皮膚科の臨床 61巻7号 (2019年6月発行)

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特集　真菌症

Microsporum canisによる小児ケルスス禿瘡の1例武田　芳樹 , 西川　哲史 , 平山　真帆 , 川内　康弘 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1053-1056

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2歳，男児。1カ月前から左前側頭部に脱毛を伴う浸潤性紅斑局面が出現した。近医で抗菌薬外用やステロイド外用を行うも改善なく，近傍に新規脱毛性局面の新生もみられたため当科を紹介受診した。初診時，左前側頭部に，表面に鱗屑を付着する浸潤性脱毛局面を3カ所認めた。病理組織で真皮中層の炎症細胞浸潤とその周囲で肉芽腫形成があり，組織培養でMicrosporum canis陽性となったことからケルスス禿瘡と診断した。抗真菌薬の外用，内服により治癒したが，自験例は動物飼育歴や家族歴がなかった。ステロイド外用で皮疹が増悪したと考えられ，疑わしい背景がなくとも頭部の皮疹では常に白癬菌感染症を念頭に置くことが重要である。

Trichophyton mentagrophytesによる小児ケルスス禿瘡の1例中村　華子 , 辻　香織 , 石井　賢太郎 , 北島　麻耶子 , 杉江　瑠美 , 足立　真 , 足立　知子 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1058-1059

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現病歴　2016年5月初旬に窓枠に左前額部をぶつけた。受傷部位の擦過傷に対しては医療機関を受診しなかった。徐々に創部周囲の皮疹が拡大したため，同月末に前医を受診し，湿疹疑いに対してステロイド外用が開始された。皮疹の拡大継続を認めたため，同年6月末に前医を再診した。その際の毛髪と頭皮の鏡検は陰性であり，膿痂疹を疑いセフジニル内服とナジフロキサシンクリーム外用，次いでルリコナゾール軟膏外用へ治療を変更するも症状が増悪したため，同年7月初旬に当科を受診した。

格闘技歴のない20歳代女性に生じたTrichophyton tonsuransによるケルスス禿瘡の1例林　倫子 , 木村　有太子 , 竹内　かおり , 根木　治 , 髙森　建二 , 比留間　政太郎 , 須賀　康 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1060-1061

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現病歴　3カ月前から左側頭部に瘙痒感を伴う皮疹が出現し，左耳介・顔面まで拡大した。近医でステロイド外用治療を受けたが，左側頭部に脱毛と皮下膿瘍を生じたため，当科を紹介受診した。

治療後に選手活動から引退した女子柔道選手のTrichophyton tonsuransによるケルスス禿瘡の1例中田　礼 , 田邉　洋 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1063-1066

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16歳，女性。柔道の全日本強化選手。数カ月前に生じた頭部の痤瘡様丘疹に対してステロイドを外用したところ皮疹が悪化して，炎症を伴う脱毛斑となり，当科を紹介受診した。脱毛部のKOH直接鏡検にて真菌要素を確認し，原因菌を同定して，Trichophyton tonsuransによるケルスス禿瘡と診断した。テルビナフィン塩酸塩パルス療法で皮膚症状は改善したが，数カ月の競技禁止により選抜選手から外れ，患者は柔道を引退した。皮膚科医は本症を認識し，格闘技競技者への啓蒙を行うとともに，適切な問診と鏡検を怠らず，早期の診断，治療開始が重要であると考える。

スポロトリキン反応によって診断し得たスポロトリコーシスの1例中村　かおり , 福田　知雄 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1067-1070

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4歳，男児。2カ月前に右手関節部の虫刺症様紅斑に気づいた。近医で抗菌薬を投与されたが軽快せず皮疹は拡大した。スポロトリコーシス，非結核性抗酸菌症などが疑われ，当科を紹介受診した。確定診断のため2度の皮膚生検を施行するも組織中に真菌，抗酸菌要素を確認できず，培養も陰性で原因菌の検出には至らなかった。しかし，臨床像からはスポロトリコーシスが強く疑われたため，イトラコナゾール50mg/日を内服させたところ，皮疹は3カ月で消退した。治療終了後にスポロトリキン反応を施行し，陽性の確認でスポロトリコーシスの診断が確定した。本法の有用性を鑑みるに，本法はなくすべきではない大事な検査法のひとつであると思われた。

両手に発症したExophiala jeanselmeiによる黒色菌糸症の1例望月　弘和 , 南部　昌之 , 竹田　公信 , 安澤　数史 , 望月　隆 , 牧野　智 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1071-1076

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74歳，女性。関節リウマチでプレドニゾロン10mg/日，メトトレキサート（MTX）6mg/週内服中。趣味で畑仕事をする。5カ月前に右手指に結節，3カ月前から左手背に皮疹が多発した。受診時，右環指腹に結節，左手背から前腕伸側に拇指頭大までの結節，膿瘍が散在し，圧迫で排膿するものがあった。局所熱感はない。病理で真皮に肉芽腫，PAS染色で菌糸や胞子連鎖を認め，膿汁，痂皮の真菌培養で生じた黒褐色の菌はリボソームRNA遺伝子のITS領域の塩基配列から，Exophiala jeanselmeiと同定した。MTXを中止，テルビナフィン塩酸塩，イトラコナゾールの内服併用，温熱療法で治療開始後約6カ月で略治した。免疫抑制状態で病巣の菌量が多く，自家接種により両側性に生じたと考えた。

全身性エリテマトーデスの治療中に発症した皮膚クリプトコッカス症の1例矢野　志ずか , 徳永　千春 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1077-1081

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59歳，女性。全身性エリテマトーデスに対し副腎皮質ステロイドと免疫抑制剤を内服中に右下腿が発赤・腫脹した。蜂窩織炎を疑い抗菌薬を内服するも改善せず，意識障害を生じた。両下腿に浸潤を触れる紅斑と紫斑，結節がみられ，潰瘍を形成していた。皮膚病理組織で真皮から皮下組織に多数の菌体を認め，皮膚・血液培養でCryptococcus neoformansが検出された。ホスフルコナゾールの投与で皮膚症状は改善傾向にあったが，敗血症が進行し永眠した。皮膚クリプトコッカス症は症状が多彩で，臨床所見だけでは診断が困難なことが多い。免疫抑制状態の患者で抗菌薬に反応しない蜂窩織炎様の皮疹の診察をした際には，本疾患を念頭に置き，皮膚生検や真菌培養を行う必要がある。

巻頭言

勤務医のできること大松　華子 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1051-1052

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近年，薬剤開発の進歩は目覚ましい。皮膚科領域においても，乾癬や蕁麻疹に対して投与可能な生物学的製剤が登場し，多くの重症患者さん達に投与されている。乾癬患者さんに対して生物学的製剤を使い始めた頃は，長期予後が不明のうえ，感染症などの副作用に対する懸念もあり，果たして同剤を使用すべきかどうか自信をもてなかった。しかし，それまでどのような治療を行ってもコントロールがつかなかった患者さん達が改善される姿をみて，副作用の可能性には細心の注意を払う必要があるものの，確かに「まったく新しい治療法」が登場したことを実感した。

Clinicolor

両手に発症したExophiala jeanselmeiによる黒色菌糸症の1例望月　弘和 , 南部　昌之 , 竹田　公信 , 安澤　数史 , 望月　隆 , 牧野　智 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1049-1050

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現病歴　2016年6月より右手指腹に皮下結節が生じてきた。同年8月から左手背に丘疹，結節が生じ，徐々に増数した。11月に左手背の結節から生検が行われ，病理組織標本中に真菌要素が認められたため，当科を紹介受診した。

臨床講義

亜鉛欠乏症（腸性肢端皮膚炎）川村　龍吉 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1083-1091

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古くからわれわれ皮膚科医は，手湿疹やおむつ皮膚炎などの亀裂やびらん・潰瘍を伴う一次刺激性接触皮膚炎に対してなぜか経験的に亜鉛華（単）軟膏を繁用してきた。50年前にあった外用薬で今も使われているのはステロイドと亜鉛華軟膏ぐらいであるが，亜鉛華軟膏がロングセラーになるには何か特別な理由があるはずである。

ちょっと一息　医局ラウンジ

第18回　防衛医科大学校 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1092-1093

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うちのボスはこんな人

A　真理を追い求める，飽くなき探究者。

B　綺麗好きで，教授室からはラベンダーの香りがします。

C　症例で難渋しているときにはそっと医局のメールボックスに教科書や論文を入れてくださいます。

D　美食家，アイドルに詳しい一面も。

Dr.斎田の皮膚科診断講座

Dr.斎田の皮膚科診断講座（30）斎田　俊明 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1095-1097

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症例情報　70歳代，女性。以前から認められた左頰部のイボ状皮疹が最近，少し赤みを帯びてきたようなので，気になって受診した。初診時，6×5mm大の，表面が乳頭腫状で角化性，粗造な淡紅褐色の局面状結節が認められた。全摘生検された検体の組織像を図1～4に示す。

症例

帯状疱疹後多形紅斑の1例大原　香子 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1099-1102

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78歳，女性。特に重篤な基礎疾患はない。右肩の帯状疱疹罹患後14日目に顔面，体幹・四肢に多形紅斑を発症した。さらに右頰部に蜂窩織炎を発症した。ステロイドと抗菌薬の内服により約10日で治癒した。単純ヘルペスウイルス罹患後の0.9％に多形紅斑が認められるが，帯状疱疹後多形紅斑は非常にまれで，調べ得た限り本邦での報告は自験例を含め13例のみである。平均年齢は58.5歳と特に高齢ではない。帯状疱疹から多形紅斑発症までの日数は平均13.9日である。多形紅斑部には水痘帯状疱疹ウイルスは検出されない報告が多いが，一部の例で検出されており，この点については今後の検討が必要である。

慢性放射線皮膚炎に難治性足潰瘍を生じた2例山口　貴子 , 本田　ひろみ , 石氏　陽三 , 延山　嘉眞 , 石地　尚興 , 中川　秀己 , 朝比奈　昭彦 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1103-1106

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放射線照射治療の既往がある難治性足潰瘍の2例を経験した。症例1：70歳，男性。蜂窩織炎の経過中に右足背部に潰瘍が出現した。炎症反応改善に伴い患肢の色素沈着，萎縮，硬化が判明した。問診で幼児期の足白癬に対する限界線照射がわかった。症例2：70歳，男性。HIV陽性。14年前に下肢のカポジ肉腫に対して放射線治療を施行した。同部位に皮膚潰瘍が出現し，皮膚生検で慢性放射線皮膚炎の診断となった。症例1は上皮化まで7カ月を要した。症例2は緩徐に皮膚潰瘍が増大しており上皮化に至っていない。難治性皮膚潰瘍の原因のひとつとして，慢性放射線皮膚炎を考慮すべきと考えた。

アロプリノールによる紅斑丘疹型薬疹の1例大原　香子 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1107-1111

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60歳，男性。特発性血小板減少性紫斑病，特発性色素性紫斑を有し，1年9カ月前からアロプリノールを内服中。右大腿部の打撲，紫斑形成2日後に紅色丘疹が出現し全身に拡大した。発熱はなく全身状態は良好であった。アロプリノールの中止とステロイド内服17日で治癒した。薬剤リンパ球刺激試験陽性からアロプリノールの紅斑丘疹型薬疹と診断した。治療中の蕁麻疹様紅斑の発症，肝機能障害，異型リンパ球の出現から軽症の薬剤性過敏症症候群であった可能性もあるが，ヒトヘルペスウイルス6再活性化と発熱を確認できず診断に至らなかった。1年9カ月と非常に長い内服期間の後に生じていること，血小板の少ない個体における打撲と続発性の紫斑が発症誘因となった可能性があることなどが興味深いと思われた。

トニックウォーターが原因と考えられた固定疹の1例鈴木　茉莉恵 , 佐藤　由似 , 佐々木　美紀 , 保坂　浩臣 , 濱田　裕子 , 奥村　恵子 , 杉山　美紀子 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1112-1115

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39歳，男性。6日前にジントニックを摂取した。翌朝に，口唇，舌，陰部にびらん，手掌，足底に紅斑を認め当科を初診した。トニックウォーターによる固定疹を疑いプレドニゾロン内服加療にて軽快した。トニックウォーターの摂取を禁止していたが，2年後に常用薬をトニックウォーターで内服した翌日より同様の皮疹を認め当科を再診した。プレドニゾロン内服で皮疹は色素沈着を残して軽快した。以上よりトニックウォーターによる固定疹と診断した。固定疹は薬剤だけでなく食物でも出現することが報告されており，診断に際し詳細な問診が必要となる。特に飲酒歴がある症例はトニックウォーターによる固定疹を考慮する必要がある。

ストーマ周囲壊疽性膿皮症の1例山東　優 , 森　聖 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1116-1120

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82歳，女性。2014年11月，S状結腸憩室炎の穿孔にて大腸ストーマを作成した。2015年9月，ストーマ周囲に有痛性の穿堀性潰瘍が出現し，病理組織学的に真皮への好中球浸潤を認めた。生検部からの悪化があり，臨床所見とあわせてストーマ周囲壊疽性膿皮症と診断した。ステロイド内服と外用治療を開始し潰瘍部は改善した。ステロイドの漸減増量に伴い潰瘍部は増悪軽快の経過をたどっていた。2017年6月に穿孔性腹膜炎を発症し翌月永眠された。ストーマ周囲壊疽性膿皮症はまれな疾患であり，排泄物による皮膚炎や細菌感染症として見逃されている可能性がある。ストーマ周囲に有痛性の難治性潰瘍を伴う場合，本疾患も鑑別に考える必要がある。

帯状疱疹瘢痕上に生じた一過性棘融解性皮膚症の1例中堀　イリス , 水牧　貴恵 , 東　晃 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1121-1125

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83歳，男性。5年前の右Th4領域の帯状疱疹の瘢痕上に，数日前より瘙痒を伴う皮疹が生じた。帯状疱疹の萎縮性白色瘢痕に一致して，鱗屑を付着する褐紅色丘疹が線状に配列していた。皮膚生検の結果，表皮基底層直上に棘融解細胞を伴う裂隙形成を認め，一過性棘融解性皮膚症（TAD）と診断した。ステロイド外用にて1週間で皮疹は消退した。線状・帯状を呈したTADの報告はまれであり，帯状疱疹瘢痕上に生じたTADの報告はない。帯状疱疹後に同部位にまったく異なる皮疹が生じるisotopic responseも発症機序として考えられた。

粘膜類天疱瘡を合併したLichen Planus Pemphigoidesの1例森　美穂 , 村松　正法 , 福原　祐衣 , 川内　康弘 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1127-1130

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80歳，女性。8カ月前より四肢に瘙痒を伴う皮疹，2カ月前より大陰唇から腟前庭粘膜部にかけてびらんを生じた。初診時，四肢に境界明瞭な紫紅色の角化性紅斑が多発していた。右前腕の角化性紅斑，大陰唇より生検を施行した。前者は，過角化，表皮の鋸歯状延長，基底層の液状変性，顆粒層の部分的肥厚，表皮直下の著明なリンパ球浸潤を認め，扁平苔癬と診断した。後者は，表皮下水疱，真皮側の好酸球，好中球主体の浸潤があり，蛍光抗体直接法で表皮基底膜に沿ったIgG，C3の線状沈着を認め，大陰唇と腟前庭を同様の所見と考え，粘膜類天疱瘡と診断した。以上よりlichen planus pemphigoides（LPP）と診断した。本邦において扁平苔癬と粘膜類天疱瘡を併せもつLPPの症例は非常にまれである。

水疱性エリテマトーデスの1例金淵　優樹 , 樋口　奈那子 , 津村　協子 , 中野　敏明 , 新井　達 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1131-1135

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20歳，女性。全身性エリテマトーデス（SLE）の病勢増悪とともに顔面に小水疱が多発した。同部の病理組織学的所見では表皮基底層直下に好中球の稠密な浸潤を伴う表皮下水疱を認め，蛍光抗体直接法の結果とあわせて，水疱性エリテマトーデスと診断した。自験例では腎障害の合併があり，腎生検の結果，ループス腎炎Ⅳ-G（A）型が明らかとなった。SLEにおいて水疱形成は病勢増悪と腎症の関連性を示唆する重要な皮膚所見である。今回，水疱性エリテマトーデスの症例を報告するとともに，本邦報告例を集計し，その臨床的特徴について考察した。

背部の後天性真皮メラノサイトーシスの1例山村　里恵 , 敷地　孝法 , 工藤　英治 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1137-1140

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78歳，男性。2～3カ月前から友人に銭湯で背部の色素斑を指摘されるようになり，当科を受診した。初診時，上背部から腰部にかけて広範囲に灰褐色斑がみられた。腰部に蒙古斑と思われる青褐色斑を伴っていたが，眼球や口腔に色素斑はなかった。病理組織所見で真皮浅層に真皮メラノサイトが散在しており，後天性真皮メラノサイトーシスと診断した。患者は特に治療を希望されず，現在経過観察中である。自験例ではなかったが，後天性真皮メラノサイトーシスでは悪性腫瘍を合併することがあり，場合によっては全身精査も必要と考えた。

水疱様外観を呈した毛母腫の1例村田　美和 , 車谷　紋乃 , 葉山　惟大 , 藤田　英樹 , 照井　正 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1141-1144

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35歳，男性。10カ月前に自覚し，次第に増大した上背部左側の65×60×15mm大で水疱様に内部が透見される広基有茎性腫瘤。病理組織学的には好塩基性細胞，陰影細胞と移行細胞からなる充実性腫瘍で，真皮中層が著明に浮腫状を呈し，血管内皮細胞の明らかでない拡張した管腔様の構造が多数みられた。真皮中層にみられた拡張した管腔様の構造は，血管内皮マーカーのCD34およびリンパ管内皮マーカーのlymphatic vessel endothelial hyaluronan receptor-1陽性の細胞で裏打ちされていなかった。したがって，真皮中層に多数みられた管腔様の構造は著明な間質液の貯留により生じたと考えられ，このような構造が肉眼的に水疱様外観を呈した理由と考えた。

G-CSF産生有棘細胞癌の1例奥田　佳世子 , 加藤　裕史 , 真木　章仁 , 堀尾　愛 , 中村　元樹 , 森田　明理 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1145-1149

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65歳，女性。2012年に右下腿の有棘細胞癌を指摘されていたが，その直後より通院が途絶えていた。2016年10月の再診で，所属リンパ節や気管分岐部などに多発転移を認め，右下腿には8cm大の巨大腫瘤がみられた。採血上白血球数および血中顆粒球コロニー刺激因子（G-CSF）値の著明な上昇を認め，腫瘍切除後には改善したことから，G-CSF産生腫瘍と診断した。腫瘍切除後に放射線治療，全身化学療法を施行するも，多発肺転移，癌性リンパ管症を合併し，術後5カ月で永眠された。一般的にG-CSF産生腫瘍は予後不良であり，本症と診断した際には，より早期の積極的な治療が必要だと考える。

気管狭窄をきたした声門下乳児血管腫に対してプロプラノロール塩酸塩内服が奏効した1例阿河　弘和 , 高野　浩章 , 砂田　哲 , 宮澤　真理 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1150-1154

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2カ月，女児。在胎39週，3046gで出生。出生後顔面から胸部にかけて紅斑が出現し，次第に隆起拡大した。乳児血管腫の診断で色素レーザー治療を受けていたが，遷延する喘鳴が出現し，徐々に増悪した。造影CT検査で声門下に高吸収域病変を認め，気管の狭窄をきたしていた。声門下乳児血管腫の合併による気管狭窄と診断された。小児科医による慎重なモニタリングのもと，プロプラノロール塩酸塩内服を導入し，3mg/kg/日を維持量として投与し，腫瘤は速やかに縮小した。呼吸状態も改善した。その後も9カ月間維持量を継続投与中だが，有害事象はなく，良好な腫瘍縮小効果を確認した。プロプラノロール塩酸塩は，乳児血管腫に対して有効かつ安全な薬剤と考える。

皮膚筋炎様の皮疹を呈した多中心性細網組織球症の1例藤岡　茉生 , 米田　大介 , 兼古　理恵 , 長谷川　公範 , 村上　俊吾 , 猪熊　大輔 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1155-1158

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69歳，男性。4カ月前より顔面や頸部などの露光部に紅斑および丘疹，指背に紅色結節が出現した。近医を受診し，皮膚筋炎を疑われ当科を紹介受診した。病理組織像ですりガラス様の好酸性細胞質を有する組織球様細胞や多核巨細胞が浸潤しており，多中心性細網組織球症と診断した。関節痛もあり，プレドニゾロン30mg内服を開始した。その後の精査で中咽頭癌が発見された。現在は関節痛の悪化に対しメトトレキサートを追加し，症状の軽快が得られている。多中心性細網組織球症は典型的な皮膚結節性病変のほか，多彩な皮疹を呈することが報告されており，本疾患のように皮膚筋炎との鑑別を要することがある。

成人型皮膚限局性肥満細胞症の1例 -―2006年以降本邦報告53例の集計― 大原　香子 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1159-1163

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48歳，女性。3年前から大腿部に褐色斑が出現し体幹・四肢に拡大した。同時期に温熱で膨疹，頭痛，下痢が出現した。皮膚の病理組織所見（トルイジンブルー染色）で表皮直下の異染性を示す肥満細胞の浸潤を認め，肥満細胞症と診断した。全身検索で他臓器の浸潤を認めず皮膚限局性と診断した。肥満細胞症はindolent型のなかに皮膚限局性と他臓器の肥満細胞浸潤を認める全身性があり，ほかに血液系の悪性腫瘍を伴う型などがある。2006年以降の成人肥満細胞症の報告53例を集計した結果，indolent型の発症年齢は42歳，男性が70％を占め，全身性が半数で浸潤臓器は骨髄が多いことなどがわかった。

日本紅斑熱の家族内発症例西口　麻奈 , 田中　宏典 , 坂口　雅彦 , 米井　希 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1164-1167

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症例1：65歳，女性。症例2：68歳，男性（症例1の夫）。症例3：94歳，女性（症例1の義母）。症例2以外は野山での行動歴はなく，犬を飼育していた。症例1は7月X日，症例2は7月X＋4日から発症した。症例3は7月X−6日に発熱，血圧低下で救急搬送後死亡していた。症例1，3は遺伝子増幅法でRickettsia japonica遺伝子が陽性，症例2は蛍光抗体間接法でIgG，Mの有意な上昇を認め3例を日本紅斑熱と診断した。症例1，2はミノサイクリン塩酸塩，シプロフロキサシン併用投与で改善した。日本紅斑熱はヒト-ヒト間の感染はないが，同時期に複数の感染がおこることがあり，また野山での行動歴がなくても発症しうる。

憧鉄雑感

第87回　地方出張の楽しみ安部　正敏 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1171-1171

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筆者のような者にも時に講演依頼をいただく。有益な話はちっとも語らず学術的価値ゼロであるから，当然学術大会での教育講演や特別講演であろう筈もなく，企業からいただく機会が多い。しかし，筆者はこのほうが有難く，タダで列車に乗車でき，本稿のネタが見つかるため感謝の念をもってお引き受けしている。ある時，北海道内の地方都市でのご依頼をいただき即お引き受けした。ところが，後日担当者が申し訳なさそうに切り出した。「実は先日のご依頼の件なのですが……」。言い難そうである。さては中止となったのであろう。しかし次の言葉に耳を疑った。「宿泊先のホテルなのですが……」彼は一旦ここで間を置いた。「お化けが出るのです」。日頃から紳士的で真面目な人である。笑いながらではなく心底困ったような表情だ。からかっているのではないことは明らかであり，第一左様な戯言を言ったところで彼に一分の利もないことは火をみるより明らかである。その後，他に代替ホテルがなく，当日帰宅手段がないことを申し訳なさそうに述べた。狐に摘ままれた様な話である。が，斯様な話は逆に好都合だ。元来，お化けなんぞ全く信じない筆者であるから，是非宿泊させて欲しいと懇願した。

MiniReport

中年期以降に発症したEccrine Angiomatous Hamartomaの1例原田　絵里香 , 阿部　名美子 , 城　理沙 , 原田　和俊 , 坪井　良治 , 川内　康弘 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1172-1173

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現病歴　5年前，左大腿皮内に多発する紅色小結節が出現した。皮疹が改善しないため，当科を受診した。

下顎部に発症した限局性多発性神経線維腫の1例内田　理美 , 竹内　紗規子 , 小菅　治彦 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1174-1175

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現病歴　10年前より右下顎部から頸部に多数の結節が出現していた。約5カ月前より一部の増大傾向があり，表面の瘙痒を訴えて当科を受診した。

Pagetoid Bowen病の1例園山　浩子 , 井手　豪俊 , 増野　年彦 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1176-1177

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現病歴　数カ月前より左足背に皮疹を認め消退しないため，当科を受診した。

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目次 61巻7号 , 2019年6月

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英文目次 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1043-1043

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著作財産権譲渡同意書 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1044-1044

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投稿規定 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1046-1047

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Information 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1082-1082

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次号予告 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1098-1098

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読者の声 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1168-1169

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編集後記 61巻7号 , 2019年6月 , pp.1178-1178

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基本情報

皮膚科の臨床
61巻7号
(2019年6月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0018-1404 金原出版

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