臨床眼科 56巻6号 (2002年6月)

特集 第55回日本臨床眼科学会 講演集(4)

原著

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 0.005%ラタノプロストの単回点眼が調節の準静的特性に及ぼす影響を実験した。対象は眼科的に異常がない11名22眼で,平均年齢は19.3±2.1歳である。点眼12時間後の眼圧と調節応答を測定した。対照として,生理食塩水点眼を用いた。対照と比較して,ラタノプロスト点眼眼では眼圧が有意に低下し(p<0.005),調節近点が有意に近方化した(p<0.05)。調節遠点と調節安静位には有意な変化がなく,その結果として調節幅が有意に増加した(p<0.01)。ラタノプロスト点眼が眼圧下降ととしに毛様体筋に機能的な変化をもたらし,調節機能に影響する可能性を示す所見である。

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 31歳男性が4か周前からの右眼の視力低下で受診した。矯正視力は右0.05,左1.0,眼圧は右12mmHg,左13mmHgであった。右眼の角膜に豚脂様後面沈着物,前房に炎症細胞の浮遊,隅角に大きな結節があった。左眼の前眼部には異常所見はなかった。眼底所見として,右眼の黄斑部の網膜下に淡黄色の境界不鮮朋な約5乳頭径大の隆起性病変があり,左眼の黄斑部の外上方に約1乳頭径大の隆起があった。気管支からの採取物の生検を含む全身所見からサルコイドーシスと診断した。プレドニゾロンの経口投与による漸減療法で,眼底の隆起性病変は著しく縮小し1,10か月後に右眼視力は1.2に改善した。本症例は,両眼の脈絡膜肉芽腫がサルコイドーシスの初発所見であり得ることを示している。

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 安全な超音波乳化吸引術のためには安定した前房内圧が必要である。そこで術中の前房内圧を経時的に自勤測定し,その変化量を記録した。さらに模擬眼を用いて能動的な前房内圧制御方法を検証した。手術は最大吸引圧330mmHg,流量33ml/分の設定で,点眼麻酔下3.0mm幅角膜一面自己閉鎖創で行い,既報の眼内圧モニタリングシステムを用いて前房内圧の値を0.5ミリ秒ごとに自動取得した。前房内圧変化率は,定常圧状態時よりサージ現象時に,より大きな絶対値を示した。前房内圧の制御は,一定内圧への制御よりも,内圧の変化量を抑える微分制御法のほうがより効果的にサージ現象を抑制できた。

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 増殖糖尿病網膜症に対して硝子体手術が行われ,術後に新生血管緑内障で失明した症例の全身的ならびに眼内の諸因子を検索した。対象は過去6年間に初回硝子体手術を受け,網膜剥離がなく,新生血管緑内障で失明した10例11眼である。同期間に硝子体手術を受け,新生血管緑内障が発症しなかった増殖糖尿病網膜症60例70眼を無作為に抽出し,対照とした。平均年齢は,失明群42.5±14.2歳,対照群55.4±11.7歳であった。失明群の全身的因子として,若年者,血糖コントロール不良,腎機能低下,低アルブミン血症が有意に多く,眼内因子として,滲出型網膜症,光凝固治療無効,シリコーンオイル併用が有意に多かった。失明群の各症例は,これらの因子を4項目以上有していた。これらの因子を多数有する症例については,硝子体手術の時期と方法についての慎重な検討が必要である。

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 24歳男性がボクシング中に右眼を打撲され複視が生じた。視力は1.5だったという。眼窩下壁骨折と診断され,受傷3週間後に上顎洞経由での骨折整復術を受けた。その翌日に光覚を失い,ただちに受診した。右眼には,マーカス・ガン瞳孔以外には,前眼部,眼底,眼窩などに異常はなかった。耳鼻科で骨片プレートを除去し,眼窩内圧減圧術が行われた。ステロイドパルス療法,血管拡張薬点滴,星状神経節ブロックでは視機能が改善しなかった。初診7日目から1日2回の星状神経節ブロックを開始し,2日後に光覚弁となった。ステロイドパルス療法を併用し,初診17日目に視力は1.0に回復した。以後6か月間経過は順調である。重篤な視神経障害に対して星状神経節ブロックが奏効したと考えられる症例である。

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 未熟児網膜症に対して半導体レーザー光凝固を受けた既往のある小児29例54眼の屈折度を検索した。検査時には全例が瘢痕期分類1度で,年齢は1歳から6歳,平均3.1±1.4歳であった。等価球面に換算した屈折度は平均-1.68±3.54Dで,内訳は,遠視または正視21眼,-3D以下の近視20眼,-3.25Dから-6Dまで7眼,-6.25Dから-9Dまで3眼,-9.25Dから-14Dまで3眼であった。光凝固の範囲が広いものほど近視が強かった。瘢痕形成が強いと近視が強くなる傾向があるので,早期の屈折矯正が必要である。

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 白血病の眼合併症として稀な白血病細胞の直接浸潤の2例を経験した。症例1は59歳男性で,成人T細胞性白血病リンパ腫(ATLL)の経過中に,両眼に前房蓄膿を伴った虹彩炎を生じ,ステロイド治療に反応しなかった。前房穿刺を行ったところ,前房水中にATL細胞が認められ,さらにPCR法によりヒトT細胞白血病ウイルスⅠ型(HTLV—Ⅰ)のウイルスゲノムが検出された。化学療法と放射線照射(総量30Gy)の併用によりぶどう膜炎は消退した。症例2は71歳男性で,急性骨髄性白血病(AML)の経過中に視神経乳頭浮腫を生じた。MRI検査で視神経の著明な腫大を認めたため,白血病細胞が右視神経に選択的に浸潤したものと考えた。化学療法を開始したが,敗血症を併発し無菌室での治療のため放射線照射は施行できず,3か月後には失明に至った。放射線療法の有無が,眼合併症の予後を左右すると考えられた。

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 過去8年間に後部硝子体剥離がない糖尿病黄斑浮腫61眼に硝子体手術を行った。後部硝子体膜の肥厚や増殖膜がない27眼には後部硝子体剥離のみを作成し,これらがある34眼には膜剥離を併せて行った。2段階以上の視力改善が56%に得られ,不変34%,悪化10%であった。後部硝子体剥離のみを行った27眼での改善率は48%,他の34眼では62%であった。黄斑浮腫の形態別での改善率は,びまん性浮腫群59%,嚢胞様浮腫群38%であり,膜剥離を併用したびまん性浮腫群では75%であった。後部硝子体膜肥厚と嚢胞様黄斑浮腫が視力予後に関与することを示す所見である。

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 黄斑円孔への硝子体手術で,内境界膜を剥離した123眼と剥離しない160眼について,再発率とその原因を検索した。剥離する手技は2001年までの3年間,剥離しない手技は1996年までの4年間に用いた。術後の観察期間は,剥離群が6〜29か月で平均17か月,非剥離群が8〜42か月で平均25か月であった。円孔の閉鎖率は,非剥離群が初回69%,最終91%であり,剥離群が初回95%,最終100%であった。円孔の再発率は非剥離群で5%,剥離群で0%であった。非剥離群での再発原因は,術後に生じた黄斑前膜であった。内境界膜を剥離することで,これによる円孔縁への張力が解除されて閉鎖率が向上する一方,黄斑前膜の形成が起こりにくいので再発が防止されると考えられる。

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 網膜硝子体界面を主座とする疾患である網膜前膜127眼を光干渉断層計で検索した。これには硝子体黄斑牽引症候群16眼が含まれる。網膜前膜と網膜の癒着様式には,面癒着型89眼と架橋型38眼があった。架橋型では中心窩の生理的陥凹が全例で消失していたが,面癒着型では陥凹は必ずしも消失せす,偽円孔を呈するものがあった。硝子体黄斑牽引症候群はすべて架橋型であり,接線方向の牽引索が明瞭に検出された。以上から,網膜前膜は,1)面癒着型で中心窩陥凹が存在(24眼),2)面癒着型で中心窩陥凹が消失(39眼),3)面癒着型で偽黄斑円孔(26眼),4)架橋型(38眼)の4型に分類された。

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 星状神経節に半導体レーザー照射を行い,正常人網膜の循環と電気生理に及ぼす影響を検索した。対象は健常者12名で,年齢は平均27.6歳である。12名に両側の,そして別の時点で6名に片側の星状神経節にレーザーを照射した。レーザーは,波長810nmで出力1,000mWとし,一側に5分照射した。Heidelberg retina flowmeterを用いて,照射前,30分後,60分後に網膜循環量を測定した。多局所網膜電図(mERG)による検査を同様に照射前後で行った。網膜の血流量と流速は,片側照射では不変,両側照射では60分後に有意に増加した(p<0.05)。mERGの最初の陽性波と陰性波の振幅が60分後に有意に増加した(p<0.05)。両側星状神経節へのレーザー照射で綱膜循環と機能が向上することを示す所見であり,適切な条件を設定することで眼科での治療に応用できる可能性がある。

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 涙道再建術としてヌンチャク型シリコーンチューブの留置術を361例に行った。鼻涙管閉塞252例,慢性涙嚢炎41例,涙小管閉塞36例,鼻涙管狭窄18例,その他である。再挿入53例を含め,鼻涙管閉塞と涙小管閉塞では80%,鼻涙管狭窄では全例が改善した。慢性涙嚢炎と涙嚢鼻腔吻合術後の吻合部閉塞の諭54例では,初回挿入による改善が30%で得られ,再挿入で約半数が改善した。シリコーンチューブの留置期間が長いほど改善率が高い傾向が全疾患であり,鼻涙管閉塞ではこれが有意であった。重篤な合併症はなかった。ヌンチャク型シリコーンチューブの留置術は安全で有効な涙道再建術であると結論される。

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 58歳男性が右眼の視力低下で受診した。4か月前に右眼への鈍的外傷があった。右眼矯正視力は0.3,眼圧は38mmHgであった。水晶体は上方約半周が脱臼しており,緑内障性視野狭窄があり,角膜内皮細胞密度が640個/mm2に減少していた。角膜内皮と毛様体の保護を最優先に考え,白内障嚢内摘出術,前部硝子体切除,眼内レンズ毛様溝縫着を同時に行った。術後矯正視力は1.0に回復し,眼圧は3剤点眼で15mmHg以下に保たれている。角膜内皮細胞密度に変化はない。このような状態に対して白内障嚢内摘出術が有用であることを示す症例である。

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 フェイコチョッパーの先を曲げて,変型フェイコチョッパーを作製した。同器具を用いて前嚢切開と核分割を64眼に行った。サイドポートから器具を入れて,二手法により前襲切開は全例で無事行えた。安定して前嚢切開を行えるので,有効な方法と考えられる。

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 イソプロピルウノプロストンその他を1か月以上点眼していた27名44眼を,ラタノプロスト点眼に切り替えた。症例の内訳は,原発開放隅角緑内障38眼,正常眼圧緑内障2眼,発達緑内障2眼,ステロイド緑内障2眼である。切り替え前の平均眼圧は17.7±3.4mmHgであり,切り替え1か月後,3か月後,6か月後でいずれも有意に低下した(p=0.01)。切り替えから平均14.4±2.8か月の観察で,ハンフリー視野計の閾値テストでのmean deviation値が有用に上昇した(p=0.02)。イソプロピルウノプロストンからラタノプロスト点眼への切り替えは視野改善に有用であった。

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 網膜細動脈瘤破裂による新鮮な黄斑下血腫2眼に対して血腫除去術を行い,その術中に黄斑円孔が生じた。1眼では,網膜下にある血液を除去する目的で網膜下腔に灌流液を注入した際に中心窩を通じて灌流液が噴出し,黄斑円孔になった。意図的な内境界膜切除は行わなかった。術後28か月の時点でも円孔は閉鎖されなかった。他の1眼では,後部硝子体剥離後に内境界膜を剥離し,内境界膜下血腫の吸引中に黄斑円孔が生じた。18週後に黄斑円孔は自然閉鎖した。内境界膜除去が黄斑円孔の閉鎖に寄与したと推定される。

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 51歳男性が5か月前に発見された左眼視力低下と変視症で受診した。左眼矯正視力は0.3であった。傍中心窩に1/2乳頭径大の灰白色の混濁があり,周囲に出血性・漿液性色素上皮剥離があった。蛍光眼底造影で,脈絡膜新生血管(CNV)の縁は中心窩から200μm以内にあった。光干渉断層計で色素上皮下のCNVは確認できず,CNVの一部が神経網膜下にあった。この所見から,CNVはGass分類の1+2型と判定した。手術で神経網膜下のCNVは抜去できたが,色素上皮下のCNVは途中でちぎれ,一部が色素上皮下に残った。色素上皮欠損は生じなかった。摘出組織に血性滲出物と未熟な血首内皮があったが,線維組織はほとんどなく,全体に脆かった。以後残存CNVは自然退縮し,9か月後の矯正視力は0.8に改善し,術後1年間の観察で再発はない。本症例では色素上皮とCNVの接着様式が通常とは異なっていると推定した。

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 偽黄斑円孔眼18例19眼の網膜断層像を光干渉断層計(OCT)で検索し,偽円孔の形態と自覚症状,視力との関係を検討した。偽円孔はOCTの水平断,垂直断で走査し,以下の4型に分類された。Ⅰ型:円筒型+円筒型(9眼),Ⅱ型:円筒型+一端がひさし状(4眼),Ⅲ型:巾着型+一端がひさし状(3眼),Ⅳ型:巾着型+巾着型(3眼)。変視症の自覚はⅠ型:1/9眼,Ⅱ型:0/4眼,Ⅲ型:2/3眼,Ⅳ型:3/3眼で,巾着型の陥凹を示す型は変視症の頻度が高かった。各型での平均視力で有意な差はみられなかった。19眼中7眼で硝子体手術を施行した。変視症を自覚した4眼中3眼(75%)で変視症が改善した。また7眼中3眼(43%)で2段階以上の視力向上があった。

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 巨大裂孔網膜剥離5例5眼の手術成績を検討した。年齢は21歳から60歳で,全例男性であった。5例中4例に初回硝子体手術を施行し,うち3例は液体パーフルオロカーボン(PFC)を使用した。1例は輪状締結術を施行した。2例に再手術を必要としたが,最終的に5例中4例が復位した。1例は増殖硝子体網膜症のため復位を得られなかった。PFCの網膜下残留,網膜のslippageなどの合併症は認めず,PFC使用は有用な手段であった。

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 過去15余年の間に,4医療施設の各科でサルコイドーシスが疑われ,結膜生検で診断が確定した70症例を検討した。結膜生検では,非乾酪壊死性類上皮細胞肉芽腫があるものを陽性とした。57例(81%)にぶどう膜炎があった。両眼とも陽性が24例(34%),片眼のみの陽性が46例(66%)であり,両眼の結膜生検は片眼の生検よりも有用であった。ぶどう膜炎のない症例でも,ぶどう膜炎がある症例と同様に結膜生検が有用であった。サルコイドーシスの疑いがある症例では,ぶどう膜炎の有無にかかわらず,両眼の結膜生検が望ましいと結論される。

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 28歳女性が右眼の重篤な病変で紹介され受診した。10週間前に右結膜充血を自覚した。視力は1.2であったという。右涙腺が腫脹し,ぶどう膜炎,硝子体混濁,滲出性網膜剥離などが急速に進行,悪化した。当科初診時の右眼視力は光覚弁であり,左眼には異常所見はなかった。画像診断で右眼窩に限局した炎症性またはリンパ腫性病変が疑われた。左眼には異常所見はなかった。硝子体手術で得られた硝子体組織の検索から,非ホジキンリンパ腫の診断が確定した。全脳と右眼球に放射線照射を行い、以後頭蓋内への転移はない。非ホジキンリンパ腫が涙腺腫脹を伴うぶどう膜炎で初発しうることを示す1例である。硝子体組織からの診断ではフローサイトメトリーが有用であった。

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 27歳女性が頭痛と複視,26歳女性が複視と右眼球突出を主訴として受診した。精査により,それぞれ硬膜動静脈奇形,外傷性内頸動脈海綿静脈洞瘻と診断された。両症例ともマイクロコイルによる脳血管内手術を受け,翌日から眼症状がほぼ消失した。複視など多彩な眼症状があるときには,脳血管障害がその原因で,侵襲の小さい血管内手術が有効でありうることを示す症例である。

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 12歳女児の左側部分動眼神経麻痺を経験した。1週前から続く複視と羞明とを主訴とし,左眼の内下転障害,瞳孔散大,調節障害および軽度眼瞼下垂を認めた。下斜筋機能は保たれていた。一部のウイルスで抗体価の上昇を認めたが,血液検査やCT, MRIなどの画像検査で原因は特定できなかった。ビタミンB12製剤の内服のみで,眼瞼下垂と調節障害は発症3か月後,眼球運動は4か月後,瞳孔不同は9か月後にほぼ正常化した。

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 32歳男性が左眼窩の炎性偽腫瘍の疑いで当科紹介され受診した。左眼の球結膜と下眼瞼結膜にサーモンピンク色の腫瘤があった。生検で結膜固有層に濾胞形成と異形性に乏しい均一な小リンパ球の密な増殖があり,びまん性悪性リンパ腫と診断した。腫瘍細胞は,κ染色陽性,λ染色陰性,L−26染色陽性,UCHL−1染色陰性であった。フローサイトメトリーでCDI9,CD20,κ鎖で陽性率が高く,CD5,CD10,CD23の陽性率が低かった。遺伝子解析で,重鎖遺伝子(JHプローブ)の再構成があり,これらの所見からMALT (mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫と診断した。4か月後に右下眼瞼の結膜に同様の小病変が出現した。電子線による総量右眼30Gy,左眼38Gyの照射を行った。病変は消失し,以後1年間再発はない。

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 51歳女性が11年前に左眼突出を自覚した。視力が徐々に低下し,数年後に失明した。以後も左眼突出がさらに進行したため当科紹介され受診した。視力は右1.0,左0であった。突出度はHertelで右12mm,左31mmであり,左眼に視神経萎縮があった。脳神経症状はなかった。画像診断で左眼窩後壁を背面とする境界鮮明な腫瘤があり、これに接する眼窩後壁に骨肥厚像があったが,破壊像はなかった。腫瘤は海綿静脈洞,髄膜腔,脳槽を充満し,脳幹周囲に広がっていた。これらの所見から髄膜腫を疑い,眼窩の生検を行った。病理組織学的に髄膜上皮腫型髄膜腫と診断した。側方からKrönlein法で眼窩に到達し,眼球を保存しながら可能な限り腫瘍を除去した。術後に眼球突出が軽快し,閉瞼可能になった。脳神経症状は生じなかった。本例の髄膜腫は眼窩の視神経鞘以外の部位に原発し,上眼窩裂または視神経管経由で頭蓋内に進展したと推定される。

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 73歳男性が右眼窩内軟骨肉腫に対して眼球摘出,腫瘍摘出と放射線照射を35年前に受けた。以後装用中の義眼が落ちやすくなり,腫瘍雨発の疑いで紹介され受診した。細胞診でクラスVの軟骨器質が眼窩内にあった。コンピュータ断層撮影(CT)で,右眼窩内に腫瘍の浸澗による骨破壊像と,多数の点状の高信号部を含む中等度のコントラストの部位があった。磁気共鳴画像(MRI)で,同部位はT1強調画像で低信号,T2強調画像で低信号と高信号が混在し,Gd-DPTAを使った造影MRIでほぼ全体が増強していた。これらの所見は軟骨肉腫の再発を否定するものではなかった。腫瘍切除術を行い,病理学的に良性の多形腺腫と診断された。以後28か月再発はない。

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 上顎洞部の扁平上皮癌と,鼻腔・篩骨胞巣・上顎洞の悪性黒色腫の各1例に根治手術を行い,同時に鼻涙管にシリコーン管を挿入した。シリコーン管挿入は,本来の鼻涙管の断端の内腔を維持することが目的であった。両症例で術後の鼻涙管閉塞を防ぐことができ,良好な経過をたどった。流涙や涙の停滞などの合併症を予防でき,患者の術後のQOLの向上に寄与した。本法は侵襲が小さく,鼻腔または副鼻腔腫瘍の術後の鼻涙管閉塞を防止するのに有用であると結論される。

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 79歳女性に右眼の眼球突出と視力低下が突発し,ただちに受診した。右眼の矯正視力は0.01で,眼球運勤が全方向で制限されていた。貧血性網膜症を伴う重篤な鉄欠乏性貧血があった。画像診断で視神経を圧迫する眼窩内血腫があった。詳細な既往歴聴取で,発症1週間前に右前額部に軽い打撲があったことが判明した。血腫は2週間後に自然退縮し,矯正視力は0.8に回復した。本症例の診断と経過観察に,磁気共鳴画像検査(MRI)が有用であった。出血性素因がある場合には,本人が忘れている程度の小さな外傷を契機として眼窩内血腫が記こる可能性示す例である。

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 不整脈の治療薬アミオダロンを服用中の16名を眼科的に検索した。年齢は42歳から80歳,平均61歳であり,服用期間は1か月から5年,平均17か月である。眼科一般検査で角膜色素沈着が14名(88%)にあり,他の眼合併症はなかった。色素沈着の程度は,投与量,投与期間,総投与量と相関しなかった。細隙灯顕微鏡検査で,茶褐色の色素が角膜上皮に沈着し,アミオダロン角膜症特有の所見であった。生体共焦点顕微鏡(confocal microscopy)では,色素沈着に一致して高輝度の斑状物が同定された。この斑状物は角膜上皮の基底細胞レベルにあり,色素が基底細胞内に存在することを示した。

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 腎透析下に白内障手術を施行した症例を対象に視力予後および術後合併症に関係する因子を検討した。対象は,1998年4月から2001年1月までに当科にて手術を施行した54例75眼で,糖尿病群(21例33眼)と非糖尿病群(33例42眼)の比較では,術前・術後視力とも有意に糖尿病群のほうが悪かった。眼合併症は嚢胞状黄斑浮腫(CME)が2眼,網膜静脈分枝閉塞症が1眼ですべて糖尿病群であった。またCMEの2眼では,黄斑浮腫発生時のHt値は術前に比べ平均6.4低下していた。以上の結果から,視力予後の因子として糖尿病が考えられ,CMEの発生には貧血が関与している可能性が示唆された。

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 耳側角膜切開で超音波乳化吸引術および眼内レンズ挿入術を行った34例47眼の術前の解剖学的生体計測値(前房深度,眼軸長)および手術時間が術後角膜内皮細胞密度および角膜内皮細胞密度減少率に与える影響について検討した。その結果,術後角膜内皮細胞密度は術前の中心前房深度と相関し(r=0.380,p=0.0092),浅前房眼では少なかったが,眼軸長,手術時間とは相関しなかった。浅前房眼では超音波乳化吸引術において角膜内皮細胞減少を起こしやすく,角膜内皮細胞保護により注意を払うべきであると思われた。

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 50歳以下の増殖糖尿病網膜症15眼に対して硝子体手術を行った。7眼には硝子体手術のみを,8眼にはこれと同時に超音波水晶体摘出術と眼内レンズ挿入術を行った。術後視力は,硝子体手術単独群4眼(57%)と併用手術群6眼(75%)で2段階以上に改善し,両群各1眼で不変,単独群2眼と併用群1眼で悪化した。単独群3眼と併用群1眼が0.5以下の視力であり,術後の硝子体出血がその主な原因であった。血管新生緑内障が単独群1眼で発症した。以上の結果から,50歳以下の増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術では,増殖組織の確実な処理と水晶体摘出術を同時に行うことで,合併症が少なく比較的良好な結果が得られると結論される。

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 68歳女性が左眼の飛蚊症で受診した。動脈硬化症,糖尿病,僧帽弁と三尖弁の閉鎖不全があり,慢性腎不全に対して透析を受けていた。左眼矯正視力は0.4であった。非虚血型網膜中心静脈閉塞症と診断し,罹病期間の短縮と増悪予防のためにレーザー光凝固を行った。改善がないために,ウロキナーゼとプロスタグランディンE1リポ化製剤の点滴と,星状神経節ブロックを行った。初診から2週間後に虚血型網膜中心静脈閉塞症に進行し,網膜中心動脈閉塞症と脈絡膜循環障害が併発した。全身疾患が増悪因子の1つであると推定した。

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 9歳男児が起床時に左眼視力低下を自覚し,その翌日受診した。左眼視力は手動弁であり,眼底に典型的な網膜中心動脈閉塞症の所見があった。蛍光眼底造影で網膜循環時間の遅延があった。当初は血液学的に異常がなかったが,1か月後に抗リン脂質抗体(抗カルジオリピンlgM抗体)が陽性化した。小児の網膜中心動脈閉塞症は稀であるが,抗リン脂質抗体症候群と関係して起こる可能性があることを示す症例である。

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 過去5年間の鈍的外傷による眼球破裂21例21眼を検討した。年齢は25歳から92歳,平均67歳で,痴呆と強度近視が各6例あった。受傷の原因は,転倒11例,打撲9例,交通事故1例であった。白内障など手術歴が12眼にあった。眼球破裂の部位は,強膜16眼,角膜2眼,強角膜3眼で,15眼が角膜輪部に平行で,創の大きさは平均15.3mmであった。眼内レンズ挿入眼8眼すべてで眼内レンズが脱臼または脱出していた。有水晶体眼10眼中4眼で水晶体が偏位または脱出していた。網膜脱出が4眼,網膜剥離が15眼にあった。12眼に硝子体手術を行い,網膜剥離9眼中5眼で網膜が復位した。初診時視力は1眼以外は0.1末満であった。最終視力は,0.1から0.3が3眼,0.4以上が3眼であった。最終視力が光覚弁なしになる危険因子は,創の大きさが15mm以上(p=0.017),網膜全剥離(p=0.011),初診時に光覚なし(p=0.015)であった。0.1以上の最終視力が得られる関係因子は,創の大きさが15mm以下(p=0.029),網膜剥離なし(p=0.031),硝子体手術施行(p=0.031)であった。眼球破裂に対して硝子体手術は視力予後を好転させる一因子である。

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 典型的網膜色素変性症28例に高圧酸素療法を行った。年齢は29歳から82歳,平均57歳である。2気圧,100%純酸素が充満したカプセル内で1時間吸引を20日間継続して行い,1年から10年,平均5,1±3.1年の術後経過を観察した。対数視力は,治療前−0.99±0.87であり,1年後0.6±0.76(p<0.00001),最終観察時−0.11±1.1(p=0.32)であった。限界フリッカー値は,治療前23.6±13であり,治療直後35.4±8.5(p<0.00001),最終観察時22.9±12(p=0.76)であった。自覚症状は,直後に79%,最終観察時に21%で改善した。高圧酸素療法は長期的には無効であることを示す所見である。

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 88歳女性が右眼充血で受診した。20年前に右眼に白内障手術を受け,10年前から無水晶体用ソフトコンタクトレンズを装用していた。洗浄,消毒,または交換はほとんど行わなかったという。右眼矯正視力は手動弁で、血管新生を伴う角膜浮腫があり,乳頭増殖性結膜炎があった。コンタクトレンズは強く白濁し,表面が不整であった。角膜病変は抗生物質の点眼で1週問後に軽快した。結膜嚢からの培養でCorynebacterium spp.が検出された。透過電子顕微鏡検査で,レンズ内に嵌入している厚さ10μmの細菌バイオフィルムがコンタクトレンズの表面に観察された。コンタクトレンズの沈着物を足場に細菌が付着したが、生体防御機構が作用して眼表面は保護され,バイオフィルムを形成したと推定した。このバイオフィルム形成が角結膜感染症の誘因になった可能性が大きい。

連載 今月の話題

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 最近の免疫学のトピックの1つにレギュラトリーT細胞に関する研究がある。レギュラトリーT細胞は自己免疫疾患を抑制する働きがあると考えられ,ぶどう膜炎をはじめとする自己免疫疾患の制御にレギュラトリーT細胞を用いる試みがいくつかの施設で行われている。詳細な説明は専門書を読んでいただくとして,ここではレギュラトリーT細胞とぶどう膜炎の治療について簡潔に説明する。

連載 眼の遺伝病・34

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 MELASはmitochondrial myopathy, encephalo—pathy, lactic acidosis, stroke like episodesの最初の各文字をつないで作られた略語で,ミトコンドリア脳筋症の1種である。この疾患は,ミトコンドリア遺伝子の変異が原因であると報告されている。すなわち,ミトコンドリア遺伝子の3243のAがGに,3252のAが同じくGに,3256のCがTに,3291のTがCに,3271のTが同じくCに変異することによる。なかでも,3243の変異(これをA3243G変異と表わす)はMELASの代表的な遺伝子異常である1〜5)

 一般には,MELASに網膜変性は合併しないと報告されているが,今回は,A3243G変異を持つ患者に両眼のpattern dystrophyを合併した症例を報告する。

連載 眼科手術のテクニック・147

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はじめに

 白内障手術は,挿入する眼内レンズによって術前の屈折矯正を行い,より良好な裸眼視力を目標とする1つの屈折矯正手術とまでいわれている。小切開および無縫合手術により,手術による術後乱視は臨床上問題にならない程度になっている。しかし,術前から著明な乱視がある例,穿孔性眼外傷後の乱視例,術中合併症により切開創が予定よりも広げられて縫合を行った例では,乱視により裸眼視力の向上が困難な,さらに眼鏡による矯正が不可能な例がある。近年導入されたエキシマレーザーによる乱視矯正(photoastigmatic refrac—tive keratectomy:PARK)は,従来行われていた乱視矯正角膜切開術(astigmatic keratotomyAK)に比べて,矯正効果の予測性が良好である。

 今回は,白内障術後乱視例に対するエキシマレーザーを用いた矯正法を紹介する。

連載 あのころ あのとき・18

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 1945(昭和20)年3月,私は1年短縮で大学を仮卒業し,海軍軍医としての教育を受けたが,終戦1か月後に免官除籍された。9月末日に改めて本卒業式が行われ,10月に母校の眼科学教室に人局した。私は医師国家試験を受けずに医師免許証の交付を受けた最後の学年であった。その年の暮れには免許証をもらい,検査,診察の手ほどきを受けたが,教室は恩師藤原先生の他には2人の女医さんが在籍していただけで,中堅の男性医師は,すべてまだ軍隊から戻っていなかった。しかし,翌年,1946(昭和21)年になってから,1人,2人と軍隊から教室に戻ってきて,次第に賑やかになってきた。

 そのころ,診察室で一般にみられた眼科疾患はトラコーマとその合併症,結膜・角膜フリクテン,角膜実質炎(先天梅毒性)などであった。しかし,1955(昭和30)年にもなると,抗生物質の開発・普及,衛生環境の改善,食生活の改善が進み,上記のような眼疾患は激減し,ついにはみられなくなった。

連載 他科との連携

臓器移植後のQOL 島川 眞知子
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 2001年12月,San Diegoで開催されたThe 2nd International Congress on Immunosuppressionで私は腎移植後のサイトメガロウイルス網膜炎(CMV retinitis after renal transplantation)について発表してきた。この学会は時代の最先端をいく移植医の学会で,opening plenary sessionに続いて,Heart & Lung, Kidney, Liver, Small bowelなどの臓器ごとのsessionがあり,熱い議論が交されていた。腎移植に関しては,他の国では死体腎移植がほとんどを占めるのに比べて,日本では生体腎移植が主流を占める。わが国ではやっと脳死(brain death)の道が開けたばかりで,いわゆる献腎移植(non heart beat donor)は極めて少ないために,生体腎移植を行わざるを得ない。そこでHLAはおろかABO血液型不適合であっても,親子間,兄弟間,ひいては夫婦間移植まで行われている。

 日本国内では腎移植数随一の東京女子医大において,この血液型不適合間移植にもかかわらず,驚異的な生着率を誇っている。その高い成功率の秘訣は近年の強い安定した免疫抑制薬の導人にある。シクロスポリンと同じカルシニューリンインヒビターであるFK506(Taclorimus)は日本の藤沢薬品が開発したもので,in vitroでその100倍の免疫抑制効果があるとされている。Taclorimusは今学会の花形を演じていたといっても過言ではなかろう。さらに新しい代謝拮抗薬であるミコフェノール酸モフェチル(MMF)との併用がさらに免疫抑制を十分なものにした。しかしこれら強い免疫抑制薬の効果の陰には,思いがけない日和見感染の危険が潜んでいる。

今月の表紙

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 症例は51歳の男性。2〜3年来の霧視,視力低下を主訴に当院を受診した。近医にて薬物治療の既往があるが,詳細は不明である。

 初診時の視力は右0.08(0.5),左0.1(0.8)であった。両眼底に後極部を中心として散在する閃輝性の結晶様黄色小斑を認めた。Flash ERG,flicker ERGともに消失型であった。ゴールドマン視野計による動的視野検査では両眼とも周辺視野は正常,中心視野に比較暗点を認めた。フルオレセイン蛍光眼底造影検査では,初期において脈絡毛細血管板の萎縮を疑う斑点状の低蛍光像があった。

やさしい目で きびしい目で・30

やさしい目での対話 日山 英子
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 私たちの西宮市立中央病院では,眼疾患の末期(end-stage)の患者さんも多く来院されます。彼らは私たちにとって長い間一緒に病気と闘ってきた同胞です。多忙な外来診療中にそれを忘れることがあります。もう数年前から両眼ベーチェット病で失明された方が毎週1人でこられます。私は,つい他の仕事をしながら,「○○さん」と呼ぶと,「はい」といって入ってこられ,「今日は先生だいぶ疲れて,イヤになってるね」,「一言聞けば,先生の気持ちはすぐわかる」と。“ドキッ”である。彼らの心は鏡のごとく鋭敏です。

 90歳台の緑内障末期,矯正視力0.1,視野5度以内,まっ白な乳頭,眼圧12mmHgの方がいます。「時々目の前を何かが通り過ぎるように見えます。だけど自分ひとりでは歩けません。食べ物も探せません」「何とかなりませんか」と毎月きていわれる。いったい私に何をせよといわれるのか。何もできることがないことへの無力感で返す言葉がなく,気がめいる診察です。私にできるのは同情することだけです。

臨床報告

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 難治性の涙小管閉塞3例3側に対して涙嚢鼻腔吻合術とチューブ挿入を行い,良好な結果を得た。症例はそれぞれ61,69,73歳である。当初はブジーによる開放や涙管チユーブ挿入が可能であったが,チューブ挿入後1〜4か月後に感染,肉芽腫の発生,閉塞の再発によりチューブ抜去を余儀なくされた。ブジーやチューブで治癒が困難であった1つの理由として,鼻涙菅狭窄が併発していたことが推定された。さらに,抗菌薬などの長期点眼で常在菌叢が変化して易感染性になったことが,異物であるチューブへの異常反応を起こしたとも考えられた。

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 49歳女性が,両眼の眼痛と右眼視力障害で受診した。初診時の矯正視力は右0.9,左1.0で,眼底に異常所見はなかった。半年後に両眼とも視力が0.5に低下し,上方視野に感度低下が生じた。磁気共鴫画像検査(MRI)でempty sellaがあり,ほかに異常はなかった。乳頭浮腫はなかったが,身長150cm,体重94kgの高度肥満があり,偽脳腫瘍が疑われた。髄液圧は220mmH2Oとやや高値であった。頭蓋内圧低下のため炭酸脱水酵素阻害薬を投与した。自覚症状は著明に改善し,3か月後には視力,視野ともに回復した。乳頭浮腫がなくても,高度肥満者にはempty sellaを伴った偽脳腫瘍が生じうることを示す1例である。

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 25歳男性がヤグレーザー(Nd:YAG laser)による黄斑外傷で受診した。患者は工学部大学院生で,実験中にプリズムによるレーザーの反射光が左眼に飛入し,その直後から視力低下と中心暗点を自覚した。レーザーは,波長1,064nm,出力80mJ/pulse,パルス幅10nsであった。左眼は-6.0Dの近視で、受傷当日の矯正視力は0.3であった。受傷眼に軽度の硝子体出血と黄斑浮腫があった。副腎皮質ステロイド薬を経口投与し,矯正視力は1週後0.6,2週後0.9、9か月後1.5に回復した。受傷9か月後に光干渉断層検査(OCT)を行い,中心小窩のやや上方に明瞭な縁のある網膜色素上皮欠損と,中心窩周囲に網膜前膜が観察された。工業用のヤグレーザーによる眼誤照射が危険であり,安全対策が必要であることを示す症例である。

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 17歳女性が右眼瞼の腫脹と疼痛で受診した。11歳で慢性腎炎があり,1年前に腎生検で巣状糸球体硬化症と診断されている。磁気共鳴画像検査(MRI)などで右涙腺部に腫瘍が同定された。眼窩と肺の生検で炎症性のリンパ球浸潤像があり,抗好中球細胞質抗体(ANCA)はP-ANCA, C-ANCAともに陽性であることから,Wegener肉芽腫症と診断した。本症では眼合併症として眼窩病変が多いが,若年者では稀であり,その意昧で本症例は注目される。

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 水晶体超音波乳化吸引術中に後嚢が破損した9眼に対して,経毛様体扁平部水晶体切除術,硝子体切除術,眼内レンズ毛様溝挿入術を同時に行った。眼内レンズ偏位,瞳孔牽引,網膜剥離などの合併症はなく,全例で良好な結果が得られた。本術式は,白内障手術中に起きた後嚢破損への対策として有効である。

第55回日本臨床眼科学会専門別研究会2001.10.11京都

無水晶体眼 大木 孝太郎
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 今年の会のテーマは「術後眼内炎」である。

 今回は特に白内障術後に問題となっている術後眼内炎を主題とした。本合併症は,その発症頻度は少ないものの症例によっては失明の転帰をたどり,患者ならびに術者にとって悲惨な結末を迎えかねない。多くの場合,本合併症は白内障術者によって発見され,網膜硝子体術者によって治療される。そこで今回は白内障術者と網膜硝子体術者の同席のもとに討論を行うことを目的とした。座長として小椋祐一郎教授(名古屋市立大学)と大鹿哲郎助教授(東京大学)に進行をお願いした。

基本情報

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臨床眼科
56巻6号 (2002年6月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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