特集 心原性ショック診療:エビデンスに基づく最適化への挑戦
❻ カテコールアミン治療の是非:強心薬 vs. 昇圧薬 最適解は?—IMPELLA時代の循環作動薬の位置づけを再考する
浅野 和宏
1
,
小島 俊輔
1
Kazuhiro ASANO
1
,
Shunsuke KOJIMA
1
1東京ベイ・浦安市川医療センター 循環器内科
キーワード:
カテコールアミン
,
循環作動薬
,
強心薬
,
昇圧薬
Keyword:
カテコールアミン
,
循環作動薬
,
強心薬
,
昇圧薬
pp.363-372
発行日 2025年7月1日
Published Date 2025/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.188348330170030363
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はじめに
心原性ショックの治療の目的は大きく2つある。第一に,血行動態を改善して致命的な臓器不全を防ぐこと。第二に,低心拍出の原因である心疾患を特定して適切な介入を行うことである。循環作動薬の投与は心原性ショックに対する第一選択の治療法として広く認識されており,ICUに入室する心原性ショック患者の90%以上に1剤以上の循環作動薬が投与されている1)。かつて,心原性ショックの治療目標は低血圧の是正にあり,循環作動薬を使用して積極的に平均動脈圧mean arterial pressure(MAP)の上昇がはかられていた。しかし近年では,MAPを達成しても組織灌流障害が生じることが明らかとなっており,主要ガイドラインにおいても組織灌流が重要視されるようになっている。さらに,過去数十年にわたりさまざまな循環作動薬の有効性が検証されてきたものの,いまだ死亡率の改善を達成した薬物は存在せず,また多くの薬物で不整脈の誘発,心筋酸素消費量の増加,末梢循環不全といった負の側面も指摘されている。その結果,「どの循環作動薬を使用するか?」ではなく「末梢循環不全を引き起こし得る循環作動薬は本当に必要か?」という新たなクリニカルクエスチョンへの関心が高まっている。しかし,この問いに対するデータは依然として不足している。
本稿では,循環作動薬のエビデンスと現代のガイドラインに即した使用方法のポイントをまとめる。

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