特集 心原性ショック診療:エビデンスに基づく最適化への挑戦
❼ 機械的循環補助(MCS)デバイスの選択とその未来:ECLS-SHOCKとDanGer shock試験の教訓—重症心原性ショックに対するMCSの適応と管理
稲森 大治
1
,
鵜木 崇
1
Taiji INAMORI
1
,
Takashi UNOKI
1
1済生会熊本病院 循環器内科
キーワード:
機械的循環補助
,
MCS
,
IABP
,
IMPELLA
,
VA ECMO
,
ECPELLA
Keyword:
機械的循環補助
,
MCS
,
IABP
,
IMPELLA
,
VA ECMO
,
ECPELLA
pp.373-383
発行日 2025年7月1日
Published Date 2025/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.188348330170030373
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はじめに
心原性ショックcardiogenic shock(CS)はさまざまな疾患を背景に発症するが,なかでも急性冠症候群acute coronary syndrome(ACS)を原因とするACS-CSが全体の80%を占める1)。血行再建技術やデバイスの進歩にもかかわらず,ACS-CSの30日生存率は50%台にとどまり,過去20年間で大きな改善はみられていない2)。ACS-CSでは,冠血流や末梢臓器灌流の低下により炎症性サイトカインが誘発され,血圧低下やうっ血による低酸素血症がさらなる酸素需給障害をまねく3)。そのため,再灌流療法や薬物療法に加え,適切なタイミングでの機械的循環補助mechanical circulatory support(MCS)の導入による全身灌流の改善および左室徐負荷(LV unloading)が重要である。
本稿では,各MCSデバイスに関する大規模臨床試験データを概説し,実臨床への応用をふまえたうえで,済生会熊本病院(以下,当院)のACS-CS症例を提示し,適切なMCS介入の重要性を論じる。また,依然としてエビデンスが十分ではないSCAI(Society for Cardiovascular Angiography and Intervention)ショック分類Stage E(心停止またはそれに近い状態)に対するMCSの有用性についても考察する。

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