看護学雑誌 46巻9号 (1982年9月)

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被曝を怖がる前にまず放射線についての正しい理解を

 安河内 金森さん,放射線被曝ってどんなものだと思いますか.

 金森 X線やラジオアイソトープなどの放射線を浴びて,それでさまざまな影響や障害が出たりすることだと思いますが…….

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はじめに

 放射線や原子力の利用の増加に伴い,それの人体に及ぼす影響に対する関心が高まっている.特に我が国は世界唯一の原爆被爆国であり,第5福竜丸事件や最近のスリーマイル島の事故などで多くの人は放射線被曝について何らかの知識を得ている.こうした中で,医療における放射線の利用も増加の傾向を示しており,一般の人にとっては,日常的なこととして関心が高くなっている.

 放射線診療の場で働く看護婦は,特に,放射線に対し関心の高い患者への援助を行うのだから,放射線被曝ということに対して十分な知識と慎重な対応を身につける必要がある.

特集2 米国でのダウン症児‘死なす権利’判決に思う

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 去る4月に,アメリカのインジアナ州の裁判所に,食道奇形を合併した重症ダウン症児として生まれた子を,手術もせずミルクもやらないで,そのまま死なせてほしいと,その両親が申し出た.その申し出に対し裁判所はそれを認める判決を出したが,この判決のもつ衝撃は,アメリカ一国の問題を越え全世界に伝わった.‘子供を愛しているからこそ’という両親の言葉は,いったいどこまで真実なのだろうか.障害をかかえた子を生み,育てている方々にこの判決についての感想を述べていただいた.

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—お子さんが生まれた時の状況はどうでしたか.

 出産が近くなって,病院には私と両親と一緒に行きました。両親も私の初めての子供だから,とても楽しみにしていて分娩が終わるまでずっと待っていてくれました.そして生まれた子供を初めて見たのが私の父と母だったんです。その時病院の方から,‘今ならまだ間に合うがどうするか(母親に知らせないで闇から闇へ葬れる)’と言われ,両親は同意したそうです.そして次の日に私の主人と主人の両親に知らされ,主人も病院の申し出に同意したそうですが,その時は,まる1日過ぎてしまって間に合わなかったそうです.

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—生まれてすぐお子さんを見ることはできましたか.

 生まれた時は一応すぐ見せてくれたんですが,‘見たわね,見たわね’と看護婦さんがあせっていたのでどうしたのかなと思っていました。子供が別の専門病院に入院させられたのは,お乳の飲みも悪いし,精密検査をするからということでした.

特別論稿 〈医と食と農〉連続講演会より

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‘医と食と農’というユニークなテーマの連続講演会が,新潟県・大和医療福祉センター(黒岩卓夫・センター長)で昨年11月から開かれています,これは住民の健康教育活動の一環として企画されたもので,人間のいのちと健康は,医療だけでなく食べ物(食糧)と,その食糧の源である農業に支えられているという理念のもとに,工業化,近代化の波に飲み込まれ,忘れられかけている‘医と食と農’の結合を,人間のいのちという原点にかえって考えようとする試みです.

 人が健康であるためには,まず食べ物が安全でなければならない,だからこそ何よりもその源である農業が健全でなければならない……という主張には,百姓の生き方,農業のあるべき姿を問うことを通して,医療のあり方を問い直そうとする地域医療運動の視点がうかがわれますが,それはこれまで,糖尿病や高血圧の食事療法といった病気や症状との関係のなかでしか考えられてこなかった‘医と食のかかわりをもっと広げて,‘農’へと結びつけて考えようという社会的・文化的な視野からの問題提起だろうと思います.

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家庭で血圧を自己測定した高齢の婦人が高血圧を訴えてきた左は180/80,右は最底血圧がゼロ

吉見 今日の事例は,77歳の女性の小○き○さんです.初診が2か月前です。20年ぐらい前から高血圧だと言われ,高いときに服薬をする治療を続けてきました.○年の暮れごろから起床時のめまいとか,疲れやすい,肩こりという症状があって,こちらへ来ていました。検査の結果では,高脂血症と動脈硬化があるということで,特に問題ございませんけれども,血圧はお孫さんが家に来たりなんかすると,一時上昇するということで,自己血圧測定を始めました.

日野原 どこで血圧の測定法を習いましたか.

にちようひまわり 障害児のデイ・ケアへの試み・4

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多様な障害児集団19名の子供たちをとり囲む研究員は,ローティーンからシルバーエイジまで年齢的なふくらみをもっている.このふくらみは,会のプログラム,財政などをバランスよく運営をしていく上で不可欠なものであった.財政的にも,人的にも,確たる保障の何一つない“にちようひまわり研究会”は,ただその研究員の熱意と創意性だけがよりどころであったから,不安定要素が限りなくあるわけで,そのバランスが崩れれば,あっという間に崩壊しかねない危険性をも孕んでいる.

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はじめに

 人びとの生活が豊かになった現代において,糖尿病は成人病のひとつとして増加の傾向にあり,大きな問題となっている.糖尿病患者にとって,十分な自己管理ができるかどうかは,予後を左右する重要な鍵である.それゆえ,医療従事者による教育・指導は,糖尿病の療養生活上,非常に意味のあることと思う.

 そこで今回,私たちは糖尿病患者の知識とコントロールとの関係についての調査を実施した.その結果をここに報告し,考察することにより,今後の糖尿病患者指導を考える一助となることができれば幸いである.

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人生の縮図ともいわれる精神科病棟に勤務してまる3年が過ぎた.今まで‘人の生き方’ということをあまり考えもせず過ごしてきたが,ここに来てからは,常にそのことで頭がいっぱいになっている.苦しみもがきながら自立していく人に出会った時,私はたまらない感動を覚える.

 最近またそんな1人に出会った.Sさん,34歳の女性で,20年間病院との縁が切れず方々を転々と渡り歩いた末,強い医療者不信に陥って入院してきた.疼痛,吐血,下血等を繰り返し,自分の思い通り事が運ばなければ,医療者を罵倒し,ナイフを突き付けたり,自傷行為をする.いわゆる‘手に負えない人’であった.

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私たち日本人は入浴好きの民族として知られている.入浴はただ身体を清潔にするだけでなく,全身の血液循環をよくし,筋肉の緊張をほぐし,疲労からの回復を促す.また精神的にも安定感や安楽性をもたらすものなので,入院中の患者にも,状態が許すかぎり入浴させたいものである.しかし,入浴のできない患者もいる.そういう患者には全身清拭をすることになるが,この全身清拭について,看護婦はどこまでその意義を認め,意識的な取り組みをしているだろうか.

インフォメーション 新しいナーシングケアのために

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1)バリント方式のグループ・ワークとは

 開業医で,ロンドン大学講師でもあったマイクル・バリント(1896-1970)が1939年より始めた患者理解の方法で,その基本はバリント方式の傾聴法にある.患者の訴えるさまざまな身体症状とその心理・社会的背景について,グループで自由に討論する.患者を‘病める人’としてとらえ,治療者・患者関係についての分析を核にして,個々の患者に最適なケアを創出してゆく方法である.

カラーアトラス 褥創・21

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かつて,褥創に対する処置の進歩していない時期には,慢性の難治性褥創から皮膚癌が発生したという報告が散見されたが,今日ではきわめて珍しい症例である.

バイタルサイン・30

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心室性不整脈の中でも,リスクの高い不整脈として注目されるものは,多源性期外収縮,二連あるいは三連性の期外収縮,そして心室頻脈(VT),心室粗動(VF),心室細動(Vf)である(図1).しかし,心室性期外収縮で数が少ないものでも,突如リスクの高い不整脈へ進展することがあるので,心室性期外収縮(PVC)の形態のみで予後を予測することはしばしば困難であり,したがって背景疾患の重症度を知り,常にバイタルサインを正しくとらえておかなければならない.

心室性期外収縮(PVC)は,それ自体血行力学的に著しい障害を与えるものではないが,これにより危険な不整脈の前触れとなる場合が重要である.特に背景に重篤な心疾患があるときには,危険な不整脈の発生を予防する必要がある(表).たとえば急性心筋梗塞の際に,RonT現象は心室頻脈や心室細動へ移行する危険な徴候とみなされている(図2).PVCは特別な心疾患をもたない健常者にもしばしばみられ,茶,コーヒー,タバコ,アルコール,精神的ストレスなどによっても誘発されるが,ジギタリス中毒の徴候であることもある.治療は患者の臨床状態によって異なり,明らかな器質的疾患のないときには薬物療法の対象とならないが,急性心筋梗塞,うっ血型心筋症などでRonT現象,二連,三連のPVC,多源性のPVCの場合には治療を要する

フレツシュ婦長

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 1981年4月,婦長に,外来患者は1日250人前後,うち新患は30人平均ある,中央病院ということで,県内遠方から来る患者さんもおり,初診総合受け付けに外来主任婦長を配して,患者さんの訴えにそって各科への振り分けをしている.患者さんにも医師を選ぶ権利はあるのたが,実際には不可能.「できるだけそれに近い状態が実現できるように援助するのが,外来看護婦の重要な役割だと思います.それに上手な医療へのかかり方を指導するのも看護婦の役割でしょう」

 流してやればだれにでもできるだろうし,時間に追われるので,ちょっと気をゆるめると流してさばいていくことになる.「でも,外来は,患者さんを一見して状態を把握できるくらいの看護婦が,専門分化している医師のもとへ,いかに早く患者さんを届けて治療のルートにのせるか,そして,その患者さんの苦痛をいかに早く取り除いてあげられるかを,まず第1に考えるべきだと思います」

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筋ジストロフィー症の患者・家族で組織されている東京進行性筋萎縮症協会(石川左門・理事長)主催の‘宿泊検診’が,昨年8月25日から27日まで3日間,千葉県勝浦の三日月ホテルで開かれた。これは,日ころ車イスやベッド上での生活をおくっていて,町の中へ出たり旅行に出かけたりすることがほとんどなく,また在宅での療養をしていて専門的な医療・看護を受ける機会も少ない患者・家族たちのレクリエーションをかねて,検診,療育,相談,看護ケアの指導および機能訓練などを目的として,1967(昭和42)年以来,毎年夏に開かれてきたものであり,昨年で15回目を迎えた.

 単なる検診とちがって,同じ病気の患者や家族が集まり,また専門医,PT,看護婦,保健婦,ケースワーカー,検査技師,看護学生らの医療・看護・福祉の関係者,それに多くのボランティアたちが参加して,泊まり込み(2泊3日)で生活をともにしながら,患者・家族の日常生活の実態を知り,お互いの交流を図ろうとするユニークな検診である.

思春期の臨床・5

精神病理の特徴[2] 小倉 清
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相手をいらいらさせること

 思春期の人々と接していると,理由はよくわからないままに,なんだかいらいらさせられたり,落ち着かない気持ちにさせられたり,無性に腹が立ってきたり,あるいはひどく疲れを感じるようになってしまうことがある.自分がそんな状態になってしまっていること自体さえにも,すぐには気がつかず,何かまずい事態が起こってしまってから,ふと気づかされたりする場合もある.

 もちろん,これらは思春期の人々の直接の問題ではなく,むしろこちら側の問題ではある.彼らが何か悪巧みをしていて,作為的にこちらをこんなふうにしようとしているのでは,むろんない.

喫煙の生理・衛生学・14

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受動的喫煙とは何か

 この言葉は前回で初めて登場したが,‘passive smoking’の直訳で,普通は非喫煙者が自らの意思に反して,あるいはそれと無関係にたばこ煙に曝露され,吸煙を強いられている状態を意味している.1)

 受動的喫煙が,通常の喫煙習慣と関連した健康障害と対置されて生体影響と結びつけられたのは,今から30年近くをさかのぼった1954年にF. Lickintが‘Passiverauchen’という言葉を用い,非喫煙者が受動的喫煙によって肺癌発生の危険を被る恐れのあることを指摘したドイツ語の論文2)であると思われる.この先見は,我が国の平山3)およびギリシアのTrichopoulosら4)が1981年に相次いで発表した論文の中で,非喫煙者である妻が常習喫煙者である夫の喫煙による受動的喫煙の影響を受け,肺癌発生の危険が著しく高められていることを明らかにするに及んで,にわかに現実性を帯びてきている.

口腔疾患(歯科)Q&A・6

歯周疾患 中静 正 , 鬼頭 和子
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文明病としての歯周疾患

原因は細菌の繁殖によって形成されるプラーク

 Q 今回は,う蝕と同様に‘口腔疾患の文明病’と呼ばれている〈歯周疾患〉について伺いたいと思います.まず代表的なものには,どんなものがありますか.

看護に生かす交流分析・16

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死にゆくときは人生において最も多くのストロークを必要とする

 私が中学時代にたいへん感動して読んだ本のひとつに,下村胡人の“次郎物語”という本がある.主人公は次郎という少年で,次郎には1人の兄がいる。母親が病弱なため,次郎は生まれると間もなく里子に出され,乳母のもとで幼児期を過ごす.

 しかし,母親の病気が進んだとき,次郎はもう一度自分の家に呼び戻され,家族と共に生活するようになる.ところが新しい家庭に入った次郎は,母親になかなかなつくことができない.

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生家が農家で、兄弟も多く、中学校を卒業しても近くに高校はなく、下宿して通うだけの余裕はなかった。そこで父親が、「勉強しながら生活できる方法」はないかと探した結果、看護婦になる道がみつかった.看護学校では食費、寮費、授業料が無料だったため、小遣い銭だけあれば充分だった.「その当時、個人医院などにいた人は家の手伝いなどさせられていましたから、かなり恵まれていた方じゃないでしょうか」

 卒後、准看で働いていた病院の総婦長から幾度となく進学コースへの道を勧められたが、英語が全くといっていいほど苦手で、到底ついていけないと思い込んでいたため断わってしまった.「田舎ては過疎のため、三つの中学校を一つに統合したので、教室は大人数、後ろの方の席では先生の声も聞こえず、やりたくなければ適当にやっていればよく、キチンとした英語はやらなかったんです」

エージング・レポート イギリスの老年医療見てある記・9

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尿失禁は今までに紹介した転倒・痴呆と共に‘老年科の3大問題’といわれ,イギリスの心ある老年科医やスタッフはこの問題に真っ向から取り組んでいます.今回は前回に続くマンチェスターとリーズの2か所の訪問から,尿失禁への取り組みを中心に紹介しましょう.

素手でつかむ看護 心に残るマラウイでの生活・9

衛生指導 工藤 芙美子
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 ‘Udzani Uzani Azimai Onse’(お母さんたち,病院にいらっしゃい,そして栄養について学びましょう)と学生たちは歌う.手拍子をとりながら母親たちを促す.この母親への衛生指導の歌は,学生たちが作詞作曲したもので8曲の歌がある.特に楽譜などがあるわけではなく,口から口に伝わって自然にハーモニーもできている.歌と踊りの大好きなこの国ならではの,アフリカらしいプライマリ・ヘルス・ケアである.

 最初は話だけのヘルス・トーク(衛生指導)だったが,母親たちの反応がなく,なんとか参加意識を持たせるためにと,ドクターの提案で学生たちが始めたものである.まず学生がチチェワ語で話をして,同じ内容の歌を母親たちに教える.短く簡単な曲ですぐに覚えることができ,2-3回歌うともう1人で歌えるようになってくる.

ホームケア・9 新宿区立区民健康センター訪問看護婦のリレー随筆

残暑のある日に 加藤 登志子
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9月とはいえ,うだるような蒸し暑い日が続いていた.ある日の午後M医師からの電話があった.‘Kさんの奥さんから,Kさんが高熱で痙攣を起こしていると連絡を受けたのだが,午後から急用があり,また明日から3日間地方へ出かけるので往診できない.抗生物質は出しておくが,K病院へ入院を頼んでおいたから……’とのことだった.

 Kさん(71歳)は,妻と2人暮らしで,一昨年の暮れ,尿閉で某大学病院へ入院したが,前立腺肥大と尿道狭窄があり,手術もできず,バルンカテーテルを入れたまま在宅療養をするようになった,少し痴呆(ボケ)のある人である.

基本情報

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看護学雑誌
46巻9号 (1982年9月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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