連載 人間はいつから病気になったのか—こころとからだの思想史[7]
「動物には痛みがない」
橋本 一径
1
1早稲田大学文学学術院
pp.534-538
発行日 2017年10月15日
Published Date 2017/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1430200243
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
動物は痛みを感じるのだろうか? 問うまでもないようにも思われるこのような問いが、17世紀のヨーロッパでは哲学的議論の重要な争点のひとつになっていた。例えばニコラ・ド・マルブランシュ(1638-1715)は『真理の探究』(1674-1675)で以下のように述べる。
つまり動物には〔中略〕知性もなければ魂もないのである。彼らは喜びなしに食べ、痛みなしに鳴き、知ることなしに成長する。彼らは何も望まず、何も恐れず、何も知らない。彼らが知性を備えているように行動するとすれば、それは神が彼らを守るためにそうしたのであって、神が彼らの体をそのように作ったので、彼らは何も恐れないまま機械的に、彼らを破壊しうるすべてのものを避けているのである1。
Copyright © 2017, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.