Feature Topic 最期の最後のがん診療
最期の最後のがん診療の全体
主治医は積極的治療をどこまで続けたいと考えるか、その決断について
市川 靖子
1
1帝京大学医学部内科学講座腫瘍内科
pp.398-402
発行日 2017年10月15日
Published Date 2017/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1430200219
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誰にとっても難しい問題
進行再発がんにおいて現在のところ、ほとんどの場合「治癒」はない。日本人の2人に1人ががんに罹患し、3人に1人ががんにより死亡するという現況のなかで、積極的治療、つまりがん薬物療法は進行がんに対する「治療」としてのみではなく、「症状緩和」や「QOL(Quality of Life)の改善」に対して重要な役割を担っている。ここ20年ほどでがんの治療領域は大きく広がり、がん薬物療法の効果も目を見張るほどに発展した1。選択肢も着実に増えた。それに伴い課題も増えた。「いつまで、どこまでがん薬物療法を行なうのか」もそのひとつである。
現在までに、診断早期よりの緩和ケアの導入が延命やQOLの改善に役立つという報告がある(Fig.1)2一方で、積極的治療を中止し完全なBSC(best supportive care)への移行をいつ行なうべきかという判断の目安やそれに関する報告・ガイドラインはない。治療に関する認識は、医師と患者の間で大きく異なり、EOL(End of Life)、死の間近までがん薬物療法が行なわれる傾向が強く3、化学療法を受けている患者の多くが、化学療法が根治を目標としないことを理解していないという報告もある(Fig.2)4。また、自分の予後について知りたがる患者に対して、医師は患者本人にその予後を事実より長く伝える傾向にあり5,6、結果的に患者はEOLとなってもより積極的にがん薬物療法を望むことがある7。
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