を渡され、「このような支援が受けられます」と説明されても、私の場合まだまだ仕事もできるし、「私に必要な情報は全然ないのだ」と感じ、気持ちが落ち込んでしまいました。私が診断された後、私は「診断前の今までの生活を、どのようにしたら維持できるか」を知りたかっただけなのです。でも与えられる情報は重度になってからのものばかりで、介護保険を勧められることで逆に不安が増してくる。当時介護保険がどのようなものかわからなかったので、“介護”という言葉を聞いただけで、「介護が常に必要な人になってしまう」「すぐに寝たきりになってしまうのでは」と考えてしまったからです。

Lewy小体型認知症 高橋 晶
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Case

総合診療科にコンサルトされたLewy小体型認知症(DLB)の1例(DLBの初期症状+肺炎例)

患者:70代、男性。

家族歴:特になし。

既往歴:うつ病の既往。

現病歴:1年前からうつ症状があり、近医精神科を受診した。そこでうつ病と診断され、抗うつ薬を処方されたが、反応が良くなく、抗うつ薬が増えていった。希死念慮も出現し、2週間前から精神科病院に入院となった。抗うつ薬の種類が増え、また増量された。適量が処方されていたが、それにもかかわらず嚥下障害が強くなり、誤嚥性肺炎を繰り返して悪化し、精神科での対処が難しくなったため、一般病院の総合診療科に転院となった。胸部X線検査などからも重症肺炎を呈し、一時は生命の危機がある状態になったが、抗菌薬静注で徐々に回復した。

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◦「うつ病」治療で失われた6年間

 私は41歳の時、不眠で精神科を受診。「うつ病」と診断された(その数年前に人の幻視が度々あったが、目の錯覚と認識)。「症状が違う」と伝えたが、「仮面うつ病」と説明された。服薬と同時に朦朧とし、認知症検査を希望したが否定された。薬の種類と量が増え、劇的に悪化。手足の震え、失神なども出て、仕事を退職。薬を変え減量すると、いくつかの症状は改善したが、薬物治療は6年弱続き、記憶障害などの副作用に苦しんだ。途中、音楽幻聴を伝えたが、取り合われなかった。「薬を止めたい」と毎年交代する主治医に伝え、同じ総合病院の7人目の主治医が初めて同意。薬を中止すると、回復した。

血管性認知症 佐藤 正之 , 冨本 秀和
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Case

混合型認知症の1例1)

患者:78歳、男性。

既往歴:高血圧。

現病歴:X年秋、歩行時の左側へのふらつきと、もの忘れが見られるようになり近医を受診。X+2年には小股歩行、動作緩慢となり、当科を受診。MMSE(Mini-Mental State Examination)21点、歩行障害と筋強剛、記銘力障害がみられた。3T-MRIで多発ラクナ梗塞と白質病変、さらに微小出血や皮質微小梗塞を認めた(図1)1)。脳血流シンチでは、いわゆるAlzheimer病(AD : Alzheimer's disease)疾患特異領域である両側帯状回後部と、頭頂葉の血流が低下していた。さらにPiB-PETを行ったところ、皮質へのアミロイドの沈着が確認された。以上より、皮質下血管性認知症とADの合併すなわち混合型認知症と診断した。

軽度認知障害(MCI) 岩田 淳
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Case

患者:82歳、女性。

主訴:物忘れ。「認知症になったら困るから、治療して欲しい」。

現病歴:2年ほど前から家族に「さっき聞いたことをまた聞く」、「物を置いた場所がどこだったかということを忘れてしまう」ことに気づかれた。それらの頻度は1年程前から増加、心配した家族に連れられて来院。本人にも病識はあり、「もう認知症になってしまった」などと言う。

既往歴:ここ20年程の高血圧治療歴。

家族歴:父親が80代で亡くなる前には「ボケ」ていた。

診察所見:一般内科所見に異常なし。改訂長谷川式簡易知能評価スケールは22(場所の見当識 -1、3語再生 -6、5物品 -1)、MMSE(Mini-Mental State Examination)25(場所の見当識 -2、三語再生 -3)。一般神経学的所見には異常なし。geriatric depression scale は1点と、うつは認めず。

家族からの情報聴取では、買い物、掃除、炊事といった主婦としての機能は以前と比べて変わらず維持されており、夫の経営している会社の経理として、給与計算も問題なくできているとのこと。また、町内会の活動や選挙の投票もできており、近所の医院から処方されている降圧薬の内服もたまに忘れることがあるが、その頻度は20年前からあまり変わっていないとのことであった。

【コラム 認知症診療トピックス】

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◦ケア移行(TOC:transition of care)とは

 進行性の慢性疾患である認知症を有する患者は、急性期、亜急性期(回復期)、慢性期など、病期に合った医療を受けることが一般的です。そのため患者は、急性期病院(外来、病棟)、回復期リハビリテーション病棟、自宅(在宅医療)、居住系施設など、さまざまな療養環境を移動します。このように「継続的な加療を要する患者が、医療サービスを受ける医療機関や療養の場を移行し、ケア提供者が変わること」を、“ケア移行(transition of care)”と呼ぶことが一般的です1〜3)。また、その際に受ける「避けられる再入院やネガティブな治療結果を予防することを目的としたケア」を、“移行期のケア(transitional care)”といいます4)

 認知症への対応策は、世界的にもcommonで、医療面でも経済面でも大きな社会問題です。認知症を有することで、死亡率、在院日数、再入院率や医療コストの増加といったさまざまな影響があることがよく知られています5)。そのため、認知症を有する患者の診療上の目標として、入院中に身体機能(ADL)を落とさない、精神機能を落とさない(せん妄・BPSD予防)、確実に地域につなげる(十分な再入院予防策を施行する)ことが重要であるとされています6)

❷ユマニチュードの実践 本田 美和子
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 臨床医として多くの患者さんにお会いする中で、認知症の方にお目にかかる機会も増えています。ご自分のことがよくわからなくなっていたり、検査や治療の意味が理解できなかったり、逆に私たちが理解できない言動をとってしまう患者さんに遭遇した時、私たちは途方に暮れてしまいます。私たちが届けたい医療やケアがどんどん発達していく一方で、それがご本人に拒絶されてしまうことも増え、現在の医療者には、私たちが届けたい医療を受け取ってもらうための技術を身につけることが必要になってきていることを痛感していました。

 そんな時に、偶然、フランスにユマニチュードというケアの技法があることを知り、見学に行きました。そこでは、「あなたのことを大切に思っている」ということを、「相手が理解できるように伝える」ための技術が40年以上かけて作り上げられていて、この技法によって、たとえその相手が進行した認知症であっても、心身ともに脆弱な状況にあっても、患者と医療者との間に良い関係を確立させ、その結果、届けたい医療を受け取ってもらえることができることを知りました。

❸認知症の心理アセスメント 扇澤 史子
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 「スーパーで買った卵を冷蔵庫に入れようと扉を開けたら、すでに3パックも入っていた…」

 「友人から待ち合わせの催促電話がかかってきたけれど、その約束を全く思い出せなかった…」

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◦認知症への固定概念を取り払う

 認知症の難しさは、全体像が見えにくいことだ。

 認知症のある本人がどのような困難を抱え、何に戸惑い、どのようなサポ-トを必要としているのか、周囲からはよく見えない。そのため、認知症のある人の発した言葉、とった行動の理由が、十分理解されないことは多い。それを理解するには、周囲の人々が、認知症の“見えにくい部分”を意識的に見ようとすることが必要だ。

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 認知障害やParkinson病の背景となる疾患は多様で、臨床診断が病理と異なる割合は、Parkinson病で25%1)、認知症では15〜70%に及ぶとの報告がある2)。髄液や画像所見を用いて診断精度を向上させようとする研究は盛んで、病態の一端を反映していることは確かだが3)、最終病理診断を参照して、これらの臨床検査の精度を評価した研究はほとんどない。臨床診断との相関を見ているこれらの検査は、たとえ理論的背景があっても、臨床診断の精度を超えることはないことを念頭に置く必要があり、診断の確定には病理解剖が不可欠である現状に変わりはない。

 各疾患についての臨床像は本特集の別稿に譲り、本稿では、臨床診断と病理診断がどのように乖離するかについて解説する。

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 巷には認知症予防法に関する情報があふれている。私自身も一般の方から、「認知症にならないためにはどうすればよいですか?」といった質問を受けるのはしばしばである。それは、超高齢社会を迎えた日本にとって認知症がごく身近なものとなった一方、「認知症になると記憶が失われ、自分が自分でなくなっていく」といった理解不足が生む恐怖心の現れともいえる。私は、認知症とともに、笑顔で明るく暮らしてきている方を日常診療のなかで数多く拝見している。私たち医療者がすべきことは、正しい知識を伝え、過剰な不安を払拭するとともに、認知症をより自分事としてとらえ、それに対する備えを促すことではないだろうか。

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 早期発見には2つの意味がある。1つは、治療可能な認知症疾患を見つけること、これは回復が望める。もう1つは、進行性神経変性疾患を見つけること、これは発症を遅らせる可能性がある。本稿では、認知症疾患の6割以上を占めるAlzheimer病(AD)に対して、今何ができて期待できるのか、概説したい。

 まず、ADの原因はまだ不明であり、一方でアミロイドβ蛋白(Aβ)が神経細胞変性にとって防御反応の可能性も否定できないが、少なくとも病的過程初期にAβの代謝異常があることは確かである。そして、アミロイドPETにより、その脳内Aβの集積を検出できるようになったことも重要なポイントとなる。

Editorial

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 認知症診療を考える時、忘れられないエピソードがいくつかあります。

 1つは医学科1年生の時に観た映画「レナードの朝」。コンタクトが取れない状況になっていた患者が薬によって劇的に改善、治ったかのようになりますが、薬の効果は一時的でまた元の状態に戻ってしまいます。「レナードの朝」は患者と医師の心の交流を描いた作品ですが、私は、「こちらからは意思疎通ができないように見えても、実は相手は完全にわからないのではなく、意思疎通の可能性は0ではない、そう信じたい」と思い、非常に心を動かされたのでした。

ゲストライブ〜Improvisation〜・10

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 患者さんとの意思疎通が難しかったり、治療効果が評価しにくいという特徴から、認知症診療に苦手意識や無力感を持つ医師は多いのではないでしょうか? 本特集企画者・片岡仁美先生は、HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)考案者の長谷川和夫先生が患者さんにHDS-Rを実践されている動画を見た時、それはとても優しく、あたたかかったのが印象的だったとおっしゃいます。そのなかで何度も強調されていた「評価することの侵襲を考慮して、患者さんを傷つけないように」というお言葉に、深く感銘を受けたとのこと。この動画を見るまでは、“評価は客観的でなければ”、という気持ちで淡々と検査をしてきたことに恥ずかしくなったそうです。

 どうすれば長谷川和夫先生のような「患者さんの視点」になることができるのでしょうか? 

 本ゲストライブでは、その答えを探るべく、長谷川和夫先生のご子息であり認知症診療をご専門にされている長谷川洋先生をお招きして、認知症診療の専門医から非専門医に伝えたい具体的メッセージをお聞きしました。(編集部)

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患者:81歳、男性

主訴:首下がり

現病歴:来院6カ月前から尿の出が悪いことを自覚していた。来院1週間前から排尿困難感が増悪していたが、腹部膨満感は自覚していなかった。来院2日前にかかりつけ医を受診し、導尿を受けたところ400mLの残尿を認めたため、タムスロシンの内服を開始した。しかしながら、症状の改善には乏しかった。来院当日に昼寝から起き上がろうとすると、首が上がらず、呂律困難感、呼吸困難も自覚したため、救急要請し当院搬送となった。

ROS陽性:頻尿、残尿感(6カ月前より)、呼吸困難感(来院当日より)

ROS陰性:嚥下困難、複視、四肢の痺れ、症状の日内変動

既往歴:小学生時に肺結核(詳細不明)、11年前に狭心症(経皮的冠動脈形成術後)、10年前より上室性頻拍症、その他高血圧

薬剤歴:

●アスピリン100mg 1錠1日1回

●ランソプラゾール15mg 1錠1日1回

●テルミサルタン40mg 1錠1日1回

●シベンゾリン100mg 1錠1日2回(6カ月前より)

●タムスロシン0.2mg 1錠1日1回(2日前より)

生活歴:次女と2人暮らし。ADLは症状発症前まで完全自立。

職業歴:自営業で塗装業を営んでいた。現在は退職し無職。

喫煙歴:20本/日×50年(11年前に禁煙)

飲酒歴:ビール350mL/日程度

みるトレ Special・36【最終回】

恋人との滝のぼりは危険!! 忽那 賢志
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患者:20代、女性

現病歴:5日間続く発熱と下肢の筋肉痛を主訴に当院を受診した。発熱は二峰性であり、入院3日前には24時間解熱していたが、その後は38℃を超える発熱が続いている。

既往歴:特記事項なし

アレルギー歴:なし

海外渡航歴:受診の12日前まで5日間、パートナーとパラオに行っていた。ハイキングツアーに参加し、洪水から2日後の滝で泳いだ。

身体所見:体温38℃、脈拍数82回/分。眼球結膜充血あり(図1)。下肢の筋把握痛とpitting edemaを認めた。

検査所見:血液;WBC 21,400/μL、Plt 16.5×104/μL、T-bil 0.7mg/dL、AST 166IU/L、ALT 80IU/L、CK 1,161IU/L、Cre 2.4mg/dL、CRP 26.4mg/dL。尿;蛋白(2+)。

Dr.上田剛士のエビデンス実践レクチャー!|胸腹痛をきたす“壁”を克服しよう・9

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 前回までは胸壁症候群や脊椎疾患による胸痛について取り上げて来ましたが、今回からは腹痛をきたす筋骨格系疾患を取り上げます。

指導医はスマホ!?|誰でも使えるIT-based Medicine講座・12

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 時は20XX年、IGSコーポレーションでは、研修医ロボットを開発した! その名も、成長するAI搭載型ロボット「森川くん2号」。

 森川くん2号と一緒に、ITを活用して自分をヴァージョンアップしよう!!

オール沖縄!カンファレンス|レジデントの対応と指導医の考えVer.2.0・36

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CASE

患者:26歳、女性。夫と3人の子どもと5人暮らし。

主訴:意識消失・痙攣(2年間で3回)。

現病歴:

●来院2年前:屋内で短時間の意識消失発作(初回)があり、家族とともに独歩で当院救急外来を受診した。全身状態に問題はなく、原因不明であった。その後精査予定であったが、後日の外来受診はなかった。

●来院2週間前:交通事故をたまたま屋外で目撃した後に、自分で警察に通報後、短時間の意識消失・転倒があった。歩いて1人、裸足で帰宅したが、帰ったことは覚えていない。頭部打撲あり、舌咬傷あり。家族が心配して、独歩で当院救急外来受診となった。心電図では異常がなく、てんかんが疑われ、脳波・MRIを施行したが、異常所見はなかった。帰宅となり、総合内科外来でさらにフォローすることとなった。

●来院1週間前:総合内科外来では、患者は意識消失だけでなく、片頭痛に関しての訴えもあった。他院で処方された発作時の鎮痛薬・予防薬使用も奏功しなかった既往があることがわかった。「昔処方されたロキソプロフェンなどを内服し、他市販薬は飲んでいない」と本人は話していた。頭痛の持続時間は半日から2日間程度、左片側のみの拍動性の頭痛で、前兆はない。痛みがあると、吐き気や嘔吐を伴い、動けないほどきついとのことだった。月経や食べ物での誘因はなく、本人の解釈としても頭痛を引き起こす誘因は特にないとのことだった。挙児希望はなく、妊娠したとしても胎児に影響の少ないアミノトリプチンを(10mg、1日1回、眠前)頭痛の予防薬として開始し、1週間後の外来予約とした。

●来院3日前:海で遊んでいる際に、突然膝から崩れ落ちるように全身を強直させる数分の痙攣発作あり、家族が救急要請し、救急車内で徐々に意識回復した。

既往歴:片頭痛は小学2年生頃より発症。この数年は毎日頭痛発作がある。月経周期は整。最終月経は2週間前。

アレルギー歴:なし。気管支喘息の既往なし。

嗜好歴:飲酒歴なし、喫煙歴は1日10本×10年間。

内服薬:ロキソプロフェンを頭痛時に頓用している。

家族歴:心疾患の家族歴なし。てんかんの家族歴なし。父が片頭痛。

55歳からの家庭医療 Season 2|明日から地域で働く技術とエビデンス・28

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 第24回(本年8月号)から家庭医療における「治療学」素描を続けてきましたが、最後は相補代替医療、特に「鍼」と「マッサージ」を取り上げたいと思います。こうした施術を自分で行っているわけではないのですが、ワークショップに参加し自身が鍼治療を受けた経験があり、また鍼灸師の方との私的・公的交流もあって、非常に興味をもっている領域です。

 海外では、家庭医療の診療と鍼治療を有機的に統合する試みが注目されています1)。ただ日本では、おそらく、現在の診療報酬体系と外来診療の構造から、これらを統合するにはまだまだいくつかの壁があると感じます。また、地域の鍼灸院や医療マッサージを提供する施設との連携に関しては、まだシステム自体があまり整っていないと感じています。特に都市部では、鍼灸施設はかなり多く、どこにどんな質の専門家がいるのか、見えそうで見えないというのが実際のところです。医療マッサージに関しても、訪問マッサージの指示書をやりとりするといった在宅診療の文脈での関わりはありますが、一般の外来診療でマッサージが必要というふうに判断しても、では、どこに行ってもらえばよいのかということについては、よいガイドがない現状があります。むろん、こうした状況については地域差があるでしょう。

三銃士共導法・12【最終回】

継続は力なり 坂本 壮
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 あっという間に最終回、2019年も残すところ1カ月となりました。時代は平成から令和へと移り、消費税も10%へ上がり、ラグビーワールドカップで日本中が盛り上がり……今年もさまざまなことがありました。

 三銃士の活動も間もなく2年が経過しようとしています。15分の「レクチャーシリーズ」も定期的に開催し、以降予定は2021年まで決まりつつある状況です(希望される方は連絡お待ちしています!)。指導医のネットワークも徐々にできつつあり、レクチャーや学会での発表を通じて、メンター・メンティーの構築と共に、原稿や論文執筆なども活動の幅は拡がっています。

#総合診療

#今月の特集関連本❶

#今月の特集関連本❷

#今月の特集関連本❸

#今月の特集関連本❹

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#今月の特集関連本❻

#今月の特集関連本❼

#今月の特集関連本❽

#医学書院の新刊

#今月の連載関連本

#参加者募集

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 本書を読み終わったあと、ある研究者の顔を思い出しました。「私は論文発表する際には、研究に従事したすべてのメンバーの名前を入れています。なぜなら、それが仲間たちと一緒に頑張った証だからであり、読み返すたびに当時を思い出します」と、彼が話したことを。

 本書は、臨床研究の初学者が正しい研究計画を立てることを目標とした教科書です。そう紹介すると、多くの類書にみられるような、単調で退屈な、途中で脱落してしまうような内容を想像するかもしれません。でも、タイトルに「ときめく」とつけるような筆者ですから、読者を飽きさせない仕かけを随所に埋め込んでいるのです!

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 認知症患者数が急増するなか、総合診療医・家庭医といった非専門医が、認知症専門医と良好な連携をとりながら、認知症患者を診ることが求められている。しかし自治体から認知症疾患医療センターを委託されている病院の精神科医である評者は、「物忘れを訴えたら、脳画像検査を実施され、認知機能の十分な評価なしに、抗認知症薬を処方された」「高齢者施設で少し興奮したら、話も聞かれることなくBPSD(行動・心理症状)と診断され、抗精神病薬を出された」「認知症の治療中に憂うつ感と不眠を訴えたら、すぐ抗うつ薬と睡眠薬を処方された。薬の種類は増え、かえってぼーっとしている」「あの医師は認知症を専門に診ていると言うが、生活面のアドバイスを何もしてくれないし、地域にどんな社会資源があるかも知らないようだ」などの不満を、患者や患者家族、認知症ケアに当たる医師以外のスタッフから聞くことが多い。問題は、認知症の過剰診断、抗認知症薬の過剰処方、薬物療法以前の基本的な対応不足などに集約されるであろう。各自治体ではかかりつけ医を対象とした認知症対応力向上研修が開催され、認知症に関する書籍も数多くあるが、認知症の診断と治療における課題はなかなか改善されない。

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目次

『総合診療』編集方針
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 1991年に創刊した弊誌は、2015年に『JIM』より『総合診療』に誌名を変更いたしました。その後も高齢化はさらに進み、社会構造や価値観、さらなる科学技術の進歩など、日本の医療を取り巻く状況は刻々と変化し続けています。地域医療の真価が問われ、ジェネラルに診ることがいっそう求められる時代となり、ますます「総合診療」への期待が高まってきました。これまで以上に多岐にわたる知識・技術、そして思想・価値観の共有が必要とされています。そこで弊誌は、さらなる誌面の充実を図るべく、2017年にリニューアルをいたしました。本誌は、今後も下記の「編集方針」のもと、既存の価値にとらわれることなく、また診療現場からの要請に応え、読者ならびに執筆者のみなさまとともに、日本の総合診療の新たな未来を切り拓いていく所存です。

2018年1月  『総合診療』編集委員会

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基本情報

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総合診療
29巻12号 (2019年12月)
電子版ISSN:2188-806X 印刷版ISSN:2188-8051 医学書院

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