特集 神経集中治療
6.循環管理―血行動態のモニタリングとその評価
磯谷 栄二
1
Eiji ISOTANI
1
1東京女子医科大学東医療センター 救急医療科 救命救急センター
pp.551-559
発行日 2013年7月1日
Published Date 2013/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100558
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
循環管理は集中治療の要であり,神経集中治療領域でも例外ではない。くも膜下出血や脳出血後の患者で,心不全や肺水腫を併発し,不幸な転帰をたどる症例を経験することは少なくない。広範な脳梗塞の患者に対し,浸透圧利尿薬を投与することで,腎臓をはじめとした臓器障害が併発することもまれなことではない。現状では,脳血管障害や重症頭部外傷患者の循環管理にゴールドスタンダードはない。
脳血管障害のなかでも,くも膜下出血は血行動態がダイナミックに変動する疾患であり,リアルタイムに血行動態を把握することで,転帰の悪化を未然に防ぐことが可能となる。また,重症頭部外傷後の血行動態についてはほとんど研究がされておらず,一般に認識が極めて薄いが,急性硬膜下血腫などのevacuated mass lesionでは,くも膜下出血と同様に血行動態のダイナミックな変化がみられる。
本稿では,くも膜下出血や重症頭部外傷における血行動態について解説をする。
Summary
●有効な心拍出量を獲得し,肺血管水分量を許容範囲内にする至適前負荷を把握することが神経集中治療の循環管理の鍵となる。
●くも膜下出血術後の循環管理の目標は,症候性脳血管攣縮を予防しつつ,心不全・肺水腫といった合併症を回避することにある。
●脳梗塞の循環管理は,一般に脱水を避けてhypervolemiaとし,高血圧に寛容な姿勢をとることが多い。
●脳出血の循環管理の目的は,再出血の予防と頭蓋内圧の低下であり,hypovolemiaに管理することが多い。
Copyright © 2013, "MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD." All rights reserved.