特集 症状からつかむ私の治療指針
産科
子宮収縮不良
中島 晃
1
1京大産婦人科
pp.974-975
発行日 1973年11月10日
Published Date 1973/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204949
- 有料閲覧
- 文献概要
子宮収縮不良で臨床上特に問題となるのは,分娩時の微弱陣痛と,分娩後の弛緩性出血がその主なものであろう。前者については分娩が遷延し,fetal distressの因となり,なんらかの急速遂娩術を要することになる。後者では大出血のため母体が危険にさらされることはいうまでもない。
このような収縮不良の原因についてはほとんど明らかにされていない。子宮筋の興奮性が低いためなのか,収縮機構の不備に基くのか,筋の興奮伝達が不完全なのか解明されていないからである。ただ,臨床的にある情況が存在するときに収縮不良をおこしやすいことはよく知られている。たとえば子宮発育不全,奇形が基礎にあつた場合,羊水過多,双胎などによる子宮壁過伸展,子宮壁内筋腫の存在,児頭骨盤不均衡,前置胎盤などが挙げられている。さらにまた,理論的な立場から,estrogen (子宮筋賦活作用),progesterone (子宮筋抑制作用)の均衡の乱れ,oxytocinの分泌不全,またはoxytokinaseの減少がおこらないこと,抑制的神経因子の作用,電解質異常なども収縮不全の原因たりうるとされている。しかしこれらを裏づける明確な根拠はなく,相互の関連性についてもわかつていない。
Copyright © 1973, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.