特集 入院患者の心理を探る—病みと不安
医師不信を訴える患者の看護をとおして—食道腫瘍患者の不安への援助
河野 總子
1
1北海道大学医学部付属病院第2外科
pp.878-882
発行日 1982年8月1日
Published Date 1982/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922836
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はじめに
外科病棟へ入院する患者は,内科的治療経過の中で‘自分の生命を守る’ということのほかに,‘健康時と同様に過ごせるようになりたい’と考えて,手術を決意して来る.その決意に至るまでには,たくさんの迷いや心配事を整理し,心の準備を整えているが,なお‘大丈夫だろうか’という不安を抱いているものである.特に自分の病気について明確な説明を得られないままに決心した場合には,その不安は強い.しかし‘手術を安全にうける’という目的を看護婦と共有することができるため,術前に行われるオリエンテーションや訓練には,積極的に参加し,術後の回復の喜びも,経過の中で共にすることができる.だが,不幸にして合併症が併発し,治療中に死期が訪れる場合,多くの患者は生命の危機感の中で,身体の苦痛と闘いながら,不安と苦悩に見舞われ,心の苦痛とも闘わなければならない.そのような患者に出会うたびに,‘何を援(たす)けることが苦痛を和らげるのか’という自問のうちに別れの時が来る.このような場合に‘何を適切に有効になしうればよいのか’ということを,昨年再び臨床で出会った看護チームと,患者とのかかわりをとおして考えさせられたので,次の事例に基づいて紹介したい.
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