medicina 30巻6号 (1993年6月)

今月の主題 心不全診療の新たな展開

INTRODUCTION

心不全治療の新たな展開 芹澤 剛
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 1988年の厚生省死亡統計によれば,日本人の心疾患による死亡率は上昇を続け,人口10万人当たり約120人に達している(図1).一方,アメリカの統計によれば,同年の虚血性心疾患による死亡率は,1965年の人口10万人当たり240人をピークに減少を続け,同じく120人とされている(図2).

 この数字を見ると,心不全による死亡率,逆にいえば発病率が日米でほぼ並んだことになるが,これは実際の臨床現場の印象とは異なる.わが国では,例えば末期癌で死亡しても,死亡診断書に心不全または呼吸不全と記載する悪しき風潮があり,この数字は相当割り引いて扱う必要がある.

心不全とは何か 飯塚 昌彦
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●心不全は状態像,症候群であって疾患単位ではない.

●心機能低下は出発点であるが,その程度は病像と並行しない.

●血行動態異常は病像を必ずしも説明できない.

●代償機序についての知見,理解は急速に進歩・変化している.

●慢性心不全の治療法は目標によって異なる.すべての目標を同時に達成する治療法はいまだない.

大規模スタディは何を教えたか

PROMISE 伊東 春樹 , 加藤 和三
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●PROMISE studyとは,ホスポジエステラーゼ阻害薬であるミルリノンの重症心不全患者の長期生命予後に対する効果を,プラセボを対照薬として検討した臨床試験である.

●ミルリノン群では561例中168例(30%),プラセボ群では527例中127例(24%)の死亡例が認められ,全死亡率ではミルリノン群のほうが有意に高率で,突然死の頻度が高かった.

●重症心不全に対する強心薬治療は,対象の原疾患や重症度ならびに不整脈の有無,また薬剤の投与量や投与方法,投与期間などを十分に検討する必要がある.

CONSENSUS 諸岡 成徳
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●北欧3国の35施設でエナラプリルの心不全延命効果を評価した.

●重症心不全253例を二重盲検法で平均188日治療し,6ヵ月の死亡率はプラセボ群(126例)44%,エナラプリル群(127例)26%で,延命効果がみられた.

●心不全代償関連血中ホルモン値は死亡例で高く,エナラプリル群では改善していた.

●二重盲検試験後2年間追跡調査を行い,エナラプリル継続投与で死亡率は低く,初期投与効果は12〜15カ月後に消失,同死亡率となった.これは減負荷による心筋保護の結果と考えた.

SOLVD 白土 邦男
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●左室機能障害例(駆出率≦0.35)に対するアンジオテンシン変換酵素阻害薬エナラプリルの効果を無作為二重盲検試験にて検討した.

●心不全症状を有する症例(SOLVD治療試験)では,死亡率の改善,ならびに心不全による死亡と入院頻度の減少がみられた.

●無症状の症例(SOLVD予防試験)では,心不全の発生頻度,ならびに心不全による死亡と入院頻度の減少がみられ,同時に症状出現までの時間も延長した.

●以上のように,左室機能障害例に対する本剤の有用性が認められた.

V-HeFT I,II 芹澤 剛
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●血管拡張療法(ハイドララジン・硝酸イソソルビド)が心不全患者の生命予後を改善することを示した最初の報告.

●軽・中等度の心不全患者では,ACE阻害薬エナラプリルのほうが,ハイドララジン・硝酸イソソルビド併用より心不全患者の生命予後を改善する.

●心収縮能の低下した無症状の心疾患患者で血管拡張療法を行っても,年間死亡率は8.2%(エナラプリル),14.9%(ハイドララジン・硝酸イソソルビド併用)にのぼる.

●冠動脈疾患による心不全の予後は悪い.

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●ザモテロールは交感神経β1受容体部分刺激薬であり,内因性交感神経活動の低いときはβ刺激作用を,高いときは遮断作用を発揮する.

●軽・中等症の心不全患者に対しては本薬剤の長期有効性が認められている.

●逆に,重症心不全における臨床試験ではプラセボよりも死亡率が高率であった.そのため,本邦ではザモテロールの開発は中止された.

●重症例で死亡率を悪化させた機序として,これらの患者では内因性交感神経活動が亢進しており,そのためにβ遮断作用が優位に発揮されたものと推察される.

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●Ca2+拮抗薬を慢性心不全治療に用いる目的は血管抵抗軽減,冠動脈拡張,心室拡張能改善である.

●これまでに,Ca2+拮抗薬は慢性心不全治療に有効であるという報告,逆に心不全を悪化させるという報告のいずれもがある.

●最近のcontrolled studyの結果は,慢性心不全治療でニフェジピンを長期投与すると,約25%に心不全の悪化がみられることを示した.

●左室収縮障害による慢性心不全にニフェジピンを長期投与すると,心不全を悪化させる可能性がある.

CAST 飯沼 宏之
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●CASTは,OMIに合併した軽症PVCをIc群薬で治療した場合の延命効果について比較した試験である.

●対象(平均EF=0.40)はIc群薬のPVC抑制効果が証明されている例で,実薬群と偽薬群に二分され,不整脈死の発生率が比較された.

●実薬群の不整脈死死亡率(4.5%)は偽薬群のそれ(1.2%)より有意に高かった.

心不全治療の最前線

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●急性心不全の治療目的は,心拍出量の増加とうっ血の軽減による血行動態の改善にある.利尿薬,血管拡張薬,強心薬を使用して,迅速かつ適切な治療を行う.

●慢性心不全の治療の究極の目的は,患者の生活の質の改善と死亡率の減少にある.重症度に応じて安静,食塩制限,薬物治療の選択を行うが,有効な治療法はいまだ確立されていない.

利尿薬 杉本 孝一 , 石井 當男
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●利尿薬は,心機能低下に基づく体液貯留を是正し,うっ血症状を改善する薬剤であり,うっ血性心不全の治療に不可欠である.

●軽症例では利尿薬単独で改善することもあるが,ジギタリスや血管拡張薬と併用されることが多い.

●長期大量投与時は低K血症,低Mg血症などの副作用の発現に注意し,適切な処置をとる.

ジギタリス 田村 勤
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●ジギタリスは陽性変力作用(心筋収縮力増強)と陰性変時作用(心拍数減少)をもち,うっ血性心不全に有用な薬剤である.

●ジギタリスは,頻拍型心房細動を合併した心不全例には第一選択薬である.

●種々のジギタリス製剤を使い分ける必要はなく,ジゴキシンの維持量を投与する.

●中毒を常に念頭に置き,胃腸症状,不整脈などの症状および低カリウム血症に注意を払い,中毒が疑わしいときには血中濃度を測定する.

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●血管拡張薬によるうっ血性心不全の治療は,最近の循環器疾患の治療法における大きな変革のひとつである.

●血管拡張療法は急性期心不全,慢性心不全の両者に適用される.

●急性期心不全の治療に使用される血管拡張薬は,その特質をよく知ったうえで使い分ける必要がある.

●慢性心不全に対するアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬による血管拡張療法は,症状発症の抑制と死亡率の減少をもたらすことが大規模比較試験によって示されている.

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●うっ血性心不全による循環不全(低心拍出量,肺うっ血)から離脱するうえでカテコールアミン系薬剤は欠かせない薬剤である.

●カテコールアミン受容体に関する基礎的知識が臨床でも活用され,心不全の原疾患や病態に応じて適切な薬剤の選択が可能となりつつある.

●慢性に投与できる経口薬も開発されるようになった.

●カテコールアミン系の強心薬で予後の改善が可能であるかどうかは今後の課題である.

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●PDE阻害薬は,心筋収縮力増強作用と末梢血管拡張作用を併せもつ薬剤である.

●急性心不全への急性効果として,心係数増大,肺動脈楔入圧低下,末梢血管抵抗減少が認められる。

●慢性心不全への長期投与で,予後を改善したとの報告は少ない.

●低血圧や血小板減少がある場合は使用しにくい.

Ca2+ sensitizer 遠藤 政夫
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●強心薬は,①心筋細胞内Ca2+動員の増加,および/または,②収縮蛋白のCa2+感受性の増強,の機構を介して作用を発揮する.

●Ca2+ sensitizerは②の機構によって陽性変力作用を示す強心薬であり,基礎実験では,サルマゾール,ピモベンダン,EMD 53998,MCI 154,Org 30029などがこの機序で強心作用を示す.

●これらの強心薬は,①activation energy(細胞内Ca2+動員に必要なエネルギー)を要さない,②心筋細胞にCa2+過剰負荷を起こさない,などの利点を有するため,心不全治療における効果が期待されている.

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●心不全に対するβ遮断薬療法は,心症状,心機能,不整脈とともに生命予後の改善をもたらす.

●心不全における交感神経活性の亢進は,短期的には心不全の代償機転として働くものの,長期的には心不全の悪循環を形成する.β遮断薬療法は,この悪循環を断つことにより不全心筋を保護し,心不全の改善をもたらすものと考えられる.

●β遮断薬の投与は,陰性変力作用による心不全の増悪を招かないように,初回投与量を低用量にとどめ,以後も維持量に達するまでは一定期間ごとに少量ずつ漸増する.

心筋代謝改善薬 山崎 昇
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●心筋代謝改善薬はいずれも生体内物質であり,ほとんど副作用がなく,不全心筋または虚血心筋における心筋代謝異常の改善をはかる薬剤である.

●通常,強心薬・利尿薬・血管拡張薬などと併用する.

●現在,使用されている心筋代謝賦活薬の主要なものとしては,Coenzyme Q10,ATP,ビタミンB群,アスパラギン酸塩などがある.

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●心不全時には心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)分泌が亢進しているが,ANPを投与するとさらなる利尿がみられる.

●心不全時のANPの代謝には酵素的分解が主体をなしている.

●ANP分解阻害薬は血中ANP濃度を高め,心不全治療薬としての有用性が動物実験や臨床研究において報告されつつある.

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●機械的補助循環法には大動脈バルーンポンプ(IABP)以外に静・動脈バイパス(VAB),左心バイパス(AAB),補助人工心臓(VAS)があり,流量補助ではVASが最も強力であるが,個々の患者の臨床状況に応じて適したものを選択すべきである.

●機械的補助循環は内科・外科の心原性ショック症例,および心臓移植待機症例にブリッジ使用される.心原性ショック症例の補助循環離脱率は45〜50%程度,長期生存率25%前後,ブリッジ使用では心臓移植率67.2%,移植後生存率77.7%である.

心臓移植 小塚 裕 , 古瀬 彰
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●1991年12月までに19,455例の心移植,1,212例の心肺移植の症例が登録されている.

●手術死亡率は9〜10%,遠隔成績は術後1年の累積生存率78%,5年で67%,10年で52%と良好である.手術成績の向上は免疫抑制療法と感染対策の進歩によるところが大きく,現在も活発に研究が行われている.

●ドナー不足が深刻な問題となっており,その対策として,ドナー心の虚血保存時間の延長,ドナーの年齢制限の緩和,移植情報ネットワークの整備,異種移植などの試みが研究,臨床応用されている.

急性心不全の治療 酒谷 秀雄 , 山口 徹
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●急性左心不全の原因疾患としては,急性心筋不全,急性弁機能不全,慢性心不全の急性増悪,その他がある.

●重症度の評価には,Killip分類,Swan-Gantzカテーテルで求めた血行動態に基づくForrester分類が有用である.

●治療の基本は,①原因治療の可否を判断する,②原因治療が困難ならば対症的に肺うっ血,循環不全の改善を目指す.

●内科的治療法としては,酸素療法,薬物療法,機械的補助法があり,急性心筋梗塞には再灌流療法がある.

心不全の病態生理と新しい評価法

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●心筋機能低下の機序に関して,収縮蛋白・収縮調節蛋白の異常,Ca2+ハンドリングの異常,心筋エネルギー代謝の変化,心筋細胞膜β受容体などの報告が多い.

●心肥大には求心性肥大と遠心性肥大があり,アンジオテンシン,イノシトール三リン酸,proto-oncogeneなど種々の因子が想定されている.

●心不全では自律神経系,内分泌系,骨格筋など,心臓以外のシステムにも様々な変化がもたらされる.

心不全の重症度評価 麻野井 英次
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●急性心不全の重症度判定の指標には,①うっ血,②低心拍出状態,が用いられる.

●慢性心不全の重症度判定の指標には,①身体活動能(日常身体活動能,運動負荷試験成績),②予後規定因子(身体活動能,左室容積・駆出率,血漿ノルエピネフリン,心房性利尿ペプチド,血清ナトリウム,不整脈),が用いられる.

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●慢性心不全患者の運動耐容能低下の原因として,心ポンプ機能以外に,骨格筋自体の異常が関与している可能性がある.

●筋肉自体の異常として,筋肉量の減少(萎縮)とエネルギー代謝効率の低下が考えられる.

●磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)は,非侵襲的なエネルギー代謝の検討に有用である.

心不全時の呼吸機能 谷口 興一
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●左心不全による肺うっ血は,肺循環障害を伴い,肺動脈圧や肺毛細管圧の上昇をきたして呼吸機能異常が招来される.

(1)換気障害:肺コンプライアンス低下,末梢気道の虚脱・閉塞

(2)肺内ガス分布不均等

(3)換気血流比の異常

(4)肺内シャントの増大

(5)拡散障害・肺胞低換気(重症になると)

心不全とカテコールアミン 大鈴 文孝
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●血漿ノルエピネフリン600pg/ml以上では生存が短いことも報告されている.

●近年,メタヨードベンジルグアニジン(MIBG)の131I標識体が開発され,非観血的に人間の心臓の交感神経機能を画像情報として評価することが可能になり,心筋の131I-MIBGの集積が心不全の予後を予測するのに最も重要な指標であったとの報告もされた.

●しかし,過剰な交感神経活動の高まりは,長期的にはカテコールアミンによる心臓毒性を生じたり,脱感作により心筋β受容体の減少を起こし悪循環となる.

心不全時の自律神経機能 佐藤 廣
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●心機能低下時には種々の代償機序が作動するが,そのうち自律神経がもっとも早い時期より変化する.

●迷走神経活動は,心拍変動スペクトル解析によって定量化することが可能となった.高周波成分は迷走神経活動を表し,低周波成分と高周波成分の比は交感神経活動を示す.

●無症状の心機能不全あるいは軽度の心不全ではまず迷走神経活動が消退し,重症になるにしたがい交感神経活動が亢進する.

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●運動能の低下は,心不全患者の多くで最も早期よりあらわれる徴候である.

●心肺運動負荷試験は,運動時の酸素輸送能を評価できることより,非侵襲的な心ポンプ予備能の評価法として有用である.

●心肺運動負荷試験でよく用いられる指標としてpeak VO2(症候限界性最大運動負荷時の酸素摂取量)とAT(嫌気性代謝閾値)があり,peak VO2は身体活動能力・心予備能・心不全重症度を,ATは骨格筋代謝機能・心不全重症度を反映する.

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●新しい超音波装置が開発され,心内膜自動検出による左室動態の実時間分析が可能となった.

●弁口部集束血流を用いたPISA法により弁口面積と逆流量が求められ,また,瞬時瞬時の値も計算されるようになった.

●心筋コントラスト法による灌流領域の可視化がすすみ,予後の判定にも応用されつつある.

●ストレスエコー法が普及しつつあり,虚血の検出とviabilityの評価が行われている.

●センターライン法による左室収縮能の定量化が可能となった.

心不全と不整脈 岡田 豊 , 小川 聡
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●左心機能低下例での抗不整脈薬療法は,陰性変力作用や催不整脈作用がジレンマとなり,副作用と隣合わせの治療になり得る.

●ベッドサイドで個々の症例での陰性変力作用や催不整脈作用を,投薬前に予測し得る方法はいまだ確立されていない.したがって,心不全症状を呈していなくとも,入院のうえ厳重なECGモニタリングが必須となる.

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●急性虚血性心機能障害として急性心筋梗塞,acute coronary syndromeの病態がある.

●慢性虚血性心機能障害として陳旧性心筋梗塞,hibernation,ischemic cardiomyopathyの病態がある.

●虚血・再灌流障害としてstunning,reperfusion injuryが検討されている.

●虚血に続発する僧帽弁逆流の分析に心エコーDoppler評価が有用である.

●Ischemic preconditioningに関する知見(adenosine,α-受容体の役割)が集積されている.

心不全に対する基礎的研究の進歩

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●心疾患に関する分子・細胞生物学的研究が盛んに行われるようになった.

●不全心筋においては種々の心筋遺伝子の発現レベルが変化している.

●心不全の原因となる心疾患にも,遺伝子変異に基づくものが少なからず存在する可能性がある.

●分子・細胞生物学的知見は将来的に心不全の診療を変貌させる可能性がある.

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●不全心において収縮蛋白および制御蛋白の構造変化がみられる.

●これらの変化は,筋線維のATPase活性の低下をもたらすことが多い.

●多様な原因疾患において共通した構造変化が起こっていることが多く,機能低下を代償するような適応現象と考えたほうがよいと思われる.

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●不全心筋あるいは肥大心筋では,筋小胞体のカルシウムイオン汲み上げポンプの数が減少し,細胞膜のカルシウムチャンネルの不活性化も遅れる.そのため,カルシウムトランジェントの持続時間は延長し,2峰性になる.

●不全心筋では細胞外へのカルシウムイオン汲み出し能力が低下する.

●これらの結果,不全心筋では,心筋弛緩能が低下する.この低下は高心拍数において著明になる.

●細胞内カルシウムハンドリングの異常は不整脈の誘因になり得る.

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●不全心で交感神経系の興奮によるβ1,α1受容体刺激により陽性変力・変時作用を示すが,非代償期にはdown regulationを生じる.

●レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系が亢進,Na+・水分の過剰保持で心拍出量を保つ.

●圧・容量負荷によりミオシンのアイソザイム変換,収縮蛋白の合成促進など心筋肥大を生じ,肥大心は相対的虚血に陥る.

●不全心では,心筋血流低下などによりミトコンドリアでの高エネルギーリン酸化合物の産生が低下する.また,筋小胞体機能の障害を生じ,細胞内Ca2+-transientが低下する.

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●拡張型心筋症では,α受容体刺激によるPIレスポンスの亢進,およびSRの細胞内カルシウム濃度調節機構の低下により,細胞内がカルシウム過負荷の状態になっている.

●拡張型心筋症のアデニレートシクラーゼ系は,β受容体を介した刺激が細胞内に過剰に伝わりすぎないように,G蛋白質のレベルで制御されている.

●肥大型心筋症においてはα受容体刺激-PIレスポンス系が亢進している.

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●ANPとBNPは,強力な利尿,ナトリウム利尿および降圧作用を有し,主に心臓より分泌される心臓ホルモンとして作用する.

●ANPとBNPは,それぞれ心房・心室より分泌されるが,心不全患者の心室において両者の生合成・分泌は著しく亢進する.

●心不全患者における血中ANP・BNP濃度は重症度に比例して上昇し,それぞれ体液量,左心室機能の良い指標になる.

●ANPあるいはBNPを心不全患者に投与すると,いずれも左心室機能を改善し,心不全治療薬として有用である.

心不全と血管作動物質 平田 結喜緒
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●心不全では,心臓の代償機構として血管作動性物質の産生・分泌が亢進する.

●血管収縮因子であるアンジオテンシン,エンドセリン,バゾプレッシンは末梢血管抵抗を増加させるのみならず,心肥大因子としても作用する.

●心不全状態では,これら血管収縮因子は逆に増悪因子として作用し,病態を修飾する.

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●家族性肥大型心筋症の家系に心筋ミオシン重鎖遺伝子の突然変異があることが報告されている.

●二次性心筋症をきたす筋ジストロフィー患者について,心筋生検標本でもジストロフィン染色の欠損および部分欠損が示され,心筋障害の原因と推定された.

●ミトコンドリア異常症患者が左室肥大を呈することが報告され,ミトコンドリアDNAの欠失,点変異がその原因と考えられている.

心筋炎の分子的機構 松森 昭
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●PCR法により心筋生検組織からウイルス遺伝子の検出が可能となり,心筋症の病因解明が進みつつある.

●抗心筋抗体により細胞内カルシウムの増加がみられることが明らかとなり,心筋細胞障害との関連が示唆された.

●心筋炎,心筋症では,血中TNF-αが上昇し,心筋細胞障害とサイトカインの関連が注目されつつある.

●心筋炎の発症には活性酸素が重要な役割を果たしており,その治療にラジカルスカベンジャーが有効である可能性が示唆された.

対談 内科診療のあゆみ・6

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 尾形 本日は肝疾患をテーマに,小俣先生にお話を伺いたいと思います.まず最初に,第一線のドクターが患者さんを見て,病変の主体が肝臓ではないかと考える契機として,どのような徴候があるのでしょうか.

電子内視鏡による大腸疾患の診断・16

villous tumor 剛崎 寛徳 , 酒井 義浩
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 大腸におけるvillous tumor(絨毛腫瘍)は乳頭状増殖による細小の突起が無数に存在する広基性の隆起性病変で,癌化率が高いとされてきた.従来,本邦では稀な疾患であったが,最近,大腸内視鏡および注腸X線検査が,より微小な,より丈の低い病変を指摘し得るようになったため増加しており,形態学的にも無茎広基性だけでなく,球状,有茎性隆起も存在することが指摘されるようになった.また結節および顆粒が集簇しただけの扁平隆起性病変も多数発見されるようになっている.組織学的にも腺管の増殖による腺腫だけでなく,絨毛状変化を伴う非腫瘍性病変も存在することもある.

 本稿では臨床的な一般的事項とともに,villous tumorの電子スコープ像について述べる.

演習

心エコー図演習 里見 元義
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2カ月の男児,心雑音を主訴に来院

 家族歴 2歳11カ月の兄がいるが正常.ほかに特記すべきことなし.

 現病歴 妊娠中特記すべきことなし.在胎40週で正常分娩,生下時体重2,992g,母乳性黄疸を認めたが,産科を普通に退院哺乳には30分かかり,兄よりも飲みが悪いと母親は思っていた.1カ月時体重3,680g,2カ月時小児科を受診し,心雑音を主訴に来院.

図解病態のしくみ—肝臓病・11

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 正常肝の脂肪含有量は肝重量の5%程度とされる.各種の原因に基づく脂質代謝の異常によって,肝脂肪量(主として中性脂肪)が増加し,10%を越えると脂肪肝とされ,光学顕微鏡で観察すると肝小葉の1/3以上に脂肪滴が認められる状態である.以下,脂肪肝の発生機序と診断法を中心に述べてみたい.

連載

目でみるトレーニング

内科医のための胸部X-P読影のポイント・19

急性間質性肺炎 三尾 直士 , 長井 苑子
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症例1

患者 47歳,女性

主訴 全身倦怠,乾性咳嗽

基本情報

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medicina
30巻6号 (1993年6月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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