Hospitalist 6巻3号 (2018年9月)

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本特集は,2014年刊行の「消化管疾患」特集号で取り組んだ,「問診と身体診察から鑑別診断を考え絞り込んでいく,内科的アプローチにのっとった消化器病学」を,肝胆膵疾患においても試みるものである。

 もちろん,肝臓は「沈黙の臓器」と言われるとおり,黄疸を除けば,臓器特異的な症状に乏しい臓器である。さらに,胆道,膵臓疾患でも,主要症候の腹痛は,鑑別が多岐にわたる症候であることに異論はない。そのため,まず肝胆膵疾患であるかどうか,またどのような肝胆膵疾患であるか,さらに病態を切り分けていくうえでは,漫然とした「問診と身体診察」だけではなく,肝酵素,膵酵素,腹水検査を含めた検体検査,各種モダリティによる画像検査が重要な役割をもっている。

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本稿でまずホスピタリストは「クロノロジスト」たるべきことを宣言し,臨床マネジメントにおいては「クロノロジー(時間軸)」が最も重要であり,「クロノロジー」が本特集の各章の縦糸となる考え方であることを述べる。「クロノロジー(chronology)」とは「年表」とか「年代記」といった意味であり,そこから転じて「クロノロジスト(chronologist)」に,我々は,疾患や病態の経時的経過を重視し,それを中心に臨床病態や診断治療アプローチをとらえなおせる存在という意味を付与した。

 問題解決のアプローチを洗練させていくには,時間軸を意識し,疾患を時間軸に沿ってとらえなおす作業が必要である。時間経過の長短は個々の症例の併存疾患や重症度によって異なるが,症状の順序,また一時的に症状が軽減する段階(latent phase)は疾患により一定であるため,時間軸に沿って疾患をとらえなおす作業は,単に時間経過をみていくということではなく,個々の疾患の「臨床段階“clinical phase”」とその順序を明確化することにほかならない。

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第1章では「クロノロジカルに診る」ことについて,時間軸を意識し,疾患を臨床段階の積み重ねという観点からとらえなおすこと,症状の程度の微妙な変化に注目した注意深いアプローチと,診断が確定した段階での丁寧な振り返りが,超急性期の病歴と身体所見把握という「アート」を向上させる唯一の方法であること,超急性期に何の手がかりも見つけられない場合には,あえて「判断回避」をし,一定の時間後に再度診察のうえ,複数の時点での情報から「点診断」を「線診断」にして診断精度を上げるようにするアプローチも有効であること,などに重点をおいて解説した。

 本稿ではこれを受けて,肝胆膵疾患を中心とした消化器疾患における「臨床段階」と,超急性期身体所見抽出の道筋を明確化することを目標に,以下の構成で述べる。

・腹痛診療に関連したpearls

・超急性期症状としての「上腹部痛」

・見逃せない疾患の症状群

・腹部部位別鑑別疾患リスト

・関連痛・放散痛

・その他診察において注意すべき点

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本稿では,まず肝酵素異常の3つのパターンを示し,症例でイメージをつかんでいただく。

続いて,クロノロジカルに肝機能をとらえる視点を共有していただけるように,CQ形式で解説を試みる。「基本肝胆検査」とした,アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT),アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST),アルカリホスファターゼ(ALP),ビリルビン(Bil),乳酸脱水素酵素(LDH)を中心に,理解を深めていただきたい。

 また後半では,他稿で触れられていない術後黄疸,鉄過剰蓄積による肝障害のほか,非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)/非アルコール性脂肪肝炎(NASH)についても概説した。

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肝針生検(肝生検)は侵襲的な検査方法ではあるが,小さな肝組織切片から多くの情報を得ることができ,患者の病態把握や診断に重要である1〜3)。肝疾患治療薬の進歩や画像医学,検査医学の進展に伴い,肝生検検体数は減少しているものの,肝移植領域では,肝生検は依然として重要な検査手段であり,自己免疫性肝炎(AIH*1)や薬剤性肝障害,非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD*2)の診断にも有用である。近年注目されている急性発症のAIHでは,必須の検査手段でもある。

 臨床の現場では,肝臓病理医は主として肝生検を観察し,顕微鏡を介して得られた肝臓の情報を臨床医に伝え,議論などを通して肝疾患診療に深くかかわっている。特に,臨床診断の妥当性,また肝疾患の病期や活動度の把握,偶発所見の有無の検討などを行っている。本稿では,肝臓病理医の立場から,臨床医に知っておいてもらいたい点を中心に,肝生検の病理所見やその解釈,診断におけるポイントを解説する。

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腹水貯留をきたす疾患は,まずは門脈圧亢進症の有無により大きく分けられる。実際の臨床に沿って,まずは腹水貯留に伴う症状や身体所見,腹水の存在診断と穿刺の適応に関して述べる。腹水穿刺時は,最初に腹水の肉眼的性状を確認し,ある程度の鑑別を行う。ルーチン検査として提出する項目に加え,腸管穿孔や膵炎などを疑った場合に追加する腹水検査を把握する。

 肝硬変に伴う腹水と診断したら,次は腹水の治療に移る。塩分制限,利尿薬に関して解説する。また,内科的治療に抵抗性の難治性腹水に対する大量腹水穿刺排液/アルブミン静注療法のほか,腹水濾過濃縮再静注法(CART),経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(TIPS)の適応に関しても概説する。

 特発性細菌性腹膜炎(SBP)が疑われる場合は,腹水検査目的の腹水穿刺が「絶対適応」となる。特にSBPと二次性細菌性腹膜炎の鑑別にRunyon's criteriaが重要であり,それを利用した診断・治療のフローチャートに関しては具体例を交えて解説する。さらに,腹水コントロール中にあって突然腹水が減少し,呼吸困難などの呼吸器症状を訴える患者が存在するが,その場合は腹水が胸腔に移動している肝性胸水を鑑別に挙げる。肝性胸水もSBPと同様に感染を起こすことがあり,特発性細菌性胸膜炎(SBEM)とよばれる。これらについても言及する。

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黄疸はビリルビン産生と排泄の不均衡で起こる。日常診療で経験する黄疸のほとんどは肝胆道系疾患であるが,一部に全身疾患に伴う黄疸がある。なかには重篤な疾患や治療を急ぐ疾患も含まれる。

 本稿では,まず黄疸の原因を推察するのに必要なビリルビン代謝の知識,そして鑑別の流れを整理する。次いで,問診法や診察法,検査結果の観点からみた疾患分類を中心にまとめる。個々の疾患の詳細,特に重篤な疾患や見逃せない疾患については次稿*1で解説する。なお,体質性黄疸については本稿で詳述した。

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本稿では,肝機能障害を特徴の1つとする重篤な疾患,見逃せない疾患について解説する。これらの疾患は複数存在するので,ここでは黄疸の原因に従って分類し,溶血性黄疸(630ページ),肝細胞性黄疸(632ページ),胆汁うっ滞性黄疸(634ページ),その他の黄疸をきたす疾患(638ページ)の順に述べる。

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本稿では肝臓,胆道,膵臓のCT所見の見方に焦点をあてる。しかし本テーマは,それのみで成書が発行されるような大きなものであり,ここでは,①肝臓,膵臓の評価に重要なダイナミックCTとその所見の理解を深めること,②偶発的に発見された所見,いわゆる“incidentaloma”へのアプローチを理解すること,の2点を中心に論じていく。

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器質的な胆道病変を認めないにもかかわらず,心窩部痛,右季肋部痛,悪心・嘔吐などの消化器症状を認める症例が時にみられ,診断,治療に苦慮することがある。

 機能性疾患の診断基準については,1992年に米国のDrossmanを中心とするmultinational working teamがRomaⅠ基準を発表して以降,Roma委員会が牽引してきた1)。Roma委員会では器質的病変を伴わない胆膵領域の機能性疾患を「機能性胆囊・Oddi括約筋障害」と定義し,そのなかでも胆道痛を伴うものを,機能性胆囊障害と機能性胆道Oddi括約筋障害に分類している。

 本稿では,新たに2016年に改訂されたRomaⅣ診断基準2)に基づき,本疾患群に対する診断,治療法について概説する。

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本稿では,慢性肝障害の症例の経過を追いながら,肝酵素異常のみかたや,肝生検の適応など,診断・治療・フォローアップについて言及する。後半にはCommentaryとして,自己免疫性肝炎autoimmune hepatitis(AIH)について概説する。

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肝不全liver failure(LF)とは,高度の肝機能障害のために,肝性脳症,黄疸,腹水などの症候を示した状態のことをいう。これら3つの症候は肝不全の三大徴候ともよばれ,特に肝性脳症は肝不全に特異的かつ最も重症で,肝不全の十分条件であることから,便宜的に肝性脳症をきたした肝障害を肝不全と定義することも多い。

 肝不全は,発症から肝不全症候が出現するまでの期間で大まかに分けられる。日本では,発症から肝不全症候出現まで8週以内の急性肝不全acute liver failure(ALF),8週以降24週以内の遅発性肝不全late-onset hepatic failure(LOHF)および24週以降の慢性肝不全に分類される。慢性肝不全は非代償性肝硬変に代表され,肝不全とともに門脈圧亢進症を呈するのが特徴である。

 本稿では,急性肝不全の定義とその成因を確認し,日本における治療の実際についてまとめる。

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本稿では,急性肝不全の原因となるウイルスの注意すべき病歴および診断法(表1)について述べる1)。まず理解しておくべき概要は次のとおりである。

・A型肝炎ウイルス,およびE型肝炎ウイルスは通常慢性化せず,病歴聴取が診断のきっかけとなる。

・HBe抗原,HBe抗体は,B型肝炎ウイルス感染確定者に対するvirulencyを把握するのための項目であり,最初の血清学的検査では提出しない。

・B型肝炎ウイルスキャリアのHBV-DNA定量値の急激な上昇は,急性増悪や再活性化を疑う。急性感染の確認にはIgM型HBc抗体を追加提出する。

・C型肝炎ウイルスが急性肝不全の原因となることは一般的にまれである。

 また,肝炎ウイルス以外のウイルスとして,EBウイルス,ヘルペスウイルス,サイトメガロウイルスについても論じる。

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食道・胃静脈瘤は,肝硬変による門脈圧亢進症に伴う合併症の1つである。また食道・胃静脈瘤破裂は肝硬変の3大死因の1つであり,消化器内科医など内視鏡診療にかかわる医師はもちろん,病院総合医,救急医,集中治療医や家庭医など,日常診療で肝硬変の診療にかかわるジェネラリストにも避けて通れない必須の領域である。本稿では症例をベースに,我々が日常診療で直面する各種の疑問について解説する。

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肝性脳症は,肝疾患もしくは門脈-大循環シャントによる可逆的な脳障害と定義されている。その症状は,検査でしかわからないような軽微なものから昏睡までさまざまであり,肝硬変患者のQOL(クオリティオブライフ)を低下させ,予後にも関連する重大かつコモンな合併症の1つである。したがって,消化器内科だけでなく病院総合医にとっても重要な事象である。対応にはしばしば難渋することもあり,肝性脳症の診断から治療について必要な確認事項を整理する。また,意外と軽視されがちな慢性期の栄養管理についても解説する。

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臨床において,肝硬変を有する患者との遭遇は消化器内科医に限らず,一般内科医でも日常的に経験することである。合併症は多岐にわたるが,本稿ではそのなかでも疾患イメージがとらえづらい,肝腎症候群hepatorenal syndrome(HRS),肝肺症候群hepatopulmonary syndrome(HPS)について取り上げる。

 単一臓器の障害が他臓器に与える影響を,病態生理としてひもといていくことで,実際の検査や治療について理解を深めることができるが,これらの症候群については特にその傾向が顕著である。そのメカニズムは臨床医にとって非常に興味深いところであると思われる。病態生理から臨床像,特にHRSについては最新の検査や治療などについてもまとめる。

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2007年に急性胆管炎1)と急性胆囊炎2)の診断・治療のTokyo Guidelines(以下TG07)が刊行された。2013年度の改訂版(以下TG13)を経て,2018年にも改訂版(以下TG18)が刊行されている。本稿では,急性胆管炎,急性胆囊炎のマネジメントに関して,実際の症例でどのように検査,治療を進めるか,Tokyo Guidelinesを紹介しながら解説する。

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日本における急性膵炎の発症頻度は,年当たり49/10万人で増加傾向を示しており,男女比はおおむね2:1である1)。急性膵炎は時として致死的な転帰をたどり得る病態であり,死亡率は2.1%,重症例では10.1%と報告されている2)。それ故,適切な診断と病態把握,早期の必要十分な治療介入が重要である。急性膵炎を疑う症例を目の前にした際,まず考えるべきは成因の推定であり,特に胆石性膵炎の成因診断はその後の内視鏡的処置を含めたマネジメントに直結する。

 本稿では症例をもとに,急性膵炎のマネジメントについてまとめる。

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膵癌は,数ある悪性腫瘍のなかでも非常に予後が悪いことで知られている。切除不能な進行期で発見・診断される場合が多いことが,その要因の1つと考えられる。進行するまで自覚症状に乏しく,症状発現まで待っていては,切除可能な段階での診断は困難といわざるを得ないのが現状である。こうした状況下で,膵癌を早期に診断することを目的としたアプローチが広島県尾道市から始まり,日本各所に広がりつつある。本稿では膵癌における疫学的事項をはじめ,早期診断のために着目すべきポイントや注意点,さらに筆者らがかかわる尾道プロジェクトを含め,膵癌早期診断への取り組みについても概説する。

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最近,ベッドサイドで行う超音波検査(POCUS*1)のセミナーが各地で行われるようになってきました。しかし,ある程度POCUSに慣れてくると,エコーでもっと情報を得たいな…とか欲が出てきませんか? そんな方のために,今回はあるドップラーセミナーを取り上げます。そしてもう1つ。医療イノベーションをテーマに,話題書「医療4.0」に登場した医師8名を集めた異色かつ濃厚なセミナーも紹介したいと思います。

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2018年7月7日,東京ベイ・浦安市川医療センターにて,初のJHN/Hospitalistタイアップ企画として第8回JHNセミナーを開催しました。

 Hospitalist誌では,第12号で「周術期マネジメント」を特集しています。「周術期」というと,外科と麻酔科の問題で,内科医に役割があるのか?と思われるかもしれません。「周術期」において「内科医の役割が大きい」と私が学んだのは,米国での研修時でした。周術期を無事過ごし術後の短期アウトカム,長期アウトカム改善に内科医が貢献できる部分はたくさんあります。ホスピタリストに大きく期待される役割の1つであり,今回のセミナーは内容盛りだくさんで,さらに皆さんと勉強できる機会となりました(図1)。

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1.Outpatient talc administration by indwelling pleural catheter for malignant effusion. N Engl J Med 2018;378:1313-22. PMID:29617585

[研究デザイン]

並行群間無作為化一重盲検対照試験

[背景・目的]

タルクを用いた胸膜癒着術は入院患者では最も行われているが,外来では胸腔ドレナージ目的の胸腔内留置カテーテルが代替療法となる。胸腔内留置カテーテルにタルクを併用した場合に,胸腔内留置カテーテル単独治療より効果があるかどうかを検証する。

[対象]

4年間に英国の18の二次・三次医療機関へ通院した悪性胸水の患者で,胸水ドレナージ後に予後2か月以上が見込まれ,かつPerformance-Status Score 2未満の患者

[介入・方法]

登録後に胸腔内カテーテルを留置し,最大量ドレナージし帰宅。10日目までに1L未満のドレナージを3回以上行った。評価前に最大量の胸水をドレナージし,放射線画像検査で肺野が75%未満,または胸水により1/3以上の透過性低下(胸腔超音波検査で見積もる)があった患者を,タルク群(タルク4g+生理食塩液50mL)とプラセボ群(生理食塩液50mL)へ無作為に最小化法を用い1:1に割り付けた(隠蔽化あり,患者のみ盲検)。

[プライマリアウトカム]

35日後の胸膜癒着術の成功(ITT解析)

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基本情報

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Hospitalist
6巻3号 (2018年9月)
電子版ISSN:2433-510X 印刷版ISSN:2188-0409 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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