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Q1 療養行動を支援するうえで重要な「変化ステージモデル」とは?
変化ステージモデルは米国の心理学者Prochaskaら1)によって組み立てられた理論(多理論統合モデルtranstheoretical model)で,人がどのような心理学的方法により健康に関する行動を変化させるかを明らかにしたものである。モデルとなったのは禁煙行動であり,Prochaskaらは多数の心理療法の技法のなかから,健康増進行動(禁煙,運動療法,食事療法など)に有用な方法の抽出を試みた(変化プロセス)。また,決断バランスdecisional balance〔肯定的な意見(プロズ:Pros)と否定的な意見(コンス:Cons)〕,自己効力感self-efficacy(実行できる自信)などが行動変化をもたらす重要な要素であることを明らかにした。
もう1つ重要なことは,行動変化に時間軸を取り入れたことである。それまでの心理療法理論は時間の概念がなかった。Prochaskaらは「行動変化がいつ起こるのか」という概念を導入した。これが変化ステージである。変化ステージは5段階に分かれており,それぞれPrecontemplation,Contemplation,Preparation,Action,Maintenanceである2)。「無関心期」「関心期」との日本語訳もあるが,Contemplationという語はじっと見つめる,熟考,沈思黙考などと訳されていることや,Prochaska自身の解説—Contemplationは過去と未来の架け橋のようなもので,馴染みのある所から新しい所へ移動する,より多くのエネルギーを注いで新しい所への変化について考えることです—などから,筆者は「前熟考期」「熟考期」と翻訳している3)。
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