特集 症状からつかむ私の治療指針
婦人科
腟部びらん
竹内 正七
1
,
半藤 保
1
1新潟大産婦人科
pp.902-903
発行日 1973年11月10日
Published Date 1973/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204911
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腟部びらんというのは,外子宮口の周辺にみられる赤色部分を指し,肉眼的・臨床的診断名である。したがつて種々雑多な病変が含まれる可能性があるが,その大部分は円柱上皮におおわれた仮性びらんである。仮性びらんは性成熟期にある婦人の半数以上に存在し,このような年齢層の婦人にはむしろ生理的状態と考えてよい。コルポスコープによる変換帯まで含めると,30〜40歳代ではほぼ90%近くに認められる。このように日常的に観察されるが,本症はしばしば感染や出血を招来し易い。また重要なことはびらんの中に上皮の異形成dysplasia,上皮内癌ca.in situ,微癌microcarcinomaなどが伏在することがあることである。これらの変化は外見上しばしば良性病変と鑑別不能であり,精密検査によつて初めて検出される。したがつて腟部びらんの治療に先立ち,入念な検査によりまず悪性変化を否定する必要がある。びらんの治療は診断を確定せずに設定されてはならない。
腟部びらんには,従来多数の治療法が試みられているが,このことは本症の治療にまだ的確なものがないことの証明でもある。これは腟部びらんの病因論がまだ完全には解決されていないことにもよるが,本症の本体につながる本質的な問題とも見なし得る。治療の捷径は病因を理解するにあるところから,われわれの立場を紹介して,本症の治療指針に対する一助としたい。
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