特集 困っている“あなた”に届く 認知症診療
【コラム 認知症診療トピックス】
❶認知症のケア移行—transitions of care(TOC)in people with dementia(PWD)
小坂 鎮太郎
1
1板橋中央総合病院 総合診療科
pp.1494-1497
発行日 2019年12月15日
Published Date 2019/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429202407
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◦ケア移行(TOC:transition of care)とは
進行性の慢性疾患である認知症を有する患者は、急性期、亜急性期(回復期)、慢性期など、病期に合った医療を受けることが一般的です。そのため患者は、急性期病院(外来、病棟)、回復期リハビリテーション病棟、自宅(在宅医療)、居住系施設など、さまざまな療養環境を移動します。このように「継続的な加療を要する患者が、医療サービスを受ける医療機関や療養の場を移行し、ケア提供者が変わること」を、“ケア移行(transition of care)”と呼ぶことが一般的です1〜3)。また、その際に受ける「避けられる再入院やネガティブな治療結果を予防することを目的としたケア」を、“移行期のケア(transitional care)”といいます4)。
認知症への対応策は、世界的にもcommonで、医療面でも経済面でも大きな社会問題です。認知症を有することで、死亡率、在院日数、再入院率や医療コストの増加といったさまざまな影響があることがよく知られています5)。そのため、認知症を有する患者の診療上の目標として、入院中に身体機能(ADL)を落とさない、精神機能を落とさない(せん妄・BPSD予防)、確実に地域につなげる(十分な再入院予防策を施行する)ことが重要であるとされています6)。
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