INTENSIVIST 5巻3号 (2013年7月)

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米国では,neurocritical careは,神経学neurology(集中治療医学ではない!)のsubspecialtyとしてUnited Council for Neurologic Subspecialties(UCNS)に正式に認可されている。neurocritical careフェローシップも確立され,コアカリキュラムはSociety of Critical Care Medicineのものを基本として作成され,神経集中治療医neuro intensivistも500名程度まで増加している。しかし,我が国においては,神経集中治療あるいは脳指向型集中治療という言葉は存在してはいるものの,標準化された医療として確立されるには至っていない。まして,Neuro ICUおよびneuro intensivistという専門医の定義は確立していない。

 従来,我が国では,Neuro ICUの対象と考えられる脳神経疾患(脳卒中,頭部外傷など)は,内科疾患については神経内科医が,脳外科手術後患者については脳外科医が主治医として担当していることが多い。一方,心停止後症候群に対しては,循環器科医,救急科医による神経学的転帰改善のための低体温療法(注:これはNeuro ICUのツールの1つである)が急速に普及してきている。Neuro ICU領域でのエビデンスのある医療は,集中治療全体のなかでも未開拓な領域であるが,急性脳障害に対する有効な治療や管理法が存在することも事実である。

 本稿では,神経集中治療の歴史をふまえながら,米国のNeurocritical Care Society (NCS) におけるNeuro ICUやneuro intensivistの定義を紹介し,Neuro ICUに関連する疾患の疫学およびNeuro ICUを設置することの意義(効果)をまとめることにより,今後,日本における神経集中治療のあるべき姿を展望する。

 また,本稿の執筆にあたり,小畑仁司先生(大阪府三島救命救急センター),永山正雄先生(国際医療福祉大学熱海病院)のご論稿を参考とさせていただいた。ここに感謝を申し上げる。

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神経疾患専門のICU(Neuro ICUもしくはNeurosurgical ICU)は米国の大規模な病院では比較的よくみられ,神経集中治療の専門医(neuro intensivist)が患者のマネジメントを行う。そこでは Guillain-Barré症候群,重症筋無力症のクライシス,てんかん重積発作,重症の脳梗塞などの神経内科の緊急症,種々の脳出血,脳腫瘍などの脳神経外科の緊急症などが対象疾患になる。当然脳神経外科の術後管理の側面もあるので,どちらかというと脳神経外科がかかわることが多いが,境界領域の疾患も多く,神経内科も昨今かかわってくることがかなり増えてきている。

 Neuro ICUの存在により,神経疾患診療に必要な頭蓋内圧(ICP)モニタリングや脳波モニタリングなどの手技にスタッフが習熟する,看護スタッフの観察技術が習熟する,緊急時のCT,MRIの体制が整えやすい,といった誰もがそうとわかる利点が生まれる。そうしたもの以外の利点としては,医師が神経系の評価,治療に集中できるので効率がよくなることが挙げられる。緊急対応が必要とされるICUのなかでneuro intensivistがかかわることにより,鑑別診断をある程度最初からしぼることができることは,メリットが大きい。

Summary

●神経所見は,常に局在診断を考えながらとる。

●一見局在診断がつかなさそうな意識障害でも,局在診断をつけられる症候がある。

●脳ヘルニアの徴候は見逃さない。

●意識障害がある場合は,意識清明の場合と異なる神経所見のとり方をする。

●反射は,反射経路を考えながらとる。

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近年の画像診断の進歩はめざましく,医療において大きな位置を占めている。脳は動きが少ないため画像診断の対象として優れており,脳における応用を中心として画像診断が進歩してきたといっても過言ではない。本稿では,救急・集中治療の分野における脳の画像診断について,CT・MRIを中心に概説する。

Summary

●頭部の画像診断において,CTは放射線被曝があるが迅速に実施可能で,外傷の評価に適する。MRIは時間がかかるが,軟部組織コントラストに優れ,特に急性期梗塞では威力を発揮する。

●正常脳構造,特に運動野・言語野などの重要な領域や皮質脊髄路・脳神経などを画像で同定することは重要である。また,血管障害においては,動脈支配・静脈還流の領域を理解する必要がある。

●出血の画像所見は時間経過とともに変化する。通常はCTが評価に適するが,MRIが有用なケースもある。

●浮腫性病変においては,拡散強調像が細胞毒性浮腫(急性期梗塞など)と細胞外性浮腫の鑑別に有用である。

●頭部外傷において,びまん性脳損傷の評価にはMRIが適するが,現時点では限界がある。

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自分で書いていて何なのだが,不思議なタイトルである。そもそも,すべての検査は必要があるときにのみ行われるものであり,検査を行うためには理由が必要である。つまり,ルーチンの検査が必要かどうかという議論は成立しないというか,無意味なはずである。しかし,実際には,明確な理由や根拠なしに検査が行われることは少なくなく,それは特にコストを意識することが少ない日本において,顕著であると思われる。その典型例の1つが今回の主題となっている,ルーチンのCT撮影である。

 本稿では,ルーチンでのCT撮影にメリットがあるのか否か,文献的に考察を試みる。

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本邦におけるNeurosurgical Intensive Care Unit (NSICU)では,主に脳神経外科医が救急患者の対応や緊急手術に追われ多忙ななか,合間を縫って管理を行っていることが多い。神経集中治療医neuro intensivistの育成制度が確立していない本邦では,NSICUにおいて良質な医療を提供していくためには集中治療医,看護師,理学療法士,呼吸療法士を交えた多職種チーム医療multidisciplinary team careを行っていくことが大切である。

 集中治療における鎮痛と鎮静は近年さまざまな知見が蓄積され,深い鎮静は人工呼吸器使用期間,ICU滞在期間延長1),人工呼吸器関連肺炎ventilator-associated pneumonia(VAP)のリスクの上昇2)などと関連するとの報告があり,プロトコルに沿って適切な鎮痛のもと,できるだけ鎮静を浅く維持する方法が主流となってきた3~6)。しかしながら,NSICUでの鎮痛や鎮静に関する研究は少なく,エビデンスは,確立されていない5)

 本稿では2013年にSociety of Critical Care Medicine (SCCM)によって発表された鎮痛・鎮静・譫妄の管理に関するガイドライン3)を中心に,できるだけNSICUに特化したデータを交えてそれぞれの評価,治療について文献的考察をしていく。

Summary

●NSICUにおける鎮痛,鎮静,譫妄の評価スケールとして推奨されるものはなく,ICUにおいて有用とされるスケールを症例ごとに適応を考える必要がある。

●オピオイドは頭蓋内圧の亢進と体血圧の低下をきたすため,脳灌流圧低下に注意が必要である。

●鎮静はベンゾジアゼピンの使用を避けた浅い鎮静が主流であり,できるだけ鎮静薬を使用しないanalgosedationが有用な可能性が示唆される。

●NSICUにおいて,適切な鎮静が行われている場合のdaily sedation interruptionの有用性は確立していないが,早期リハビリテーションを意図した鎮静に関して研究の蓄積が待たれる。

●譫妄に対する予防的薬物投与は推奨されておらず,治療としてのクエチアピンは譫妄期間を短縮する可能性が示唆される。

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神経集中治療の目的は,二次性脳損傷をいかに予防し患者予後を改善させるかにある。このために,神経学的診察法とモニタリングを駆使し,的確に頭蓋内環境を把握することが重要である。そのなかでも頭蓋内圧intracranial pressure(ICP)モニタリングは神経集中治療モニタリングの基本手技であり,我が国および米国の頭部外傷管理ガイドライン1)でもその使用が推奨されている。

 米国では重症頭部外傷におけるICPモニターの使用率が1995年には32%であったが,ガイドラインによる啓発により2005年には78%にまで上昇している1,2)。また,ICPモニターを使用した重症頭部外傷患者の急性期死亡率がICPモニター非使用群に比して有意に低かった3)という報告もある。一方,最新のRCTではICPモニタリングを併用した治療群と対照群で予後に差がなかった4)という報告もある。このように,ICPモニタリングはその有効性に依然議論の余地はあるものの,神経集中治療に携わる者にとって体得すべき知識であることは疑いない。

 欧米に比して我が国ではICPモニタリングの施行率は低い。我が国の頭部外傷の治療・管理のスタンダードを記した「重症頭部外傷治療・管理のガイドライン」5)(以下,頭部外傷ガイドライン)は2000年,2006年と版を重ね,それらのなかでICPモニタリングが最も強い表現で推奨されているものの,2008年の日本頭部外傷データバンク(JNTDB)6)の報告では,重症頭部外傷患者におけるICPモニタリング施行率は全体の29.9%にすぎなかった。我が国のICPモニタリングの普及率の低さは,そのエビデンスの不明確さのみならず,どのようにICPモニターを駆使し,患者を管理・治療したらよいのか,依然明確な情報が乏しいのが要因の1つではないかと思われる。

 本稿ではまずICP亢進の病態生理に触れ,さらに神経集中治療におけるICPモニタリングの適応やその方法,ICP亢進への対処法について解説する。また,現時点における治療・管理法で何がわかっていて何がわかっていないのかを具体的に言及したい。

Summary

●二次性脳損傷を予防するため,神経集中治療に携わる者は頭蓋内圧(ICP)モニタリングを是非体得すべきである。

●ICP亢進により,脳灌流圧(CPP)低下による脳虚血と脳ヘルニア・脳幹圧迫が起こる。

●ICPセンサーの種類や留置部位によりモニタリング値の信頼性,感染や合併症の差異があるため,それぞれの特徴を熟知すべきである。

●ICP亢進に対する治療は,逐次変化するCPP値を意識しつつ段階的に治療手段を強化するプロトコルを用いる。

●初期治療から手術,そして術後管理へとスムーズにつながる神経集中治療のためには,集中治療医,救急医,脳神経外科医が共通言語のもと,治療戦略を共有し,十分な意思疎通をはかることが重要である。

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神経集中治療において,頭蓋内圧intracranial pressure(ICP)測定は重要なモニタリングの1つである。頭部外傷,脳卒中,くも膜下出血,急性肝不全などでモニタリングされることがあるが,主に頭部外傷の領域で研究が進められてきた。頭部外傷におけるガイドラインがBrain Trauma Foundation(BTF)から発表されている1)が,そのなかのICPモニタリングに関する部分の概要を表11,2)に示す。ICPモニタリングの有用性に関する質の高い研究は少なく3),前述のガイドライン1)でも最高でLevelⅡの推奨にとどまっている。このようななか,2012年末に最初の無作為化比較試験(RCT)4)が発表された。

 本稿ではICPモニタリングが予後に関連するのかという点について文献的に概括するとともに,ICPを例にとって,モニタリングと臨床転帰の関係について考察する。

Summary

●ICPモニタリングの有用性について,現時点では質の高いエビデンスは乏しく,まだまだ議論のあるところである。

●Brain Trauma Foundationによる重症頭部外傷のガイドラインは,ICPモニタリングについて詳細に検討している数少ないガイドラインである。

●2012年末にBEST TRIP trialというICPモニタリングの有用性を検討したRCTが発表されたが,ICPモニタリングの有用性は証明されなかった。

●ICPモニタリングの有用性を報告する研究も多いが,ICPモニタリングは人工呼吸期間やICU滞在日数を延長させるという報告もある。

●今後はICPモニタリングをどう利用するのかということも含めて,その有用性についてさらなる検討が必要である。

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モニタリングは,測定によって得られたデータの異常に対応するために行う。モニタリングを行っても,異常値が出たときの意義を理解し処置を行わなければ,意味はない。さらには,そのモニターを使用することにより転帰の改善が望めなければならない。したがって,まずは脳循環代謝のモニタリングの意義を理解する必要がある。

 脳循環代謝といえども,自然現象であるため物理法則に従う。したがって,ごく単純な数式を積み重ねることで,脳循環代謝の初歩を理解することができる。内頸静脈酸素飽和度jugular bulb venous oxygen saturation(SjO2)を理解することは,脳循環代謝の初歩を理解することと知っていただきたい。数式にアレルギーをもっている読者もおられると思うが,出てくるのは単純な足し算・引き算・掛け算・割り算であり,理解は易しいと思われる。

Summary

●SjO2は脳循環代謝を理解するために有用な指標であるが,現在はモニタリングとしてあまり使用されなくなってきている。

●NIRSはSjO2と正の相関を示すといわれており,心臓手術などの麻酔領域で臨床応用されている。日本発のエビデンスとしては,心停止蘇生後症例の心停止中のNIRSの値による転帰予測の報告がある。

●PbtO2は,脳組織の酸素分圧を直接測定することで得られる。頭部外傷に対する有用性については,現在多施設研究が行われている。

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循環管理は集中治療の要であり,神経集中治療領域でも例外ではない。くも膜下出血や脳出血後の患者で,心不全や肺水腫を併発し,不幸な転帰をたどる症例を経験することは少なくない。広範な脳梗塞の患者に対し,浸透圧利尿薬を投与することで,腎臓をはじめとした臓器障害が併発することもまれなことではない。現状では,脳血管障害や重症頭部外傷患者の循環管理にゴールドスタンダードはない。

 脳血管障害のなかでも,くも膜下出血は血行動態がダイナミックに変動する疾患であり,リアルタイムに血行動態を把握することで,転帰の悪化を未然に防ぐことが可能となる。また,重症頭部外傷後の血行動態についてはほとんど研究がされておらず,一般に認識が極めて薄いが,急性硬膜下血腫などのevacuated mass lesionでは,くも膜下出血と同様に血行動態のダイナミックな変化がみられる。

 本稿では,くも膜下出血や重症頭部外傷における血行動態について解説をする。

Summary

●有効な心拍出量を獲得し,肺血管水分量を許容範囲内にする至適前負荷を把握することが神経集中治療の循環管理の鍵となる。

●くも膜下出血術後の循環管理の目標は,症候性脳血管攣縮を予防しつつ,心不全・肺水腫といった合併症を回避することにある。

●脳梗塞の循環管理は,一般に脱水を避けてhypervolemiaとし,高血圧に寛容な姿勢をとることが多い。

●脳出血の循環管理の目的は,再出血の予防と頭蓋内圧の低下であり,hypovolemiaに管理することが多い。

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頭蓋内圧モニタリングの意義

ガイドラインでの記載

米国の重症頭部外傷治療ガイドライン20071)では,①蘇生後のGlasgow Coma Scale(GCS)3~8,②CTで血腫や脳挫傷,脳腫脹,脳ヘルニア,脳底槽の圧排などの異常を呈する患者において,頭蓋内圧(ICP)モニタリングが推奨されている(レベルⅡ)*1。本邦のガイドライン2)では,上記2項目に加えて,“収縮期血圧90mmHg以下の低血圧”も,ICPモニタリングを推奨する要件として記載されている。また,脳灌流圧(CPP)50~70mmHgを目安に平均動脈圧とICPを管理することが推奨されている2)が,2007年に改訂された米国ガイドライン1)では,CPPの最低値が60mmHgから50mmHgに下げられた。輸液や昇圧薬を用いてCPPを70mmHg以上にすることは,急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の発症率を上昇させるので避けるべきとされている3)

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1949年にRobertsonがくも膜下出血後の神経学的合併症を報告したのに続き,1951年に血管攣縮との関連が明らかにされて以来,脳血管攣縮による神経学的後遺症はくも膜下出血の最も一般的な合併症として知られている。

 それを予防もしくは治療するために高血圧療法hypertension,循環血液量増加療法hypervolemia,血液希釈療法hemodilutionを組み合わせたいわゆるTriple H療法が行われている。1990年の報告では,Triple H療法により脳血流量が34.2±5.8%上昇し,一部の患者で神経学的な改善が認められ,悪化した患者はいなかったとされた1)。そうした背景があるものの,大規模な無作為化比較試験(RCT)などが行われぬまま本療法は広く用いられるようになっていった2)。2009年に行われた北米のNeurocritical Care Societyのメンバー375名を対象としたアンケート調査3)では,高度な血管攣縮や症状を呈した場合に,全員が中心静脈圧(CVP)10mmHgを目標に輸液を行い,98.8%が目標とする血圧を達成するために昇圧薬を使用すると回答するなど,高い割合でTriple H療法を行っている現状が明らかとなった。

 しかしながら,2001年に行われたRCT4)では,32例のHunt and Hess GradeⅠ~Ⅲのくも膜下出血患者に2000mLの5%ブドウ糖液と晶質液の投与に加え,1000~1500mLの膠質液を輸液し,CVPを8~12cmH2Oに保ち(hypervolemia),ドパミンを昇圧薬として使用し術前より20mmHg高い平均動脈圧を目標とし(hypertension),ヘマトクリット値は30~35%(hemodilution)として管理した群では,対照群と比べて1年後の機能予後,症候性血管攣縮の発生頻度も有意差を認めなかった4)

 このような状況から,最近はTriple H療法そのものが見直されてきており,Triple H療法の各要素が患者予後にどのように寄与するかを検討した研究も行われてきた。そこで,本コラムではTriple H療法の現状を取り巻くエビデンスについてまとめる。

Summary

●hypovolemiaは害を及ぼす可能性が高く,避けるように管理する。

●至適血圧は現在のところ不明であり,積極的な輸液や昇圧薬の投与による管理は好ましくない。

●意識的な血液希釈の必要性は乏しい。

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1942年にCannon1)は,極めて迷信的な社会でタブーを犯した恐怖により死に至った症例を挙げ,強い精神的ストレスにより身体的な症状を生じる原因を,sympathico-adrenal systemが関与していると説明した。その後,さまざまな角度からストレス(精神的にも身体的にも)と心電図異常や心筋の組織学的な変化が報告され,交感神経系の過剰反応との関連が強く示唆されている2)。このような中枢神経系-交感神経系-心臓の制御関係に起因すると考えられる心臓の病態をstress-related cardiomyopathy syndrome3,4)と称することがある。これはさらに,以下の4つに分類される。

・強い精神的,肉体的なストレスに引き続く一過性の左室機能不全(たこつぼ型心筋症)

・頭蓋内出血,脳梗塞,頭部外傷に関連する左室機能不全

・重症内科疾患に伴う一過性の左室機能不全

・褐色細胞腫およびカテコールアミン投与における左室機能不全

 後述するが明確な診断基準が存在しないため,これらは重複するところもある。本稿では上記のうち「たこつぼ型心筋症takotsubo cardiomyopathyあるいはtakotsubo-like cardiomyopathy」と「頭蓋内出血,脳梗塞,頭部外傷に関連する左室機能不全LV dysfunction associated with intracranial hemorrhage, ischemic stroke, and head trauma」に関して説明する。

Summary

●たこつぼ型心筋症は基本的にself-limitingな疾患である。

●たこつぼ型心筋症では,時に致死性不整脈,左室流出路閉塞による低血圧,左室内血栓などを伴うことがある。

●たこつぼ型心筋症の場合,抗凝固療法を行ったほうが無難であるが,背景疾患(くも膜下出血・脳出血)との兼ね合いである。

●くも膜下出血・脳出血などの管理中にモニターで不整脈を認めたら,12誘導心電図を確認したほうがよい。

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脳梗塞にかぎらず,さまざまな疾患のガイドラインが各国から発表されているが,欧米と本邦のガイドラインに相違があることに疑問を抱いた経験をおもちではないだろうか。欧米のガイドラインは大規模な無作為化比較試験(RCT)を根幹とし,そのデータの示す結果は重要な事実を私たちに伝える。これらの結果を日本人にそのまま当てはめることができるのかどうかが議論されることも多く,本邦の患者背景を考慮した独自のガイドラインが必要であることは,論を俟たない。本邦の脳梗塞ガイドライン1)では,世界標準の薬物が推奨されていると同時に,エダラボン,オザグレル,アルガトロバンという日本発祥の薬物も推奨されている(表1)。脳梗塞治療薬として欧米では承認されていないこれらの薬物に関して,使用すべきか否か,現場の医師の判断が求められている。本稿ではこれらの薬物について,作用機序や発売に至った経緯,欧米ガイドラインとの相違,文献的検証,さらには今後の展望などについて検討していきたい。

Summary

●本邦独自の脳梗塞治療薬としてエダラボン,オザグレル,アルガトロバンがある。

●米国のガイドラインではエダラボン,オザグレルは推奨されておらず,アルガトロバンの推奨度はclass Ⅱbである。

●本邦ではエダラボン使用で神経学的予後を改善させる可能性を示唆するデータがあるが,各国のガイドラインで標準治療薬とされるアスピリンは,これらの試験では併用されていない。

●オザグレルとアスピリン併用療法は,神経学的予後を改善させる可能性がある。

●アルガトロバンの適応病型については検討すべき余地がある。

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神経集中治療の目的は脳の二次損傷を防ぐこと,言い換えれば,脳細胞を低酸素から守ることにある。低酸素から守るため,酸素を脳細胞に供給する呼吸をどのように管理すべきかは最重要課題の1つであるが,ほかの多くの集中治療領域の疾患と同様,呼吸管理に関する科学的根拠は議論の分かれるところである。

 現在,本邦では「脳卒中治療ガイドライン2009(脳卒中合同ガイドライン委員会)」1),「重症頭部外傷治療・管理のガイドライン第3版(日本神経外傷学会)」2)が神経集中治療関連のガイドラインとして発表されており,治療の参考にされている。欧米ではBrain Trauma Foundation(BTF)がガイドライン3)を発表しており,筆者も参照することが多い。また,脳卒中や心停止後の管理であればAmerican Heart Association(AHA)のガイドライン4~6)を参考にするであろう。ただし,これらのガイドラインすら,その研究の少なさや本領域の介入研究の困難さから,呼吸に関する記載はわずかである。本稿ではかぎられたpopulationを用いた研究でも神経集中治療全体に適応できそうな研究を含めて,わかっていることとわかっていないことを考察した。

Summary

●酸素過剰は推奨されない。

●酸素化の目標値はSpO2>92%,PaO2>60mmHg程度である。

●PaCO2の目標値は35~40mmHgである。

●過換気療法は必要最低限の短時間とする。

●過換気療法を用いる場合は,脳の酸素化のモニタリングを推奨する。

●体外循環による低体温療法時の酸塩基調整は,α-statでよい。

●気道確保の方法は,禁忌がないかぎり経口挿管が推奨される。

●早期に気管切開を行ったほうが,ICU管理に良い結果をもたらす。

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心原性脳塞栓症に行う抗凝固療法や,脳血栓症,虚血性心疾患などに対する抗血小板療法は,その再発予防効果にエビデンスがあり,必要不可欠な治療法である。なかでも抗血栓療法による脳梗塞の再発予防効果は出血性脳卒中の発生リスクを上回っており,その使用に疑問の余地はない。一般的に抗血栓療法による頭蓋内出血の危険性は,抗凝固療法では年間0.3~1.2%1,2),抗血小板薬では年間0.2~0.3%3)であり,発症率はそれほど高くないものの出血性合併症が発現すると致命的になることも少なくない。

 本稿では,止血・凝固機能障害によりコントロールできない頭蓋内出血,特に脳内出血(外傷性,続発性は除く)における急性期の管理方法および画像診断,塞栓術を含めた手術適応について説明する。

Summary

●病歴聴取,画像診断により抗血栓療法の適応となった背景を把握する。

●症例ごとの抗血栓療法のリバースによるrisk & benefitを把握することが重要である。

●抗血栓療法中の症例は必ずしも外科治療が不適応ではない。

●頭蓋内出血はcriticalな病態であり,止血させることが治療のゴールではない。外科治療を含めて治療戦略を検討し,頭蓋内環境を整えることがゴールである。

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遺伝子組み換え活性型第Ⅶ因子(rFⅦa)製剤は,止血薬として広く使用されている。しかし,その適応疾患はわずか3種類であり,現在使用されているrFⅦa製剤の大半は,適応外使用であると考えられる。神経集中治療領域でもコントロールできない頭蓋内出血に対して使用されているが,これも適応外使用に該当する。適応外使用であるがゆえに,投与量も投与法もコンセンサスは得られていないなか,頭蓋内出血に対する使用は,果たして有効であるのか,安全性に問題はないのか。本稿では,適応外使用に関する有効性と安全性のエビデンスについて概説する。

Summary

●rFⅦa製剤は,インヒビターを保有する血友病患者,先天性第Ⅶ因子欠乏症患者,Glanzmann血小板無力症患者にのみ保険適用を有する止血薬である。

●近年,rFⅦa製剤の適応外使用が増加しているが,投与量や投与方法に関する一致した見解は得られていない。

●脳出血患者に対して,rFⅦa製剤を投与すると,血腫増大を抑制することは可能であるが,死亡率も機能予後も改善されない。

●適応疾患に対して使用される場合と異なり,適応外疾患に使用された場合,血栓塞栓症の有害事象が増加する。

●現時点では,コントロールできない頭蓋内出血に対して,rFⅦa製剤を有効かつ安全に使用できるエビデンスは乏しい。

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静脈血栓塞栓症venous thromboembolism(VTE)は脳神経外科関連疾患の周術期において,最も注意しなければならない合併症の1つである。なかでも臨床的に問題になるのが,深部静脈血栓症deep vein thrombosis(DVT)とそれに起因する肺血栓塞栓症pulmonary thromboembolism(PTE)である。PTEを発症した場合,死亡率は高く,50%1,2)とする報告もあり,それらの予防は必須であると考えられる。DVTに対する予防法のうち,機械的予防法(弾性ストッキングおよび間欠的空気圧迫法)は,簡易かつ安全に使用できるため,周術期あるいは入院早期からルーチンで使用している施設が多いと思われる。しかし,抗凝固療法を予防的に行うことは,頭部外傷や出血性脳卒中においては出血性合併症が危惧されるため,躊躇することもある。この点が,他の疾患と異なる。

 本稿では,これら頭部外傷や出血性脳卒中に対する抗凝固療法について,これまでの報告を概説し,その有用性と安全性,開始時期について検討する。

Summary

●VTEは,VTE予防を行わないあるいは機械的予防法のみを行った頭部外傷の32~39%,脳出血の20~40%,VTE予防を行ったくも膜下出血の6.7~24%に認められたと報告されている。

●現在本邦で使用可能な抗凝固薬(ヘパリン類注射薬)は,未分画へパリン,低分子へパリン,ダナパロイド,フォンダパリヌクスであるが,頭部外傷および出血性脳卒中に対するVTE予防に保険適用があるものは,未分画へパリンのみである。

●頭部外傷や脳卒中は,VTE高リスク以上に分類され,間欠的空気圧迫法あるいは低用量未分画へパリン投与によるVTE予防が推奨される。最高リスクに分類された場合は,低用量未分画へパリン投与と機械的予防法の併用あるいは用量調節未分画へパリン投与が推奨される。

●VTE予防としての抗凝固療法開始のタイミングは,頭部外傷では入院後3日以降,脳出血であれば3~4日以降で考慮してもよいと思われるが,出血病変の増悪がないことを十分に確認しなければならない。くも膜下出血では,破裂脳動脈瘤に対する再破裂予防処置が確実に行われた後に,抗凝固療法開始を考慮するが,開頭手術か血管内手術かによって抗凝固療法開始時期が異なるため,脳神経外科医を含めたスタッフと十分に検討し,決定しなければならない。

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ICUにおける体温管理といえば,低体温療法ther­a­peu­tic hypothermia,あるいは常温療法(anti-hyperthermia,fever control,induced normothermia)が挙げられる。体温を下げることで,侵襲が加わった脳に対する保護効果が得られることは広く知られているが,臨床データからのエビデンスが広く受け入れられているのは心停止後症候群(特に心停止後脳障害)に対するものだけである。全身管理の難しさや合併症のリスクもあるため容易に導入できるものではないが,心停止後症候群以外の病態でも効果を期待できる治療法だけに,世界中でさまざまな研究が進められている。本稿では,体温管理・低体温療法の現状についてまとめる。

Summary

●「低体温療法」,「常温療法」ではなく,TTM(targeted temperature management)という用語の使用へ転換が求められている。

●中枢神経障害後の高体温は障害の増悪と関連しており,急性期には適切な体温管理が求められる。

●心停止後症候群に対しては低体温療法のエビデンスが認められており,初回心電図波形がVf/VTの症例に対しては積極的に推奨されている。

●新生児低酸素性虚血性脳症に対しても低体温療法の効果が認められている。

●頭部外傷に対する低体温療法のエビデンスは認められていないが,48時間以上の低体温維持と時間をかけた復温を行うことで予後を改善できる可能性がある。

●脳梗塞に対しての低体温療法はエビデンスが確立されていないが,rt-PA製剤による血栓溶解療法との併用療法が注目されている。覚醒状態での低体温療法を導入する工夫も進められている。

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米国のMiami Marriott Biscayne Bayにおいて,2013年3月4~5日にMiami大学脳神経外科のDalton Dietrich教授の主催により“3rd Annual Therapeutic Hypothermia and Temperature Management:Current and Future”が開催された。この研究会には,世界各国からこの領域の著名人23名が講師として招待されており,著者もそのなかの1人に幸運にも選ばれ講演する機会をいただいたので,本特集に関連するトピックを紹介する。

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脳脊髄液のドレナージは日常の脳神経外科疾患の治療に積極的に用いられている。その適応は,水頭症をはじめ頭蓋内圧亢進を伴う疾患と多岐にわたるが,急性期や意識障害がみられるときに行われることが多い。脳室ドレナージと腰椎ドレナージlumbar drainageが代表的な手技であり,頭蓋内圧のモニター,頭蓋内圧をコントロールするための脳脊髄液の排液,検査のための脳脊髄液の採取などの目的で行われる。

 本稿では,救命と脳機能の保存のために有効な手段でありながら,管理法などについて一致した見解のない脳脊髄液ドレナージについて,管理の基本と感染予防について解説する。

Summary

●脳室ドレナージと腰椎ドレナージは急性水頭症を伴う症例や一時的に頭蓋内圧や脊柱管内圧をコントロールする必要のある症例で積極的に用いられている。

●挿入の手技や圧のコントロール,感染の予防など,ドレナージの管理については一致した見解のないものが多い。

●管理の基本は,細菌の侵入を防ぎながら適切な量の脳脊髄液を排液し,必要がなくなったらすみやかにカテーテルを抜去することであるが,その詳細については疫学的に証明されたガイドラインは現在のところ存在しない。

●感染予防については,カテーテル挿入から抜去までの手順とそれを医療従事者が遵守しているかどうかの調査を含めたプロトコルの設定と厳格な施行が効果を上げている。

●脳脊髄液ドレナージの管理についての標準的なプロトコルを確立するには,大規模な前向き研究が必要である。

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筆者の勤務するMount Sinai Medical Centerは,ニューヨーク市内マンハッタンの北東部に位置する1200床余りの大学病院である。患者は,ユダヤ人をはじめヒスパニック系やヨーロッパ系,アジア系など国際色に富んでいる。

 当院には16床のNSICU(neurosurgical intensive care unit)ベッドがあり(写真1),患者がICUにいる間は集中治療医が全体の治療方針を決め,専門的検査や処置が必要な場合に脳神経外科や整形外科,耳鼻科など入院をさせた専門各科(プライマリチーム)が介入するというセミクローズドシステムを敷いている。当NSICUでは,くも膜下出血をはじめ硬膜下出血,脳腫瘍,脊髄疾患(狭窄・腫瘍・奇形),咽喉頭腫瘍などの術前・術後管理を行っている。患者の出入りが激しいのが特徴で,一部の術後合併症例を除き,平均して2~3日のうちにstep-down unitもしくは一般病棟へ転棟していく。本稿では,NSICUでの1日を,業務の流れに沿って述べたいと思う。

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ピッツバーグ(写真1)は以前は鉄鋼の町steal townとして知られていたが,鉄鋼業が衰退してからは,Pittsburgh大学,Carnegie Mellon大学,Duquesne大学など多数の大学がキャンパスをおく学術都市として知られるようになった。そして,今は医療産業の町として生まれ変わっている。University of Pittsburgh Medical Center(UPMC)は,昨年のUS News & World Reportでは全米10位,ペンシルベニア州で第1位の病院としてランキングされた。UPMCは20の関連病院と計4200床のベッドを抱えています。私たちICUチームが働くUPMCの関連病院は5つ(Presbyterian,Montefiore,Children's Hospital of Pittsburgh,Magee-Women's hospital,Mercy hospitalとVeteran's hos­pi­tal)ある。

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今号の特集は神経集中治療である。米国では,神経集中治療専門医がすでに1000名以上存在している。そして,欧米の施設において,集中治療専門医が体系的にNSICU(neurosurgical intensive care unit)でのトレーニングを受けており,neuro intensivistとして,脳神経外科医と協力して集中治療管理を行っている(=神経集中治療)。脳神経外科疾患においては,救急対応,手術(血管内治療を含む),術後管理のすべてにおいて質の高いシームレスな全身管理を行うことが,二次性脳障害の発生を防ぎ,良好な予後を得るうえで必須である。しかし,多忙な脳神経外科医はそこまで手が回っていないのが現状である。

連載 Lefor's Corner

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This ongoing series will provide the readership of Intensivist with an opportunity to read concise reviews of current topics in Critical Care Medicine, in English. It is hoped that these reviews will stimulate the pursuit of other literature written in English.

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酸素流量計(以下,流量計)は,酸素療法を行う際に,必要な酸素量を調整して提供する医療機器である。酸素療法には鼻カニューレ,簡易酸素マスクなどを用いる低流量システム,Venturiマスク,Venturiネブライザなどを用いる高流量システムがあり(表1)1),器具の構造に大きな違いがある。低流量システムは流量抵抗が小さいため,供給圧の低い流量計で十分であるが,高流量システムは流量抵抗が大きいため,供給圧の高い流量計が必要となる。

 流量計は,その原理や構造からフロート式とダイヤル式の2種類に分類される(図1)。さらにフロート式は,供給圧の違いによって,大気圧式,恒圧式に分類される。ダイヤル式は,供給圧の設定がフロート式と異なるため正式な分類はないが,低圧式,高圧式などと分類されている。本稿ではそれぞれの流量計の原理や構造と使用上の注意を述べる。

集中治療に関する最新厳選20論文
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現在,私は米国Tennessee州のVanderbilt大学の臨床研究マスターコースMaster of Science in Clinical Investigation Program(MSCI)を受講している。今回の留学に至った経緯,米国の臨床研究の様子を個人的なエピソードも交えてお伝えしたい。

連載 集中治療室目安箱:ナース/ME,私の言い分

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読者の皆さんは,“ノンテクニカルスキル”という言葉をご存じだろうか。現場で臨床指導をされている方々や,シミュレーション教育にかかわられている方々には,すでにご存じの方も多いだろう。日常生活では,例えば,伝えたはずのコミュニケーションが相手から戻ってこなかったために誤解を生んだ,疲労が蓄積した状態で車の運転をして,ヒヤッとなった,あるいは積雪のために車ではなく電車での通勤を選んだ,などの経験はないだろうか。ここでの「コミュニケーション」「疲労管理」「状況認識」が,技術を要さない「認知的・社会的スキル」,いわゆるノンテクニカルスキルという非専門技術である。

 ノンテクニカルスキルは,「状況認識」「意思決定」「コミュニケーション」「チームワーク」「リーダーシップ」「ストレス管理」「疲労管理」の,技術を伴わない7つの非医療専門技術スキル1)からなる。これらのスキルの欠如により,どのような職種の分野においても,時には大きな事故をまねくことがある。

 医療従事者である私たちが,普段からよりよい医療やケアを提供するにあたって,常に認識すべきことは患者安全である。医療事故は,すべて人間によって発生する。一方で,人間はそのエラーを重大な結果とならないように,最小限に食い止めることができる1)と考えられている。そのための技術の1つが,ノンテクニカルスキルであるといわれている。

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基本情報

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INTENSIVIST
5巻3号 (2013年7月)
電子版ISSN:2186-7852 印刷版ISSN:1883-4833 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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