皮膚科の臨床 61巻8号 (2019年7月発行)

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特集　間葉系腫瘍

血管拡張性肉芽腫に類似した臨床像を呈したAneurysmal Fibrous Histiocytomaの1例白戸　貴久 , 平田　悠 , 菊池　慶介 , 熊切　正信 , 佐藤　英嗣 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1187-1190

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60歳，女性。右上腕外側に疼痛を伴う暗赤色の桑実状の腫瘤がみられ，血管拡張性肉芽腫と診断した。凍結療法を施行したが改善なく，易出血性となったため切除術を施行した。病理組織学的には真皮浅層から深層にかけて境界明瞭な皮膚腫瘍があり，異型性に乏しい紡錘形細胞が花むしろ状に増殖し，内部に赤血球を入れた空隙の形成があった。免疫染色ではCD31，CD34，SOX10，desmin，SMMHC陰性，Factor XIIIa陽性であった。臨床像と病理学的所見からaneurysmal fibrous histiocytomaと診断した。皮膚線維腫の一亜型であり診断に苦慮した。Angiomatoid fibrous histiocytomaとの異同がのぼる腫瘍であるが，遺伝子転座がわかり別腫瘍と認識されるようになった。

Solitary Fibrous Tumorの1例大倉　正寛 , 加藤　雪彦 , 平野　博嗣 , 長谷川　匡 , 梅林　芳弘 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1191-1194

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61歳，女性。4年前から左肩甲部に皮下結節を自覚していた。組織学的に，被膜を欠いた境界明瞭な腫瘍で，細胞密度の高い部分と低い部分が混在していた。短紡錘形細胞が特定の配列パターンを示さず増殖し，腫瘍細胞間に太いロープ状の膠原線維を認めた。また，腫瘍細胞間に介在する血管は血管壁が薄く，管腔が鹿の角（staghorn）様の形態を呈していた。免疫組織化学的には，腫瘍細胞は，vimentin，bcl-2，CD99，CD34が細胞質に，STAT6が核に陽性であった。Solitary fibrous tumor（SFT）と確定診断し，手術瘢痕から5mm離して再切除した。術後15カ月経過した現在，再発の徴候はない。SFTは中間悪性度（intermediate, rarely metastasizing）に分類されており，切除時のsafety marginの確保と，術後の注意深い経過観察が必要と考える。

下口唇に生じたSolitary Fibrous Tumorの1例香曽我部　純子 , 川上　佳夫 , 光井　聖子 , 三宅　智子 , 山崎　修 , 岩月　啓氏 , 小田　和歌子 , 森実　真 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1195-1198

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52歳，男性。2年前より下口唇の口腔粘膜部に自覚症状のない粘膜下結節が出現した。超音波検査では，境界明瞭な10mm大の粘膜下結節を認め，内部不均一な低エコー像を示した。カラードプラ像では豊富な血流信号を認めた。結節を全摘出したところ，病理組織では異型に乏しい長紡錘形細胞が特定の配列をとることなく増殖し，間質に不規則に分枝した鹿角様血管を認めた。免疫染色ではCD34とbcl-2がびまん性に陽性で，CD31とfactorⅧは陰性であった。また，抗STAT6抗体による免疫染色では，核に陽性であった。以上の所見からsolitary fibrous tumor（SFT）と診断した。臨床所見ではmucous cystとの鑑別を要したが，超音波検査で血流を確認することがSFTの診断の一助となると考えた。

超音波検査による深達度評価が有用であった隆起性皮膚線維肉腫の1例芦田　日美野 , 細川　洋一郎 , 濱田　利久 , 谷本　尚吾 , 池田　政身 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1200-1201

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現病歴　10年前より，腹部に紅斑が出現し，徐々に拡大した。1カ月前より，同病変の直下からやや上方に向かって皮下結節を自覚したために近医を受診した。精査・加療目的に当科を紹介受診した。

多発性血管脂肪腫の1例 -―1987年以降の本邦報告例の検討― 大原　香子 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1203-1206

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69歳，男性。10年前から四肢の軟らかい皮下腫瘤に気づいていたが最近増数したため受診した。両前腕に11個，両大腿に1個ずつ合計13個の皮下腫瘤を認め，左前腕の1個は表面に毛細血管の拡張を認め圧痛を伴っていた。家族に同症はない。病理組織所見は血管脂肪腫で，多発性血管脂肪腫と診断した。過去20年間の本邦報告31例を検討した。平均年齢は46.0歳，男性90.3％，部位は上肢発症84％，体幹55％である。また圧痛，疼痛ありが約20％，家族歴ありが6.5％であった。過去の報告と比べて男性の割合が多かった。多発性血管脂肪腫の発生機序や多発性脂肪腫との異同はまだ不明だが，これからの報告に注目したい。

背部に発生したSpindle Cell Lipomaの1例瀧浪　紗也子 , 重野　和彦 , 村橋　整 , 住永　莉華子 , 利根川　守 , 伊東　慶悟 , 江藤　隆史 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1207-1210

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58歳，男性。2年前に右上背部皮下腫瘤を自覚し，急速に増大した。初診時，10×14cm大の弾性軟な皮下腫瘤があった。MRIでは腫瘤の大半が脂肪成分であったが，内部には不均一な領域があり，同部位はT1で低信号，T2で高信号を示した。全身麻酔下に境界明瞭な黄色調の腫瘤を摘出した。脂肪肉腫との鑑別を要したが，病理組織では，成熟脂肪細胞，CD34陽性の紡錘形細胞の増殖があり，spindle cell lipomaと診断した。脂肪肉腫のなかでも異型脂肪腫様腫瘍/高分化型脂肪肉腫（atypical lipomatous tumor/well-differentiated liposarcoma）は脂肪腫と類似した臨床所見を呈するため鑑別が難しいことも多く，その場合は腫瘍切除後も注意深い経過観察が必要である。

臀部に生じた脂肪肉腫の1例古川　貴惠 , 岩下　宣彦 , 柳下　武士 , 河南　勝久 , 高原　大志 , 渡辺　大輔 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1211-1214

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68歳，女性。7年前に左臀部に腫瘤が出現し，増大してきたため当科を受診した。左臀部に1cm大の弾性硬で深部と連続性のある紅色腫瘤を認めた。生検にて真皮深層から皮下結合組織にかけて大小不同の脂肪塊が存在し，線維性組織内にクロマチンの増量した異型な脂肪細胞を認めた。免疫組織化学染色ではMDM2（murine double minute 2）陽性，FISH（fluorescence in situ hybridization）ではMDM2遺伝子の増幅を認め，高分化型脂肪肉腫と診断した。免疫組織化学染色とFISHが脂肪肉腫の診断において有用な手段であった。

巨大腫瘤を形成した脱分化型脂肪肉腫の1例山本　晋也 , 波部　幸司 , 後藤　啓元 , 近藤　誠 , 山中　恵一 , 奈良　佳治 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1215-1218

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50歳代，女性。左腰部皮下腫瘤を主訴に近医整形外科を受診した。悪性軟部腫瘍を疑われ治療を提案されるも希望せず無治療で経過した。3年半後に左腰部巨大腫瘤と食欲不振を主訴に当科を受診した。生検で紡錘形細胞肉腫の所見を認めたが確定診断には至らなかった。積極的治療は希望されず，緩和治療を行った。剖検を行い，腫瘍重量約7350gの巨大腫瘤内部にわずかに認めた脂肪成分の部位の組織を検討した。脂肪組織内に密な細胞浸潤と脂肪芽細胞を認めた。免疫染色でCDK4，MDM2が陽性であり脱分化型脂肪肉腫と診断した。診断には脂肪肉腫に特異的なマーカーであるCDK4，MDM2が有用であった。

前腕に生じた筋周皮腫の1例江崎　英子 , 帆足　俊彦 , 山崎　香里 , 市山　進 , 田中　真百合 , 伊澤　有香 , 船坂　陽子 , 安斎　眞一 , 佐伯　秀久 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1219-1222

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79歳，男性。数年前より左前腕に圧痛のある結節を自覚し，当科を初診した。左前腕に12×8mm大の下床との可動性良好な弾性硬の皮下結節を認めた。造影CTではリング状に造影された。全摘除術を行い，病理組織では，血管周皮細胞様パターンがあり，一部に血管を同心円状に細胞が取り巻く像を認めた。αSMA陽性，S100とCD34は陰性であった。これらより，周皮細胞/血管周囲腫瘍である筋周皮腫，グロムス腫瘍，筋線維腫，血管平滑筋腫のうち，組織学的に筋周皮腫と診断した。自験例では，造影CTでリング状に造影されたことが特徴的であった。リング状に造影される疾患は脳内病変を除くとまれであり，本疾患の特徴であるかもしれない。

放射線照射の関与が推察された皮膚平滑筋肉腫の1例長野　徹 , 鷲見　真由子 , 小坂　博志 , 小川　真希子 , 山本　博史 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1224-1225

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現病歴　30年前から両側手掌の角化性結節が増数，増大し放射線角化症（radiation keratosis），verrucous carcinomaとして近医にてエトレチナートを処方され内服していた。最近右環指基部に無症候性，小指頭大の皮下結節が出現し徐々に増大してきたため近医を受診し，精査加療目的で2016年3月に当科を紹介受診した。

皮膚軟骨腫の1例佐藤　有里子 , 能登　舞 , 戸村　八蓉生 , 山田　雅之 , 眞鍋　求 , 長田　真一 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1226-1227

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現病歴　1年前に左拇指に自覚症状を欠く結節が出現し，徐々に増大した。

小腸転移による閉塞性イレウスを生じた頭部血管肉腫の1例福永　淑恵 , 楠谷　尚 , 加茂　理英 , 前川　直輝 , 鶴田　大輔 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1229-1233

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67歳，男性。頭部打撲後に腫瘤が出現し，生検で血管肉腫と診断され，当科を紹介受診した。Weekly paclitaxelを3コース施行後，放射線治療中に倦怠感と嘔気が出現した。CTで閉塞性イレウスが疑われたため小腸部分切除を施行したところ，血管肉腫の転移と判明した。化学療法を予定するも通院を自己中断され，初診8カ月後に再度倦怠感と嘔気を訴え入院となった。造影CTにて小腸転移再発，腹膜播種，癌性腹膜炎，多発肝転移の所見があった。徐々に状態が悪化し，初診9カ月後に永眠された。血管肉腫の転移巣として頻度の高い肺転移がなく，消化管転移をきたした症例はまれであり，当科で経験した血管肉腫の症例のなかでも唯一であった。

多発結節で初発した頭部リンパ管肉腫の1例奥田　佳世子 , 加藤　裕史 , 真木　章仁 , 堀尾　愛 , 中村　元樹 , 渡辺　正一 , 久保　良二 , 森田　明理 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1235-1238

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70歳，男性。3カ月前より頭部に結節が出現し，徐々に増加してきた。前医を受診し，皮膚生検が施行されたが，病理組織学的に未分化な細胞が多く，確定診断には至らなかった。当院へ紹介され，診断的意義も含めて1cmマージンで骨膜上での全摘生検を施行した。術後病理組織学的所見よりリンパ管肉腫StageⅡ（T2N0M0）と診断した。再建の植皮術を行う際，断端陽性部分に拡大切除を追加し，術後放射線治療と化学療法を行った。自験例のように先行するリンパ浮腫のないリンパ管肉腫はまれではあるが存在し，頭部に原発した報告が多い。頭部の結節性病変ではリンパ管肉腫も鑑別にあげ，早期診断を心掛けることが重要であると考える。

Nodular Solitary Langerhans Cell Histiocytosisの1例池田　智行 , 中尾　将治 , 筒井　清広 , 神川　愛純 , 片柳　和義 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1239-1242

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9歳，男児。3カ月前に左臀部に紅斑が出現し，次第に台地状に隆起し40×30mm大の紅色局面となった。局面内に5mm大，4×2mm大，15mm大の結節がみられた。結節を含めて紅色隆起性局面を一塊にして切除した。全切除標本で表皮直下から脂肪組織まで組織球様細胞の密な増殖があり多数の好酸球・リンパ球の浸潤と毛細血管の増生を伴った。腫瘍細胞はCD1a，S100陽性でありLangerhans cell histiocytosis（LCH）と診断した。骨病変を含め他臓器病変はなかった。皮膚限局性LCHと診断した。切除4年後，局所再発なし。皮膚限局性LCHはLCH全体の約9％と少なく，小児発症かつ皮膚結節のみを呈する症例はまれである。

巻頭言

予期せぬ効果中田　土起丈 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1185-1186

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中学生の頃から7年間にわたって通院してくれている患者さんがいます。彼女は現在，他大学の医学部に通っているのですが，前回の受診時に「こんな風に通院していたことと進路選択には何かしら関係があったの？」と尋ねてみたところ，「先生やこうして受診してきたことにかなり影響されました」という予想外の答が返ってきました。

Clinicolor

Mycobacterium marinum感染症の1例野々垣　彰 , 林　剛生 , 三宅　温 , 三井　彩 , 中野　和明 , 大松　華子 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1183-1184

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現病歴　2017年12月に右中指背に紅色結節を自覚した。疼痛も伴うため受診した。扁平苔癬の既往があるため，当初右手指病変も扁平苔癬の可能性を考えステロイド外用を行ったところ，結節は増大した。

ちょっと一息　医局ラウンジ

第19回　長崎大学 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1244-1245

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長年の伝統を引き継ぎつつ，「常識を疑い本質を見抜く」をモットーに，新時代に則した皮膚科医の育成に力をいれています。また，離島を抱えており，地域医療を支える土地に根付いた皮膚科医の育成にも力を入れています。

Dr.斎田の皮膚科診断講座

Dr.斎田の皮膚科診断講座（31）斎田　俊明 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1247-1249

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症例情報　65歳，男性。C型慢性肝炎に対して5カ月前から近医でペグインターフェロンα-2bとリバビリンの投与を受けている。1，2カ月前から体幹や大腿部などに皮疹が生じ，徐々に増数，拡大してきた。図1，2は12月下旬，当科初診時の腹部皮疹の臨床所見である。軽度の瘙痒を訴える。図3に鱗屑を付す皮疹の，図4に鱗屑の目立たない皮疹のダーモスコピー所見を示す。皮疹部を含めて皮膚は全体的にやや乾燥性である。

症例

ミノキシジル育毛剤による接触皮膚炎の1例大原　香子 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1251-1255

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52歳，男性。男性型脱毛症に対し5％ミノキシジル含有育毛剤を使用して5カ月後から，頭頂部に瘙痒感，紅斑，滲出液が出現した。パッチテストで製品as isとジブチルヒドロキシトルエン（スクラッチパッチテストのみ）が陽性であった。これまでミノキシジル含有育毛剤の接触皮膚炎の報告は3例で，2例がプロピレングリコール，1例がミノキシジルである。ジブチルヒドロキシトルエンのパッチテストは陰性でスクラッチパッチテストで陽性という結果から，不適切な外用方法などで人工的なバリア機能の破壊が生じ，その後ジブチルヒドロキシトルエンに感作されて接触皮膚炎を生じたと考えた。

鶏卵との交叉反応性を認めなかったウズラの卵によるアレルギーの1例原田　晋 , 森山　達哉 , 上塚　弘 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1257-1262

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25歳，女性。過去に数回，ウズラの卵摂取後に発熱・咽喉異和感・全身のしびれ感・呼吸困難などのアナフィラキシー症状を発症した。プリックテストで，ウズラの卵の卵白・卵黄ともに（4＋）陽性であったため，自験例をウズラの卵によるアレルギーと診断した。ただし，鶏卵の摂取は日常的に可能であり，また鶏卵の卵白・卵黄の特異的IgEおよびプリックテストはともに陰性かつImmuno Solid-phase Allergen Chipで鶏卵の主要アレルゲンコンポーネントもすべて陰性であったことより，鶏卵に対する感作は有していないと考えた。鶏卵との交叉反応性を示さないウズラの卵による即時型アレルギーの報告は過去に数例しか認めておらず，極めてまれである。

顔面の浮腫から縦隔型肺癌と診断された上大静脈症候群の1例松浦　佳奈 , 宮野　薫 , 村上　富美子 , 門野　岳史 , 薄場　彩乃 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1263-1267

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79歳，女性。2017年12月に肺炎球菌ワクチン接種後に顔面の浮腫を自覚，近医でステロイド点滴と抗アレルギー薬内服を開始するも改善なく，当科を受診した。初診時，顔面の浮腫・咽頭の違和感があり血管性浮腫やワクチンの副反応を考えステロイド内服・抗アレルギー薬内服を開始した。顔面浮腫は改善したが，ステロイド減量に伴い症状が再燃した。その後，前胸部表在静脈の怒張，労作時呼吸苦が出現し，精査目的に施行した胸部造影CT・FDG-PETにて縦隔型肺癌を認め，顔面の浮腫は上大静脈症候群と診断した。顔面の日内変動を有する持続性浮腫，紅斑を診察した際は，同疾患をデルマドロームのひとつとして念頭に置くべきである。

健常成人女性に生じた虚血性筋膜炎の1例太田　真由美 , 井波　真矢子 , 矢野　優美子 , 松尾　陽香 , 羽渕　麻理亜 , 出月　健夫 , 五十嵐　敦之 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1268-1271

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57歳，女性。長時間のバス旅行後に，臀部の疼痛が出現した。その後発赤と疼痛が増強，近医整形外科・皮膚科・神経内科を受診した。内服治療や神経ブロックは無効だった。当院ペインクリニックに紹介受診された際に，臀部の皮下腫瘤を指摘され，当科に依頼，2個の腫瘤を切除した。粘液腫様で，病理組織学的に皮下から筋膜の変性と壊死，周囲の血管増生を伴い，虚血性筋膜炎と診断した。通常疼痛を伴わないが，自験例では，病変に多数の神経組織がみられ，腫瘤が神経を巻き込んだためと考えた。褥瘡と同様に皮膚・皮下の虚血を原因として生ずる本疾患は，通常は高齢者，寝たきり患者や車いす生活者に生じることが多く，健常者には非常にまれである。

イオヘキソールによるTEN型薬疹笠　ゆりな , 濱田　裕子 , 宇野　裕和 , 中田　土起丈 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1273-1276

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78歳，男性。1カ月前に他院で狭心症に対して冠動脈バイパス術を施行された。9日後に躯幹に皮疹が出現したが，ステロイド外用により消退した。5日前に造影CTの施行後に躯幹・四肢に紅斑が出現した。プレドニゾロン30mgを投与されたが，増数・拡大したため当院に転院した。顔面，躯幹，両側大腿に暗紅色の紅斑が多発，癒合し，一部にびらんを伴っていた。Nikolsky現象陽性。病理組織学的に表皮全層に及ぶ壊死性変化が認められた。Toxic epidermal necrolysis（TEN）と診断，びらん面は2日後には体表面積の20％に達した。経過から冠動脈造影時にイオヘキソールに感作が成立し，造影CT施行時にTEN型薬疹を惹起したと考えた。イオヘキソールによるStevens-Johnson症候群，TEN型薬疹は既往歴として記載されていた1例を含めて5例のみであった。その5例と他の臨床型の報告例との間には年齢や性別，経過に明らかな相違点は認められなかった。

ミノサイクリン塩酸塩による汎発性皮膚色素沈着症の1例森　美穂 , 村松　正法 , 福原　祐衣 , 川内　康弘 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1277-1281

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66歳，男性。2016年7月に左胸痛，呼吸苦を自覚し，当院救急外来を受診した。左胸膜炎の診断で呼吸器内科に入院した。同年8月よりミノサイクリン塩酸塩200mg/日を含む多種抗菌薬を投与開始した。2017年3月に全身皮膚の黒色変化に気づき，当科を受診した。背部より皮膚生検を施行したところ，表皮に基底層を中心としたメラニンの沈着，真皮にメラノファージを認め，経過とあわせ，ミノサイクリン塩酸塩による汎発性皮膚色素沈着症と診断した。Baslerらは色素沈着の型をⅠ～Ⅳ型に分けており，色素沈着の分布および病理組織学的所見より，自験例をⅢ型と診断した。過去の症例において汎発性皮膚色素沈着を呈した症例はまれである。

炎症制御後の植皮術が有効であった下腿壊疽性膿皮症の1例後藤　妙子 , 小暮　麻子 , 桒野　嘉弘 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1283-1286

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80歳，女性。両踵部に血疱が出現し，潰瘍化した。病理組織所見では表皮下に著明な炎症細胞浸潤がみられた。臨床所見，経過，病理組織所見をあわせて壊疽性膿皮症と診断した。ステロイドの全身投与を行い炎症症状は改善するも広範囲の潰瘍病変が残り，ステロイド継続下に植皮術を行った。移植皮膚は問題なく生着した。広範囲の壊疽性膿皮症に対しては，免疫抑制療法を十分に行ったうえであれば，植皮術などの外科的治療も選択肢となり得ると考えられた。

慢性骨髄性白血病に併発した全身性強皮症の1例椙村　有里子 , 牧　優貴 , 花村　拓哉 , 浅井　理玲 , 笹田　佳江 , 満間　照之 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1287-1290

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52歳，女性。46歳時に慢性骨髄性白血病（CML）と診断される。希望により無治療，経過観察されていたが，1年後より四肢の浮腫が出現し，続いて手指の硬化が始まり増悪してきたため，当科を受診した。手指腫脹，前腕の軽度の浮腫性硬化，抗RNAポリメラーゼⅢ抗体陽性，皮膚生検所見などより全身性強皮症（diffuse type）と診断した。当初CMLの治療は望んでいなかったが，話し合いの末，治療を開始した。その後より皮膚硬化の改善がみられ，またCMLの完全寛解後には抗体は陰性化した。このことから，抗RNAポリメラーゼⅢ抗体が悪性腫瘍と強皮症発症との間に関連していた可能性が示唆された。

多発型表在性皮膚脂肪腫性母斑の1例渡辺　雪彦 , 高瀬　奈緒 , 和田　秀文 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1291-1294

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47歳，女性。20年前に殿裂部左に皮膚腫瘤が出現し，近医外科にて切除された。病理組織や診断など詳細は不明であった。2年後に再び同部に皮膚腫瘤が出現した。その後，徐々に増大し周囲にも増加を認め，2015年9月に当科を受診した。病理組織学的に真皮内に異所性に成熟脂肪細胞が膠原線維を分け入るように増生しており，多発型表在性皮膚脂肪腫性母斑と診断した。もっとも大きい腫瘤を全身麻酔下に切除し，その後周囲の腫瘤を局所麻酔下に切除した。まれではあるが，特徴的な臨床所見と病理組織から診断は比較的容易であり，皮膚科医として熟知しておくべきである。また，長期間を経て増大，多発する可能性についても念頭に置くべきと考えた。

男性乳癌の1例清水　知道 , 徳山　道生 , 山田　貴彦 , 近藤　章生 , 津田　万里 , 井上　雄介 , 馬渕　智生 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1295-1298

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69歳，男性。10年以上前に左乳頭に1cm大の紅色結節が出現した。その後の変化はなかったが，1年前から徐々に増大した。乳癌を疑い部分生検を施行した。病理組織学的所見は真皮全層にN/C比の高い好塩基性の細胞が索状構造や胞巣構造を呈し浸潤性に増生していた。乳腺由来か付属器由来か判別がつかず，全摘生検を施行したところ，N/C比の高い腫瘍細胞が腺腔を形成しながら増生しており，HER2陽性の乳癌と診断した。乳腺外科で拡大切除とセンチネルリンパ節生検を施行予定となった。男性乳癌は発症頻度がまれではあるが，鑑別疾患として男性乳癌を考えた場合に，診断のため全摘生検を施行することは重要と考えられた。

不定形のケロイドに乳癌が併発した1例牧　智子 , 鈴木　琢 , 河合　敬雄 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1299-1302

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60歳代，女性。不定形のケロイドを主訴に受診したが，経過中に乳癌の存在が判明した。乳癌切除後もケロイドは不変であった。癌組織とケロイドとの関連性は，進行した癌組織からのTGF-βにより線維芽細胞がCAF（cancer-associated fibroblast）へ変化し，結果的にケロイド形成に関与しているのではないかと推測した。

各診療科の協力で切除し得た宗教的輸血拒否患者のびまん性神経線維腫立花　宏太 , 山﨑　修 , 光井　聖子 , 山下　珠代 , 岩月　啓氏 , 森実　真 , 西森　久和 , 生口　俊浩 , 坂野　彩 , 谷口　新 , 小林　求 , 森田　幸子 , 橋本　倫子 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1303-1306

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69歳，女性。神経線維腫1型に伴うびまん性神経線維腫と特発性血小板減少性紫斑病（ITP）を合併。宗教的輸血拒否患者。25年前より右下腹部の腫瘤が徐々に増大してきていた。2016年当科を初診し，手術を計画したが，宗教上の輸血療法不能を理由に中止となった。2017年腫瘤の増大と表面の紫斑が出現した。腫瘤表面に拳大の紫斑と内部に硬結を触知，貧血の進行を認め，腫瘤内出血が疑われ緊急入院した。医療安全上の対応と周術期の対策を各科・各部署の協力で検討した。ITPに対してプレドニゾロン内服，術前に動脈塞栓術を施行後，術中の閉鎖回路による希釈式自己血灌流のうえ，術中出血は200mlで腫瘍を切除できた。院内の医療連携システムの充実が重要である。

放射線治療が有効であったMerkel細胞癌の1例岡村　直之 , 丹羽　宏文 , 松山　かなこ , 永井　美貴 , 片野　晴隆 , 清島　真理子 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1307-1311

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80歳，男性。2カ月前から右口角外側に赤色腫瘤が出現し，徐々に増大した。近医で生検の結果Merkel細胞癌と診断され当科を紹介受診した。初診時，右口角から下顎に42×30mm，高さ15mmの弾性軟の赤色腫瘤がみられた。放射線治療（電子線50Gy）照射により腫瘍は縮小したが，右頰部に転移を疑う紅色で浸潤を触れる病変とオトガイリンパ節腫大が出現した。原発巣も含めて3カ所すべて切除した。病理組織像で右頰部とオトガイリンパ節はMerkel細胞癌であったが，原発巣は病理組織で腫瘍細胞消失を確認できた。また，PCRで原発巣においてMerkel細胞ポリオーマウイルスが陽性であったが，免疫染色でウイルス抗原は検出されなかった。放射線治療は局所には有効と考えられた。

劇症型溶血性レンサ球菌感染症の1例淺沼　由美子 , 林　宏明 , 山本　剛伸 , 田中　了 , 竹原　延治 , 藤本　亘 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1312-1316

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68歳，男性。糖尿病，高血圧，脂質代謝異常症，虚血性心疾患，臀部慢性膿皮症の既往がある。左上肢，左腹部から大腿に及ぶ境界不明瞭な紫斑を伴う発赤腫脹，疼痛，歩行困難のため当院に救急搬送された。左上肢，左大腿部の試験切開を行い，筋膜壊死を認め壊死性筋膜炎と診断した。病変部は広範囲に及び，左上下肢切断でも病変部の完全除去は不可能と判断し，緊急で可及的なデブリードマンを行った。血液培養および創部の培養でA群β溶血性レンサ球菌を検出した。術後，集中治療室で全身管理を行ったが，壊死範囲は次第に拡大し，入院18日目に多臓器不全のため永眠された。基礎疾患としての動脈硬化が病態に関係していたのではないかと考える。

Mycobacterium marinum感染症の1例野々垣　彰 , 林　剛生 , 三宅　温 , 三井　彩 , 中野　和明 , 大松　華子 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1317-1321

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60歳，男性。扁平苔癬で当科通院中である。熱帯魚を飼育している。右中指背面に浸潤を伴う紅色結節が出現した。徐々に増大し，手首にも結節の新生を認めた。DNA-DNA hybridization法でMycobacterium marinum（M. marinum）のスポットに反応した。M. marinumとMycobacterium ulcerans（M. ulcerans）鑑別のためPCR法にてIS2404・IS2606・esxAなどの確認を行い，M. marinum感染症と確定診断した。ミノサイクリン塩酸塩・クラリスロマイシン内服と温熱療法により改善傾向である。M. marinum感染症とM. ulcerans感染症は臨床上異なる症状を呈するが，菌の同定を行う場合DNA-DNA hybridization法では鑑別できない。今回自験例ではPCR法を用い鑑別し得た。

憧鉄雑感

第88回　異常気象下完璧移動術安部　正敏 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1323-1323

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鉄道エッセイを書きながら仕事で飛行機に乗らねばならぬ筆者は，冬季は誠に気を遣う。暇さえあればインターネットで気象情報をチェックし一喜一憂する。正直それだけで疲れてしまい満足に診療などできぬ有様である。半面，近年 “気象学” には誠に強くなり，知識量であれば案外 “鉄道” の次に “皮膚科” を押しのけて “気象” が位置する勢いである。くもりを予報する気象予報士に「そりゃアンタ，雪でしょう！」とテレビの前でツッコミをいれ，実際雪が降る朝も多々経験しており，案外筆者の天気予報を外す確率は皮膚疾患誤診率より低いかもしれぬ。

MiniReport

左拇指基節指腹に生じたIntravenous Pyogenic Granulomaの1例窪田　茶月 , 飯島　正文 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1324-1325

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現病歴　1週間前から左拇指基節指腹に圧痛を伴う結節を自覚し当科を受診した。

腰部に生じた限局性多発性神経線維腫の1例上田　朋子 , 蒲澤　美代子 , 甲斐　浩通 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1326-1327

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現病歴　中学生時に左腰部に1カ所虫刺され様の皮疹を自覚したが，特に症状がないため放置していた。40歳頃より徐々に増数・増大し，精査加療目的に当院を受診した。

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目次 61巻8号 , 2019年7月

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英文目次 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1179-1179

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投稿規定 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1180-1181

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著作財産権譲渡同意書 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1182-1182

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Information 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1243-1243

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次号予告 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1250-1250

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編集後記 61巻8号 , 2019年7月 , pp.1328-1328

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基本情報

皮膚科の臨床
61巻8号
(2019年7月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0018-1404 金原出版

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