シリーズ ポストコロナ社会を考える—変わるもの,変わらないもの
ポストコロナ期に社会はどう変わるか
内田 樹
1
Tatsuru Uchida
1
1凱風館
pp.464-465
発行日 2021年5月15日
Published Date 2021/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202503
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感染がまだ収束していない段階で,「ポストコロナ期に社会はどう変わるか」を問うのはいささか前のめりの気もする.でも,そういう未来予測を行うことはたいせつなことだと私は思っている.いまの時点で「予兆」として見えてきたもののうちいくつかはのちに現実化し,いくつかはそのまま立ち消えになる.何かは実現し,何かは実現しない.「起きてもよいはずのこと」のうちいくつかは起こらない.なぜ「起きてもよいこと」は起こらなかったのか,それを思量することは私たちの社会の基盤をかたちづくっている「不可視の構造」を手探りするためには有効な作業だと私は思う.
歴史家は「起きたこと」について「それはなぜ起きたか」を説明してくれるが,「起きてもよかったのに起きなかったこと」については何も教えてくれない.歴史家の仕事ではないからよいのだが,私は気になる.いまコロナ感染爆発の渦中にあって,いくつかの社会的変化の予兆が見えている.よい予兆もあるし,悪い予兆もある.ここでそれがどうなるか予測してみたい.だから,私がこれから書く文章はできたらコロナ収束後,あと1年か2年あとに読んだ方が面白いかも知れない.
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