View-point がん診療 「胃がん」
胃がんの臨床的概論
柴田 義宏
1
,
土橋 賢司
2
,
馬場 英司
3
1福岡和白病院腫瘍内科
2九州大学病院血液・腫瘍・心血管内科
3九州大学大学院医学研究院九州連携臨床腫瘍学講座
pp.450-459
発行日 2017年10月15日
Published Date 2017/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1430200229
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
1 疫学
わが国における胃がんの罹患数は大腸がんに次いで2位(132,159人、2012年)、死亡数は肺がん、大腸がんに次いで3位(47,903人、2014年)となっている。年齢調整罹患率、年齢調整死亡率はともに低下傾向である1。2014年度の胃がん健診受診者数は2,324,312人で、要精検率は7.54%、がん発見率は0.10%であった2。大腸がんや肺がんに比べると受診者数は少なく、また2012年度と比べ受診者数は減少している。世界的には胃がん罹患率は東アジアで高く、北米や西欧で低い。日本は東アジアのなかでも高率地域である3。
1994年の世界保健機構(WHO)の専門組織である国際がん研究機関(IARC)は、Helicobacter pylori菌感染を胃がん発症の最も高リスク(グループ1)と位置づけている。多くのコホート研究で、喫煙もリスクを高めることが示されている3。また遺伝性の胃がん発症も知られている。欧米を中心に報告されている遺伝性びまん性胃がんは、常染色体優性遺伝の形式をとり、E-cadherinをコードするCDH1遺伝子の変異による。リンチ症候群、家族性大腸腺腫症、リ・フラウメニ症候群、遺伝性乳がん卵巣がん症候群などでも胃がんの発生が報告されている。
Copyright © 2017, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.