皮膚科の臨床 61巻9号 (2019年8月発行)

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特集　ウイルス感染症

単純ヘルペスウイルス初感染で格闘家ヘルペス型を呈した1例山口　麻里 , 中井　友美 , 妹尾　明美 , 長尾　洋 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1338-1339

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現病歴　右前腕の擦過傷の周囲に皮疹が出現し，次いで左上肢・前額部に水疱が出現した。近医を受診し虫刺症の診断であった。抗菌薬内服とステロイド外用で改善せず，発症から約1週間後に他院を受診した。頭部，顔面，上肢に水疱・丘疹が散在性に多発しており，個疹からは単純ヘルペスウイルス（herpes simplex virus，以下HSV）感染の可能性を考えられるも分布が奇異なため，翌日当科を紹介受診した。

顔面神経麻痺をきたしたC2～C4領域帯状疱疹の1例市来　澪 , 早稲田　朋香 , 吉見　公佑 , 池原　進 , 久永　将史 , 森　理 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1340-1341

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現病歴　2週間前，右頸部の痛みを自覚した。5日前から右頸部に水疱，紅斑が出現した。4日前に前医を受診し帯状疱疹と診断されアメナメビルを処方されたが，2日前に右頰に麻痺症状が出現した。1日前に前医を再診し，右閉眼不完全であったため，ベタメタゾン3mgを処方され，当科を紹介受診した。

ニボルマブ投与中に複発性帯状疱疹を発症した1例山川　浩平 , 渡邊　友也 , 浅井　知佳 , 高橋　沙希 , 石川　秀幸 , 高村　直子 , 岡澤　ひろみ , 猪又　直子 , 相原　道子 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1342-1345

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70歳，男性。右腎癌，多発骨転移，左副腎転移に対しニボルマブ投与中に右側腹部の疼痛が出現した。その後同部位と左肩に皮疹を認め，当科を受診した。左Th3および右Th9領域に暗赤色の浮腫性紅斑を伴った弛緩性水疱の集簇を認め，複発性帯状疱疹と診断した。ビダラビン点滴投与を5日間行い，皮膚症状，疼痛ともに改善した。過去の報告例をまとめ，検討したところ，複発性帯状疱疹は通常の帯状疱疹に比べ，癌などの基礎疾患の合併頻度が高いことがわかった。その一方で，ニボルマブと帯状疱疹の関連性についての報告はなく，今後症例を蓄積し，ニボルマブ投与による影響を解析していくことが必要であると考えた。

成人の関節リウマチ患者に生じた伝染性軟属腫の1例大原　香子 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1346-1347

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現病歴　2017年に体幹・四肢の多発性小結節で他院皮膚科を受診し，皮膚生検の結果，伝染性軟属腫の診断で摘除した。2018年2月に当院で30個以上の常色の小結節を鉗子で摘除した。2018年9月から左腰部に5個の小結節が出現した。1個は消失したが4個は大きくなり，最近擦れると痛みが出てきたため受診した。

乳児の尾骨部に単発性の紅色結節として生じた伝染性軟属腫の1例神﨑　美玲 , 松田　諭 , 塩野　淳子 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1348-1349

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現病歴　2，3週間前より尾骨部に小結節が出現し，増大したため当科を紹介受診した。

真性包茎手術と病変切除で治療した尖圭コンジローマの1例岩間　美幸 , 山田　大資 , 宮川　卓也 , 三枝　良輔 , 尾松　淳 , 沼尻　宏子 , 江畑　慧 , 谷口　隆志 , 赤股　要 , 増井　友里 , 佐藤　伸一 , 佐藤　悠佑 , 久米　春喜 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1350-1353

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54歳，男性。包皮は真性包茎。1年前から包皮先端に病変が出現した。イミキモド外用では難治で，排尿障害をきたしたため当科を受診した。包皮先端部から突出する紅色結節があり，触診上包皮の内側にも結節を触知した。尿道内病変の可能性を考え，真性包茎の手術を行い，亀頭を露出させたうえでコンジローマ病変を切除した。術中所見で尿道口に病変はなかったが，亀頭および包皮に病変が50個程度あり，可及的に切除した。術後再発なし。尖圭コンジローマの治療はイミキモド外用や液体窒素凍結療法を行う場合が多いが，真性包茎がある場合は病変部の環境改善の目的も含め，外科的加療が第一選択になりうると考えた。

皮膚症状の精査を契機に診断に至った急性HIV感染症の1例冨樫　結 , 猪又　直子 , 加藤　英明 , 伊藤　亜希子 , 鈴木　聡 , 蒲原　毅 , 相原　道子 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1354-1358

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75歳，男性。インドネシアでの性交渉の約3週間後より背部・四肢の疼痛，食欲低下，脱力，ふらつきを認めた。全身に紅斑，丘疹が多発癒合し，口腔内白苔の鏡検でカンジダを検出した。血液検査にて抗HIV抗体（Western blot法）陰性であったが，血清HIV-RNA陽性，さらに髄液検査でもHIV-RNA陽性を認め，急性HIV感染症（無菌性髄膜炎）と診断した。抗HIV薬投与によるHIV-RNA量の低下に伴い全身の紅斑や丘疹は消退した。播種状紅斑丘疹型の皮疹をみた際には，患者背景や随伴症状，粘膜症状をもとに急性HIV感染症を疑い，HIV-RNA量の測定を含め早期診断が必要である。

巻頭言

患者さんの10年後，20年後を見通すことができるような皮膚科医を目指そう！新井　達 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1335-1336

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医療連携，特に病院とクリニックの連携は極めて重要であり，病院にご紹介いただいた患者さんの病状が安定したら，診療所に逆紹介することは診療の基本方針である。当然，ご紹介いただいたすべての患者さんを病院でみていくことは不可能であり，私も近隣の諸先生方に多くの患者さんの診療をお願いしており，大変感謝している。注意しなくてはならないのは，原因の検索が不十分であったり，病状が落ち着く前に紹介したりするケースがときにみられ，このような場合は患者さんとクリニックの先生の両者にご迷惑をおかけすることになるので，あくまで安心して診療依頼することが可能な状態になってから，逆紹介することが重要である。

Clinicolor

Langerhans細胞組織球症の1例井波　真矢子 , 辻　香織 , 吉村　紫 , 太田　真由美 , 出月　健夫 , 五十嵐　敦之 , 塩田　曜子 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1333-1334

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現病歴　生後4カ月頃から頭皮，胸部に小紅斑を生じ，増数した。近医小児科や皮膚科を受診したが，原因は不明であった。外用ステロイド剤や外用抗菌薬を処方されたが改善せず，生後7カ月で当科を受診した。

臨床研究

帯状疱疹急性期痛に対してアセトアミノフェン1800mg/日を適宜併用し非ステロイド性抗炎症薬の頓服で加療した症例の臨床的検討三井田　博 , 有波　浩 , 結城　大介 , 斎藤　勇輝 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1359-1364

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当科では帯状疱疹急性期痛に対しては抗ウイルス薬に加えて，アセトアミノフェン1800mg/日を適宜併用したうえで，非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）の頓服で治療している。今回119例を集計し，後ろ向きに臨床的検討を行った。NSAIDsの頓服率は31.1％であり，平均頓服回数は3.1回であった。アセトアミノフェン1800mg/日を併用することでNSAIDsの使用を抑制できる可能性がある。急性期以降も疼痛のマネジメントを要した患者は「60歳以上」，「NSAIDs頓服歴あり」，「バラシクロビルで治療」のそれぞれの群で有意に高く，これらの患者に対してはより慎重に経過観察するべきと思われた。

ちょっと一息　医局ラウンジ

第20回　岩手医科大学 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1366-1367

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皆仲がよく，明るくアットホームな医局です。先輩医師は面倒見がよく後進の指導に熱心であり，困ったことやわからないことは気軽に相談できる雰囲気です。また若手医師は勉強熱心で積極的であり，医局は活気に溢れています。カンファランスでは患者さんの治療方針や医局員それぞれの研究課題について皆で情報を共有し，それぞれのサブスペシャリティを生かしたディスカッションが行われています。（角田加奈子）

Dr.斎田の皮膚科診断講座

Dr.斎田の皮膚科診断講座（32）斎田　俊明 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1369-1371

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症例情報　60歳代女性の四肢・体幹に，大小不同の浮腫性紅斑が多発してきた。その他の臨床情報は不詳である。腹部の皮疹から生検された検体の組織所見を図1～4に示す。

症例

遊走性結節性紅斑の1例小越　達也 , 佐野　遥 , 高橋　一夫 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1373-1377

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50歳代，女性。2週間前より両下腿に疼痛を伴う紅斑が出現し，結節性紅斑が疑われ近医より紹介受診した。一部の紅斑は約8cmと大型で鼠径部や頸部リンパ節腫脹も認めた。初診時の紅斑が中心治癒傾向を示しながら遠心性に拡大する臨床像などから遊走性結節性紅斑と診断した。病理組織学的に脂肪組織内の炎症細胞浸潤は軽度であったが，血管増生や閉塞像がみられた。ステロイド内服で症状は軽快したが中止に伴い再燃したためステロイドを再開，その後ヨウ化カリウムを追加したところステロイドを中止しても寛解が維持された。原著で報告のある脂肪組織内での血管増生に加え，自験例でみられた血管閉塞像も遊走性結節性紅斑の特徴のひとつではないかと考えた。

顔面に著明な浮腫を呈した蕁麻疹様血管炎の1例久保　悠 , 川上　民裕 , 木村　聡子 , 相馬　良直 , 門野　岳史 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1379-1382

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55歳，女性。発熱後に顔面に著明な浮腫を伴って生じた蕁麻疹様血管炎を経験した。血清補体価の低下はなく，皮膚病変以外の臓器病変はなかった。プレドニゾロン30mg/日にて速やかに改善した。蕁麻疹様血管炎は臨床的に蕁麻疹が存在しながら，通常の蕁麻疹とは異なり，病理組織学的に白血球破砕性血管炎の像を伴う血管炎症候群のひとつである。Chapel Hill分類2012では低補体血症性蕁麻疹様血管炎として正式に採用され，蕁麻疹様血管炎は注目を集めつつある。これまでの顔面に浮腫を呈した蕁麻疹様血管炎本邦報告17例を集計し，補体値，基礎疾患などについての検討を行った。

硝酸による右拇指化学熱傷の1例魚住　知美 , 帆足　俊彦 , 浅原　麻里子 , 江崎　英子 , 山瀬　綾 , 船坂　陽子 , 佐伯　秀久 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1383-1386

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68歳，男性。仕事中に右拇指を硝酸に曝露したが気づかず放置していた。右拇指の腫脹が強くなり受傷3日後に近医を受診し，その翌日に当院を紹介受診した。X線上骨欠損や腐食はなく，スルファジアジン銀クリーム外用のみで経過をみていたが改善がないため，デブリードマンを施行した。壊死組織を除去しても出血が乏しく，さらに脂肪組織を切除し，出血をある程度確認したところで手術終了とした。術後経過は良好で植皮することなく，外用のみで上皮化した。外用のみでの保存的加療で改善がない場合には，積極的にデブリードマンを行うことが必要である。

有茎広背筋皮弁で再建した冠動脈ステント留置後の右肩甲部放射線性皮膚潰瘍森田　安理 , 石井　芙美 , 川上　佳夫 , 加持　達弥 , 竹原　彩 , 大塚　正樹 , 山﨑　修 , 森実　真 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1387-1390

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75歳，男性。狭心症で冠動脈ステント留置後3カ月目頃より右肩甲部に痒みを伴う紅斑が出現し，1年後に潰瘍化した。デブリードマンと外用療法で約1年半加療されるも難治であったため，精査・加療目的に当科を紹介受診した。初診時，右肩甲部に3×3cm大の深い潰瘍があり周囲8×7cm大の範囲に板状硬結，暗褐色色素沈着と血管拡張を認めた。MRIでは筋層まで達していた。冠動脈造影による放射線性皮膚潰瘍と考え，潰瘍，硬結を切除，有茎広背筋皮弁術を施行した。術後は機能面，整容面ともに良好であった。右肩甲部皮膚潰瘍の患者に遭遇した場合，冠動脈造影の既往を問診することが重要である。また再建方法としては有茎広背筋皮弁術が治療選択肢となる。

アバタセプトによる乾癬型薬疹鈴木　茉莉恵 , 猿田　祐輔 , 渡辺　秀晃 , 末木　博彦 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1391-1394

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77歳，女性。既往に糖尿病，甲状腺機能低下症，尋常性乾癬がある。2010年7月に足関節痛が出現，関節リウマチと診断され，ステロイド，メトトレキサート，タクロリムスで治療された。効果不十分のため，2013年2月からアバタセプトを投与され，2017年3月躯幹・四肢に鱗屑を付す紅斑が出現した。病理組織学的には乾癬型組織反応であった。アバタセプトの投与を中止しカルシポトリオール水和物/ベタメタゾンジプロピオン酸エステル配合剤外用にて皮疹は消退した。以上よりアバタセプトによる乾癬型薬疹と考えられた。アバタセプトよる乾癬型薬疹は発症までの期間が長く，アバタセプトの投与を中止せず外用加療で経過をみることが可能と思われた。

アキシチニブによる創傷治癒遅延をきたしたうっ滞性皮膚潰瘍の1例伏田　奈津美 , 澤田　知佐 , 小林　忠弘 , 大石　京介 , 松下　貴史 , 濱口　儒人 , 竹原　和彦 , 斎藤　佑希 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1395-1398

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54歳，男性。5年前に両下肢静脈瘤に対して手術を施行された。4年前に多系統萎縮症を発症し下肢挙上困難となった。1年前より左腎細胞癌の多発肺転移に対して血管内皮細胞増殖因子受容体をターゲットとした選択的キナーゼ阻害薬であるアキシチニブの内服を開始した。1カ月前より左足背に皮膚潰瘍が出現し，鶏卵大まで拡大したため入院加療した。安静，下肢挙上のうえ保存的加療を試みたが皮膚潰瘍はさらに悪化したためアキシチニブを休薬したところ，皮膚潰瘍の急速な改善がみられ約2カ月で瘢痕治癒した。アキシチニブの副作用として創傷治癒遅延が報告されており，アキシチニブ内服中に難治性の皮膚潰瘍をきたした場合には休薬を考慮する必要がある。

Monoclonal Gammopathy of Undetermined Significanceを合併した壊疽性膿皮症の1例金井　淳子 , 林　周次郎 , 神永　朋子 , 山内　瑛 , 岡本　麻希 , 濱﨑　洋一郎 , 井川　健 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1399-1403

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62歳，女性。1カ月前より下腿に出現した難治性の潰瘍のため当院を受診した。経過ならびに臨床所見と病理組織学的所見より壊疽性膿皮症と診断のうえ，治療の開始と同時に基礎疾患の精査を施行した。骨髄穿刺で形質細胞の軽度増加，血清免疫電気泳動でIgG-λ型M蛋白を認め，臓器障害のないmonoclonal gammopathy of undetermined significance（MGUS）の合併と診断した。MGUSおよびくすぶり型多発性骨髄腫を合併した壊疽性膿皮症は，本邦では自験例を含めて20例の報告があり，発症部位では下肢が最多であった。壊疽性膿皮症の基礎疾患のひとつとしてMGUSも念頭に置く必要があると考えた。

プレドニゾロンとシクロスポリン内服併用で加療した好酸球性筋膜炎の1例玉理　紗帆 , 水野　隼登 , 頼田　友里 , 栁瀬　哲至 , 永田　敬二 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1405-1409

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46歳，男性。2カ月前より，四肢に浮腫性皮膚硬化を自覚した。血液検査で末梢血好酸球数の増多，アルドラーゼ値の上昇を認めた。造影CTでは両下肢の筋膜肥厚がみられ，病理組織では，血管・付属器周囲や筋膜を中心にリンパ球や好酸球を主体とする炎症細胞浸潤および筋膜の肥厚を認め，好酸球性筋膜炎と診断した。プレドニゾロン（PSL）25mg/日の内服を開始し症状改善がみられたが，PSLを漸減したところ再燃した。シクロスポリン100mgの内服を併用したところ，皮膚硬化は著明に改善し，手・足関節の屈曲制限も改善した。ステロイド内服のみでコントロール不良な症例にシクロスポリンの併用が選択肢となりうると考えた。

心窩部を中心に生じた小児腹壁遠心性脂肪萎縮症の1例金井　美馬 , 林　周次郎 , 小池　真美 , 濱﨑　洋一郎 , 井川　健 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1411-1414

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9歳，女児。生後間もなく外傷などの誘因なしに前胸部から腹部の紅斑が出現し，徐々に拡大したため近医を受診した。心窩部を中心とした環状の紅斑を認め，中心の皮膚は陥凹していた。陥凹病変は遠心状に拡大し，腹部全体から肋骨弓まで広がり，9歳頃に停止した。9歳時，精査目的に当院を受診した。陥凹部位の皮膚生検組織では，脂肪組織はほぼ欠如していた。小児腹壁遠心性脂肪萎縮症と診断し，14歳まで経過観察したが，特記すべき変化はない。過去の小児腹壁遠心性脂肪萎縮症の報告では，70％以上が鼠径部に発症している。乳幼児の成長に伴う運動機能の違いに着目し，1歳未満での報告例を検索した結果，半数以上が鼠径部以外の発症であった。

歯科治療により改善した肉芽腫性口唇炎の1例西川　哲史 , 武田　芳樹 , 平山　真帆 , 川内　康弘 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1415-1419

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41歳，男性。2カ月前より上口唇の腫脹が出現した。前医で抗ヒスタミン薬内服を開始されるも，腫脹が持続するため当科を紹介受診した。初診時，上口唇のびまん性の腫脹がみられた。病理組織学的に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫がみられ，肉芽腫性口唇炎と診断した。上顎左側第1小臼歯，第1大臼歯に根尖病巣を認めるほか，多数の齲歯がみられた。抜歯と齲歯治療に加え，ドキシサイクリン塩酸塩の内服で，半年後に腫脹は消失した。肉芽腫性口唇炎の原因は明らかではなく，また治療法も確立されていないが，歯科治療が有効であったとする報告は多い。本疾患をみた場合は，齲歯や根尖病巣などの歯性病変がないか，歯科コンサルテーションが必要であると考えられた。

皮下結節性脂肪壊死様の皮疹を腹部に生じた全身性エリテマトーデス合併急性膵炎の1例後藤　妙子 , 早川　奈見 , 小暮　麻子 , 桒野　嘉弘 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1421-1424

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44歳，女性。全身性エリテマトーデスのためステロイド内服にて治療を行っていた。自宅で倒れているところを発見され，救急搬送された。血液検査，画像検査から重症急性膵炎と診断された。入院1週間後，腹部に皮疹が出現した。臨床所見，病理所見，また膵炎に伴う皮疹であることを総合して，病理所見は典型的ではなかったが，皮下結節性脂肪壊死と同様の病態と考えた。膵炎の治療に伴い，皮疹も消退した。本症はまれではあるが，ときに皮疹が膵疾患に先行し本症から無症候性の膵炎や膵癌が発見されることもあるため，診断的価値が高いと考えられている。好発部位である下腿だけでなく，自験例のように腹部に出現することもあるため見逃さないように注意を要すると考えた。

左外陰部に生じたSolid Cystic Hidradenomaの1例松浦　佳奈 , 松岡　摩耶 , 川上　民裕 , 相馬　良直 , 門野　岳史 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1425-1428

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69歳，女性。約半年前より，左外陰部に腫瘤が出現し，急速に増大したため，当科を受診した。初診時，左外陰部に42×32mm大の半球状に隆起した腫瘤があり，内部に31×22mm大の暗紫紅色結節が透見された。超音波では多房性囊胞性腫瘤を認めた。骨盤部MRIでは，出血を伴う多房性囊胞性腫瘤がみられ，辺縁は不整な壁肥厚と充実性成分を伴っていた。病理組織では，真皮から皮下脂肪組織にかけて大型の囊腫と，囊腫壁から内腔に突出する充実性腫瘍成分から構成される多房性腫瘤を認めた。腫瘍細胞はporoid cellが主体で，一部clear cellも混在しておりsolid cystic hidradenomaと診断した。自験例は，術前のMRI・超音波検査が腫瘍の特徴的な構造を把握するのに有用であった。

Adenoma of the Nippleの1例平山　真帆 , 福原　祐衣 , 高橋　文 , 川内　康弘 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1429-1432

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30歳，女性。1年半前より，右乳頭部の結節から分泌物や出血がみられるため当科を受診した。初診時，右乳頭部に7mm大の紅色結節を認め，ダーモスコピーで観察すると淡黄色塊状物や紆曲する毛細血管がみられた。病理組織学的に真皮に多数の腺腔構造を認め，腺腔内では上皮細胞が増殖し，篩状，管腔状ないし充実性の胞巣を形成していた。腺腔構造は乳管上皮細胞と筋上皮細胞の2層からなり，細胞に明らかな異型はみられず，adenoma of the nippleと診断した。Adenoma of the nippleは比較的まれな良性腫瘍であるが，臨床的・病理組織学的に乳癌との鑑別に苦慮することが多い。皮膚科の日常診療で遭遇する可能性があり，乳頭部腫瘍の鑑別診断のひとつに考慮する必要がある。

皮下腫瘤の病理組織検討からMalignant Rhabdoid Tumorと診断できた巨大食道腫瘤の1例後藤　妙子 , 野々垣　彰 , 中馬　久美子 , 小暮　麻子 , 桒野　嘉弘 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1433-1436

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84歳，男性。食欲低下，全身の疼痛，歩行困難で救急要請された。CT検査で頸部食道に巨大な腫瘤形成がみられた。左腰部，左大腿部，左手掌にも皮下腫瘤があり，左腰部の腫瘤を摘出し病理組織を検討したところ，malignant rhabdoid tumorであることがわかった。男性は診断後2週間で死亡した。Malignant rhabdoid tumorは報告例が少なく，いまだ疾患概念として不明な点が多い。食道原発のmalignant rhabdoid tumorで皮下腫瘤を形成した報告はわれわれの調べ得た限り初めてであるが，見逃されている可能性もあり，診断の際に注意するべきと考えた。また，malignant rhabdoid tumorは予後が非常に悪く急速な進展を遂げるため，早期の治療介入が必要であり，今後の病態の解明と治療方法の確立が待たれる。

Langerhans細胞組織球症の1例井波　真矢子 , 辻　香織 , 吉村　紫 , 太田　真由美 , 出月　健夫 , 五十嵐　敦之 , 塩田　曜子 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1437-1440

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7カ月，女児。生後4カ月頃から頭皮，胸部に小紅斑が生じ増数した。他院で外用ステロイド剤や外用抗菌薬を処方されたが改善なく，生後7カ月で当科を初診した。頭部，背部に脂漏性皮膚炎様の鱗屑を伴う紅斑がみられ，一部浸潤を触れ，紫斑を混じていた。病理組織像では真皮上層に稠密な細胞浸潤を認め，核は腎臓様にくびれを示すものもあった。免疫染色ではCD1a，S-100が陽性で，病理組織所見よりLangerhans細胞組織球症（LCH）と診断した。全身検索の結果，皮膚以外の病変はなかった。皮疹は自然消退したが，多臓器型への移行がないか経過観察している。小児の紫斑を混じる紅斑をみた場合には，LCHも鑑別する必要がある。

原発性皮膚CD4陽性小・中細胞型T細胞リンパ腫澤田　香織 , 石井　貴之 , 八田　尚人 , 村石　康弘 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1441-1443

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68歳，女性。2カ月前から額に結節が出現した。皮下に16×12mm大の弾性硬に触れるドーム状に隆起した紅色結節があり，その他の皮膚病変やリンパ節腫大は認めなかった。病理組織学的に真皮から皮下脂肪組織に軽度の異型を示すリンパ球が増殖していた。腫瘍細胞はCD3（＋），CD4（＋）＞CD8（＋），CD30（−）であった。T細胞受容体β鎖遺伝子再構成（＋），EBER（−）であった。原発性皮膚CD4陽性小・中細胞型T細胞リンパ腫と診断した。本疾患はまれな疾患のため，治療法は確立されておらず，今後の症例の蓄積が期待される。

爪甲下に生じた末端黒子型黒色腫の小児例尾本　百香 , 葉山　惟大 , 木村　久美子 , 照井　正 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1444-1448

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13歳，男児。約1年前，左第1趾爪甲に後爪郭から先端に行くに従い狭小化する褐色色素線条を認めた。1カ月前に同部位を踏まれた後から色素線条が拡大したため受診した。爪甲は変形し粗糙となり，先端部には淡紅色の表面乳頭状の結節を伴っていた。ダーモスコピーでは色素線条の辺縁で爪甲下出血を伴う色調の比較的均一な黒色線条であり，爪甲色素性母斑や爪甲下出血を，結節部は尋常性疣贅を疑い冷凍凝固療法を行った。結節は約1カ月後にドーム状に増大していたため生検した。その結果，悪性黒色腫，末端黒子型の診断であった。自験例は外傷を契機に急速に増大した若年性の悪性黒色腫の症例であり，外傷歴のある爪甲下悪性黒色腫の報告は多く，外傷の関連が重視されている。また小児の場合，成人に比べ外傷が加わると腫瘍の増大が急速である可能性が考えられた。

入院中に生じた緑膿菌性毛包炎の母子例岩坂　麻衣子 , 松立　吉弘 , 田蒔　舞子 , 村尾　和俊 , 久保　宜明 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1449-1453

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症例1：8歳，男児。6週間前からIgA腎症のため入院中。数日前から臀部に小膿疱が生じ，徐々に拡大してきた。臀部から大腿部にかけて毛孔一致性に小膿疱を伴う浮腫性の紅斑や紅色丘疹が多発していた。組織は，毛包炎の像で，小膿疱の細菌培養で緑膿菌を検出したため，緑膿菌性毛包炎と診断した。症例2：40歳，女性（症例1の母）。症例1の皮疹出現から2日後に躯幹や上肢に小膿疱を伴う赤褐色丘疹が生じた。臨床像から緑膿菌性毛包炎と診断した。詳細に問診した結果，共用していたナイロンタオルが原因と判明した。本疾患の特徴的な臨床像に加え，本邦では，ナイロンタオルが主な発症要因であることを認識しておく必要があると考えた。

憧鉄雑感

第89回　理想的外用療法指導術安部　正敏 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1455-1455

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外用療法指導の手段としてフィンガーチップユニットの概念があるのは周知の通りである。その是非に関しても様々な議論がなされているが，中でも尤もな事実が我が国の外用薬は概ね小型であり，この概念が原著とは相違することである。当然，外用薬先端の口径は様々不揃いであり，これを踏まえてこの概念を否定的にみるか，あるいは患者理解を優先して肯定的に考えるかはそれぞれに分があるように思え一様にはいかない。筆者は後者に属するが，それでも保湿薬の場合には少々増量して塗布するように指導している。

MiniReport

くるみアレルギーの1例大原　香子 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1456-1457

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現病歴　受診の30分前にくるみ餡の団子を一口食べた。その5分後に顔面が腫脹してきた。

骨髄線維症患者の腹部に生じた顆粒球肉腫の1例加納　慎二 , 西田　絵美 , 中村　元樹 , 堀尾　愛 , 加藤　裕史 , 立田　卓登 , 森田　明理 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1458-1459

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現病歴　2015年5月に骨髄線維症と診断され，ルキソリチニブリン酸塩（ジャカビ^®錠）による加療中，2017年12月に右側腹部に7cm大の暗赤色の腫瘤が出現した。徐々に増大を認め，左側腹部にも4cm大の同様の腫瘤が出現し，疼痛を伴ったため2018年3月に当科を紹介受診した。

帯状疱疹に続発したと思われる帽状腱膜下膿瘍および頭蓋骨骨髄炎の1例杉原　夏子 , 染谷　真志 , 野口　絵麻 , 山崎　究 , 林　雅裕 , 重田　真幸 , 大黒　晴美 , 小田　智三 , 小暮　麻子 , 青笹　尚彦 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1460-1461

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現病歴　9日前に頭部に水疱が出現した。その後頭痛があり，2日前に近医内科，眼科を受診した。帯状疱疹の診断で，バラシクロビル，アセトアミノフェン，ガチフロキサシン点眼液，フルオロメトロン点眼液を処方された。その後頭痛が増悪したため，当科を受診した。初診時は三叉神経第1枝領域に水疱と膿疱がみられていたが，概ね痂皮化傾向であり，びらんを呈していた。帯状疱疹と診断してバラシクロビルを継続し，疼痛に対しプレガバリンの内服を併用したが，頭痛の悪化や発熱，前額部から排膿が出現した。初診3日後に当科を再診，入院となった。

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目次 61巻9号 , 2019年8月

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英文目次 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1329-1329

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投稿規定 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1330-1331

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著作財産権譲渡同意書 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1332-1332

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Information 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1365-1365

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次号予告 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1372-1372

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編集後記 61巻9号 , 2019年8月 , pp.1462-1462

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基本情報

皮膚科の臨床
61巻9号
(2019年8月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0018-1404 金原出版

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