INTENSIVIST 12巻1号 (2020年1月)

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『ガイトン生理学』によると生理学とは生命の営みの元となる物理的・化学的な仕組みを明らかにする学問であるとされています1)。また,還元的な発展系として,細胞生理学,細菌生理学,生化学や分子生物学などの基礎医学の分野があり,臨床応用としての病態生理学といった学問も,広い意味では含む大きな分野でもあります。人体の仕組みを明らかにしようとする生理学は,人体の構造はどうなっているのかという疑問を探求する解剖学とともに,人類の自然で根源的な疑問を解決するための学問として何世紀にもわたり,発展し綿々と受け継がれ,さまざまな形で臨床応用され,わたしたちはその恩恵を受けてきました。

 臨床分野を扱ってきた本誌の過去の多くの号とは異なり,今回,基礎医学である生理学を特集した主な理由はいくつかあります。

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神経集中治療において,頭蓋内圧(ICP)と脳灌流圧(CPP)の測定と適正値の維持は重要である。しかし,脳血管には圧自動調節能が存在するため,このような圧指標によるモニタリングには限界がある,と言わねばならない。例えば,圧自動調節能が完全に破綻した場合,CPPを高く維持すべく血圧を上昇させることにより,脳血管の拡張,ひいてはICPの上昇につながるのである。これは脳障害の患者において,付加的なモニタリングの重要性が強調される所以でもある。ICP亢進患者に頭位挙上を行うことの有用性は依然議論のあるところである。本稿では,日常の神経集中治療におけるクリニカルクエスチョンについて考察を加える。

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脳卒中症例では,非感染性の発熱を伴うことが多く,神経原性発熱あるいは中枢性発熱と呼ばれる。これは視床下部に存在する体温調節中枢の障害によるものと考えられている。視床下部に障害がなくても,脳脊髄液腔に出血があるとプロスタグランジンE2が産生され,生理的な体温上昇が生じる。

 脳卒中症例では,急激な心機能低下を伴うことも多い。これは自律神経を介するカテコールアミンサージによって心筋障害を生じるためと考えられている。特に,自律神経ネットワークの中心に位置する島皮質の障害があるとリスクが高くなる。

 くも膜下出血に伴う血管攣縮の原因は,いまだに解明されていない。単純な脳主幹血管の攣縮だけでなく,微小循環障害なども遅発性に生じる虚血性障害の一因と考えられている。

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非痙攣性てんかん重積状態(NCSE)は,決してまれな病態ではない。NCSEなどのてんかん重積状態(SE)を放置してしまうと,治療抵抗性が高まり,発作消失率の低下や死亡率の上昇につながる。ただし,その病態生理は完全には解明されておらず,臨床現場でも非常に苦慮することが多い。

 ictal-interictal continuum(IIC)などのNCSEに関連する波形があるが,これらの周波数の増加やevolvingが認められる場合,二次性脳損傷が起こる可能性が高くなる。時には,脳の酸素需給バランスの崩壊にもつながる。

 また,SEの病態生理には,分子細胞レベルでの病態生理,および脳内のネットワークの病態生理が複雑にからんでいる。

 バーストサプレッションは,大脳半球の著明な抑制であるサプレッションと,さまざまな振幅・持続時間・波形をもつ波形の群発であるバーストが同時に生じていることを意味し,γアミノ酪酸作動性のメカニズムによる大脳皮質活動の抑制と無害なグルタミン酸伝逹による脳波活動から引き起こされる,といわれている。現時点では,SEに対する静脈麻酔薬導入において脳波所見上のバーストサプレッションを目指して薬物調整を行うべきかは明確なエビデンスはなく,Neurocritcal Care Societyのガイドラインでは「非痙攣性発作を頓挫させること」が最も推奨度が高い。

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呼吸は呼吸中枢,化学受容器,機械受容器により調整され,まるでオーケストラのように調和を保ちながら生涯を通じて持続していく。生体の恒常性を保つために二酸化炭素・酸素・pHは化学受容器が,肺・気道の状態は機械受容器がそれぞれ監視して情報を呼吸中枢に伝達し,処理された情報は換気ドライブとして呼吸器に伝えられる。

 呼吸困難は受容器が疾患や負荷により生じた生体の変化を呼吸中枢へフィードバックした結果として生じる感覚であり,生きていくうえでは必要な反応であるとも考えられる。

 本稿では,呼吸調節の生理学的基礎知識,それをふまえたうえで呼吸困難が生じるメカニズムについて解説する。

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体位変化は重力効果,肺血流の変化,呼吸筋の作用の変化など,さまざまな生理学的機序により呼吸機能へ影響を与える。健常者や自発呼吸患者において,仰臥位と比較して坐位や立位は機能的残気量の増加,気道抵抗の低下,静的肺コンプライアンスの上昇,咳嗽力の増加を生じるため,呼吸機能に有利な効果があるといえる。人工呼吸器管理患者においても,頭位挙上位はend-expiratory lung volume(EELV)の改善,気道抵抗の改善,呼吸仕事量の減少,呼吸の快適性の改善が示されている。しかし,疾患や状態による個人差も大きく,一部の患者で頭位挙上の効果が認められないこともあり,体位変化後のモニタリングが重要である。急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の患者において,腹臥位は重力による背側肺の圧迫の解除と腹側肺への“shape matching”効果により,肺胞含気の均一化と肺コンプライアンスの改善をもたらす。これに加えて,体位によらず肺血流が背側優位であるため,換気血流比が改善し,酸素化が改善する。体位変化における呼吸の生理学を学ぶことで,実臨床において患者の最適な体位や体位変化後のモニタリングでの注意点を知ることができ,orthopnea,platypnea,trepopneaを示すような疾患では,これらの診断の手がかりに気づくことができるようになる。

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高所や水中等の特別な環境で診療することは少ないが,急性高山病や減圧症,nitrogen narcosis,shallow water blackoutはICU管理を行っていると遭遇することはあり,それらの診療を行う際には病態生理学を知っておく必要がある。高所環境への急激な曝露に対する呼吸順応がどのような過程で起こるのか,なぜ急性高山病が発症するのか,高地住民のような慢性的な高所曝露ではどのような変化が起きているのかを解説する。また水中における呼吸生理がどのように変化するのか,減圧症やnitrogen narcosis,shallow water blackoutがどのように発症するのかも解説する。

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二酸化炭素(CO2)は生体内で有機化合物の代謝に伴い生成され,血液中に溶解した状態で,あるいは重炭酸やカルバミノ複合体として運搬される。そして,呼吸膜を拡散し,換気によって体外へ排出される。CO2ナルコーシスのように,呼吸調節の問題により生体内で過剰にCO2が蓄積する生理学的機序としては,O2投与による換気ドライブの低下,低酸素性肺血管収縮hypoxic pulmonary vasoconstriction,Haldane効果が挙げられる。呼気中のCO2分圧は,心肺蘇生や人工呼吸の際のモニタリングに利用されるが,生理学的死腔やシャントによって血中のCO2分圧と乖離が生じるという特性があるため,それを理解したうえで利用する必要がある。

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Q SBTでPEEPを5cmH2Oに設定するのはなぜか?

自発呼吸トライアルspontaneous breathing trial(SBT)とは,人工呼吸器管理下の患者が人工呼吸器から離脱できるかどうかを評価するための手段である。患者が抜管されたあとと同じ状態を再現するために人工呼吸器によるサポートを最小限に設定するか,または実際に気管チューブから人工呼吸回路を外した状態(Tピース)での患者の呼吸状態,バイタルサイン,表情などを観察し,通常30〜120分後に判断することが多い1)。それでは「患者が抜管されたあとの状態を再現するような最小限の人工呼吸器設定」とは,どのようなものであろうか。本稿ではガイドラインの推奨を確認したあとに,その生理学的背景に焦点を当てて考察する*1

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敗血症による発熱時には,非特異的に経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)低下を認めることがある。このSpO2低下は,酸素消費量の増大,心拍出量増加に伴う拡散障害,換気血流比(V/Q)不均衡,肺内シャントなどが関与するmultifactorialな現象と考えられる。また,PaO2から推察される値と比較してSpO2が低値である場合は,アシデミアや高体温に伴うヘモグロビン-酸素解離曲線の右方偏位を考える。敗血症患者において非特異的に酸素飽和度が低下することを理解することは,病態把握ならびに患者マネジメントのうえで重要である。

Part 3.循環器 ①Macrocirculation

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ICUでは虚血性心疾患を除いて,拡張期血圧を意識して重症患者の循環管理を行うことは少ないかもしれない。収縮期血圧は動脈性出血や心臓の後負荷に影響し,平均動脈圧(平均血圧)は臓器灌流に関係し,そして拡張期血圧は冠動脈血流の決定因子である。しかし拡張期血圧が高ければ,それだけ冠動脈血流量が増加し心臓にとって有利なのであろうか。ICUの重症患者における適切な拡張期血圧は存在するのであろうか。この実に難解なclinical questionに,生理学的視点からアプローチしてみよう。

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後負荷は,心臓にかかる負担という考え方と,大動脈に流入する血流の抵抗という考え方という,2つの観点からの評価がある。心疾患を評価するには,心臓の負担すなわち,左室心筋壁応力を評価して,弁膜症の治療や心不全の治療を行う。また敗血症性ショックなどの場合には,心臓構造が正常な場合,大動脈に流入する血流にかかる抵抗の評価が,薬物投与の方法を判断するため有用となる。末梢血管抵抗を含む動脈入力インピーダンスを理解することで,動脈圧波形の観察から種々の情報が得られるようになる。本稿では,心臓後負荷,動脈入力インピーダンスについて概説し,至適な後負荷について考える。

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集中治療を要する疾患の病態の理解と管理のためには,酸素供給,消費の生理学は非常に重要である。心拍出量を規定する心拍数と1回拍出量は,互いに独立した変数ではなく,相関関係をもっている。心拍数がある一定の範囲では,1回拍出量が調整され,一定に保たれる。心拍出量を決める1回拍出量と心拍数のベストマッチは存在するが,それがどこにあるかを臨床で推測するのは困難である。

 いくつかの無作為化比較試験から,ヘモグロビン(Hb)濃度を一定以上に増加させても予後を改善しないことがわかっている。この説明として,critical oxygen delivery pointを超えた酸素供給をしても酸素消費量が増えないこと,血液粘度の増加により心拍出量が低下することで酸素供給量が増えないこと,微小循環での酸素利用の仕組みにより酸素供給が増えないことが,生理学的仮説として考えられている。しかしながら現時点では,この原因を明確に説明する生理学的研究はなく,今後の研究課題である。

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ヘモグロビン(Hb)濃度が7〜8g/dLを下回った際に赤血球輸血を行うことが多いが,これは制限輸血と非制限輸血の無作為化比較試験(RCT)から導き出された結果である。それ以下のHb濃度低値に耐えられるのかについてはわかっていない。

 Hb濃度が低下しても酸素消費量(VO2)は一定に保たれるように生理学的代償機構が働くため,急性期,慢性期にかかわらず,Hb 5g/dL,ヘマトクリット(Hct)15%程度まで耐えられるかもしれない。しかし,これはあくまで,生理学的知見と観察研究のデータから考察された仮説であり,実臨床ではいくつかのRCTから得られた知見であるHb 7〜8g/dLを輸血開始基準にするのが妥当である。

 慢性期では,生理学的代償機構がどのように働くか,貧血による症状の有無,鉄剤治療の価値,patient-centered outcomesを勘案して,個別に輸血開始基準を考慮してもよいかもしれない。

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これまで重症患者の循環管理において左心機能の理解が強調されてきた。一方で,静脈還流量(VR)は心拍出量(CO)と基本的に一致することから,静脈還流量を知ることも循環管理において,同様に重要であると考えられる。さらに,静脈系容量は全血液の約60〜70%を占め,血液のリザーバーとしての機能をもっており,動脈系にない循環調節を行っている。本稿では,静脈還流量を規定している因子として,平均体血管充満圧mean systemic filling pressure(Pmsf)と静脈還流抵抗(Rv),血管コンプライアンス,stressed volume(Vs)などを解説する。静脈還流量と心拍出量との関係を示したGuytonの平衡図を用いて,各種ショックの病態やカテコールアミンの使用による血行動態の変化を考える。

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高拍出性心不全は,体血管抵抗の低下,水分貯留と血管内容量の増加,心拍出量の増加が特徴であり,甲状腺中毒症,敗血症,チアミン欠乏症,慢性貧血,動静脈瘻,慢性肺疾患,肝疾患,Paget病などが原因で発症する。心拍出量が増えているにもかかわらず生体の酸素需要を十分に満たせないために,組織低酸素になるとされる。血流の供給不足は通常の心不全と同様の神経体液性因子の反応をまねき,レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系やアドレナリン作動性神経系の活性化,抗利尿ホルモンの過剰分泌をきたす。高拍出性心不全に確立した治療法はないが,高心拍出状態の原因疾患の治療および水分貯留の解除と体血管抵抗の制御が必要となる。

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ミクロ循環microcirculationは組織への酸素の拡散・抽出の場であり,径100μm未満の細動脈,毛細血管,細静脈から成る。敗血症などの重症患者においては,しばしばミクロ循環が障害され,またそれらが,マクロ循環と相関しないことがわかっている。従来のマクロ循環を指標にした治療戦略の限界が指摘されるなか,よりダイレクトに組織低灌流,臓器不全と関連するミクロ循環への注目が高まっている。実際,複数の研究でミクロ循環の障害が不良な転帰と関連することが示されている。

 ミクロ循環を評価するツールとしては,直接可視化するhand-held vital microscopes(HVMs)を中心に,近赤外線分光法(NIRS)や皮膚所見など,いくつかの有用なものがあるが,現時点ではいずれも研究目的の使用に限られる。

 ミクロ循環の障害のされ方は,背景の病態により異なるが,重症敗血症,敗血症性ショックにおける特徴は,異質性の増大と血管密度の低下である。

 古典的な治療介入である,輸液,強心薬,血管収縮薬,赤血球輸血が,ミクロ循環にもたらす影響は多様で,個人差が大きく,しかもマクロ循環へのモニタリングでは,その効果の予測が困難である。血管拡張薬,抗凝固薬,ステロイド,その他の介入についても研究はなされているが,臨床使用には至っていない。ミクロ循環のモニタリングや,それを指標にした介入については,現時点では有効性は示されていないが,近い将来,重症患者の管理において,重要な役割を果たすようになるかもしれない。

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細胞外液のpHは7.4に保たれており,そのために緩衝系(炭酸-炭酸水素ナトリウム系,リン酸系,ヘモグロビン系,タンパク質系),呼吸器系,腎臓系という複数の調節機構が働いている。細胞外液のpHは,呼吸(CO2)や緩衝系(HCO3-)だけでなく,さまざまな合成や代謝に関与する細胞内液の影響を強く受けており,結果として生体に都合のよいpH=7.4という値になっている。pHが7.4から逸脱するとさまざまな臓器に支障をきたす。特に循環器系への影響は,長年研究されている。摘出した心臓を用いた実験では急性代謝性アシドーシスは心収縮力を低下させるが,動物個体を用いた実験では交感神経系が代償的に活性化され心収縮力増加,血圧上昇の作用が働く。呼吸性アシドーシスと代謝性アシドーシスの循環への影響における差異は十分明らかになっていない。アシドーシスに対して炭酸水素ナトリウムを投与する治療は広く行われているが,この治療が血行動態や予後を改善させるエビデンスは不十分であり,今後のエビデンスの蓄積がまたれる。

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細胞内液pHは細胞外液pHよりも低く,細胞内で常に産生され続ける酸(H)の影響を受けているが,複数の機構が働くことで細胞内液pHは一定の値を保つことができる。しかし細胞内液または細胞外液pHの極端な低下によりこれらの調節機構が破綻し,細胞に障害を及ぼす。細胞内液pHを上昇させる治療法として炭酸水素ナトリウムの投与があるが,これはかえって細胞内環境を悪化させる可能性がある。一方でTHAMは細胞内アシドーシスの悪化を避けることが期待されているが,臨床応用できるほどエビデンスは十分でない。

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急性腎障害(AKI)と一言に言ってもさまざまな原因がある。その原因により臨床像や治療に対する反応は異なっている。詳細な病歴聴取と身体診察に加えて,尿定性・沈渣と腎後性の評価のための画像検査がAKIの原因の鑑別診断のために必須である。血行動態異常に伴うAKIの予防,治療において,体液量の補正と昇圧薬により平均血圧を保つことは重要であるが,一方で,体液過剰,特に静脈高血圧でAKIのリスクが高まったり,他のさまざまな合併症が増えるというエビデンスも蓄積されている。腹腔内高血圧は集中治療領域でこれまであまり認識されていなかったが,AKIや合併症の重要な原因である。AKIの治療において,適切な腎灌流を得るためには,輸液および昇圧薬による平均血圧の維持だけでなく,腎静脈高血圧を意識した過剰輸液の予防にも気をつける必要がある。

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重症患者において,糸球体濾過量が正常範囲を超えて亢進する現象を認めることがあり,augmented renal clearance(ARC)として近年注目を浴びている。ARCはクレアチニンクリアランス>130mL/min/1.73m2と定義され,若年者,男性,外傷などが危険因子となる。ARCでは,腎排泄型の薬物のクリアランスが亢進するため,特に抗菌薬の場合,その血中濃度低下による予後悪化や耐性菌の増加が懸念されている。ARCの歴史は浅く,病態や至適な薬物投与設計に関しては,未知な部分が多い。

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肝性脳症は肝不全に起因する可逆性の精神神経症状である。アンモニアが主な原因物質であり,ほかに芳香族アミノ酸やそれを前駆物質とする偽性神経伝達物質が報告されている。肝硬変患者では各臓器が相互に影響しており,アンモニア値単独で肝性脳症の診断や予後を予測することは困難とされる。グルタミン経口負荷によるアンモニア測定は十分な意義があるとはいえない。一方,急性肝不全における肝性脳症は,急激な肝細胞障害による高アンモニア血症とそれによる脳浮腫が主な病態であり,高アンモニア血症は予後因子として考えられている。血中アンモニア値については,急性肝不全と肝硬変の病態が異なるので,それぞれ解釈する必要がある。

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出血傾向または出血性素因とは,外傷などの誘因なく生じる皮膚・粘膜または組織・臓器内での自然出血および外傷や手術後の異常出血を示す。出血傾向の原因は多岐にわたるが,主な病因として,血管壁の異常・血小板の異常・血漿成分の異常の3つが挙げられ,これらの病因が時には重なって出血傾向となる。出血症状は原因によって異なるが,点状出血などの紫斑,歯肉出血や消化管出血のような粘膜出血,頭蓋内出血や筋肉内出血のような深部出血,止血後の再出血の4つが主要な症状として挙げられる。血管壁や血小板の異常では,点状出血や斑状出血,鼻出血,歯肉出血などの皮膚粘膜出血が典型的であり,筋肉内出血や関節内出血はまれである。一方,血漿成分の異常では,トロンビンおよびフィブリン産生が障害されるため,関節内出血や軟部組織内の血腫が主な症状であり,血管壁異常や血小板異常の患者に比べ出血症状は重篤であり生命にかかわることもある。主要な病因に加え,動脈硬化や高血圧,消化性潰瘍の合併症も出血症状に影響する。特に,高齢者では,出血リスクが増大するため,主要病因のように明らかなリスクとともに,潜在的リスクを評価することが重要である。

Part 7.体温/感染

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ヒトの体温は,寒冷あるいは暑熱反応により,36.9±0.3℃の範囲内(セットポイント)に精巧に調節されている。熱放散の機序には,輻射,伝導,対流,蒸散がある。体温調節機構を超えて体温が過剰に上昇する状態を高体温と呼び,発熱と高熱症に分けられる。発熱は,侵襲に対する生体防御反応の1つである。解熱処置が発熱患者の予後を改善させるか否かについては,心肺蘇生後遷延性意識障害を除いて,否定的な見解が多い。物理的解熱を行う場合,生体に寒冷反応を惹起させない手法を考慮する。臨床現場での体温管理には,生理学的知識に基づいた体温の評価と管理が重要である。

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体内で臓器同士は完全に独立して機能しているわけではなく,しばしば神経系,内分泌系,循環血液系のネットワークを介してコミュニケーションをとっている。“クロストークcrosstalk”とは,本来「電話・無線などの混信」を意味する単語である。したがって,organ crosstalkとは臓器間の本来あるべきコミュニケーション(交信)とは異なり,目的に合わない思わぬ遠隔作用(混信)を意味すると考えてよいだろう。本稿では,集中治療に関連した代表的なorgan crosstalkである,心腎症候群,肝肺症候群,肝腎症候群について解説する。

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William Oslerが語ったように,臨床家である我々は生理学・物理学に代表される科学を学び理解する必要がある。圧・張力・半径の関係を示したLaplaceの法則は管腔臓器に応用でき,流量・半径・粘度・長さ・圧の関係を示したHagen-Poiseuilleの法則は血流の理解や輸液療法に応用可能である。また流速・圧の関係を示したBernoulliの法則はCOPD患者に応用できる。偉大な先人たちにより発見された科学を理解することで,我々の臨床理解は深まるのである。

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This ongoing series provides the readership of Intensivist with the opportunity to read concise reviews of current topics in Critical Care Medicine, in English. It is hoped that these reviews will stimulate the pursuit of other literature written in English.

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カプノグラフィは,換気の指標・人工気道や呼吸器回路の異常発見・胸骨圧迫の妥当性の評価など,肺と循環生理や安全に関する数多くの有益な情報が得られることから,救急・集中治療領域において,欠かすことができないツールの1つである。一般的に,カプノグラフィとは,時間ベースのカプノグラフィ(TCap)を指すが,呼気ボリュームベースのボルメトリック・カプノグラフィ(VCap)も存在する。VCapは,二酸化炭素(CO2)排出量や死腔測定が可能なことから,特に急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の人工呼吸器管理における有用性が期待される。

連載 国際学会へ行こう!

ESICM Annual Congress Berlin 小林 絵梨
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ESICM Annual Congress 2019

欧州集中治療学会ESICMは,European Society of Intensive Care Medicineの略語で,1982年にスイスのジュネーブで設立された非営利団体である。集中治療医学の知識の向上,重症患者とその家族に対する最高水準の集学的ケアの推進と支援を目的としている。日本集中治療学会とdual membershipも締結している。

 今回の学術集会は,世界中28か国から5800人が参加し,日本からも50本近くの研究が発表された。最初の2日間は,master classなどのワークショップが開催され,3日目よりe-poster発表や口演発表が行われた。発表と並行して,教育講演や,simulation centerでのワークショップ,tech loungeや,NEXT loungeといったエリアで若手の集中治療従事者へのレクチャーやディスカッションの場が設けられていた。後述するが,最終日には,New England Journal of Medicine(NEJM)誌やJournal of the American Medical Association(JAMA)誌などのインパクトファクターの高い医学雑誌に掲載予定の大規模臨床研究が発表された。

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目次

倫理規定

次号予告

基本情報

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INTENSIVIST
12巻1号 (2020年1月)
電子版ISSN:2186-7852 印刷版ISSN:1883-4833 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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