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神経集中治療の目的は脳の二次損傷を防ぐこと,言い換えれば,脳細胞を低酸素から守ることにある。低酸素から守るため,酸素を脳細胞に供給する呼吸をどのように管理すべきかは最重要課題の1つであるが,ほかの多くの集中治療領域の疾患と同様,呼吸管理に関する科学的根拠は議論の分かれるところである。
現在,本邦では「脳卒中治療ガイドライン2009(脳卒中合同ガイドライン委員会)」1),「重症頭部外傷治療・管理のガイドライン第3版(日本神経外傷学会)」2)が神経集中治療関連のガイドラインとして発表されており,治療の参考にされている。欧米ではBrain Trauma Foundation(BTF)がガイドライン3)を発表しており,筆者も参照することが多い。また,脳卒中や心停止後の管理であればAmerican Heart Association(AHA)のガイドライン4~6)を参考にするであろう。ただし,これらのガイドラインすら,その研究の少なさや本領域の介入研究の困難さから,呼吸に関する記載はわずかである。本稿ではかぎられたpopulationを用いた研究でも神経集中治療全体に適応できそうな研究を含めて,わかっていることとわかっていないことを考察した。
Summary
●酸素過剰は推奨されない。
●酸素化の目標値はSpO2>92%,PaO2>60mmHg程度である。
●PaCO2の目標値は35~40mmHgである。
●過換気療法は必要最低限の短時間とする。
●過換気療法を用いる場合は,脳の酸素化のモニタリングを推奨する。
●体外循環による低体温療法時の酸塩基調整は,α-statでよい。
●気道確保の方法は,禁忌がないかぎり経口挿管が推奨される。
●早期に気管切開を行ったほうが,ICU管理に良い結果をもたらす。
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