Hospitalist 6巻2号 (2018年6月)

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Hospitalist第20号の特集テーマは「糖尿病」です。日本の糖尿病患者数は現在約1,000万人,疑い例も含めると2,000万人に達することが推測され,また日本の糖尿病を取り巻く環境は,若年者における肥満症の増加,高齢者糖尿病の増加や,新しい作用機序を有する糖尿病治療薬が登場したことなどにより大きく変化しています。

 糖尿病診療の中心は外来にシフトしつつあるとはいえ,本誌の主な読者である病棟で勤務する内科医やコメディカルが遭遇する患者の多くは,潜在的なものも含め何らかの糖代謝異常を抱えています。入院のきっかけになった糖尿病以外の病気や,その治療に伴うストレス高血糖も含めると,ほとんどの入院患者において糖代謝異常に何らかの対応が必要であるのが実情です。

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教育モデルを活用し,的確に個別化した治療プログラムを考える

患者が糖尿病の診断を受けて,治療プログラムに入ってくるとき,とりわけ大切なことは,医学モデルと教育モデルが車の両輪となって,同時進行することである。糖尿病の療養指導に携わる者は,教育モデルを理解し,患者の生活,習得能力,学習の準備段階などを評価し,チームのメンバーが共有できるよう診療録に記載しなければならない。

糖尿病の基礎知識

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ここでは,疫学からみた糖尿病の全体像,病型とその診断,糖尿病診療を行ううえで必要な臨床検査などに関してまとめていただきました。まずは糖尿病の疫学を知ることによって,現在がどのような未来につながっているか,また,糖尿病の未来が今まさに変わりつつあることを実感できるであろうと思います。

 詳細な問診による「いつもの糖尿病とは違う」と感じる臨床力が,1型糖尿病や二次性糖尿病の鑑別において重要となります。耐糖能異常や2型糖尿病は,メタボリックシンドロームとの文脈のなかで把握することが重要でしょう。

 糖尿病を把握するうえで欠かせない検査に関しては,それぞれの意義を知ることで,放置でもなく検査漬けでもない,検査との距離感を考えていただければと思います。

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糖尿病患者は年々増加しているが,健診で指摘されたあとの未受診,未治療の割合は依然として高く,さらなる対策を講じる必要がある。

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1型糖尿病は,何らかの原因で膵β細胞が破壊され,インスリンの絶対的な欠乏に陥ることによって生じた糖尿病である。成因により,自己免疫性と特発性に分類され,発症進展様式から急性発症1型糖尿病,緩徐進行1型糖尿病,劇症1型糖尿病に分類される。

 1型糖尿病の治療はインスリン補充療法が基本となり,2型糖尿病のそれと大きく異なることから,その診断は重要となる。

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Q1 2型糖尿病の診断はどのように進めるか?

糖尿病の診断は,高血糖が慢性的に持続していることを確認することから始まる。そのためには,まず血液検査(血糖値およびHbA1c)で高血糖状態の確認を行う必要があるが,単に血糖が高いかどうかだけでなく,高血糖の原因(要因となる生活習慣がないか,高血糖をきたす他の疾患が隠れていないか)を考えながら,丁寧な問診と診察を行うことが何よりも重要である。特に,2型糖尿病かそれ以外の糖尿病かを鑑別するためには,血糖悪化の原因と思われるものが,生活習慣や生活環境のなかにあるかどうかを詳しく聴き取ることが重要である。明らかな悪化要因がないにもかかわらず,血糖の急激な悪化を認める場合には,1型糖尿病の発症や膵癌などの合併を疑って検査を進める必要がある。

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Q1 耐糖能異常とはどういう状態か?

耐糖能異常(糖尿病の気がある)とは,正常よりも血糖値が高いが,糖尿病までには至らない状態である。この時点で糖尿病合併症をすぐに発症する可能性は低いが,後述のとおり糖尿病発症リスクが高く,動脈硬化性疾患を進行させることが知られている。また,耐糖能異常患者では,メタボリックシンドロームを呈していることも多い。以下に耐糖能異常の定義,その病態,メタボリックシンドロームについて解説する。

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日本では,糖尿病患者は増加し続けており,ホスピタリストが糖尿病患者を継続的に診療する機会も多い。糖尿病は患者によって個々の病態が異なり,合併症も全身に及ぶことから必要な検査も多岐にわたるが,合併症評価のための検査の実施頻度は,糖尿病専門医に比べ非専門医では低い1)と報告されている。本稿では,ホスピタリストが押さえておくべき「糖尿病に関する臨床検査」について概説する。

 以降では,まず,ホスピタリストが知っておくべき6つの主要な合併症とその検査について解説する。糖尿病診療では,適切な血糖コントロールを目的とした治療とともに,合併症のスクリーニング・評価を適切に行うことも重要である。

治療

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時に「食事療法ってホントは意味ないんでしょ」と言われて驚かされることがあります。糖尿病の治療は食事・運動療法が基本,というのは決して「建前」ではありません。非常に効果的な治療法なのですが,ただ,その実行が難しいのです。「痩せなさい」というだけの食事指導,「歩きなさい」というだけの運動指導,「DPP-4阻害薬を処方するだけ」の薬物療法から,一歩進化する参考になると幸いです。

 インスリン,GLP-1製剤といった注射薬を患者の自己管理のもと治療に用いるのは,糖尿病治療特有です。また,インスリンポンプなど新しい治療法も進化しています。専門医に依頼することの多い部分かもしれませんが,時宜にかなった治療選択をアドバイスできるように基礎知識はもっていたいところです。

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食事療法は糖尿病治療のなかでも根幹をなすものであるが,実は患者にとって最も実践するのが難しい部分でもある。本稿では食事療法の意義や考え方,最新の知見,食事療法を実際に指導するうえでのポイントなどを紹介する。

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Q1 運動療法とは?

運動療法には,ウォーキングなどの有酸素運動と,レジスタンス運動に代表される無酸素運動の2種類がある。糖尿病の運動療法では有酸素運動が主体である。

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どのような戦略で各薬物を使用すればよいのか

患者のインスリン分泌能,インスリン抵抗性から必要な薬物を選択するが,現状では2型糖尿病の第一選択薬は,禁忌がなければビグアナイド薬としてよいだろう(Q1-2)。まず単剤投与で開始するが,単剤でコントロール不良の場合は,すみやかに併用療法を開始する。その際に必要となることは,薬物の相互作用を勘案すること,患者のアドヒアランスにも留意することである。

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Q1 インスリン療法が必要な糖尿病とは?

生体においてインスリンは,血糖値を低下させる唯一のホルモンである。常に分泌されている「基礎インスリン」と,食事摂取に伴い分泌される「追加インスリン」に分けられ,ともに血糖コントロールに不可欠なものである。

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インクレチン製剤として,日本に初めてジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4*1)阻害薬*2が上市されたのが2009年,それ以降多種多様なDPP-4阻害薬が開発され,皮下注射薬としてグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1*3)製剤も登場し,多くのエビデンスが蓄積されてきている。本稿では,GLP-1製剤にスポットを当てて話を進めていきたい。

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近年の糖尿病領域における技術の進歩は目覚ましく,高機能のインスリンポンプなど革新的なデバイスが臨床現場に登場し,治療成績の向上に大きく寄与している。また,人工知能(AI)を糖尿病の予防や診断,治療に活用するさまざまな取り組みもなされており,今後数年での飛躍的な進化が想定されている。

自己管理教育と療養支援

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「巻頭言」(279ページ)でも述べられているように,糖尿病診療において医学的側面以上に重要なものが教育・心理的側面です。糖尿病に代表される慢性疾患では,患者自身が病気と向き合い,治療に主体的に取り組んでいくplayerとなります。それを支える糖尿病教育は,日本ではこれまで教育入院が担ってきました。病気の負担を前に立ち尽くしている患者,その負担に押しつぶされて燃え尽きてしまった患者を,私たちはどのように支援していけばいいでしょうか。

 諸外国の状況も今回紹介していただきましたが,患者を支援していく戦略は,患者の希望やそれに対する人的・経済的な医療資源に応じて変わってくるのだと思います。病院が急性期疾患にシフトしている昨今,現在の日本の外来システムはそれを担えるだけの力があるでしょうか。

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Q1 患者教育の重要性とは?教育入院とは?

糖尿病は長期間にわたって患者自身が生活習慣などの自己管理を行う必要があり,患者教育は必須である。日本糖尿病学会は「チーム医療による糖尿病教育は糖尿病治療の根幹」であり,「すべての糖尿病患者が診断時に,また,治療の経過中に,糖尿病に関する知識を広く学んでいくことは,糖尿病治療の基本を成す」1)としている。また,米国糖尿病学会(ADA*1)も,糖尿病治療における患者教育と支援の重要性を強調している2)

 糖尿病の治療に必要な知識・技術を患者に過不足なく提供し,円滑な療養生活を支援することが患者教育である。教育の内容は多岐にわたり,①糖尿病の診断および病態生理,②糖尿病合併症と合併症の予防や進展阻止に必要なコントロール目標,③食事療法,④運動療法,⑤薬物療法,⑥自己注射手技,⑦血糖自己測定,⑧低血糖やシックデイへの対処法,⑨フットケアの知識,⑩日常生活における注意点,などがある。

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糖尿病患者の教育体制は国ごとに大きく異なる。テキサス大学での筆者の臨床留学体験をもとに,本稿では主に米国での患者教育について紹介する。

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Q1 療養行動を支援するうえで重要な「変化ステージモデル」とは?

変化ステージモデルは米国の心理学者Prochaskaら1)によって組み立てられた理論(多理論統合モデルtranstheoretical model)で,人がどのような心理学的方法により健康に関する行動を変化させるかを明らかにしたものである。モデルとなったのは禁煙行動であり,Prochaskaらは多数の心理療法の技法のなかから,健康増進行動(禁煙,運動療法,食事療法など)に有用な方法の抽出を試みた(変化プロセス)。また,決断バランスdecisional balance〔肯定的な意見(プロズ:Pros)と否定的な意見(コンス:Cons)〕,自己効力感self-efficacy(実行できる自信)などが行動変化をもたらす重要な要素であることを明らかにした。

 もう1つ重要なことは,行動変化に時間軸を取り入れたことである。それまでの心理療法理論は時間の概念がなかった。Prochaskaらは「行動変化がいつ起こるのか」という概念を導入した。これが変化ステージである。変化ステージは5段階に分かれており,それぞれPrecontemplation,Contemplation,Preparation,Action,Maintenanceである2)。「無関心期」「関心期」との日本語訳もあるが,Contemplationという語はじっと見つめる,熟考,沈思黙考などと訳されていることや,Prochaska自身の解説—Contemplationは過去と未来の架け橋のようなもので,馴染みのある所から新しい所へ移動する,より多くのエネルギーを注いで新しい所への変化について考えることです—などから,筆者は「前熟考期」「熟考期」と翻訳している3)

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血糖モニタリングは,患者の糖代謝を把握するうえで非常に重要である。その方法は,原則として静脈採血や動脈採血による血糖検査をゴールドスタンダードに,医療者が用いるPOCT(point-of-care testing)機器や,患者が用いる血糖自己測定(SMBG*1)機器を用いた毛細血管中の血液内のブドウ糖濃度を簡易的に測定する方法も用いられる。

 CGM(continuous glucose monitoring)やFGM(flush glucose monitoring)といった新しい技術が急速に発展し,主に外来での使用が普及しつつあるが,日本糖尿病学会は現時点では,直接血液内のブドウ糖濃度を測定する従来の方法の完全なる代替としての使用は推奨していない1)。しかし,今後急速に進化しつつあるCGMやFGMの精度向上により,これまでの「常識」とされてきた血糖モニタリングのエビデンスが著しい速さで更新され,大きな変革期を迎える可能性が高い。

管理

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糖尿病は血糖値だけの病気ではなく,糖尿病治療=血糖コントロールではありません。高血圧,脂質といったその他の血管リスク因子の管理は,時として血糖コントロール以上に重要です。さまざまな介入試験の結果が多くあり,また,その結果によってガイドラインの記載も頻繁に書き換えられる分野です。現時点での考え方を整理しておきましょう。

 TPOに応じた糖尿病管理としては,遭遇する頻度の高い例として,入院中,高齢者,シックデイを取り上げました。必ずしも十分なエビデンスの整っている部分ではないため,執筆を担当してくださった先生方の実際の工夫などが盛り込まれています。むしろ,そうしたdetailが,実際の患者への応用では参考になることも多いのではないでしょうか。

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国民生活基礎調査から推計した2016年の国民健康・栄養調査報告1)では,糖尿病が強く疑われる人(糖尿病治療中,もしくはHbA1c≧6.5%),糖尿病の可能性が否定できない人(6.0%≦HbA1c<6.5%)がともに約1,000万人で合計約2,000万人とされており,糖尿病は入院患者に頻繁に認める代表的な既往疾患の1つである。

 高血糖と低血糖は,どちらも入院中の合併症リスクを上昇させることは明らかになってきており2),血糖管理は非常に重要であるが,患者の全身状態に応じて対応することが求められる。本稿では,急性期疾患や手術の際の入院時血糖管理を中心に,臨床的知見に関して概説する。

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Q1 糖尿病ではなぜ血圧管理が必要なのか?

日本の糖尿病患者は316万6千人,高血圧患者は1,010万8千人(ともに2014年時点)1)で,いずれも増加傾向にある。糖尿病患者の2〜6割は高血圧で,非糖尿病患者に比べ1.5〜3倍多い2)。同様に,高血圧患者でも4〜5割が糖尿病で,非高血圧患者よりも約3倍多い3)。糖尿病と高血圧は密接に関連しており,糖尿病患者では血糖管理だけでなく血圧管理も重要である。

 糖尿病の合併症は,大血管症〔動脈硬化,心血管疾患(CVD),脳血管障害〕および細小血管症(腎症,網膜症,神経障害)に分けられる。日本ではCVDは全死亡の15%を占め,死因と大きくかかわる。CVDリスクにはさまざまあるが,糖尿病や高血圧症はそれぞれ独立した大きなリスク因子で4),血圧が高いほど死亡率は高くなる5)。これらに対する血圧管理により,大血管症に加えて,細小血管症の進展を抑制できる6)

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糖尿病は,動脈硬化性疾患発症における高リスク病態である。糖尿病患者の冠動脈疾患リスク因子のなかでも,高LDL*1コレステロール(LDL-C)血症と高トリグリセリド(TG)血症が重要である。最近では新しい脂質異常症治療薬も使用可能となり,増加してきたエビデンスを糖尿病患者に対して適応していかなければならない。

 本稿では,糖尿病における脂質代謝異常の特徴を解説したうえで,それぞれの患者に応じた適切な脂質管理について考えていく。

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糖尿病罹患が大血管・細小血管合併症のリスクになることは既知の事実であるが,高齢者では併存疾患,ポリファーマシー,認知機能低下,気分障害,尿失禁,転倒などのリスクも増加することが知られている1)。高齢者の糖尿病診療の難しさは,ガイドラインどおりの定型的なマネジメントが行いにくい点にあり,治療ゴールの設定や,薬剤選択,フォローアップに特別な注意を要する。本稿では,実臨床で高齢者の糖尿病治療にあたる際に,特に留意すべき点を解説していく。

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Q1 シックデイとは?

『糖尿病診療ガイドライン2016』1)では,糖尿病患者が治療中に発熱,下痢,嘔吐をきたし,または食欲不振のため食事がとれない状態を「シックデイ」と定義している。しかし,シックデイは総体的な呼称であり,明確な診断基準は存在しない。共通していることは,原因の除去と血糖の適切な管理が十分になされなければ,高血糖が進行し,糖尿病ケトアシドーシス(DKA*1)や高血糖高浸透圧症候群(HHS*2)への進展リスクが上昇する2, 3)ことである。その過程がシックデイの本態である。

合併症

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糖尿病の合併症,いわゆる三大合併症としての細小血管合併症,大血管合併症,糖尿病足病変,感染症,その他として歯周病,認知症,癌に関してまとめていただきました。診断のみならず軽症のものは,糖尿病医あるいはホスピタリスト自らが治療を行わなければならないですし,重症例に関しては関係各科との連携が重要となります。

 残念ながら,多くの糖尿病合併症は進行してしまったあとでは治癒が困難ですが,早期の対応で予防可能なものが多くあります。一方で,糖尿病の治療を受けている患者で,HbA1cが測定されていない方はほとんどいませんが,網膜症やアルブミン尿の検査率は低迷したままです。糖尿病治療は血糖コントロールだけではないことは,ここにおいても非常に重要です。

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糖尿病網膜症(以下,網膜症)治療は,近年の糖尿病診療と眼科診療の進歩により,失明を免れるための治療から,良好な視力をできるだけ維持するための治療に転換しつつある。視力低下は中等度から高度とさまざまではあるが,生活視力に直結する糖尿病黄斑浮腫に関して,発症予防と治療が注目されている。眼科介入時期によっては取り返しのつかない視力低下もあることから,網膜症を発症・進展させないという内科治療の重要性はますます大きい。

 網膜症の病期別で考えると,単純網膜症までは血糖コントロールそのものが網膜症治療となり,網膜症の発症を抑止することがカギとなる。血糖のみならず血圧や脂質異常の管理により網膜症の発症と重症化を予防できることから,内科領域からの包括的な治療が網膜症治療においても有効となる。さらに眼科領域では,白内障手術と硝子体手術の低侵襲化,血管内皮増殖因子(VEGF*1)阻害薬の普及から,糖尿病眼診療は進歩しており,10年前とは大きく様変わりしつつある。しかし,糖尿病患者を中心とした内科-眼科間の双方向からの密な連携は,決して忘れてはならない基本に変わりはない。

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Q1 糖尿病性腎症の鑑別に腎生検を考慮すべきなのは?

糖尿病性腎症は糖尿病に伴う腎合併症であり,典型的な症例では,初期にアルブミン尿が出現し(微量アルブミン尿),その後,顕性蛋白尿に進展し,蛋白尿の増加に伴って腎機能が次第に低下する。しかしながら,2型糖尿病患者の一部にはアルブミン尿が陰性のまま腎機能が低下するものがあり,このような症例のなかに糖尿病性腎症に特徴的な腎組織像を呈するものがあることも報告されている。最近改訂された糖尿病性腎症の診断基準の2型に関する記載では,アルブミン尿の有無を問わず,推定糸球体濾過量(eGFR)<30mL/min/1.73mm2であれば腎症第4期に分類されている1)

 一般的に,糖尿病性腎症と他の腎疾患の鑑別には,①発症までの罹病期間,②腎機能の低下速度,③蛋白尿の発症の仕方,④尿所見(血尿の有無),⑤網膜症の有無などが参考になるとされている。したがって,①糖尿病発症早期(5年以内)に顕性蛋白尿が出現,②急激な腎機能低下,③突然の蛋白尿の増加,④中等度以上の血尿,⑤網膜症を認めない,などの場合には,腎生検を考慮する必要がある2)

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Q1 神経障害の診断は?

糖尿病神経障害は,網膜症および腎症とともに頻度の高い細小血管症であり,糖尿病早期から生じる慢性合併症である。糖尿病神経障害を早期に診断し治療を行っていくことは重要なことであるが,神経障害の診断は腎症や網膜症と比べてやや複雑であり,定量性もすぐれないため,日常臨床で十分に行われていないのが現状である。

 糖尿病神経障害の臨床徴候は多彩であり,多発神経障害と局所性神経障害に分類される。さらに,多発神経障害は,遠位対称性神経障害と自律神経障害に分類される。その診断においては,日本では糖尿病性神経障害を考える会*1が提唱している「糖尿病性多発神経障害の簡易診断基準」(表1)を用いることが推奨されている1)*2。この簡易診断基準に基づくと,❶糖尿病が存在すること,❷糖尿病性神経障害以外の末梢神経障害を否定し得ることが必須項目として挙げられる(臨床メモ①)。また条件項目として,①糖尿病性神経障害に基づくと思われる自覚症状,②両側アキレス腱反射の低下あるいは消失,③両側内踝の振動覚低下,が挙げられ,この3つのなかの2つを満たせば神経障害ありと診断する。

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糖尿病の合併症は全身に及ぶが,糖尿病足病変は「神経障害や末梢動脈疾患と関連して糖尿病患者の下肢に生じる感染,潰瘍,足組織の破壊性病変」1)と定義される。

 糖尿病は内分泌疾患であるが,糖尿病神経障害などによる筋力低下ほか運動器への影響,足部の関節可動域の低下などによる歩行障害をふまえると,運動器疾患としてとらえることもできる。糖尿病では,血流障害,神経障害,易感染性に足の変形が加わり,容易に足病変へとつながっていく。重症化して下肢切断に至る合併症として非常にリスクが高い。

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Q1 糖尿病患者の心血管イベント

発症リスク,欧米と比べると?

糖尿病により,心血管イベント発症リスクは2〜3倍上昇する。日本人の急性心筋梗塞acute myocardial infarction(AMI)発症は,欧米の1/5程度と絶対リスクは低いものの,欧米と異なり,その頻度はこの十数年間減少していないことが問題である。

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Q1 糖尿病が起こす免疫不全の機序は?

糖尿病に関連する免疫不全は,狭義には「免疫担当細胞の機能障害」を指すが,実際には細小血管症や神経障害が複合的に関連している。糖尿病患者は日常臨床で最も頻繁に遭遇する免疫不全者といっても過言ではない。敗血症患者の約20%に基礎病態として糖尿病が認められた1)という報告もある。また,2001〜2010年の10年間で,日本人の糖尿病合併死亡者45,708人を対象に実施された調査結果2)によると,悪性新生物(38.3%)に次いで死因の第2位に感染症(17.0%)が挙げられている。

 このことからもわかるように,糖尿病に伴う免疫不全は糖尿病患者の予後に大きく影響するため,臨床医はその機序と高頻度な病態・治療について熟知しておく必要がある。

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Q1 糖尿病と歯周病(歯科領域の感染)の関連は?

そもそも歯周病periodontal diseaseとは,「歯周病原細菌によって引き起こされる感染性炎症性疾患であり,歯肉,セメント質,歯根膜および歯槽骨よりなる歯周組織に起こる疾患」1)と定義されている。要するに,歯と歯茎の間にある溝(歯周ポケット)(図1)に溜まった細菌の塊(デンタルプラーク)が原因で起こる炎症のことである。歯周病は大きく分けて,歯槽骨への炎症を起こす歯周炎と,起こさない歯肉病変の2つに大別される。

 日本における歯周病の有病率は,「歯周ポケットを有する人の割合」で評価すると,35〜44歳で25%,45〜54歳で30%,55〜64歳で50%と,加齢により増加し,75歳以上では62%まで増加する2)

付録

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1 糖尿病と医療保険福祉の制度

2 Caseから学ぶ糖尿病と診療報酬Q and A

3 Good oral presentation

別表

◦インスリン製剤の早見表

◦経口血糖降下薬・その配合薬の早見表

◦GLP-1受容体作動薬の早見表

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糖尿病の医療費

糖尿病の医療費について国全体としての視点と,患者個人の視点からそれぞれ述べることとする。

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糖尿病にかかわる診療報酬は複雑であり,専門家でも2年ごとの診療報酬改定後のアップデートが大変で,事務に任せて算定漏れになり損失を生む。医師やコメディカルが行っている指導を適正に評価し,正しく報酬を稼ぐことは,病院内において糖尿病診療の重要性を認識してもらう契機になり,糖尿病診療部門に手厚くコメディカルを配置してもらう論拠にもなるので,是非理解を深めてほしい。

 なお,薬剤の特徴と薬価を意識することは重要であり,簡潔にまとめた表も作成した。あわせて活用いただきたい。

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良いプレゼンテーションとは何か。プレゼンテーションの一般論はさまざまな書籍などで述べられているが,実際のところ,伝えたい内容,また周囲の環境によりプレゼンテーションの形は大きく異なる。重要なのは,目の前の患者の問題が明確で,すぐに実行可能な具体的なプランが述べられていることである。

 ここでは,臨床でよくあるプレゼンテーションの例を紹介し,解説で糖尿病診療のポイント,また本特集内で参照すべき箇所を確認できるように作成した。目標は,このプレゼンテーションを1つの型として自由自在に応用し,口頭で表現できるようになることである。

連載 今日もとまどう緩和ケア【新連載】

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総合診療医を目指すルリ先生は,今日からS病院の緩和ケア病棟で,ベテラン専門医トシ先生のもと,がん患者さんに対する緩和ケアを学ぶ。研修初日,病棟多職種カンファレンスで,初めて受け持つ入院患者さんについてプレゼンテーションをすることになった。

連載 突撃!となりの勉強会

第2回|SHM, ACP 西村 義人
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連載2回目となる今回のテーマは国際学会! ジェネラリストを目指す若手内科医が参加する意義のある国際学会はSHM,SGIM,ACPの3つと思います(表1)。おのおの特徴がありますが,すべて3月末〜4月開催と,日本の年度始まりに被せないでほしいですね。筆者は職場のサポートもあり2017年にSGIM,今年SHM,ACPに参加してきましたので,記憶がフレッシュな後者2つのリアルレポートをお届けします。

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1.Thrombectomy for stroke at 6 to 16 hours with selection by perfusion imaging. N Engl J Med 2018;378:708-18. PMID:29364767

[研究デザイン]

多施設無作為化オープンラベル評価者盲検試験

[背景・目的]

通常の薬物療法を受けた患者と比べ,脳血流画像検査により治療可能な虚血に陥った脳組織が同定され,6〜16時間の間に血管内治療を受けた患者では,機能予後が改善するという仮説を検証する。

[対象]

米国の38のセンターで,初診時の梗塞サイズが70mL未満かつ初診時の梗塞体積に対する虚血組織体積の比が1.8以上で,治療可能な虚血に陥った脳組織の絶対体積が15mL以上の患者,最後に良好であることが確認された時点から6〜16時間に血管内治療が開始された患者

[介入・方法]

血管内治療と標準的薬物療法の併用群(血管内治療群)と標準的薬物療法のみの群(薬物療法群)に1:1で無作為に割り付けた(隠蔽化あり,アウトカム評価者へのマスキングあり)。年齢,コア梗塞体積,発症からの時間,NIHSS(0〜42:スコアが高いほど欠落症状が大きい)のベースラインスコア,試験サイトで層別無作為化割り付けを行った。

[プライマリアウトカム]

90日後の修正Rankinスケール〔0(無症状)〜6(死亡):スコアが高いほど障害が大きい〕の順序スコア

学会報告2018

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2018年3月17日に福岡県福岡市の済生会福岡総合病院で,飯塚病院主催による第1回救急×緩和ケアセミナーが開催された。若手医師を対象に募集人数は30名であったが,医学生や初期・後期研修医をはじめ60名以上の方が参加された。全国で多数の勉強会やセミナーが開催されるなか,本セミナーは「救急×緩和ケア」という一風変わったテーマを掲げており,開催の背景に加え,今回行われた内容について是非読者の方々とも共有したい。

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目次

次号目次

基本情報

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Hospitalist
6巻2号 (2018年6月)
電子版ISSN:2433-510X 印刷版ISSN:2188-0409 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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