作業療法ジャーナル 55巻5号 (2021年5月)

特集 訪問作業療法はこれでいいのか?

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特集にあたって

 2021年度(令和3年度)に介護報酬・障害福祉サービス等報酬が改定された.今回の改定では,感染対策強化や継続的な自立支援サービス提供体制を基盤に,地域包括ケアシステムの推進強化が謳われている.また,そのサービス提供の必要性や専門職の介入効果もデータ化が進められる.在宅においては,入院期間が短くなり,在宅医療が担う役割は大きくなり,対象者のニーズも多様化するため,多職種で対応していかなければならない.障害・福祉の領域においても,対象者の高齢化への対応が求められている.

 これらに応えていくためには,提供する側の体制構築が必要であり,在宅では通いや訪問,入所等のサービス確立がメインとなる.訪問の作業療法は,この時代背景を基にさまざまな制度下に位置づけられ,対象者の幅も広がっている.生活機能をアセスメントし,生活課題を明確にし,具体的な解決策が提示できるOTにとって,訪問という舞台はまさに最適であり,より効果的な力を発揮する.

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Key Questions

Q1:訪問の作業療法の課題は何か?

Q2:対象者のための多職種協業とは?

Q3:訪問の作業療法を根拠づけるには?

はじめに

 2021年度(令和3年度)介護報酬改定がなされた.今回の改定には,①感染症や災害への対応力強化,②地域包括ケアシステムの推進,③自立支援・重度化防止の取り組みの推進,④介護人材の確保・介護現場の革新,⑤制度の安定性・持続可能性の確保の5つの柱があった.

 新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が始まったとはいえ,ワクチンの十分な供給量の確保や,接種に当たる医師や看護師,集団接種できる場所の確保等,その体制整備も急がれる.介護報酬改定においても,感染症対策強化と事業継続性を考慮して特例的な評価として0.05%プラスされ,全体としては0.7%プラス改定となった.この改定には,地域包括ケアシステムを深化していくことはもちろんのこと,自立支援に資するサービス提供ができるよう,データ提出だけでなく,現場へフィードバックすることで課題となる点を明確にすることができ,より質の高いサービス提供につなげるため,PDCAサイクルに取り組めるよう構築されている.

 具体的には,ADL,栄養,口腔,嚥下,認知機能等を横断的かつデータで明確化することで,利用者を身体機能だけでなくICFの視点で俯瞰的に評価でき,不足しているプログラムを明示することができる.たとえば,運動機能が向上せずに維持傾向の場合,体重が減少していれば栄養指導もプログラムに入れていかないといけない.

 訪問リハでは,退院退所後のリハの充実として,退院退所日から3カ月以内は週12回まで介護報酬の算定が可能となり,在宅生活へスムーズな移行が図られている.また,リハビリテーションマネジメント加算に関しても,自立支援・重度化防止に向けてさらなる質の担保を求め,見直しがされた.通所リハでは,運動負荷量,リハ方針,修了の目安や時期に関して,医師の指示が明確にあるものについては有意に通所リハが修了したとのデータもある1).訪問リハにおいても,リハビリテーションマネジメント加算を通じて,訪問リハ計画書のデータを提出することにより,サービスでPDCAサイクルを実施し,より一層医師との連携を図り,有効な訪問リハを実施してもらいたい.

 どのサービスでもそうだが,リハ・機能訓練,口腔,栄養の取り組み・連携強化が謳われている.利用者に対してそれぞれが計画を立てていくものだが,一体的な計画・実施が期待されている.一方,訪問看護ステーションのリハ職による訪問は減算となった.訪問看護ステーションでは中重度の利用者がメインとなるが,その中でも難病,ターミナル,重度心身障害児,小児慢性特定疾患,精神疾患等,障害や病気と共に生活していく方は,ご本人・ご家族をサポートする医師,看護師,リハ職,介護職等が協業していかなければ在宅生活は継続できない.この改定からも読み取れるが,自立支援に向けて多職種で連携しながら,多様なニーズに応えていかなければならない.そのためにも,データを蓄積・分析し,計画書やプログラムへ反映していくべきである.

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Key Questions

Q1:震災後に活動不活発に陥る要因は何か?

Q2:利用者の活動不活発を予防するために,作業療法士はどのように地域で活動をするべきなのか?

Q3:利用者と地域資源をつなげるために作業療法士ができることは何か?

はじめに

 東日本大震災(以下,震災)を受けて,国は震災からの復興の円滑かつ迅速な推進と活力ある日本の再生に資することを目的とし,2011年(平成23年)12月に東日本大震災復興特別区域法1)を施行した.その中で規定される特定地域活性化事業の一つに訪問リハビリテーション事業所整備推進事業があり,特例措置として事業者に該当する訪問リハビリテーション事業所であって,病院,もしくは診療所,または介護老人保健施設との密接な連携を確保し,主治医の指示の下,指定訪問リハビリテーションを適切に提供できると知事が認めるものについては,開設主体を病院,診療所および介護老人保健施設に限定しないとされている2).浜通り訪問リハビリステーションは,一般財団訪問リハビリテーション振興財団の第一号の訪問リハビリステーションであり,被災地の復興を第一義として2012年(平成24年)11月に開設された3)

 訪問リハビリステーションのOTとして筆頭筆者が南相馬市で行ってきた活動や経験を踏まえ,地域における予防的介入と地域でのOTの役割について述べていく.

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Key Questions

Q1:訪問看護ステーションからの訪問作業療法の実際は?

Q2:連携する他職種や対象者はリハをどう捉えているのか?

Q3:地域づくりの取り組みにおける作業療法士の視点は?

はじめに

 訪問看護とは「主治医の指示に基づき,保健師,看護師,理学療法士等が,このサービスを必要とする方の生活の場である家庭を訪問し,健康上の問題や生活上の障害のある方々に対して専門的なケアを提供するサービス」と定義1)されている.看護師とリハスタッフが協働する訪問看護ステーション(以下,訪看)では,医療依存度の高い方に対しても,在宅におけるその方らしい生活を支援しやすい.

 医療法人ならの杜(以下,当法人)は,呼吸器科,緩和ケアを含む外来,往診のクリニックがあり,施設内にある当訪看の対象疾患は,がん,COPDや特発性肺線維症等の呼吸器疾患,ALS等の難病の対象者が多い.

 訪看からの訪問作業療法の事例,対象者や多職種からいただく声を通して,訪問作業療法の役割と意義を考えたい.また,当法人の所在地区で取り組んだ地域づくりについても少し紹介したい.

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Key Questions

Q1:地域に必要とされる作業療法の実践とは?

Q2:地域で活躍できる精神科訪問看護と作業療法に向けて何をすべきか?

Q3:精神科訪問看護に必要とされる生活行為向上の視点とは?

はじめに

 精神科訪問看護におけるOTの存在意義は,長年培われてきた作業療法の理論,精神科作業療法の知識,方法論を地域にて実践・提供できることにある.まずは,地域で実践できるまで,作業療法,精神科作業療法の発展に貢献してこられた諸先輩方に感謝したい.筆頭筆者も精神科病院にて精神科作業療法の実践に15年以上取り組み,その経験は現在の精神科訪問看護の実践でも大変重要なものとなっている.

 当法人の所在する和歌山市でも「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築」に向けた協議が実施されている.本人が望む場所で,ニーズに応じた治療が受けられる体制を構築する観点からも,精神科訪問看護を実践する訪問看護ステーションは重要な役割を担っている.

 今回,当法人訪問看護ステーションの事業所紹介,事例報告から精神科訪問看護におけるOTのかかわりの意義を考察した.

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Key Questions

Q1:訪問リハと訪問型サービスの違いとは?

Q2:訪問型サービスにおける作業療法士の役割とは?

Q3:対象者のセルフマネジメント力を引き出す支援のあり方とは?

はじめに

 少子高齢化や人口減少の課題を総称した,いわゆる「2025年問題」というものに対して,高齢者が住み慣れた地域で,その有する能力に応じて自立した日常生活が営めるようにするため,多種多様な支援を地域の実情に応じて提供することが地域包括ケアシステムのかたちとされている.そして,その実現のための取り組みとして各市町で運用されているのが,「介護予防・日常生活支援総合事業」(以下,「総合事業」)である.

 2015年(平成27年)からスタートした「総合事業」は,市町が中心となって,地域の実状に応じて,住民等の多様な主体が参画し,多様なサービスを充実することで,地域の支え合い体制づくりを推進し,要支援者等に対する効果的かつ効率的な支援等を目指すものである(構成例は文献1を参照).「総合事業」における多様なサービスの展開は各市町の実状に応じて検討されるが,訪問型サービス,通所型サービスにはそれぞれ緩和した基準によるサービス(A型),住民主体による支援(B型),短期集中予防サービス(C型)等のサービスの類型が厚生労働省のガイドライン2)によって示されている.

 短期集中予防サービスにおける訪問型サービスC(以下,訪問C),通所型サービスC(以下,通所C)は,生活機能が低下している高齢者に対し,期間を設定し(3〜6カ月),リハ専門職等が集中的な支援を行うことで効果的に機能回復を図るサービスとされている(両サービスの概要は文献2を参照).具体的には,高齢者のセルフケア能力を高める働きかけを行い,サービス終了後も継続して介護予防に取り組み,自立した生活ができるように支援することであり,サービス提供期間を通じて生活機能の改善が得られた場合には,可能なかぎり「一般介護予防事業」における住民運営の通いの場など,社会参加のための場所への移行を目指すものである3)

 短期集中予防サービスは,従来の要支援者(以下,要支援者)および基本チェックリスト該当者(以下,事業対象者)を対象に提供されるサービスであり,基本的に要介護認定の対象者は支援対象とはならない.一方,訪問リハビリテーション(以下,訪問作業療法)は,要介護および要支援の介護認定対象者に提供されるサービスであるが,事業対象者への訪問作業療法による介入は制度的に難しいものがある.また,総合事業における短期集中予防サービスに限らず,地域支援事業という枠で考えれば,地域リハビリテーション活動支援事業によりOTの訪問型援助(以下,訪問指導)が行われるケースもある.本稿では,訪問Cや訪問指導を「地域支援事業における訪問サービス」と捉え,その取り組みにおけるOTの介入のあり方と役割について考えていきたい.

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はじめに

 2021年度(令和3年度)介護報酬改定では,看護師の訪問看護費は上がるもPT等の訪問看護費は下がる結果となった.訪問看護を利用する住民のニーズはどのようなものか.「平成30年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査」(厚生労働省)の複数回答可能なアンケートでは,看護師が要支援者に訪問した目的のうち,「ADLの維持・低下防止」を含めた回答が28.6%,要介護者に至っては36.6%もの方が看護師の訪問の目的に「ADLの維持・低下防止」を含めた回答をしている.昨今,社会保障費の増加に伴う財政圧迫が問題視されており,予防的支援に関しては地域での活動やボランティア等での方針になっており,健康予防から専門職が能力を発揮する機会が減ってきている懸念点もあると筆者は考える.持続可能な制度を確立するためにも,OTの専門性を発揮し,効率的に効果を発揮することでも制度の安定性・持続可能性の確保に一歩近づくことができるのではないか.

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ケースから考察するOTの強み

 60代後半,男性.脳梗塞で救急搬送され,退院後はサービス付き高齢者向け住宅への居住となったケース.発症前は,会社を経営していた.離婚後,数十年間一人暮らしで飲酒量も多く,あまり積極的に人生を謳歌しているタイプではないようにみえる.後遺症で左片麻痺と高次脳機能障害がある.入院中リハを経て,装具を装着して杖歩行できるようになった.

 退院後,訪問看護ステーションからPTが介入し,訪問リハビリステーションからOTが介入している.PTの機能訓練とOTの作業療法のコラボで,当初は自宅へ戻ることを想定していたケースである.

わたしの大切な作業・第37回

母の絵と向き合う 荻野 アンナ
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 7年前に画家の母を亡くした。広いアトリエと倉庫が家に付いている。そのまま放置したせいか、絵によっては痛みが激しいと判明した。母の命を注いだ作品が、汚れ、カビ、ヒビ、剝落の犠牲になっている。痛みのひどいものを数点、専門の機関に修復を委託した。

 先日、絵の修復の現場を見せてもらった。母の大作を2つ立てかけると、壁面がいっぱいになってしまう。絵の汚れは、拭くのかと思っていたら、水をつけた綿棒で丁寧にぬぐっていく。それだけでも気の遠くなるような作業だ。

提言

集団感染と作業 上江洲 聖
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●選択肢が少なすぎるか,多すぎるかよりも,選択できないことが苦しい

 居酒屋で酔って眺める議論のようだった.

 前提に基づいて結論を主張する者,事実に基づいて推論する者,仮説の検証を試みる者.論点がズレていることもあった.多角的な視点を絡み合わせて解決の糸口がみえそうなこともあった.報道番組,報道番組のフリをしたワイドショー,新聞,ネットに拡散された情報をかき集めて議論する人たちの会話が嫌でも耳に入り込んできた.新型コロナウイルスが日本に広がって1年以上が経過した.

あなたにとって作業療法とは何ですか?・第77回

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全てに通じるエネルギー

 私は出生時のアクシデントにより右上肢の感覚と可動域に障害があります.幼少時からまっすぐ走りにくい,箸が上手に持てない等の違和感がありました.剣道を習いはじめたとき,背中や後頭部での紐結び習得に苦労し,徐々に障害を自覚してきました.書道では筆圧調整が難しい,算盤の珠を感覚のない指ではじくのが難しい…….でも誰にも言えない.できない自分を認められない.あきらめなければならない活動もありました.それでも箸は左手に持ち替え克服? 算盤は感覚消失を目の代償で補い練習継続,剣道も自分が勝つ方法を求めて「左諸手上段」の構えで有名な先生のもとで修業できる高校を選択する等,貴重な経験ができました.

 高校卒業時,鍼灸マッサージ師になりたい夢をもち,養成校受験を試みました.しかし,障害を理由に受験拒否,面接で入校拒否を宣言される等,そのまま目標を失い,浪人となりました.その後,作業療法士という役割を知り,経験が活かせる仕事と確信し,この道に進みました.作業療法と出会った私は,幼少期からの経験も含めて充実しています.作業療法は私にとってのエネルギーであり,全てです.

講座 子どものあやし方,褒め方,叱り方,励まし方・第3回

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はじめに

 図 1は今年,当施設に入職したOT(よしき氏)が描いてくれた子どものイラストである.彼は絵を描くことが好きで,そのこともOTを志した動機の一つになっている.大好きな幼稚園の先生に「絵が上手」と褒めてもらったことが,絵を描くことを好きになったきっかけである.その先生は彼の絵を褒めたことはもう覚えておられないかもしれない.でも,その出来事が,その後の彼の人生に大きな影響を与えた.

 彼の描画の能力と,褒められた経験と,そして褒めてくれた人のことが大好きだったこと,幼児期にこれらが重なった結果,彼は絵を描くことが好きになり,物を創作することが好きになり,作業を提供するOTになった.

 同様に,私たち自身の記憶にも残っていない,専門職としてのかかわりが子どもの人生に影響を与えることを自覚したい.岩﨑ら1)はOTを「子どもが持っている能力をその都度全開させてくれるセラピスト」と述べている.子どもの能力を全開にするOTの技術として今回のテーマを考える.

シリーズ ポストコロナ社会を考える—変わるもの,変わらないもの

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 感染がまだ収束していない段階で,「ポストコロナ期に社会はどう変わるか」を問うのはいささか前のめりの気もする.でも,そういう未来予測を行うことはたいせつなことだと私は思っている.いまの時点で「予兆」として見えてきたもののうちいくつかはのちに現実化し,いくつかはそのまま立ち消えになる.何かは実現し,何かは実現しない.「起きてもよいはずのこと」のうちいくつかは起こらない.なぜ「起きてもよいこと」は起こらなかったのか,それを思量することは私たちの社会の基盤をかたちづくっている「不可視の構造」を手探りするためには有効な作業だと私は思う.

 歴史家は「起きたこと」について「それはなぜ起きたか」を説明してくれるが,「起きてもよかったのに起きなかったこと」については何も教えてくれない.歴史家の仕事ではないからよいのだが,私は気になる.いまコロナ感染爆発の渦中にあって,いくつかの社会的変化の予兆が見えている.よい予兆もあるし,悪い予兆もある.ここでそれがどうなるか予測してみたい.だから,私がこれから書く文章はできたらコロナ収束後,あと1年か2年あとに読んだ方が面白いかも知れない.

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ドラえもんとOTの専門

 コロナ禍において望むことは,ドラえもんの存在と,親友ののび太君の要望に応えるためにひみつ道具を取り出せる四次元ポケット,そして,取り出されるさまざまなひみつ道具である.そのひみつ道具の中で特に代表的なものは,目的地に瞬時に移動できる「どこでもドア」や頭頂部に取り付けるだけで空が飛べる「タケコプター」である.新型コロナウイルス感染症の防止対策として「不要不急の移動の自粛」を求められているが,どこでもドアやタケコプターがあれば,移動によるリスクはなくなる.さらに,ドラえもんなら飛沫と一緒に放出されたウイルスを目に見えるようにするサーチライト,感染から身を守ってくれる透明なウイルス除去シールドもしくはウイルスを寄せ付けない衣服,マスクを着用しながらでもウイルスの感染を防ぎ食事ができるマスクといったひみつ道具を四次元ポケットから出してくれるに違いない.夢のような話である.

 筆者は現在,OTとして,臨床の現場で日々患者からの要望に応えているが,コロナ禍で,感染対策としての生活指導や,新しい生活様式が求められる中で,新しいジャンルの生活支援用具の作製依頼がある.まるで,のび太君とドラえもんのようなやり取りである.のび太君は自分でできないことをドラえもんにお願いし,要望に応えられるひみつ道具を出してもらい,夢や希望を叶える.OTは生活支援用具を作製し,患者の希望を叶える.時にはのび太君が「無理難題」をドラえもんにお願いする場面もあるが,そんなときでもドラえもんは少し悩みながら視点を変えて,その要望に応えられるひみつ道具を見つけ出す.そのドラえもんの対応力は,OTの専門である生活支援用具を作製するうえで非常に勉強になる.

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「UDワーク」の紹介

 UDワークは,OT,学生を中心に,地域住民,要介護当事者と協働し,社会参加や自己実現活動に取り組む実践団体であり,2014年(平成26年)よりつくば市を中心に活動を行っている.シニアの社会参加にあたり,ICT活用も勧め,スキルマッチサイト「イベントキャンバス」(https://eventcanvas. jp)の開発を行っていた.

 しかし,突如として現れたコロナにより生活様式が一変することとなった.一番大きなリスクと感じたことは地域のつながりの分断による健康被害である.そこで2020年(令和2年)4月より,OT,作業療法学生を中心とした「SmartOT」チームを結成.シニア支援型オンラインサロンのトライアルを開始し,地域のつながりを保つことで,孤立するシニアの生活や健康をサポートすることを目指した.(前田亮一)

連載 目標設定のエビデンス・第1回【新連載】

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なぜ目標設定なのか?

 近年,作業療法において目標設定が重要視されている.その背景には,日本作業療法士協会による生活行為向上マネジメント(Management Tool for Daily Life Performance:MTDLP)の推進や作業療法の定義改定,そして地域包括ケアシステム構築の政策等により,作業療法全体において,①クライエント中心の作業療法,②作業に焦点を当てた実践,③地域移行支援に対する気運の高まりがある.目標設定は,これら①〜③の実践を成功させるための重要なプロセスとして注目されていると考えられる.訓練室内で医療者中心の意思決定に基づく,心身機能面に偏った作業療法を変えていきたいと思う方は,この連載を参考に目標設定のプロセスからご再考いただきたい.

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はじめに

 前号の「持続可能な開発目標(SDGs)が目指すもの」では,SDGsを理解するための基本事項を示した1).本稿では,SDGsにおける「障害」に対する具体的なプログラムやアプローチ方法について報告する.前号がSDGs基礎編とするならば,本稿はSDGs応用編と位置づけられる.

 前号でも言及したように,SDGsの17目標のすべてに「障害」に関する記載があるわけではない.「障害」という用語が明記されているのは,目標4「教育」,目標8「経済成長と雇用」,目標10「不平等」,目標11「持続可能な都市」,目標17「実施手段」の5つのみである.また,目標3「健康・福祉」でのユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)はリハを含む医療提供体制に関するものであり,間接的に「障害」にかかわるものである.

 国連は,SDGsにおける障害の位置づけを“Disability-Inclusive”を切り口とし,わかりやすく説明している(図).併せて,「2030年を心に描こう—障害者のために世界を変える17の目標(Envision 2030:17 goals transform the world for persons with disabilities)」キャンペーンを展開し,障害者対策とSDGsの親和性について周知を図っている2).国連だけでなく,日本においても“Disability-Inclusive”のコンセプトに基づく先駆的な取り組みが始まっている.誰一人取り残さない社会の実現のため,すべての国連加盟国がそれぞれ具体的な目標を掲げ,SDGs達成を図ることを目指している.また,SDGsに関係する活動は,公的機関だけでなく,民間企業やNGO/NPO等,多くのステークホルダーを包含するかたちで展開することで,さらに効果的に推進できる.

 本稿では,各企業・団体で行われているSDGs推進活動の好事例から,障害者を対象としたプログラムをいくつか紹介する.また,地域リハとSDGsとの関連性についても概説し,SDGsの観点からみた障害者へのリハについて考察する.

連載 老いを育む・第12回【最終回】

死を想う 柏木 哲夫
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日本の高齢化

 日本の高齢化が進んでいることは誰もが認識していることですが,数字を見るとそれが現実味をもちます.2015年(平成27年)には「第一次ベビーブーム世代(団塊世代)」が前期高齢者に到達し,その10年後(2025年)には高齢者人口が約3,700万人に達すると推測されています.これまでの高齢化の問題は,高齢化の進展の「速さ」の問題でしたが,2015年以降は,高齢化率の「高さ」(=高齢者の多さ)が問題になってきています.高齢者問題の中で,その死に場所に関することは,個人,家族の問題であると同時に,国全体の重要な課題です.

OTジャーナルの仕事論 働く場所編

靴とインソールの世界へ 中尾 春子
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 はじめまして.長野県長野市で「足と靴の修理店DecoBoco」を営んでいる中尾春子と申します.

 昭和大学の保健医療学部作業療法学科を卒業後,実習中にお世話になった地元の横浜市の病院にOTとして7年半務めた後,結婚を機に長野県長野市に移住しました.その後は,平日週3〜4日で長野市のデイサービスで勤務し,土日は自分の店舗をオープンする生活を送り,現在に至ります.

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■お料理のすべてがリハビリ

 おせち料理は病院のキッチンではできないけど,クリスマスの料理で何かできないかと考え,そこで決めたメニューは,「鶏肉のクリーム煮」と「クリスマス用のパイ」でした.パイ用のカスタードクリームなら,小さなお鍋1個とボウル1個と泡だて器があればできる! ここのキッチンでも十分できるメニューです.記憶に不安がある私ですが,料理のレシピは手元にないけれど,子育てしているときにスピーディーな料理をつくっていたことは覚えていました.記憶というより,体感している料理です.脳の働きとして,注意,情報処理,記憶力,遂行(段取り),そして気づき(自己認識),時間配分等,料理は頭を使います.料理をするときは,時間がわかりづらかったため,必ずストップウオッチで時間を計り,生焼けがないようにしました.ほとんどの料理は10〜15分で完成します.鶏胸肉を軟らかくする方法としてフォークで数カ所突き刺していく方法を教えてあげたら喜ばれ,おいしいクリスマス料理を一足先に食べることができました.

 お料理をすること,そしてお料理を教えることが,作業療法のリハで,脳のリハになるそうです.外傷もない私は入院生活に退屈するところでしたが,料理をすることで,目標もでき,パソコンでレシピを打ったり,打ち合わせをしたり,時間管理もすべて私のリハになっていました.自分ではわかりませんでしたが,同室の友だちからは,どんどん変化していくのに驚いたと言われました.目の輝きが違う…….ほんと,脳梗塞になったことを忘れてしまうほど楽しくなっていました.喜んでくださるスタッフのために,もっとおいしい料理を見つけようと思っていました.松原さんと出会ったことで,病気を乗り越えて楽しむことができてよかったです.スタッフの方々の料理の技術の向上にも役立てたと思います.病気の悩みや不安も何でも相談でき,不安をなくしてくださいます.

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Abstract:超高齢社会を迎え,高齢者の生きがいに対してOTがかかわる社会的な要請が高まっている.本研究では,臨床のOTの高齢者の生きがいの捉え方とかかわりを明らかにすることを目的に,12名のOTにインタビューを実施した.質的帰納的分析の結果,大カテゴリ≪クライエント≫,≪生きがい≫,≪生きがいと捉えた理由≫,≪かかわる前の様子≫,≪かかわり≫,≪かかわり後の様子≫が抽出された.OTが高齢者の≪生きがい≫として捉えたものには,中カテゴリ【活動】と【生きがいの活動に伴う価値】が含まれ,作業と作業の背景状況にかかわる専門職の視座が表れていた.この視座に基づき,OTは必要な【かかわりの状況の設定】を行い,クライエントの生きがいである活動の【実行】を支援し,活動の変化のみならず,【他者交流の質と機会の向上】,【周囲の変化】の背景状況の変化をも成果として捉えていた.

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Abstract:認知症高齢者とかかわる際に,介入者が無表情のときと,笑顔のときで,対象者の表情が変わるのかを,笑顔度を数値化できる機器(スマイルスキャン)を用いて,検証を行った.介入の際に行う作業と言葉がけは統一し,介入者が無表情の場合(介入A)と,介入者が笑顔の場合(介入B)を比較した.21名のデータから,スキャン率が介入A,Bともに50%以上の12名を対象とし統計処理を行ったところ,笑顔度の中央値,1分当たりの笑顔表出時間において,介入A(無表情介入)と介入B(笑顔笑顔)の間には統計的な有意差がみられた.笑顔度の中央値は介入Aより介入Bのほうが7.8,1分当たりの笑顔表出時間は2.2秒増加した.また,Dementia Care MappingのWIB値の比較においても統計的な有意差がみられ,中央値は1から3に増加した.介入者が認知症高齢者に笑顔でかかわることで,対象者の笑顔が引き出され,ウェルビーイングも高まることが明らかになった.

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Abstract:労作時の呼吸症状の増強を避けるため,身体活動量を制限し自宅内を主とする生活を送っていた慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対して,患者の希望である不活動な生活習慣の改善に取り組んだ.その結果,定期的な運動習慣を獲得することができ,さらに公園の散歩を契機に当初はあきらめていた故郷への帰省を達成するに至った.作業療法評価に基づき,呼吸困難感の軽減を考慮した運動療法および屋外散歩の機会を提供し成功体験を重ねたことで,患者の外出に対する不安感が軽減し,最終的に帰省という目標の実現につながったと推察される.訪問リハにおいては,対象者の機能の維持,向上のためのアプローチのみに終始するのではなく,「作業に根ざした実践」に焦点を当てたかかわりによって,活動・参加上での行動変容を支援していく視点が重要である.

昭和の暮らし・第53回

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 人が暮らしていく中で欠かせない設備に便所・トイレがある.

 便所に置かれている道具は,さほど多くはない.その一つが用を足した後に拭き取るための紙.現在はロール式のトイレットペーパーが主流であるが,便所が和式の汲み取り式だった時代には,ちり紙,落とし紙といったものが使われていた.中には,新聞紙をクシャクシャに揉みほぐして使っていたという思い出を語る方も多い.

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目次

表紙のことば/今月の作品

研究助成テーマ募集

お知らせ

第56巻表紙作品募集

Archives

学会・研修会案内

次号予告

編集後記 香山 明美
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 東日本大震災から10年を迎えた3月11日に,被災地の沿岸部を訪れた.住宅地はなくなり,大きな公園に震災記念碑が建っている.被災地では,忘れてはならないこの体験を,伝承館や記念碑に託している市町も多い.生活圏域と沿岸部を大きく隔てる,かさ上げされた防潮堤が南北に延び,浜辺が直接眺められる風景はなくなった.この2月,3月に震度5の地震が続いているので,多くの人が,あのときの情景と感情が蘇る体験をしたのではないかと思われる.「一日一生」この言葉を胸に刻みながら日々を過ごしている.

基本情報

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作業療法ジャーナル
55巻5号 (2021年5月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0915-1354 三輪書店

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