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Case
患者:初診時69歳、女性。主婦。
既往歴:高血圧、2型糖尿病。
生活歴:喫煙なし、飲酒なし。
現病歴:1年前より、夫からもの忘れを指摘されるようになったが、日常生活には支障はなく、買い物、炊事や洗濯なども以前と変わりなく行っていた。最近になり、直前のことすら覚えておらず、確認することが増えてきたため受診となった。MMSE(Mini-Mental State Examination)28点で、遅延再生で2点の減点があった。軽度認知障害と診断し、生活習慣病の治療継続とともに生活習慣の見直しを図る方針とし、3カ月ごとの定期受診をしていた。1年後には、家事仕事に支障はないもののMMSEが24点と低下していた。抗認知症薬の導入を議論したが、もうしばらく経過観察する方針となった。しかし、その3カ月後には友人に誘われてもカラオケを断るようになり、自宅へ閉じこもりがちになるなど、生活の様子が変化してきた。薬物治療への同意が得られ、ドネペジル内服治療が始まった。治療1カ月後には、失われていた活気が戻り、カラオケも楽しめるようになった。治療3カ月後のMMSEは25点と横ばいで、副作用もなく治療継続とした。治療10カ月後のMMSEは27点となり、家族からは「多少のもの忘れがあるが、以前のように活気があり、生活を楽しめている」との報告があった。しかし、治療開始18カ月後には、再び外出する機会が減り、室内の炬燵にあたってテレビを見ながら寝てしまうことが徐々に増えてきた。夫と2人で楽しんでいた買い物をしなくなり、料理も品数が極端に減った。MMSEは18点で、認知機能低下とともにADLに変化があったため、メマンチンを追加した。併用治療3カ月後には生気が徐々に戻って、夫とともに近所の書店や買い物に出掛けるようになり、料理の品も少しずつ増えていった。MMSEは21点と増悪傾向はなかった。
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