Cancer Board Square 3巻3号 (2017年10月)

Feature Topic 最期の最後のがん診療

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新規抗がん剤や臨床試験によって積み上げられたエビデンス、そして支持療法の開発は多くの患者の生存時間延長を可能にしました。

また、診療現場も外来が中心となり、在宅医療も着実に広まりつつあります。

しかしながら、病院で最期の時を過ごされる患者も未だ多く存在します。

かつての入院診療時代に比べて、医療者が患者とその家族に関わる時間の質と量は、その姿を変えているのではないでしょうか。

そこで、本誌では「最期の最後のがん診療」と題し、外来・在宅診療中心時代の最後の関わり方を考えてみることにしました。

在宅診療や終末期周辺で求められる現場的なスキルや心構えをエキスパートが紹介します。

最期の最後のがん診療の全体

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上手くいかない「がん診療」の現場

 医師は、診察し、診断し、処方をする。

 それが、どんなときでも当たり前。医学校でも、研修医のときも、その精度をいかに高めるかというところに注力する。それが医師の職務の基本であり、そして医師しか行なうことができない専門性だからである。

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誰にとっても難しい問題

 進行再発がんにおいて現在のところ、ほとんどの場合「治癒」はない。日本人の2人に1人ががんに罹患し、3人に1人ががんにより死亡するという現況のなかで、積極的治療、つまりがん薬物療法は進行がんに対する「治療」としてのみではなく、「症状緩和」や「QOL(Quality of Life)の改善」に対して重要な役割を担っている。ここ20年ほどでがんの治療領域は大きく広がり、がん薬物療法の効果も目を見張るほどに発展した1。選択肢も着実に増えた。それに伴い課題も増えた。「いつまで、どこまでがん薬物療法を行なうのか」もそのひとつである。

 現在までに、診断早期よりの緩和ケアの導入が延命やQOLの改善に役立つという報告がある(Fig.1)2一方で、積極的治療を中止し完全なBSC(best supportive care)への移行をいつ行なうべきかという判断の目安やそれに関する報告・ガイドラインはない。治療に関する認識は、医師と患者の間で大きく異なり、EOL(End of Life)、死の間近までがん薬物療法が行なわれる傾向が強く3、化学療法を受けている患者の多くが、化学療法が根治を目標としないことを理解していないという報告もある(Fig.2)4。また、自分の予後について知りたがる患者に対して、医師は患者本人にその予後を事実より長く伝える傾向にあり56、結果的に患者はEOLとなってもより積極的にがん薬物療法を望むことがある7

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終末期における予後予測ツール

 終末期医療領域における予後予測は、近年注目されるトピックスとなっている。予測しない状態で患者を失った家族にはうつ病の発症や複雑性の悲嘆が増えたという報告もあり1、根拠を持って予後予測を行なうことは終末期ケアの質を高めるうえで重要である。

 予後予測は経験や患者の徴候から判断されることが多いが、医師は患者の予後を楽観視する傾向があることを心にとどめておく必要がある。終末期がん患者を対象としたある研究では、医師の推定する予後は平均42日であるのに対し、実際の生存期間は平均29日とおよそ2週間も短かったと報告していた2

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死亡はどのくらい予測が可能になってきたか?

「あとどのくらいでしょうか?」「今日は病院に泊まったほうがいいのでしょうか?」家族からこう聞かれて、頭を悩ませてきた読者の方は多いのではないだろうか。家族を呼ぶのがあまりにも早すぎると、付き添いによる疲労や仕事への影響が心配になり、少しでも長く生きてほしいと思っていた家族が「まだお迎えは来ないのか?」と思うようになってしまい、居た堪れない。かといって、呼ぶのが遅すぎて臨終の瞬間に立ち会えなかったと、家族に後悔が残ってしまうのはつらいものだ。

 進行がんでは亡くなる1、2ヶ月前になると急激にADLが低下する患者が多いことが知られている12。そして、亡くなる1、2週前になると疼痛や呼吸困難よりも、倦怠感や食欲低下、眠気が急激に増悪することが報告されている(Fig.1)3。こうした月、週単位の変化については予測指標が複数開発され、ある程度の予測は可能となったが、より短い日の単位、時間単位についてはまだ十分な研究が進んでいない。現在、全国の緩和ケア病棟において3日以内の死亡を予測する指標を開発するための多施設前向き観察研究が実施されており、その結果に期待したいところではあるが、本稿では現在までにわかっている死亡直前期の徴候、その対応について紹介したい。

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副作用予防や予後も視野に入れた薬の使い方

 終末期のがん患者は、慢性疾患、化学療法、症状緩和の薬剤と多くの薬を服用している。「薬でおなかいっぱいになってご飯は入らない!」「こんなに薬を飲んでも病気はよくならないでしょ?」という患者の声を前に、我々薬剤師はどの様にアセスメントしていくのが正解か非常に悩むことが多い。

 どの薬剤をどの時期に中止すべきなのか? この切実な問いに対してガイドラインもなければ報告も数少ない。更に、この時期は患者本人、家族、医療者のさまざまな価値観が錯綜している。終末期には嚥下障害や意識混濁などにより、余儀なく内服薬剤を中止または注射薬へ変更することが、ほとんどの患者に起こる。この時期の患者の病態は変化しており、薬剤の吸収、分布、代謝、排泄機能などの低下により効果や副作用に影響を及ぼす可能性が高いことが考えられる。

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「早期からの緩和ケア」が提唱されるなかで

 早期からの緩和ケア、という言葉を耳にするようになって久しい。Temelらの研究1により、診断直後からの緩和ケアチームの導入は結果的に患者のQOL(quality of life)だけでなく生存期間にも寄与する可能性があることが示唆され、海外の診療ガイドラインにおいては患者の予後が半年から1年以内と見込まれる場合には、予後を見据えた事前計画(advance care planning;ACP)を開始することが推奨されるようになった。わが国では、2007年にがん対策基本法が制定され、それに基づくがん対策推進基本計画において緩和ケアは重点課題のひとつとされた。更に、緩和ケア=終末期に限定されたもの、という誤解がまだ根強いことを念頭に、2012年の第2期基本計画では緩和ケアは「診断のときから開始すべき」と明記された。

 確かに、今日の医療現場で実践されている緩和ケアは、具体的な症状緩和だけでなく心理的・社会的支援、情報提供なども含んでおり、その意味で「診断のときから開始すべき」という指摘は正しい。だからこそ、緩和ケア専門医だけでなく全てのがん治療医(主治医)がその知識と技術を最低限身につける必要があり、そのための緩和ケア研修会が一定の成果を挙げていると思う。

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最期の「修羅場」

四月の気層のひかりの底を

唾し はぎしりゆききする

おれはひとりの修羅なのだ

—宮沢賢治『春と修羅』

最後が終わったあとで

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「もう十分です。少し静かに休みたいんです……」かすれた声でとぎれとぎれにゆっくりと話すKさんの突然の言葉に、心がざわつくのを感じました。死を目前にして苦しむKさんが終末期鎮静を求めたことに、驚きと戸惑いを感じました。“本当にこれでよいのだろうか……、そんなに辛い思いをしているなんて……、これまでのケアが間違っていたのかしら……”と、一瞬にしてさまざまな考えで頭がいっぱいになりました。胸が締め付けられ言葉をなくし、それでもなんとか踏みとどまりKさんのそばにいると、やがて視界が曇ってくるのを感じました。“泣いてはいけない……”と、自分の感情を否定することだけに必死になっていました。

—ある看護師の語り

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「二人主治医制」の構想ができるまで

 実は私は、「主治医」という概念について学生の頃からこだわりをもって考えてきました。研修医だった頃に最初の本である『初期プライマリケア研修』(1994年)、その続編の『学生のためのプライマリケア病院実習』(1995年)を出し、多くの医学生の研修相談に乗ってきました。そして3冊目の『君はどんな医師になりたいのか』(2002年、3冊全て医学書院)でがんでも糖尿病でも心療内科でもとにかく丸ごと引き受ける「主治医」へのこだわりや思想は明確になっていきました。

 卒業は1991年で、研修は前期・後期ともに東京の虎の門病院です。虎の門病院は「最初から最期まで患者を診る」という気風をもっている病院です。研修カリキュラムも内科全科と外科・麻酔科のローテートが必修でした。一方で、2004年以前の日本の平均的な医学教育は、神経内科や整形外科など入局した医局毎のストレート研修形式がほとんどでした。結果として、臓器別専門医の養成に偏り、患者を全人的に診るという教育や理念はそれほど強調されていませんでした。私の場合、研修を終えてそのまま虎の門病院で血液内科のスタッフになりましたが、血液疾患の場合、特定臓器だけを対象にするわけではなく、全身にどんなトラブルが生じようとも、疾患の性質上も他科に転科させるようなことはありません。必ず「主治医」として丸ごと引き受けることから、自分自身は「専門医」というより「主治医」として診療に携わっていました。

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消化器内科医が緩和医療に出会う

 最初に私の背景をお話させてください。私は、横浜市立大学附属病院での初期研修修了後、8年間消化器内科医または内科医として働いていました。消化器内科医時代は多くの終末期がん患者を担当しました。胃がん、大腸がん、肝臓がん、膵臓がん、胆管がん……消化器のがんは多岐にわたり、他科と比べても担当患者の看取りが多いと思います。私も多くのお別れのなかで、無力感に苛まれることもありましたが、そんななかで緩和医療に出会いました。「病気は治らなくてもその人の生活をサポートする」という考え方が医療のなかにあることを知ったのです。患者の生活ありきは医療の原点ではありますが、そうした考え方を見失っていたのです。

View-point がん診療 「胃がん」

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予防、診断、治療、フォロー、サポート。

すべての患者に対して、標準的な治療・ケアが適用できるわけではありません。

様々な合併症、薬剤の相互作用、心理的サポートの介入時期、患者ニーズへの対応、医療経済的問題……。

がん診療では、そのほとんどのケースにおいて、個別性が前提となっています。

標準治療の少し先を考えるためには、現場に即した「問い」と異なった視点による「答え」を知ることも必要ではないでしょうか。

Q&Aは企画者が設定しました。

Clinical Questionに対して、エキスパートが視点の異なる考えを提示します。

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1 疫学

 わが国における胃がんの罹患数は大腸がんに次いで2位(132,159人、2012年)、死亡数は肺がん、大腸がんに次いで3位(47,903人、2014年)となっている。年齢調整罹患率、年齢調整死亡率はともに低下傾向である1。2014年度の胃がん健診受診者数は2,324,312人で、要精検率は7.54%、がん発見率は0.10%であった2。大腸がんや肺がんに比べると受診者数は少なく、また2012年度と比べ受診者数は減少している。世界的には胃がん罹患率は東アジアで高く、北米や西欧で低い。日本は東アジアのなかでも高率地域である3

 1994年の世界保健機構(WHO)の専門組織である国際がん研究機関(IARC)は、Helicobacter pylori菌感染を胃がん発症の最も高リスク(グループ1)と位置づけている。多くのコホート研究で、喫煙もリスクを高めることが示されている3。また遺伝性の胃がん発症も知られている。欧米を中心に報告されている遺伝性びまん性胃がんは、常染色体優性遺伝の形式をとり、E-cadherinをコードするCDH1遺伝子の変異による。リンチ症候群、家族性大腸腺腫症、リ・フラウメニ症候群、遺伝性乳がん卵巣がん症候群などでも胃がんの発生が報告されている。

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診断

EBV関連胃がん

Q 48歳、男性。上腹部不快感を主訴に近医を受診したところ、胃噴門部に3型進行がんの所見を認めました。生検結果は低分化腺がんで、多数のリンパ球浸潤を指摘されています。推測される発がん機序、確定診断のために追加する検査法および予後についてお答えください。

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症例

60歳代、女性。閉経後。

主訴:左大腿部痛

連載 國頭ゼミの課外授業 わたしたちのキャリアプラン[0]【新連載】

2030年のわたしたちとA.I. 國頭 英夫
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はじめに

國頭 私は日赤看護大学で1年生を対象にコミュニケーション論のゼミを行なっています。その内容については『死にゆく患者と、どう話すか』(医学書院)に講義録としてまとめたのでそちらを参照してください。

 ゼミを担当して驚いたことは、看護学生さんたちが非常に優秀で、かつ熱心であるということ。そのまま別れてはもったいないので、医学書院がまた本誌になにか書いてくれと頼んできたのをよい機会に、この子たちとまた議論してみようと思いました。ゼミの内容とは別に、もと指導教官として、というより知り合いのオジさんとして(笑)、いろいろ話してみようかという企画です。

 今回は手始めに、二人のキャリアプランについて、をテーマにしました。なにかとっかかりがあったほうがいいと思ったので、ひとつのキーワードとしてA.I.(artificial intelligence:人工知能)を念頭に置くことにします。そうだね、大体2030年頃、君たちが30代半ばにさしかかった時期のことを考えてもらいましょう。

連載 臨床医のためのワンテーマ腫瘍病理[7]

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 病理診断に求められる役割のうち、頻度は高くないものの、期待が極めて高い仕事、というのがあります。「悪性腫瘍の原発探し」です。原発不明がんの原発を決定することは治療選択に直結する最重要事項ですから、ニーズの強さもうなずけようというものです。原発特定のために、病理医はなにをしているのでしょうか。

 有名なのは、免疫組織化学。いわゆる免疫染色です。ただ、免疫染色はその知名度の高さや報告書における存在感の強さのせいか、過剰な期待をかけられやすいようです。

連載 Medical Oncology 2.0[2]

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日常診療を「見える化」しよう

 前回の連載に引き続き、今回もがん診療の「日常」を明示的に捉えていきたいと思います。「見える化」は「企業経営の課題解決においてまずは必要な情報を明らかにすることが大切である」と戦略コンサルタントの遠藤功氏(元早稲田大学商学部教授)が世の中に広めた言葉として知られています1

 そもそも、なぜ「見える化」しなければいけないのか? それは、問題に関わる当事者たちに「見えていない」ことがあるわけです。見ようという意思をもって情報として取り出せなければ、当事者の間で情報共有はできませんし、共通認識を醸成することもできないのです。

連載 これからの免疫療法の話をしよう[6]

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はじめに

 前回(第5回)では、免疫チェックポイント阻害薬(immuno-checkpoint inhibitor;ICI)に特有の副作用(有害事象)である免疫関連有害事象(immune related Adverse Event;irAE)について解説しました。

 今回はICIを含む併用療法(複合的がん免疫療法)について取り上げます。先行するICIが複数のがん腫において単剤療法で国内外の承認を得ていますが、現在更なる治療成績の向上を目指し、ICIと各種薬物療法(殺細胞性抗がん剤、分子標的薬)、免疫療法、放射線療法などとの併用療法が行なわれており、免疫療法を中心としたがんの薬物療法の開発は新たな段階に入ったと言えます。実際、臨床試験数は2017年9月時点で1,000をはるかに超えています。

 また、今回のトピックスとしては、最近報告が相次いでなされた「非小細胞肺がんへの免疫チェックポイント阻害薬先行例において次治療の化学療法の治療効果が高い傾向にある」ことについて解説させていただきます。

連載 ID consult—がん患者の感染症診療[6]

多剤耐性菌 原田 壮平
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はじめに

 医療機関における多剤耐性菌の拡散は以前から問題視されていたが、2000年代以降、それまで主な問題であった多剤耐性グラム陽性球菌に加えて多剤耐性グラム陰性桿菌の拡散が世界的に進行した。日本においても2010年代以降、基質特異性拡張型βラクタマーゼ(extended-spectrum β-lactamase;ESBL)産生大腸菌の検出頻度の増加や、複数の医療機関からのカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(carbapenem-resistant Enterobacteriaceae;CRE)やカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(carbapenemase-producing Enterobacteriaceae;CPE)の施設内アウトブレイクの報告など、疫学状況の変化が認められている。

 本稿では、前半で多剤耐性菌の国内外の疫学について概説し、後半で「多剤耐性菌」をテーマとしたJOIS勉強会(2014年3月開催)の際に実施された多剤耐性菌の感染対策に関するアンケート結果と関連研究について紹介する。

連載 スキルとしての支持療法[5]

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はじめに

 根治治療が困難な患者に対する治療アプローチには、患者と医療従事者の間で共通の治療目標をシェアし、更に治療開始から終末期にいたるまでの治療計画を俯瞰したうえで、多種多様な薬物療法を駆使して患者ニーズに合った治療を提供することが求められます。

 もちろん実臨床では、さまざまな合併症や複雑な社会的背景、あるいは薬物療法による有害事象のため、治療コンプライアンスを確保するのが困難な例も決して少なくありません。

 今回取り上げる間質性肺炎は、化学療法の副作用や肺がんの進行に伴って併発することがよく知られています。間質性肺炎には、その起きる原因となる原疾患がない特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias;IIPs)と、二次性の間質性肺炎がありますが、両者は常に明確に区別できるとは限らず、肺がんとの合併を議論するうえで、この点が大きな問題となることも多い疾患です。本稿では、肺がん治療中に併発する間質性肺炎のマネジメントを紹介します。

連載 漢方のすゝめ—支持療法における処方の考え方[2]

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はじめに

 第1回では、わが国におけるがん政策の進展を紹介し、その政策に「漢方薬」によるがん支持療法が取り入れられるようになった経緯を説明した。近年、漢方薬が再び着目されることとなったのは、抗がん剤の副作用軽減および終末期がん患者の症状改善に対する漢方薬の有効性と、作用機序が基礎・臨床研究で明らかとなってきたことがひとつの要因であると考えられる。

 今回は半夏瀉心湯を例に挙げ、半夏瀉心湯がなぜ複数の生薬で構成される合剤であるのか、そして漢方薬が生薬の合剤の妙と言われるそのゆえん、更に基礎・臨床研究に基づく半夏瀉心湯の処方についてお伝えできればと思う。

連載 レジメンマネジメントの流儀[7]

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 前回まで、情報共有ツールとしてのレジメンの目的やマネジメントの基本について、各施設の状況を踏まえながら考えてきた。「みやすく」「わかりやすく」「シンプルに」を基本としたときに、レジメンに求められる情報とはなんなのか、少しご理解いただけただろうか。

 今回は少し趣を変えて、レジメンの作成・マネジメントに必要な「情報ソース」について考えてみたい。レジメンを作成する際に必要な情報ソースにはどのようなものがあり、またどう活用すればよいのか。そして日々進歩する医療情報を追っていくための方法について、私の流儀をご紹介する。

連載 目から鱗のがん薬物療法—薬学的視点からみたケーススタディ[7]

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外来診療のなかで実施される分子標的薬治療と薬剤師の関わり

・近年、経口分子標的薬の導入により、かつて入院が主流だった抗がん薬治療は、外来での治療へと移行してきています。しかし、分子標的薬治療は高い効果を示す一方、多岐にわたる副作用が出現するため、通常の服薬説明のみでは外来通院の治療継続に必要な情報提供がカバーできない現状があります。このため、医師・薬剤師・看護師などのスタッフが連携した医療チームの的確な指導はもちろん、薬剤師による包括的かつ綿密な薬学的介入の必要性が高まっています。

・また、がん患者とその家族は副作用に不安を抱えていることがほとんどであり、治療を継続していくうえでメンタルヘルスやアドヒアランスを無視することはできません。医療チームによる綿密な副作用対策の構築に加え、アドヒアランス向上を目指した適切な患者教育、そして患者の理解に基づく自宅でのセルフケア管理は、もはや必須となっています。

連載 病院でこの言葉は使えませんでした。[5]

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「魚とも鳥とも乳房なき吾を写して容赦せざる鏡か」

「枯れ花の花輪を編みて胸にかけむ乳房還らざるわれのために」

「葉桜の清く悲しむうつぶせのわれの背中はまだ無傷なり」

 歌人・中城ふみ子の歌です。ふみ子は、1954年に31歳でこの世を去りました。歌集『乳房喪失』(短歌新聞社文庫、1992年)のなかで、乳がんで乳房を失った気持ちを多く遺しています。

連載 これからのがんサポート[7]

乳がん患者へのサポート 品田 雄市
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乳がんとがん相談支援

 今回は、乳がん患者さんへのサポートについて考えてみます。乳がんは女性の罹患数が最も多いがん種で、年齢別にみた女性の罹患率は30歳代から増加しはじめ、40歳代後半〜50歳代前半にピークを迎えます。女性の乳がんの生存率は比較的高くなっています。男性の乳がんは年間の死亡数で女性の乳がんの100分の1以下のまれながんであるものの、女性の乳がんに比べて生存率が低い(予後が悪い)ことが知られています。

 乳がん患者からの相談は、他のがん種に比して、①初期治療をめぐる意思決定に関する支援、②がん治療と就労の両立に関する相談、③セクシュアリティやアイデンティティに関する相談、が特徴的です。それらは、女性のライフステージやボディイメージに関連しており、なかにはかなりデリケートな問題も含んでいますが、臨床実感として、多くの患者は医師やがん専門相談員が異性であることに抵抗をもちません。むしろ、性差を意識するのではなく、より多くの対話と理解し合える機会を求めているのです。

連載 フクシマ日記—A diary from Fukushima[7]

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 先日、あるウエブサイトのインタビューを受けました。いろいろお話したわけですが、最後に「先生の格言はなんですか?」と聞かれ、はたと困りました。

 これまで、特に意識したこともなく、そんな大それたことも考えずに仕事一筋(?)で走ってきたわけですが、ふと思い浮かんだのは、10年以上前のこと。定年を迎えたある先生の退官パーティーのときに、近くの先生がぽろっと「ぶじこれめいばやなあ」と。へーっと思って聞いていましたが、あとからちょっとインターネットで調べてみると、

“無事之名馬(ぶじこれめいば、無事是名馬とも)とは、競走馬を指して「能力が多少劣っていても、怪我なく無事に走り続ける馬は名馬である」とする考え方を表した格言である。馬主でもあった作家・菊池寛による造語として有名だが、実際は時事新報の岡田光一郎によるものである。”

となっています(「能力が多少劣っていても」というところはやや気になりますが)。

連載 人間はいつから病気になったのか—こころとからだの思想史[7]

「動物には痛みがない」 橋本 一径
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 動物は痛みを感じるのだろうか? 問うまでもないようにも思われるこのような問いが、17世紀のヨーロッパでは哲学的議論の重要な争点のひとつになっていた。例えばニコラ・ド・マルブランシュ(1638-1715)は『真理の探究』(1674-1675)で以下のように述べる。

つまり動物には〔中略〕知性もなければ魂もないのである。彼らは喜びなしに食べ、痛みなしに鳴き、知ることなしに成長する。彼らは何も望まず、何も恐れず、何も知らない。彼らが知性を備えているように行動するとすれば、それは神が彼らを守るためにそうしたのであって、神が彼らの体をそのように作ったので、彼らは何も恐れないまま機械的に、彼らを破壊しうるすべてのものを避けているのである1

連載 Art of Oncology[7]

患者さんから学ぶ 柏木 哲夫
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 日本で初めてのホスピスプログラムが淀川キリスト教病院でスタートしたのは1973年であった。そして、ホスピス病棟でのケアのスタートはその11年後の1984年であった。私はこれまでに約2,500名の患者さんを看取った。看取りの経験から多くのことを患者さんから教えていただいた。44年間のホスピス医としての経験から、私の記憶に鮮明に残っている4人の患者さんについて述べてみたい。

連載 Voices from...[2]

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 がん患者と、その家族などがんに影響を受けている全ての人たちのための施設、「マギーズ東京」。この2017年10月に、オープン1周年を迎える。病院など既存のものとは異なる、新たな枠組みを提供するこの場所を、あらためて紹介してみたい。

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企画・執筆者紹介

次号予告と今後のご案内

Editorial 三橋

基本情報

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Cancer Board Square
3巻3号 (2017年10月)
電子版ISSN:2189-6429 印刷版ISSN:2189-6410 医学書院

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