ベッドサイドの看護
訴えの少ない癌性疼痛患者の理解—エゴグラムを用いての試み
熊谷 祐子
1
1国立病院九州がんセンター内科病棟
pp.916-918
発行日 1982年8月1日
Published Date 1982/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922845
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はじめに
末期患者の疼痛や苦痛を取り除くことは容易ではなく,そのケアは,治癒を目的とした治療が効をなさぬという事実の中で行われる.患者は,痛みが強いほど,長いほど,このまま体が動かなくなってしまうのではないか,完全な無能力者になるのではないかと,絶望の感を強くするようになる.そういう時に医師より一方的に悪い病気ではないからといわれたところでそれは説得力を欠き,患者は,自分の病気について自ら分析を始め,自分の体の予後も患者自身が決定するようなことになる.なぜならだれもが患者に本当のことを話さないからである.
ここに生じてくるのが不安である.心理的な痛みは,身体的にもその人に影響を及ぼし,身体的な痛みも情緒的にその人に影響を及ぼす.つまり全体としての人間が苦しみを受けているのである.
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