看護学雑誌 46巻8号 (1982年8月)

特集 入院患者の心理を探る—病みと不安

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不安の性質

 電話で原稿をお引き受けした途端,漠然とした不安を感じている自分に気づいた.何が不安なのだろうか.まともな原稿が書けるだろうか,書けないかもしれない,という思いから来る不安である.このように不安は,いつでもだれにでもやって来る極めて人間的な事実である.

 人間的なという意味の1つは,不安は未来を予想するという,人間の知の働きから来るものであって,未来を予想しない人間以外の動物には,不安はないように思われるということである.未来を予想する時には,痛みが強いのではないかなど,具体的結果をイメージして予想する場合と,検査の結果何が起こるか分からない,という予想の立たぬ予想とがある.

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私たちは,すべての患者が朗らかであってほしいとは思っていない,しかし,怒りを外に表す患者は,ふつう‘問題’視されていて,その人の行動はもっと他人に受け入れられる程度にまで修正されていかなければならないと考えられている.そのような患者を私たちが不愉快に感じる理由の1つは,おそらく私たち自身の怒りのとらえ方にあるのではないか.つまり,私たちは怒りの意味を狭く理解しているのではないだろうか.

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はじめに

 外科病棟へ入院する患者は,内科的治療経過の中で‘自分の生命を守る’ということのほかに,‘健康時と同様に過ごせるようになりたい’と考えて,手術を決意して来る.その決意に至るまでには,たくさんの迷いや心配事を整理し,心の準備を整えているが,なお‘大丈夫だろうか’という不安を抱いているものである.特に自分の病気について明確な説明を得られないままに決心した場合には,その不安は強い.しかし‘手術を安全にうける’という目的を看護婦と共有することができるため,術前に行われるオリエンテーションや訓練には,積極的に参加し,術後の回復の喜びも,経過の中で共にすることができる.だが,不幸にして合併症が併発し,治療中に死期が訪れる場合,多くの患者は生命の危機感の中で,身体の苦痛と闘いながら,不安と苦悩に見舞われ,心の苦痛とも闘わなければならない.そのような患者に出会うたびに,‘何を援(たす)けることが苦痛を和らげるのか’という自問のうちに別れの時が来る.このような場合に‘何を適切に有効になしうればよいのか’ということを,昨年再び臨床で出会った看護チームと,患者とのかかわりをとおして考えさせられたので,次の事例に基づいて紹介したい.

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はじめに

 通常,入院生活をおくるのは,肉体の危機状態,すなわち病の存在が明らかになるか,その可能性が濃厚な時であるから,たとえ短期間であっても,なんらかの不安が伴うのは当然である.ましてや長期間の入院ともなれば,病気についてはもとより,家庭や職場,更には自己の存在価値にまで不安は果てしなく拡大し,深刻の度を増していくことになる.こうした意味で入院生活の場は,肉体と精神が病気と不安を相手に熾(し)烈な闘いを繰り広げている修羅場とも言えよう.

 最近,精神的看護の重要性が改めて認識されつつあるが,これは入院生活に伴う様々な不安の解消が治療上欠かせないことであり,看護職者がその役割を担う立場に置かれているからにほかならない.

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はじめに

 不安はなんらかの原因で日常生活が破壊されたり,異常に直面した時に経験する精神の動揺である.不安が極度に達し自力で解決できない場合,発作的な異常行動を起こしたり抑うつ状態に陥ることもある.このような状態が患者に起こった場合,日常生活とともに治療さえも順調にゆかなくなる.従って看護婦は,そのような患者の心理を的確に把握し,問題解決への援助を行い,療養に専念できる環境を整える責任がある.

 我々は,メルカゾール治療により無顆粒細胞症を来し,緊急隔離入院となった患者にかかわる機会を得た.入院当初は突発的な異常行動を示し,その後,徐々に抑うつ状態に陥り,日常の単純な生活動作さえも1人ではできなくなったこの患者に,生活動作の拡大を目的として援助を行っていった.

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はじめに

 進行性鼻壊疽は,何万人に1人というまれな疾患である.Y氏は,鼻壊疽の中でも多様なる病相を呈し,しかも全身症状の強いタイプのウェゲナー症候群であった.症状の悪化に伴う数多くの症状と苦痛,そして家族からの援助もうすれ,死への不安と恐れを抱きながら,攻撃的,悲観的かつ絶望的な状態で死の転帰をとった.

 我々はY氏に対し懸命な援助を行ったが,それにもかかわらず患者は満足感を得ることができなかった.一方,我々看護婦も,看護の限界を感じ,Y氏の死後,Y氏との個人的かかわりを振り返ってみたいと,各自レポートを作成し,グループで検討した.その結果を報告する.

外来ナーシング・カンファレンス・6 ライフプランニングセンタークリニックにて

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食事療法が基本だと最初に言われたために薬に抵抗を示す患者のケース

 松島 今日の患者さんは,福○慶○さん,47歳糖尿病の患者です.このクリニックに最初に来られたのは,今年の1月8日です.その2年前から,体重が10kg減ったこと,口渇,多飲,多尿,それから手足がジンとしびれるような感じがするということを主訴として来られました.

 ひと通りの検査の結果,糖尿病であるということがわかりました.空腹時血糖が237mg/dl,ブドウ糖50g,経口負荷30分後が391,1時間後が422,2時間後が355ということでした.

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はじめに

 私たちの‘動く重障児病棟’には,著しい行動障害があり,日常生活の身辺処理も十分に自立していない重度の精神遅滞児が入院しているが,その中に少数の小児自閉症,あるいは小児分裂病の子供が含まれている.これらの子供たちは,知的な障害は軽度であるが,その著しい情緒面,対人面の障害のために,集団生活ができないばかりか,日常の身辺動作にも介助を要し,自閉・退行状態を呈している.そのはなはだしい例では,言語的な接触も全くない荒廃状態に陥って入院してくる例も認められる.これらの中には,障害の原因となった器質的な異常などのほかに,生育過程での家族関係をはじめとした環境的因子の中に,障害をより顕現化させたものがあると考えられる症例も多い.

 今回報告する事例は,生育歴において,特に乳幼児期の母子関係が,自閉・退行状態や,6年間にもわたって全くしゃべらない,いわゆる全緘黙状態を促進させる大きな要因になったと思われる一女児についてである.当病棟に入院し,言葉を取り戻し,ある程度の社会生活ができるようになるまでを,その療育経過もあわせて考察したい.

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はじめに

 癌末期患者の看護について,看護婦が闘病について信念を持って看護することが大切だと考え,患者自身が,苦しい不安に満ちた闘病のなかにも生きる意味や闘病の支えを見いだせるように援助することを信念に持ち,抑うつ状態の淵にいた患者に段階的にアプローチした経過を第1報(津村真紀子ほか:癌末期患者へのアプローチ—患者自身が闘病の意味を見つけだすように働きかけた事例から,看護学雑誌,46, 308-312, 1982)で述べた.

 今回は,同じ患者が死を受容し,自分だけに事実をありのまま伝えてほしいと希望したことに対し,信念に基づいて患者の意思を尊重した看護を行い,患者の死を看取る過程に深くかかわることができたので,第1報から引き続き行った,患者自身が闘病の意味を見つけだすような働きかけについて報告したい.

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はじめに

 近年,脳卒中後遺症に対するリハビリテーション(以下,リハと略す)は盛んに行われるようになった.入院中は訓練に励み,退院のころには,後遺症は残しながらも,ある程度の回復がみられ,その人にあったレベルの生活ができると予測されて退院していくのである.ところが,退院後の経過を追ってみると,退院時に歩けた者が再びベッド臥床の生活へ,座ることができた者が寝たきりの生活へと,レベルダウンしていく例が多い.

 私たちは,当病棟に入院していた片麻痺患者について,退院後の状態を調査した結果,家庭復帰した中で何らかの機能低下を来した者は,17%(30例中5例)であった。文献においては,東京都養育院付属病院では36%(25例中9例),兵庫県リハビリテーションセンターでは10%(60例中6例)と報告されている.当病棟では,こうしたレベルダウンに対処するために,3年前ごろより積極的に試験外泊を試みてきた.

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はじめに

 近年,白血病は,化学療法の進歩と補助療法により,緩解率が著しく向上してきた.特に急性白血病では,発病後の生存期間が延長している.しかしその経過中には,腫瘍の浸潤および抗白血病剤の副作用または感染による,口内炎が問題となることが多い(表).

 特に,口内炎による疼痛は高頻度に出現し,食事や会話等の欲求を阻害する.このため患者の不安は増強し,闘病意欲の減退にもつながっている.今回,著しい口内炎を併発した急性白血病患者の看護をとおして,我々スタッフが再認識したことをまとめてみた.

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はじめに

 末期患者の疼痛や苦痛を取り除くことは容易ではなく,そのケアは,治癒を目的とした治療が効をなさぬという事実の中で行われる.患者は,痛みが強いほど,長いほど,このまま体が動かなくなってしまうのではないか,完全な無能力者になるのではないかと,絶望の感を強くするようになる.そういう時に医師より一方的に悪い病気ではないからといわれたところでそれは説得力を欠き,患者は,自分の病気について自ら分析を始め,自分の体の予後も患者自身が決定するようなことになる.なぜならだれもが患者に本当のことを話さないからである.

 ここに生じてくるのが不安である.心理的な痛みは,身体的にもその人に影響を及ぼし,身体的な痛みも情緒的にその人に影響を及ぼす.つまり全体としての人間が苦しみを受けているのである.

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はじめに

 近年,わが国でも心筋梗塞が増加する傾向にあり,また比較的若年の発症もみられるようになって,心臓リハビリテーションの考え方が広まる傾向にあり,ナースにとっても重要な課題になりつつある.

 今回,1981(昭和56)年12月27日より1982年1月30日までの5週間,ワシントン州のワシントン大学,タコマ(Tacoma)病院,プロビデンス・メディカルセンター(Providence Medical Center),ノースカロライナ州のデューク(Duke)大学,マサチューセッツ州のベス・イスラエル(Beth Israel)病院,ノースイースタン(Northeastern)大学,そしてイリノイ州のシカゴ大学,リバーサイド(Rivcrside)病院において,主に心臓リハビリテーションのプログラムを見学した.今回の訪問によって,米国における心臓リハビリテーションに関する情報を得て,心臓リハビリテーションにおけるナースの役割について考察したので報告する.

NURSES' VIEW

3つの提案 唐沢 里子
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看護を巡る人間関係は難しいものと決めつけて,素通りしたくなります.そして,人間は複雑であるために,かかわり合いが煩わしくなるのも当然です.特に,人間の欲求の奥深い部分と,より豊かにつき合うことは,人の生きるエネルギーを増すことになります.それゆえに,人と人とのかかわりで,嫌な場面があっても,そこから逃げださず,より通じ合えるまでの過程を大切にすることが必要です.

 先日こんなことがありました.その日は外来のAナースが手術室に手伝いに行き,帰宅が遅くなる旨を家にも連絡し,遅くまで仕事をするつもりでいるとBナースが‘片づけは私がやるから帰っていいわ’と言うのです.そう言われたAナースはすっかりやる気をなくしてしまい,早々と帰ってしまいました.そして翌日‘部長さん,手術室にも来てBさんに注意してくださいよ’と私に同意を求めるのです.

LIFE SCIENCE 生命科学のトピックス・5

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自然科学の急速な進歩のために人文科学と自然科学が専門分化し哲学が魅力を失ってしまった

 哲学が,かつてほどの魅力あるいは影響力を失ってから久しいように思われる.これは,近年の自然科学の進歩に比べて,哲学の進歩が遅れているからではないか,という気がする.古代においては,自然科学者はすなわち哲学者であり,あるいは近世においても哲学者は自然科学を体系的に把握していた人が多く,自然科学の成果を直ちに新しい世界観として取り入れることができた.

 ところが,今世紀後半の自然科学のあまりにも急速な進歩により,人文科学と自然科学との専門的分化が進み,自然科学の新しい成果が必ずしも十分に人文科学に反映されていないのが大きな原因ではあるまいか.

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基本的な技術のなかで清拭は,私にとって看護学生の時から印象深いものである.ぎこちない手技で必死に清拭をし,患者から‘こんなにていねいに体を拭いてもらったのは初めてだ.ありがとう’と言われ,ホッとした思い出がある.そして臨床実習のなかでも多く経験した技術でもある.

 現在私は,看護学生の臨床実習指導を受け持っているが,基礎実習(1年次)で初めて患者に清拭を行って,‘とても気持ちが良かった.体が軽くなったみたい’とか,‘ご飯が食べられそうな気がする’などの反応(評価)があり,学生もホッとしている.

インフォメーション 新しいナーシングケアのために

思春期挫折症候群 稲村 博
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日ごろ思春期臨床に携わっていると,様々な精神疾患や問題行動が持ち込まれる.それらに日夜取り組んでいるうちに,従来には記載されなかったタイプの精神疾患があることに気づき,その特徴から‘思春期挫折症候群’と私は名付けた.以下,その要点を簡単にまとめてみる.

バイタルサイン・29

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急性心筋梗塞の10-20%に心原性ショックが生じ,80%以上が死亡する.およそ50%が24時間以内に発生し,1週間以上たって現れることもある(16%).急性心筋梗塞による心原性ショックの症状を表1にまとめて示す.皮膚の所見は足指や手指で皮膚が伸びているところで診る.ふくらはぎや前腕では骨格筋の循環が保たれていて判断を誤ることがある.

病態生理を以下要約する(図1).心筋傷害によつ心室の収縮力が低下すると,1回拍出量や分時送血量が轍少する.そのために血圧が低下し,末梢組織灌流が減る.血圧下降が生じると調圧反射によって交感神経活動が充進し,ノルエピネフリンやエピネフリンの分泌が高まるので頻脈となり,また非傷害部分の心筋の収縮力は増して心拍出量を保とうとする.同時に脳や心臓以外の末梢細動脈の収縮が全末梢抵抗を高め,血液を選択的に重要臓器へ集めようとする.

カラーアトラス 褥創・20

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仙骨部に発生した褥創の経過中に異常な肉芽形成をみた症例を供覧する.症例28歳,男性,対麻

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1980年4月,それまで主任制をとっていた看護体制が婦長制となり,その時婦長に.小児病棟は4年前,病院増築の際新設され,当時から主任として活躍していた.病床数は未熟児10床を含んで57床,スタッフ17名.小児の混合病棟なので,出入りする医師の数も多く,回診がかち合うなど医師との連携にも気を配らなければならない.

2児(8歳,5歳)の母.昔から子供が好きで,希望して小児病棟へ.「子供は心を隠さない人格だと思います.大人は表面的に取り繕ろえるけれども,子供はそういうことはしません.こちらの姿勢が子供の反応としてそのまま返ってきますし,ちやんと見拔いています.それだけに怖い存在だと思います」

グラフ/にちようひまわり 障害児のデイ・ケアへの試み・3

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クリスマスをやろう.障害をもつ子供の‘にちよう ひまわり’と,‘風の子村’(自然のなかでデイキャンプを中心にプログラムしてある健常児の健康づくりの教室,50人.北病院の医療社会事業部が主催している)の合同クリスマス・パーティーをやろう,ということになった.子供たちだけで70人になる.研究員とスタッフと,父母を入れると約200人のパーティーになる.日程を12月13日と決める.

 会場は,車いすがゆったり入れて,座っても転んでも痛くないようにじゅうたんが敷いてあって,暖房がきいていることが条件.こんな条件が整っている場所は,ホテルか結婚式場である.

思春期の臨床・4

精神病理の特徴[1] 小倉 清
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思春期の人々が様々な事柄や状況を背景として,なんらかの心理的・精神的な問題を呈するに至った場合,その状態についてどんな観察が可能なのか,そのことはどんな意味をもっているのか,そこにはどんな特徴が指摘されるのか,といったことについて考えてみよう.

 この特徴はもちろん,思春期一般についてみられる心理的な特徴と密接な関係をもっている.それらの特徴がそのまま強くむき出しになる場合や,いくらか形を変えるということはあっても,基本的には常にその背景をなしていて,全く無縁のものが,そこにいきなり飛び出してくるようなことはない.だから,思春期一般にみられる心理的特徴との対比を頭におきながら,思春期の精神病理の特徴を考えていくべきである.

喫煙の生理・衛生学・13

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妊娠中の喫煙と先天異常発生との関係

 妊娠中の母親の喫煙習慣が出生後の全生涯あるいは長年にわたって,児の身体面・精神神経機能面での影響を残す恐れのあることが知られている.

 先天異常発生は,その頻度は小さいとはいえ児の担う不幸は大きく,喫煙習慣との関連を無視することはできない.たばこ煙中物質の変異原性に関する研究が著しい進展を示している現在,疫学的研究成績が母体の喫煙と先天異常発生との間に必ずしも因果関係を証明しているとはいえないにしても,問題の重要性が減ずることにはならないのである.1)

口腔疾患(歯科)Q&A・5

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障害者のかかりやすい口腔疾患

痛みを明確に訴えられないことが問題

 Q 昨年は,国際障害者年ということで脚光を浴びた1年でしたが,国際障害者年が1年だけで終わってほしくないというのが,今の私たちの願いです.

看護に生かす交流分析・15

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心と心を通わせて

 交流分析においては,人が最も切実に求め究極的な価値をおくものは,‘ほかの人々との親密な交わり’であるとされる.親密な交わりを求めながら,それができないために,私たちは寂しさのあまり自分以外の人々を心理的ゲームに巻き込んでまで,人々とかかわりたいと思うのである.そして,おそらく長い人生において,死に直面している時ほど,私たちがほかの人々との親密な交わりを真に必要とし,それを有難く思う時はないであろう.私たちは,だれでも例外なく,やがては死と向かい合わねばならない(なんと恐ろしいことだろう!死を逃れて人生を生き延びた人は1人もいない).また看護婦として,肉親として,あるいはボランティアとして,死に直面している人の看護をすることになる人々も多いことと思う.

 いずれの場合でも,私たちが死にゆく人にかかわる時の状況は,人生のほかのいかなる状況とも異なる特殊なものである.というのも,死に直面しているこの患者とのこの出会いは,二度と繰り返されることのない,‘これが最後の出来事’だからである.つまり,患者が逝(い)ってしまってから‘ああしてあげればよかった’‘こうしてあげればよかった’といくら悔いても,そうしてあげる機会は二度と与えられないのである.

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母親が助産婦で、中学生のころから「聖路加は看護では最高の教育をしているのだ」と聞かされていたため、看護婦になるのだったら、聖路加に入って一流の看護婦になりたいと思っていた。しかしジャーナリストへの思いも強く、大学受験ではその方の学校も受けた。結果として、聖路加看護大学だけが受け入れてくれたので、ジャーナリストの道はあきらめ、看護婦への道をスンナリと選択した。

 大学を出て聖路加国際病院の臨床で十一年。「そのくらい働いていると、自分の足りない所が出てくるし、知識のなさに気づいてもくるし、今まで何を目指して看護していたかがあいまいだったので、それを明確化したい、そして看護過程を科学的に学びたい」と思って、聖路加大学に大学院ができるとすぐに入学した。

エージング・レポート イギリスの老年医療見てある記・8

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老人性痴呆の患者をどうやって診ていくかは,イギリスでも大きな問題です。専門的には,この連載第2回の中で紹介したように,“老年精神科”という受け入れの場をつくって当たる,ということになりますが,しかし各地を回ってみますと,そうした専門科を持ってやっている所はまだ少ないのが実情でした.今回紹介するノッチンガムとマンチェスターはこの点では老年精神科のモデル的先進地といえましょう.

素手でつかむ看護 心に残るマラウイでの生活・8

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1979年は国際児童年.しかしここでは相変わらず沢山の子供が死亡している.1月,栄養不良,貧血の児が増えて患児全員貧血となる.食物のたくわえのなくなる時期である.最も重症でHb 1.8 gという患児を見たことがある.値を信じることができなかったくらいだ.普通は黒いはずの肌が蒼白い.

 ここではHb7g以下には即輸血を行う,父母・家族の血液型のクロスマッチを行い,受血できない場合は,近くの高校に頼んで給血してもらい,コーラ1本が与えられる.輸血後2日目に検査して,値が上がっていれば退院となる.1日8人の輸血を私がしなければならなかった.スタンドが少ないため処置台に3人乗せ,ベッドに2人ずつ乗せて,頭皮に刺したりしたが,2人目を刺したころには,もう1人目の子が針を抜いている.母親は乳を吸わせて,ぽかんと外を見ている.

ホームケア・8 新宿区立区民健康センター訪問看護婦のリレー随筆

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‘このまま,在宅にいるのと,施設入所とどちらが良いと思いますか? 僕らは施設人所を説得したいと思ってるんです.かかわる者の方針を一致させてもらえないと…’

 福祉事務所でのやりとりである.Nさんは,車椅子生活をゴールに退院してきた単身の身障者である.しかも,自己導尿,時には摘便の必要な患者である.退院に際してとうてい在宅ではむりだとケースワーカーは判断していた.しかし,本人は人院生活はただ‘生きているだけ’‘生活がしたい!’と,要求を貫こうとしている.だけど,現在の福祉サービスは,ベッドから車椅子に移るにも,身体の病状管理も難しいこのような単身のケースが在宅で療養するには,あまりにも厳しい条件に満ちている.

基本情報

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看護学雑誌
46巻8号 (1982年8月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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