臨床婦人科産科 27巻11号 (1973年11月)

特集 症状からつかむ私の治療指針

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本号は「症状からつかむ私の治療指針」を企画してみた。

日常診療上,実際にわれわれは,患者の訴え,つまり症状をきいて,これに対し診断を下し,治療方針をきめ,治療にあたつているというのがふつうである。

婦人科

帯下 高田 道夫
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I.帯下の分析

 帯下は性器局所の異常を表現しているが丹念にしらべてゆくと思いがけない全身疾患あるいは全身的なかかわりあいが浮びあがつてくるもので,帯下は蔭にひそんでいる産科,婦人科の異常を検査する手懸,窓口である。

 帯下を訴える患者を診察して頭にえがく疾患の種類は多種多様であるが,次の順序で整理するのも一つの方法である。

月経発来の異常 松田 静治
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 女性の性徴の発達は乳房の発育開始,恥毛の発生および月経開始の3段階からなり,このうち月経の発来は最も確実な性成熟徴候である。従来初潮の異常を含め広義の月経異常に関する分類法が数多く報告されているが,自験例に乏しいため,主に松木,倉智の業績をもとに早発月経,初潮遅延につきのべる。

無排卵 高木 繁夫 , 岡田 秀彦
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 無排卵とは卵胞の成熟の有無に関係なく排卵障害をみるものであり,思春期以降の婦人においてはこれをみることは必ずしも稀でない。いうまでもなく女性の月経周期はその中心に排卵があり,間脳下垂体,卵巣系を主軸とするintegrated functionにより営まれるものである。すなわち成熟婦人においては間脳より分泌されるgonadotropin releasing hormoneは門脈系を通つて下垂体前葉を周期的に刺激し,Follicle StimulatingHormone,Luteinizing Hormone (以下FSH,LHと略す),prolactinなどを分泌し,それぞれ標的器管である卵巣に働きestrogen,progesteroneを産生する一方,間脳—下垂体に逆作用をもたらし,直接または間接に排卵機序に与かるとされている。その他,下垂体副腎系,下垂体甲状腺系の影響も否定しえない。たとえば,FSHやLHによつてestrogen産生が一過性に高まると,positive feed backによつてLH surgeが起こり,それが排卵をうながすという中枢的mechanismはある程度解明されてきている。

無月経 倉智 敬一
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I.考えられる疾患

 月経は間脳下垂体卵巣系内分泌機能の正しい働きによつて子宮内膜から周期的に発来する出血であるから,間脳・下垂体・卵巣および子宮のいずこに疾患があつても無月経となる。精神的あるいは心因性の原因は間脳機能を障害して無月経をしばしば招来するし,また甲状腺や副腎など間脳下垂体性腺系以外の内分泌腺機能異常もこの系に作用して無月経をもたらす。さらに性ステロイドの代謝障害や全身性消粍性疾患によつても無月経がみられる。

 以上の各臓器・組織の障害は機能性のこともあり,また器質性障害のこともある。

月経量の異常 福島 峰子
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 月経異常の中に月経量が問題になることがある。そもそも正常月経量はいかほどであるかを文献的にみると,その測定方法により(重量法,Hb測定,Fe測定,Fe59,Cr51,electrolyte測定など)かなり差があり,また個人差も大きいが,平均50ml位と考えられる1〜2)

 しかし外来患者に月経は多いか少ないかと問診しても,比較の対象がなく返答が困難なことが少なくない。そこで月経量の異常を主訴とする場合は,自分のある時までの量に比べてこの頃かなり多くなつたとか少なくなつたという場合,および月経多量のことが生活上不便であつたり,少な過ぎて月経らしい月経と思えない場合である。

月経周期の異常 中居 光生
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 月経周期の異常を本稿では月経の「周期性」の異常に限つて触れることを試みた。月経の異常に関してなされる月経の周期性の異常の分類は報告者により若干の相違が認められるので,実際上の観点からこれを取上げた。

月経痛 川島 吉良
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I.考えられる疾患

 月経開始時または月経の2日前位から始まつて月経時に及ぶ下腹痛(月経痛)を主体とする症候群を月経困難症dysmenorrheaと称し,そのために生活に著しい支障を来たすものが治療の対象となる。

 本症候は骨盤内に器質的疾患の認められない機能性月経困難症functional dysmenorrheaと,骨盤内に器質的疾患の認められる器質性月経困難症organic dysmenorrheaとに2大別される。

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 月経の10〜14日前から心身の不快感を訴える婦人は少なくないが特に治療を必要としない場合が多い。月経前緊張症候群とは中でも症状の程度が強く,日常生活になんらかの支障を来たす場合で適当な治療を要する。

代償月経 玉田 太朗
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I.症状

 思春期あるいは性成熟期の女性にみられる,子宮以外の場所からの周期的な出血と定義できるが,これは月経出血とほぼ同時におこるもののほかに,月経出血をともなわないが周期的に1ヵ月に1回くらいの割合でおこる性器外出血の意味に用いられていることもある。

 しかし診断上のまぎらわしさをさけるためには前者のみを代償月経とよぶべきであろう。

卵巣欠落症状 馬島 季麿
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 卵巣欠落症状とは成熟期婦人において,卵巣を手術的に摘除するか,放射線照射によつて,人工的に卵巣機能が急速になくなつた場合に現われる症状である。

若年性性器出血 橋口 精範
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I.考えられる疾患

 婦人において性器からの出血は,一生を通じて,かなりの長期間の範囲にみられるものである。このうち若年者についてみられるものとしては次のようなものがあげられる。

 卵巣機能不全によるもの 若年者,とくに初潮がみられてまもない頃は,月経周期も不順であり,数ヵ月に1回とか,逆に月に2回以上出血がみられることがある。これらは月経異常ともみられ,前者は稀発月経,後者は頻発月経とよばれるところである。

不正子宮出血 蜂屋 祥一 , 楠原 浩二
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 不正子宮出血のうちでも,若年性,ならびに更年期におけるそれについては分担執筆者がそれぞれ記述されるので,ここでは成熟婦人における不正子宮出血に的をしぼつて述べていきたいと思う。

 出血の原因は大別して,①機能性出血(ホルモンによる消退性,または破綻性出血)②器質的疾患によるものの2グループに分けることができる。以下,それぞれについて症状を中心として述べていく。

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 実施臨床上,性器出血は産婦人科領域においてきわめて頻度が高く,重要な主訴であり症状である。

 しかも,この出血を主徴とする疾患は無数で,出血のパターンなどを単に分析することは,診断上,必ずしも価値のある根拠を提供するものではなく,まず,患者を年齢的に,思春期,性成熟期,更年期,老年期に分け,疾患自体の性格を考慮することから性器出血の診断治療を進めることが,より合理的であると考えられる。特に更年期は癌年齢にあるため,診断上悪性腫瘍を常に念頭におかねばならず,かつ,内分泌学的にもきわめて多彩な変化をみることが多く,その意味でも,ここに述べる更年期における性器出血は重要といえる(表1)。

性器瘙痒感 佐々木 寿男
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 性器瘙痒感の臨床として,われわれの領域でもつとも重要であり,しばしば遭遇するものは,局所性疾患としての外陰腟カンジダ症,腟トリコモナス症,老人性腟炎,(精神神経性)外陰瘙痒症などであり,比較的頻度の少ないものとして,外陰萎縮症および外陰ロイコプラキー,扁平苔癬,寄生性(疥癬,蟯虫など)感染症などがある。

腟部びらん 竹内 正七 , 半藤 保
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 腟部びらんというのは,外子宮口の周辺にみられる赤色部分を指し,肉眼的・臨床的診断名である。したがつて種々雑多な病変が含まれる可能性があるが,その大部分は円柱上皮におおわれた仮性びらんである。仮性びらんは性成熟期にある婦人の半数以上に存在し,このような年齢層の婦人にはむしろ生理的状態と考えてよい。コルポスコープによる変換帯まで含めると,30〜40歳代ではほぼ90%近くに認められる。このように日常的に観察されるが,本症はしばしば感染や出血を招来し易い。また重要なことはびらんの中に上皮の異形成dysplasia,上皮内癌ca.in situ,微癌microcarcinomaなどが伏在することがあることである。これらの変化は外見上しばしば良性病変と鑑別不能であり,精密検査によつて初めて検出される。したがつて腟部びらんの治療に先立ち,入念な検査によりまず悪性変化を否定する必要がある。びらんの治療は診断を確定せずに設定されてはならない。

 腟部びらんには,従来多数の治療法が試みられているが,このことは本症の治療にまだ的確なものがないことの証明でもある。これは腟部びらんの病因論がまだ完全には解決されていないことにもよるが,本症の本体につながる本質的な問題とも見なし得る。治療の捷径は病因を理解するにあるところから,われわれの立場を紹介して,本症の治療指針に対する一助としたい。

外陰部腫瘤 竹村 喬
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I.外陰部腫瘤の種類

 外陰部腫瘤はその種類が多く,この中には真性の腫瘍(良性,悪性)でないものも含まれているので,その分類も簡単でない。ここでは,基礎的な方法より,臨床的に便利な方法で次のようにわけてみた。

 良性腫瘍 筋腫,線維腫,脂肪腫,血管腫,粘液腫,汗腺腫,外陰筋母細胞腫(筋芽腫),上皮性外陰腫瘍(類上皮嚢腫,エンド・メトリオージス,過剰乳腺組織の線維腺腫,外陰唾液腺腫)。

性器脱 山本 浩
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 HalbanおよびTundlerは生殖器脱垂症は生殖器ヘルニアに外ならないと述べ脱垂成立の機転を説明するものとして今日信ぜられているがこれに関与する因子は腹圧とヘルニア門である。脱垂の程度および範囲は種々あり,わずかに腟口が哆開しているものから子宮が完全に外陰部に脱出しているものまである。年齢も未婚の若年婦人から(新生児の子宮脱も報告されている)高年婦人に到るまでの広範囲に及んでいる。疾患の程度や年齢などのほか性機能および生殖機能保持の有無などによつて必然的にその治療方針が異りまたしばしば再発をみることから確実な診断法,術式の選定および手術手技が要求される。

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 不妊症は単一な疾患名ではなく,夫婦が一定期間以上,正しい結婚生活を営んでいるにもかかわらず妊娠しない状態をいう。不妊期間は学会の定義では満2年以上とされているが,1年以上2年未満でも低妊孕性Subfertilityとして治療の対象としている。妻の年齢が若いほど,不妊期間が短かいほど,妊娠への見込みが大きいのは当然であろう。

 その結婚期間中に一度も妊娠しない場合を原発不妊,妊娠したが流早死産,あるいは外妊に終り,以後妊娠しないものを続発不妊とよぶ。とくに1児をえたのち妊娠しないものをone child sterilityということもある。結婚前または初婚時に妊娠したが,現在の夫とは妊娠したことがない場合は原発不妊とすべきである。

肥満 飯塚 理八 , 河上 征治
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 肥満とるいそうは健康管理上各科共通の大きな課題となつているが,特に女性肥満症は諸病理学的考察はもとより生殖機能との相関解明と対策を講じねばならない。

 女性肥満が初潮,妊娠,中絶,分娩,閉経など性ホルモン環境の変動を契機として起因する印象が強くもたれるため漠然と内分泌疾患との相関が示唆されているがその成因の究明は行なわれていない。しかし体重変動と性機能異常(特に無排卵)との相関を解明する一つの示唆としてestrogc11の脂肪組織へのdepositとそれに伴う代謝異常が考えられている。

るいそう 水野 正彦
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I.るいそうの判定

 身長を基準とした成人の標準体重(表1)より−10%以上体重の少ない状態を,るいそうとする,るいそう患者を見たら,基礎疾患の有無を慎重に検索しなければならない。

多毛症 小川 重男
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I.定義

 正常でも発毛の見られる部位の毛が異常に濃い場合をいい,男性にもあるが,臨床的には女性の多毛症が問題となる。

更年期障害 森 一郎 , 西村 哲一
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 婦人の性腺機能は,大脳皮質(心因)—視床下部(情動,自律神経や内分泌機能の上位機構)—下垂体—末梢内分泌系—標的臓器間の密接な関係で調和が保たれているが,加齢すなわち更年期になると,これらの諸臓器の機能は減退してくるので,当然,心因性反応,自律神経機能,内分泌機能などに変化が起こり,不定愁訴や異常な性器出血,その他をみるようになるが,われわれは,このような変化を37〜55歳でより多く認めている。したがつてわれわれは,この間を一応更年期と考え,この間で上述のような変化が異常となつたもので,日常生活に支障がない,すなわち受診しなくてもよい程度を更年期失調,日常生活に支障がある,すなわち受診するような場合を更年期障害と考えている。

 更年期障害のうち,異常な子宮出血などのような内分泌系失調は,婦人は次第に,閉経あるいは卵巣機能の終止へと移行するので,それほど問題とならないが,不定愁訴は,頻度も高率で,期間も長く,またその程度も劇しいものが少なくない。それで以下,この不定愁訴群についてわれわれの治療方針を述べてみる。

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 女性の性感異常にはfrigidity (冷感症)とdyspareunia(不感症)とがある。

 学者によつては,この両者を混合したり,区別しないものもいる。

腰痛 岩倉 博光
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I.考えられる整形外科的疾患

 1.他に神経症状を伴なわないもの

 1) stress and strain,捻挫,損傷

 外傷による。靱帯,筋肉,筋膜の断裂,あるいは椎間関節面の損傷など。

 2)疲労(1と2でI項の70%を占める。)姿勢の不良,腹筋の筋力低下。妊娠,過剰体重,二次性脊柱変性など。

下腹痛 鈴木 正彦
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I.考えられる疾患

 A.婦人科疾患

 1.鎖陰

 2.子宮内膜症

頭痛 鳥越 正
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I.考えられる疾患

 頭痛はしばしば経験される症状で,頭部外傷,炎症,腫瘍などの器質的疾患に伴なつておこるものと,そうでないもの—血管性,筋緊張性頭痛およびこれらの合併性頭痛—とにわけられる。

 前者は髄膜炎,クモ膜下出血,脳炎,脳腫瘍など内科や脳神経外科的には重要なものであるが,それぞれ他に著明な所見を伴ない比較的稀な疾患である。臨床的によくみられるのはむしろ後者であり,産婦人科領域でみられる頭痛もその一部を除いてほとんど後者に属している。

乳房痛 広井 正彦
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 乳房は左右対称的に胸部に位置し,その主たる構成をなしている乳腺は,女子では思春期に入り急速に発育肥大する。また妊娠するとその肥大の程度も著しく,産後は乳汁が充満し乳汁分泌を来すようになる。更年期以後には乳腺は萎縮する。このように乳房はリプロダクションの変化によりいろいろの変化を示すので,乳房痛を主訴として来院した婦人を診察する際には,乳房のみにとらわれずに全身の発育状態,月経の状態,脂肪過多の状態,腋窩・頸部リンパ腺の肥厚の有無などをも注意して観察,問診すべきである。

 乳房は健康な婦人でも強く圧迫すると疼痛として感じるので,ここでのべる疼痛は主として自発痛に限ることにする。

排尿障害 藤井 明和
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 婦人科領域では,隣接臓器である尿路に対する圧迫や感染,充血が原因で,主訴が排尿障害,頻尿・排尿困難・尿閉・失禁などとなつてあらわれ,元来泌尿器科領域の疾患であつても,婦人科医に診断を求めることが多い。

腹部膨満 寺島 芳輝
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 腹部膨満あるいは膨満感(abdominal distention,Spannungs gefühl des Bauches)とは"おなかがはる"という患者の訴えを症候学的に形容したものであり,一般には腹部が異常に増大している状態を指しているので,他覚的な表現として腹部膨大または膨隆Bauch—auftreibungともいわれる。

 したがつて,産婦人科疾患のみならず,内科,外科疾患も当然含まれ,さらには日常食後によく経験する軽い訴えなどは必ずしも病的とはいえず,非常に広い範囲の疾患まで包括されているといえる。

発熱 中嶋 唯夫
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 日常実地診療上での疾患を中心に述べる。婦人科疾患と泌尿器系の疾患の鑑別は常に念頭におく必要があり,また性周期の高温相に微熱(37°〜37.9℃)を生理的に認める婦人もあり,中等度発熱(38°〜38.9℃),高熱のほか,微熱を37.5℃以上とする学者もいる。また熱型(稽留熱,弛張熱,間歇熱)も必ず参考となる。

産科

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 妊娠のごく初期(最終月経後6〜8週)より妊婦の約半数で主に早朝空腹時に吐気,嘔吐がみられ,一般につわりまたは妊娠嘔吐と呼ばれ妊娠の疑徴の一つとなつている。このつわりの軽度なものはごく正常な妊娠時の生理現象と考えられ,したがつて普通治療の対象とならない場合が多い。妊娠悪阻はつわりの病的状態と考えられるものであり,頭固な吐気・嘔吐が続き母体の栄養障害を来し(軽症型),さらには中毒症状,脳症状が伴つてきて(重症型)早期に適切な処置をしないと重篤な経過をとることもある。

 本症の原因は未だ不明である。神経症の患者に妊娠初期に頑固な嘔吐がしばしばみられ,機能的に神経系統に障害がある場合,妊娠が本人にとつて望ましくない場合,出産に対する恐怖,性に対する嫌悪などが意識的または無意識に嘔吐の原因となり得ることはしばしば指摘されている。暗示療法がよく効果をおさめることより悪心嘔吐などは精神身体的要因に帰するとも考えられている。また絨毛性ゴナドトロピン分泌曲線が本症と平行しており,このゴナドトロピン分泌の多い胞状奇胎妊娠の場合に症状が強いことよりホルモン過剰分泌が木症の原因であるといわれている。その他,原因として免疫学的反応説,ビタミン失調説,副腎機能不全説などがある。

妊娠初期の腹痛 鈴木 秋悦 , 関 賢一
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I.一般的な注意事項

 腹痛を訴える患者の診察に際しては,まず必要かつ十分な問診が第一である。それにくわえて,視診,打聴診,触診,その他の補助的検査を充分に参考とする。

 すなわち,腹痛の部位,広がり,程度,性状(激痛,鈍痛,持続痛,疝痛様など),初発時の状況と誘因の有無(突然か徐々にきたか,食事との関係),圧痛の有無,月経との関係などの事項を的確に把握し,同時に,熱発,貧血,嘔吐,性器出血などの随伴症状を注意する。補助的検査としては,末梢血に関する全般の諸検査,血沈,導尿検尿,ダグラス窩穿刺,レントゲン検査などを参考として,腹痛の原疾患を正しく鑑別する必要がある。

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 妊娠中に性器出血をきたし,産婦人科医を訪れる患者は比較的多く,簡単な治療により容易に治癒しうるものもあるが,時には妊婦の予後に重大な影響をおよぼす場合もある。従つてわれわれ産婦人科医はその原因的疾患を適確に把握し,早急に正しい治療を行う必要がある。

 本稿では,特に妊娠初期に性器出血を来たす疾患のうち,妊娠異常が性器出血の原因となる疾患についてまず記し,これら疾患の診断上のポイントおよび治療方法について述べ,更に,妊娠初期に偶発する性器出血を起す疾患については簡単に記載することとする。

妊婦の貧血 荒木 日出之助
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 妊娠時にみられる血液性状の変化は,胎児および子宮の変化を除外すれば最大といつても過言ではない。貧血の限界をいずれにおくかにもよるが,その頻度は諸家の報告によると全妊婦の約10〜30%にも達する。今日では,貧血検査は産科臨床に欠かせないものになり,妊婦検診における血圧測定,尿中蛋白・糖検査と同等にあつかわれ,母子健康手帳にも記載項目としてとりあげられているほどである。妊婦に貧血のある場合は,分娩時に異常出血がおこつたり,出血量が多いばかりでなく,ショックに陥つたり,微弱陣痛・産褥感染・乳汁分泌不全なども起こしやすい。

妊婦の呼吸循環障害 大内 広子
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 妊婦に呼吸循環障害がおこると他の場合と同様に呼吸困難,咳痰,胸痛,チアノーゼ,喘鳴,発熱,不整脈,浮腫などの症状があらわれる。また他覚的には胸部X線像異常所見,心電図所見の異常,血圧,中心静脈圧などの変動,肺機能障害,血液・血清の異常所見などをみることもある。

 その治療対策も病状によつては急を要することもしばしばおこる。

頸管無力症 福田 透
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 頸管無力症(Cervical incompetency,Zervixinsuf—fezienz)は1948年頃より注目され,Palmer,Lash,Schirodkarなどにより特に妊娠中期の流産と密接な関連性のあることが明らかにされてきた。更に内外の研究者の長年月にわたる検討の結果,現在ではSchirodkar法に代表される各種の頸管縫縮術が本症に対するすぐれた力法として実際の治療面にも一応定着したかの感がある。しかし本症の診断自体にも,また,特に縫縮術の適応,要約,実施時期などについてもなお未解明の点が多く残されており,今後の検討に待つ所が大である。以下頸管無力症の2〜3の点につき略述する。

過大・過小妊娠子宮 雨森 良彦
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 微視下の1個の受精卵がその後の約260日の妊娠期間に細胞分裂と増殖をとげ約3kgの胎児に発育することはまさに悪性腫瘍の概念をもつてしか理解しがたい現象である。

 またこの胎児を収容する子宮も鶏卵大から妊娠末期の巨大な子宮に肥大し,分娩後は再び短期間に収縮復古することは他に類を求めることのできない組織学的な肥大(hypertrophy)と萎縮(atrophy)であるといえよう。

妊娠時の腹部緊満感 松浦 俊平
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 妊婦が腹部緊満感を訴える場合,子宮収縮,腹腔または子宮内容の急速な膨大,あるいは腹膜刺激症状などの理由が考えうる。最も多いのは,妊娠子宮筋の興奮性亢進によつて起こる子宮収縮を緊満と感ずる場合で,すでに妊娠の早期からみられ,妊娠末期には頻発して著明となる。収縮は間歇的で不規則であり,身体の安静によつてほとんどが自然に消失する。

 時おり,妊娠時の胃,腸管,膀胱などの緊張性低下から,便秘による鼓腸や尿停滞による膀胱の充満を腹部の緊満感として訴える場合もみられるが,これらも適当な摂生,看護を適用することによつて消褪する。

妊娠後半期の異常出血 岩崎 寛和
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 妊娠後半期の出血は,しばしば胎児の生命のみならず母体の生命をも脅かす事態に陥りがちであり,したがつて一刻も早く診断を決定し適切な処置を施さねばならない。その種類としては次のようなものが挙げられている。

羊水漏出 杉山 四郎 , 助川 幡夫
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 胎児情報源の一つとして,羊水を臨床診断の手だてとして利用する傾向が最近盛んになつてきた上に,種々の検査法が開発されてきている。羊水は胎児性の体液であり,胎児の発育や代謝機能に応じ,また妊娠分娩の経過に従つて変化するindicatorとしても,重要な意義をもつているが,特に分娩時における羊水の果す役割は大きいものがある。ここでは羊水漏出という症状をもとにして,臨床的に必要な診断と治療面についてのべる。

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I.Lower birth weight,原因と概念

 従来出生体重が2,500g以下のものを全て一率に"未熟児"と呼び,体重のみによつてこれを全て未熟であるかのごとく考える傾向にあつた。その後これらは単に低出生体重児と呼ばれるべきであり,未熟という言葉の定義についてはさらに慎重に考慮されるべきである。同じ低体重児であつても在胎日数が異ることにより臨床的意義が異り,胎内で発育が抑制された児は新生児期に周産期死亡率が高いこと,また低血糖を生じやすく,そのため後遺症として脳性小児麻痺にかかることがあり,また発育盛んな胎児期の栄養障害は脳障害を残す可能性があることが指摘されてきているからである。そのようなことから単に生下時体重のみではなく在胎週数を考慮してSFD (Small for dates infant),AFD (Appropriate fordates infant) LFD (Large for dates infant)の3つのグループに分類して児の予後を追及してゆこうとする傾向にある。

微弱陣痛 森 憲正
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 微弱陣痛とは必ずしも陣痛の強弱を意味するものではなく,娩出効果の少ない陣痛をいい,通常,低緊張性の場合をいうが,逆に高緊張性で子宮の緊張が亢まり,収縮がおこつても娩出力とならない場合もあり,子宮機能不全とも呼ばれている。

 微弱陣痛は原発性と続発性とに分類されている。前者は分娩開始から陣痛が弱く,開口期の進行がおくれ,または途中で停止するものであり,後者ははじめは規則性,強さ,持続ともに正常であつた陣痛が,分娩の経過中に減弱したり非協調性となつたり,あるいは緊張が亢進したりするもので,開口期にも,娩出期にもおこりうる。子宮筋収縮の点からは低緊張性と高緊張性とに分けられ,後者はさらに子宮下部緊張,痙攣性子宮,非対称性子宮収縮などに分類されている。

分娩予定日超過 國本 恵吉
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 分娩予定日超過について,臨床的に問題となるのは,分娩予定日超過妊婦の分娩が難産になることが多く,いきおい児に対する影響が大きくなり,周産期死亡率が高くなる点である。そのなかで過熟児の問題と胎盤機能不全に伴う子宮内胎児死亡がとくに問題となり,臨床的にはこの過熟産の予防の処置として分娩誘導が行なわれるのであるが,その処置の方法は各人各様であり,産科領域で予定日超過妊娠の取扱いほど問題を多く含むものも少い。一般に予定日超過の妊娠を扱う場合,過熟児の周産期障害を考慮してなんらかの処置を行なう場合と全く処置を加えず経過観察にとどめる場合との2つがあるが,誘発,待期のいずれの方針をとつても,正期産に較べると43週以後の分娩には異常が多く,とくに初産婦ではこの傾向が強い。

遷延分娩 浜田 宏
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I.考えられる諸要因

 1.娩出力の異常

①子宮筋作動不全{低緊張性(hypotonic inertia)高緊張性(hypertonic inertia)

胎児心音異常 室岡 一
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I.考えられる疾患

 従来から胎児心音は妊産婦の胎児管理上欠かすことができない重要な検査法で,胎児心音が毎分120〜165と規則的に算えられるようであれば,胎児はまず異常ないと診断していた。そこで胎児心音異常とはどのようなものがあるかというと,次の場合に分けられ,厳重な経過監視,あるいは他の検査を重ねて,胎児の異常を早期に診断しなければならない。

 胎児心音消失 子宮内胎児死亡をまず考えなければならないが,急に胎向,胎勢などの変化が起こつて,胎児心音聴取部位が変つたことも考慮しなければならない。

臍帯下垂・脱出 西田 悦郎
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 臍帯下垂・脱出はその状態と程度により次の3つに分類される。

 1.臍帯下垂Vorliegen der Nabelschnur 2—a.潜在性臍帯脱出okkulter Vorfall der Nabel—schnur

 2—b.顕性臍帯脱出 manifester Vorfall der Nabel—schnur

分娩時の異常出血 真木 正博
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 分娩時の異常出血には妊娠末期から分娩時にかけての出血,例えば前置胎盤,常位胎盤早期剥離,子宮破裂などもあれば,分娩時出血が産褥期に持ちこすこともある。したがつて,妊娠後期の出血と産褥後期との出血は画然と分けるわけにはいかない。

 編集上の方針から察するところでは,筆者の分担は弛緩出血,産道損傷による出血,胎盤の剥離異常による出血,凝固障害による出血などと考えて,これらについて述べることにしたい。

妊婦のけいれん 福島 穰
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I.考えられる疾患

 全身的な場合 i)子癇(最も重要で遭遇頻度も多い) ii)てんかん iii)ヒステリー iv)脳出血(特殊型妊娠中毒症の一型)。発現頻度は一段と低下するが念頭に置くべきものとして,v)頭蓋内静脈血栓症vi)急性黄色肝萎縮症 vii)尿毒症 viii)脳腫瘍。感染症として ix)重篤な敗血症 x)産褥破傷風 xi)脳炎・髄膜炎

 局所的な場合 xii)腓腸筋痙攣(頻発するが本質的に重大な疾患ではない),極めてまれなものとしてxiii)妊娠舞踏病Chorea gravidarum

産科ショック 佐竹 実
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 妊娠,分娩,産褥という一連の生物学的現象をいとなむ婦人に発現するショックには,近年いくらかの特質が問題となつている。産科におけるショックの本質論,病態生理と救急医療のあり方について純医学的および医療社会的体制の具体的究明および解決が進められ,ショック急性期をいかに系統的な治療手段により離脱し,その後の難治性臓器障害を予防,防止できるかということが今日の中心課題である。

 ここでは,実地医家がしばしば遭遇する重要な疾患とショック治療の基準をできるだけ具体的に述べることとする。

産褥期の異常出血 佐藤 恒治
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I.考えられる疾患

 産褥時の出血は分娩直後から数時間内に起こる出血とその後に起こる出血とに区別して考える必要がある。そのような観点からすると次のように分類することができる。分娩直後とは文字通り分娩の直後であり,産褥初期は分娩後12時間位から産褥2週間位まで,晩期は産褥6週間前後までである。

胎盤遺残 相馬 広明
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I.疾患別

 分娩第3期に胎盤の娩出が遅延するという状態で見られる胎盤残留と,分娩あるいは流産後日を経てなお出血が続き胎盤の遺残が認められる場合とがある。前者では通常胎盤が子宮から剥離して子宮下部に下降しているのに,そのまま残留する型と,あるいは胎盤の形態異常,例えば分裂胎盤などがあつて,一部剥離しても他の部分が剥離しえない状態での癒着胎盤がある。後者ではもしも胎盤の一部のみ剥離せずに遺残すれば,胎盤ポリープという形で遺残して成長している場合が生れる。その他胎盤の一部遺残と卵膜遺残があり,それに感染の伴なう場合も見られる。その大きな原因としては,子宮—胎盤間の接合部位の異常に基づくことが多いので,時には症状も軽度で,用手剥離や掻爬によつて容易に遺残胎盤を除去できる場合と,反対に出血が執拗に反復持続して,子宮摘出にふみ切らねばならない場合が生ずる。

子宮収縮不良 中島 晃
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 子宮収縮不良で臨床上特に問題となるのは,分娩時の微弱陣痛と,分娩後の弛緩性出血がその主なものであろう。前者については分娩が遷延し,fetal distressの因となり,なんらかの急速遂娩術を要することになる。後者では大出血のため母体が危険にさらされることはいうまでもない。

 このような収縮不良の原因についてはほとんど明らかにされていない。子宮筋の興奮性が低いためなのか,収縮機構の不備に基くのか,筋の興奮伝達が不完全なのか解明されていないからである。ただ,臨床的にある情況が存在するときに収縮不良をおこしやすいことはよく知られている。たとえば子宮発育不全,奇形が基礎にあつた場合,羊水過多,双胎などによる子宮壁過伸展,子宮壁内筋腫の存在,児頭骨盤不均衡,前置胎盤などが挙げられている。さらにまた,理論的な立場から,estrogen (子宮筋賦活作用),progesterone (子宮筋抑制作用)の均衡の乱れ,oxytocinの分泌不全,またはoxytokinaseの減少がおこらないこと,抑制的神経因子の作用,電解質異常なども収縮不全の原因たりうるとされている。しかしこれらを裏づける明確な根拠はなく,相互の関連性についてもわかつていない。

外陰血腫 唯 正一
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I.外陰血腫とは

 外陰血腫を外陰に見られる血腫と考えれば,その特徴的所見から定義についての問題点はまずない。図1はR.J.Pieriの外陰血腫の解剖学的定義である。外陰血腫は骨盤隔膜より下方に発生する。骨盤を両側坐骨結節を結ぶ線で前後に分けると,前方三角部ではコーリス筋膜,尿生殖隔膜の下面が,後方三角部では肛門挙筋(骨盤隔膜)の下面が血腫の固い屋根を形成している。

 外陰血腫の主因は分娩である。腟は肛門挙筋の恥尾骨筋を貫通しており,両者の接点は児頭下降時多少の損傷はまぬがれない。また外陰血腫の一因である会陰裂傷・会陰側切開時には腟損傷が当然伴う。したがつて外陰血腫が独立して発生する場合は少なく腟血腫に拡大する。あるいはその逆に腟から外陰へと血腫は増大する。骨盤内は粗鬆な結合組織や脂肪が多く,血腫は外陰から水平に背部に拡がれば肛門を圧迫し,腟周囲にひろがれば腟を側方に圧迫し,広間膜基底部に拡がればプーペル索を通つて上肢のつけねに,後方にまわれば後腹膜的に腎臓に達する。この種の血腫はとくに産科的には骨盤入口から出口までのあらゆるレベルに発生しうるものであり,骨盤血腫pelvic hematomaまたは骨盤内血腫とよぶのがよい。ここではそのうち腟外陰に主として形成される血腫を対象に私の治療方針をのべていきたい。

子宮内反症 尾島 信夫
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 症状 胎児娩出後多くは2時間以内に(胎盤娩出前のこともある)強い出血と激痛を伴つて腟外あるいは腔内に肉塊様腫瘤があらわれ,重症なショックを呈するのが急性産褥性子宮内反症acute puerperal inversion ofthe uterusである。子宮の弛緩が起こつていたり,子宮底に胎盤が附着していたり,後産期の不当な子宮底への圧迫や臍帯の牽引が発生要因となる。

 診断 診断がおくれるほど予後が悪くなる。膀胱を空虚にしても恥骨結合上に子宮体を触れえぬことがきめ手。直ちに腟鏡診をして子宮体が裏がえしになつてとび出していることを確認すること。胎盤がまだ附着していることもあり,有茎の粘膜下筋腫だけ脱出していることもあるし,筋腫に伴つて子宮が内反していることもあるから注意のこと。本来の外子宮口のみを残してあとはすつかり裏がえしになつている(完)全内反症もあれば頸管は残つて子宮底部のみが裏がえしになつている部分性内反もある。腟壁まですつかりとび出している総内反症total inversionもある。開腹しないとみえないが輪状に残つた子宮頸の部分が内反漏斗inversionsfunnelをつくり,卵管・円靱帯等が左右からその漏斗の中に種々な程度にのみ込まれたようになつている。

産褥期の腰痛 稲冨 道治
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 腰痛は頻度の高い主訴である。産婦人科外来患者の5〜10%を占め,その4%が妊娠による。産褥期不定愁訴の13%に及ぶ。

 腰痛発生の機序 疼痛の本態は次の3つである。

乳汁分泌異常 橋口 精範
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I.考えられる疾患

 乳汁分泌が少ないもの(乳汁分泌不全)産後数日たつても乳汁の分泌がみられなかつたり,5日目頃になつても1日の分泌量が約200ml以下であるような場合を乳汁分泌不全とよんでいる。

 乳汁分泌の多すぎるもの(乳汁分泌過多症) 産後まもなくの頃から,急に乳房が腫大してきて,1日の分泌量が1,000mlをこえ,ときには3,000mlとか,5,000mlとなることがある。これを乳汁分泌過多症,または乳汁漏とよんでいる。

新生児

新生児仮死 植村 一郎 , 柳田 隆
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 分娩は約10ヵ月の長い時間の経過をたどつたドラマの最終場面であり産婦も医師も元気な児の啼泣を聞いてこのドラマの終りを喜びあうものである。この大事な場面に心音はあるがなかなか呼吸を始めてくれない児の不良状態を新生児仮死といつてよい。以下新生児仮死について実際私たちが都立台東産院で実施していることを中心に記述してみたいと思う。

新生児呼吸障害 小川 雄之亮
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 新生児呼吸障害といえば一般に新生児呼吸窮迫症候群(IRDS)と同義に用いられることが多い。しかし本稿では編集者の意に従い,呼吸障害を症状としてとり扱い,新生児の呼吸困難(Respiratory difficulty),あるいは呼吸不全(Respiratory insufficiency)の症状からつかむ治療方針について略述したい。

新生児脳内出血 白川 光一 , 金岡 毅
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 新生児脳内出血は病因別に分娩外傷などの機械的損傷によるものと,無酸素症などの生化学的損傷によるものとに大別される。しかしいずれも近代産科学における分娩管理の進歩によつて減少しつつあり,前者においてその傾向が大である。とはいえ脳内出血の後遺症は深刻であるため,いまだ問題の多い疾患の一つでる。

 この新生児脳内出血は新生児期早期に確診することは困難な場合が少なくなく,死後の剖検,あるいはかなりの時間の経過後に確診されるものが多い。その理由は,①新生児の中枢神経系は未熟であつて成人のごとく明瞭な症候が出現し難いこと,②出血の部位,程度などにより症状が異なること,③出血を伴わない無酸素性脳障害との鑑別が困難であること,④呼吸障害,心不全,副腎出血,低血糖症,低Ca血症などでも類似症状がみられかつこれら疾患の結果として脳内出血が続発することもありうることなどがあげられる。したがつて脳内出血が疑われる症状がみられる場合には蓋診または疑診を施し,その症状を対症的に治療しつつ鑑別診断を進め,疾患の本質に接近していくのが普通である。

新生児チアノーゼ 安達 寿夫
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I.チアノーゼを主症状とする新生児疾患

 出生直後の新生児が子宮外生活に適応するための第一歩は,今まで胎盤臍帯を通じて母体から与えられていた酸素を新生児自身の肺呼吸から得て,大動脈を経て全身に供給することである。したがつて呼吸運動(主として呼吸中枢),肺胞におけるガス交換(肺機能),心臓大血管(循環)の3点の異常が,チアノーゼを呈する新生児に直面したときまず第1に考えるべきポイントである。

新生児けいれん 野呂 幸枝
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 新生児のけいれんは症候性けいれんが大部分であつて,注意深く早期に発見して,その原因疾患に対する治療を開始しなければならない。

新生児の嘔吐 村田 文也
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I.考えられる疾患

 新生児期に嘔吐を呈する疾患は,表3のごとく多種類ある。

 まず,緊急手術を要する疾患か否かを考える(先天性腸閉鎖,腹膜炎,腸重積など)。次いで,内科的疾患の中でも重症のもの,すなわら,髄膜炎,頭蓋内出血,胃腸炎,などであるか否かを考える。新生児の嘔吐の原因として最も頻度が高いのは初期嘔吐(予後良好)であるが,II.で記す鑑別診断が大切である。

新生児の黄疸 志村 浩二 , 馬場 一雄
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I.新生児期に黄疸をきたす主要疾患

 A.高間接ビリルビン血症

①新生児溶血性疾患(胎児赤芽球症)②遺伝性溶血性疾患③体質性高間接ビリルビン血症(Gilbert病,Crigler—Najjar症候群,Lucey-Driecoll症候群)④薬物による溶血性貧血⑤閉鎖性出血(帽状腱膜下出血etc.)⑥いわゆる母乳黄疸⑦特発性高ビリルビン血症

新生児の発熱 岩田 崇
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 新生児は,胎児より乳児への移行期で,特殊な生理状態にあり,体温に関しても,実際に外界の変化に応じて,体温を一定に保つように調節し難いことは明らかである。ことに未熟性の強いほど,この調節不全性が著明なことも周知のことである。

 日常,新生児の臨床を担当する産科医,小児科医は,しばしば新生児の発熱に遭遇するが故に,この発熱の取扱いについて検討しておかねばならない。

分娩麻痺 島田 信宏
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I.上肢の麻痺

 新生児の正常の肢位は,仰臥位にて四肢屈曲位をとり,左右各半身が対称的であり,活発な運動性を有しているのが特徴である。それなのに片側性に上肢といつても,本当は肩関節が主として麻痺している場合がある。図1のように,麻痺した上肢は伸展位をとり,拇指を中ににぎりしめ,手掌を内側から外側へねじつたように前膊を内転している。これが分娩麻痺のなかで最も多い上位型上腕神経叢麻痺,brachial palsy,upper typeであり,俗にErb’s palsyとよばれているものである。

 このErb’s palsyの新生児は,肩関節を動かすことができないので,患側はモロー,ペレー各神経反射は欠如する。また,手指は麻痺していないので,手指のにぎる力は十分にあるのも特徴である。

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 頸管粘液が内分泌環境を反映してその性状を変えることは良く知られた事実である。そこで,これを胎児—胎盤系の内分泌状態を知るための指標として利用する試みがあり,すでに羊歯状結晶形成を認め得る妊娠初期婦人に流産頻度の高いことが報告されている。

 Macdonald (J.Obstet.Gynaec.Brit.Cwlth.79,1087,1972)は同様の観点から胎児発育と頸管粘液羊歯状結晶形成との関係を見て面白い結果を得ている。すなわち,年齢や前回の妊娠歴から今回の胎児発育に懸念の持たれた妊婦128名を対象とし,妊娠17週から36週までは週2回,その前後は週1回,定期的に診察し,同時に頸管粘液性状,腟スメアおよび24時間蓄尿の全エストロゲン量定量を行なつて,これらの所見とSFD児発生の関係を検討したのである。

基本情報

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臨床婦人科産科
27巻11号 (1973年11月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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