臨床雑誌内科 113巻4号 (2014年4月)

ウイルス肝炎診療の最前線と今後の展開 日常臨床のポイントと知っておきたい最新情報

  • 文献概要を表示

抗ウイルス治療の適応およびその緊急性は,年齢線維化進展度によって決定される発がんリスクに応じて判断する.抗ウイルス治療によってSVRが得られた後も発がんのリスクがあることを踏まえ,症例ごとの発がんリスクに応じて肝がんのスクリーニングを継続することが必要である.現在,C型慢性肝炎初回治療例では,年齢やIL28Bの結果を問わず,ペグインターフェロン(Peg-IFN)+ribavirin(RBV)+simeprevir(SMV)3剤併用療法が第一選択である.前治療再燃例に対する治療推奨も年齢を問わずSMVを用いた3剤併用である.前治療無効例では,高齢者の場合ではSMV 3剤併用療法,非高齢者ではこれに加えてTVR 3剤併用,治療待機も選択肢である.

  • 文献概要を表示

日本肝臓学会の『B型肝炎治療ガイドライン』はエビデンスの提示を重視した内容であり,そのページ数は94と多い.このため,専門医向けのガイドラインといえる.抗ウイルス療法の治療目標は,「肝炎の活動性と肝線維化進展の抑制による慢性肝不全の回避ならびに肝細胞癌発生の抑止,およびそれによる生命予後ならびにQOLの改善」であり,これを達成するための具体的な治療目標が設定されている.抗ウイルス薬としてはPeg-IFNと核酸アナログ製剤が用いられているが,本ガイドラインでは従来のガイドラインよりPeg-IFNを第一選択とする状況が多い.B型劇症肝炎や再活性化の対策も具体的に記載されており,充実した内容である.

  • 文献概要を表示

C型肝炎は経口抗ウイルス薬の登場によりウイルス血症の改善が,B型肝炎は核酸アナログ治療により肝炎のコントロールが可能になってきている.それにより,肝硬変および肝細胞がんの発症を劇的に抑制できる時代になりつつある.しかしながら,C型肝炎においては,治療後の肝発がんを完全に押さえ込めたわけではなく,B型肝炎においては若年者や肝機能正常例からの発がんもみられるため,肝機能が改善されても定期的な画像診断を行っていく必要がある.さらに,これらの発がんリスクの高い患者のリスクを検討し,症例の絞り込みと発がん抑制のための新たな治療を開発する必要がある.

  • 文献概要を表示

わが国のC型肝炎およびB型肝炎に関する疫学について,これまでの調査成績をもとに紹介した.肝がんの原因の約8割がHCVおよびHBVの持続感染によるものであること,HBVキャリア数とHCVキャリア数の推計,肝炎ウイルス感染の新規発生率および感染状況を示した.効果的な肝炎肝がん対策として,潜在する肝炎ウイルスキャリアには肝炎ウイルス検査の受検勧奨を,感染が判明したキャリアには医療機関への受診継続受診の勧奨や抗ウイルス療法等の治療介入を行うことが必要である.

  • 文献概要を表示

C型肝炎の診断は,HCV抗体陽性者に対して血中HCV RNA陽性を確認することで行う.C型慢性肝炎の肝がん発生リスクは,肝線維化進展度と相関し,線維化が進展するほど年間肝がん発生率が高くなる.肝発がんリスクを予測するバイオマーカーとしては,血小板数とAFP値がある.C型肝炎治療の目標は,HCV持続感染によって惹起される慢性肝疾患の長期予後の改善,すなわち,肝発がんならびに肝疾患関連死を抑止することにある.C型肝炎の治療では,個々の症例での肝がん発生リスクを評価したうえで,そのリスクの高い症例を治療導入の緊急度が高い,治療が必要な症例と考えたうえで,治療方針を決定する.

  • 文献概要を表示

HBV無症候性キャリアでは半年ごとのHBVマーカー,画像検査が必要である.「ALT 31U/L以上,かつHBV DNA 4.0 log copies/mL以上」という条件を満たす慢性肝炎は治療対象である.また,肝がんスクリーニングとして半年ごとの腫瘍マーカー,画像検査が必要である.B型肝硬変では少なくとも3ヵ月ごとのHBVマーカー,腫瘍マーカー,画像検査を要する.また,治療として核酸アナログ製剤投与の対象であり,基本的に中止はすべきではない.B型急性肝炎で重症化や劇症化の恐れがある場合は全身管理が必要となり,肝臓専門医への紹介が必要である.免疫抑制化学療法時にはHBV再活性化のガイドラインに沿って検査を行い,治療が必要となった際には速やかに肝臓専門医に紹介する.

  • 文献概要を表示

ウイルス性慢性肝炎肝硬変の生活指導においては,かつて肝疾患患者に対する一般的な生活指導であった安静高カロリー高蛋白食は必ずしも推奨されなくなっており,個々の症例の病態に応じた管理を行わねばならない.すなわち,肝予備能や合併症の有無を十分に把握しての対応が求められており,とくに非代償性肝硬変では厳格な管理が必要となる.また,ウイルス性肝疾患を肝細胞がん発症の高リスク群と認識しての定期的なサーベイランス,あるいは感染症としての観点に基づく感染予防への配慮も重要である.

  • 文献概要を表示

肥満を合併している慢性肝疾患患者数が増加している.内臓脂肪の増加や糖尿病の合併は,肝発がん,治療後再発や患者予後に関わる.糖尿病治療薬は,肝発がんに影響を及ぼす.有酸素運動はインスリン抵抗性の改善に有効である.コーヒーや魚の摂取は,肝炎や肝発がんの抑制に有効な食品である.分岐鎖アミノ酸亜鉛含有サプリメントは,インスリン抵抗性の改善,味覚の改善,インターフェロン治療の完遂率向上に有効である.

新薬のオーバービュー 前川 伸哉
  • 文献概要を表示

近年C型肝炎ウイルス(HCV)特異的な抗ウイルス効果を示すdirect anti-viral agents(DAAs)製剤が多数開発され,本邦では現在teraplevirとsimeprevirが使用可能であり,従来難治とされた1b型でも高い治療効果が期待できる.現在開発されているDAAs製剤は,3種類のHCV非構造蛋白,すなわちNS3/4A,NS5A,およびNS5Bを治療標的としている.DAAs製剤は高い抗HCV効果を示す一方で,耐性HCV出現の可能性に対しては十分な注意が必要である.

  • 文献概要を表示

2011年11月telaprevir(TVR)とpeginterferon(Peg-IFN)/ribavirin(RBV)3剤併用療法が使用開始となった.より安全なdirect anti-viral agents(DAAs)製剤の開発が進むなかで,次世代プロテアーゼ阻害薬を待機できない症例では,主治医による慎重な判断のもと第一世代プロテアーゼ阻害薬の治療導入がなされたが,市販後成績は臨床治験結果とほぼ同等,あるいはそれ以上の治療効果が得られた反面,腎機能障害といった副作用が新たに注目された.しかしながら,TVR 3剤併用療法の導入によりC型慢性肝炎(CHC)の治療効果が飛躍的に向上したことは事実であり,TVR 1,500mg減量投与による副作用軽減に対する有用性も報告されており,治療効果や副作用の事前予測,治療経過中の副作用対策や薬剤アドヒアランスの確保など,個々の患者に対するオーダーメード化を展開することが,患者高齢化の進むわが国における治療の質向上に重要であると思われる.

  • 文献概要を表示

C型肝炎に対する抗ウイルス治療おいては,治療効果の向上あるいは副作用の軽減を目指して多くのHCV選択的抗ウイルス薬であるdirect anti-viral agents(DAAs)の開発が行われている.本邦では,2011年11月より,第一世代のプロテアーゼ阻害薬(telaprevir/peginterferon/ribavirin)3剤併用療法が一般臨床において使用可能となり,高い著効率が得られた一方で,貧血,皮疹,腎障害など重篤な副作用が問題となった.第二世代のプロテアーゼ阻害薬(simeprevir/peginterferon/ribavirin)3剤併用療法の国内臨床試験では,genotype 1型C型慢性肝炎に対して初回投与例で89~92%,前治療再燃例で90~97%,無効例でも36~51%に著効が得られ,安全性も向上したことから,2013年12月より一般臨床において使用可能となった.今後,simeprevir(SMV)3剤併用療法は,genotype 1型C型肝炎に対する抗ウイルス療法の第一選択になるものと考えられる.

  • 文献概要を表示

プロテアーゼ阻害薬(asunaprevir)は,セリンプロテアーゼを直接阻害することにより,ウイルスゲノムの複製やウイルス粒子形成に必要なウイルス蛋白の産生を抑制し,ウイルス増殖を強力に阻害する.NS5A阻害薬(daclatasvir)は,NS5A蛋白を標的とする低分子阻害薬であり,ウイルス増殖抑制に大きな効果が期待されているdirect anti-viral agents製剤のひとつである.NS5A阻害薬であるdaclatasvirとプロテアーゼ阻害薬であるasunaprevir併用療法24週間投与の国内第II相試験では,genotype 1型高ウイルス量症例に対して77%のSVR率であった.daclatasvirとasunaprevir併用療法は,前治療null responderやpeginterferon(Peg-IFN)とribavirin(RBV)併用療法不適格または不耐容例に同等の治療効果を認めていた.またIL28Bの遺伝子多型には,関係なく高い効果を認め,さらに副作用は少なく,高い忍容性を認めていた.

  • 文献概要を表示

interferon(IFN)治療においてウイルス排除ができなかった症例においても,ALT値が正常化した症例では累積発がん率が低下した.治療不応例や,治療耐用性の低い肝病態の進展した症例において,肝発がん予防を目的としたIFN少量長期療法は有効な可能性がある.欧米の成績では,IFN/ribavirin(RBV)療法不応例の肝硬変患者への少量IFN投与で,長期における肝発がんを抑制する可能性が示された.本邦のIFN少量長期療法の成績では,治療後24週におけるALT値とAFP値の正常化が肝発がん抑制と関連することが明らかとなった.

  • 文献概要を表示

B型肝炎ウイルスマーカーを正しく評価することにより,B型肝炎の病態把握および治療方針決定に役立てることができる.HBV DNA定量は短期的な治療効果の評価には有用であるが,長期的な評価やB型肝炎の治癒を判定するにはHBs抗原定量検査が必要である.免疫抑制治療や化学療法時のHBV感染既往例からの再活性化があり,該当する患者ではスクリーニング時にHBs抗原のみではなくHBc抗体やHBs抗体の測定が必要である.

  • 文献概要を表示

B型肝炎に対する核酸アナログ製剤として,lamivudine,adefovir,entecavirが使用されてきた.新規治療における現在の第一選択薬はentecavirである.lamivudineとadefovirの併用例においては腎障害や低P血症に注意が必要である.近々新たにtenofovirの導入が期待されている.抗ウイルス効果に加え,肝硬変や肝発がんの抑制効果が明らかにされてきた.

  • 文献概要を表示

HBs抗原の消失がB型肝炎治療の目標である.HBs抗原の消失を目的として,B型慢性肝炎に対してPeg-IFNが第一選択薬となる.Peg-IFNと核酸アナログを比較すると,治療反応例ではPeg-IFNにおいて高率にHBV DNA陰性化,HBe抗原セロコンバージョン,HBs抗原陰性化を得ることができる.核酸アナログにPeg-IFNを組み合わせるシークエンシャル治療によって,より高率にHBs抗原陰性化を得られる可能性がある.

  • 文献概要を表示

HBVは肝細胞で増殖する際にcccDNAを形成し,臨床的治癒後もこれが核内に残存する.このため一過性感染による既往感染例も遺伝子レベルではキャリアと同等で,免疫抑制化学療法後のウイルスが再活性化し,肝障害を生じる場合がある.治療介入を要する再活性化の頻度は治療法によって異なり,末梢血幹細胞移植では約30%,rituximabを用いた悪性リンパ腫の治療では約8%,リウマチ疾患などへの免疫抑制療法で2~3%,固形がんの化学療法で1%未満である.重症肝炎の発症は,血清HBV DNAを定期的に測定し,2.1 log copies/mL以上でentecavirを投与することで予防可能である.しかし,その有用性に関して,医療経済的な観点からの検証が続けられている.

  • 文献概要を表示

ウイルス性急性肝炎のなかで,A型とB型はワクチン接種による感染予防が可能な疾患である.臨床医はどのような局面においてこれらのワクチン接種がなされべきかを熟知し,さらに,感染予防に十分な抗体価を獲得するには規定回数のワクチン接種を受ける必要のあることを対象者に説明せねばならない.とくに,わが国の若年層は性交渉を介して,欧米型のB型肝炎ウイルス感染リスクの増大に曝されている.諸外国のようにユニバーサルワクチネーション導入の道を選択すべきかに関しては議論の余地があるものの,ウイルス肝炎の疾病構造の急速な変化に遅滞なく対応することが医療行政に求められている.

  • 文献概要を表示

C型肝炎ウイルスの蛋白を標的としたdirect-acting antiviral agent(DAA)は,強力な抗ウイルス効果を有するが耐性株出現が問題となる.Peg-interferon+RBV(Peg-IFN/RBV)抵抗性の患者では,simeprevir(SMV)+Peg-IFN/RBV療法によりプロテアーゼ阻害薬(PI)耐性ウイルスが出現する可能性があり,出現した耐性ウイルスが将来的に使用可能となるPI+NS5A阻害薬併用療法の効果に支障を及ぼす可能性がある.現時点ではできるだけPI耐性株を出現さないようにすることが重要であり,そのためには,Peg-IFN/RBV抵抗性の患者に対するPI+Peg-IFN/RBV療法の適応を慎重に考慮する必要がある.

  • 文献概要を表示

肝幹/前駆細胞とは,肝臓に内在し肝細胞と胆管上皮細胞の2種類の上皮細胞に分化でき,かつ高い増殖能をもつ細胞である.肝臓は成熟肝細胞の増殖により再生できる臓器であり,肝幹細胞には不明な点が多かったが,近年の研究の進展により,肝幹/前駆細胞の性質の多くが明らかになってきた.最近,ヒトiPS細胞から培養系によって肝幹/前駆細胞および肝細胞を誘導することが可能となった.今後の研究で,これらの肝幹/前駆細胞を利用した肝再生医療が臨床応用できるようになることが期待されている.

View Spot

PATHO-Words講座 病理のことばを読み解こう(Vol.1)

ドジって学ぶ統計学臨床研究 凡太郎のボンボン日記

よくわかる透析療法「再」入門(number 14)

Dr.徳田の英語論文 書き方のツボ 症例報告編(第4回)

学び直し診断推論(第14回)

肝機能異常 横江 正道

Photo Report

  • 文献概要を表示

78歳女。咳嗽が出現し近医を受診、胸部X線で左肺の網状・粒状影を指摘されたほか、胸部CTで左S6に33mmの腫瘤影と縦隔リンパ節腫大、左上葉にびまん性に粒状影と同質の肥厚、左胸水の貯留を認め、癌性リンパ管症を伴う肺癌が疑われ、著者らの施設へ紹介となった。頭部MRIを行なったところ、前頭葉の中心前溝皮質下に白質16mm大の転移、左側側頭葉、左後頭葉に微小転移が認められた。また、骨シンチでは胸骨体部、胸骨柄部、左第6肋骨、右足関節にhot spotが認められ、FDG-PETでは両側の縦隔リンパ節への異常集積がみられた。以上、これらの所見を踏まえ、更に気管支鏡で左B6bより経気管生検を行なった結果、本症例はエクソン21のL858R EGFR遺伝子変異が認められる、腺管形成が不明瞭な腺癌(cT2aN3M1b IV期)と診断された。以後、治療としてgefitinib(250mg/day)の投与が行われ自覚症状は数日で改善、原発巣もやや縮小し、左胸水も減少、癌性リンパ管症の軽減もみられ、stable disease(SD)と判定した。一方、gefitinibによる薬剤性肝障害が生じ、その投与が中止されたが、肝機能はグリチルリチン酸を投与することでほぼ正常化し、gefitinibの中止から19日目にerlotinib(100mg/day)が投与された。だが、肝機能の悪化は認められなかった。尚、erlotinib投与1ヵ月目の胸部CT像では抗腫瘍効果が得られており、MRIでも脳転移の縮小がみられ、SDと判定された。

  • 文献概要を表示

62歳女。糖尿病および腎症で加療中に糖尿病が悪化し入院となった。HbA1c(JDS)は9.3%で、左水腎症と尿管結石陥頓を伴い、更にEscherichia coli(ESBLs)を起因菌とする尿路感染を併発していた。PIPC(2g/day)による静注抗菌薬治療を行い軽快後、尿管結石に対し体外衝撃波結石破砕治療(ESWL)が施行されたが、退院から3ヵ月経過で食欲不振と倦怠感を自覚、腎機能障害と炎症反応の上昇を指摘され、尿路感染の診断で再入院となった。腹部エコーでは左腎被膜下に血腫様のecho free spaceがみられ、腹部CTでは両側に腎結石が認められた。また、左腎は腫大し、被膜下に9.3cmの低吸収領域もみられた。一方、尿培養からはESBLsが検出され、膿瘍病変が疑われ、入院3日目に泌尿器科へ転科となり、原因としてESWLの可能性が考えられた。そこで、造影CTを行なったところ、左腎被膜下に膿瘍を疑う不正な造影増強効果に伴う腫瘤確認されたほか、入院7日目には判別困難な左腎病変に試験穿刺を行い、血腫と診断され、ドレーン留置はせず穿刺のみで終了した。以後、高熱があるため抗菌薬の投与が継続されたが持続、入院29日目に内科で精査するも解熱せず、入院42日目に再度、泌尿器科にて左腎のspace occupying lesion(SOL)を穿刺した結果、粘調な性状の排液が吸引され、pigtailカテーテルを膿瘍腔に留置した。そして、暗赤色からクリーム色の膿を大量に吸引除去し、生食で洗浄を行うことで、炎症反応および発熱は改善し、患者は入院52日目に退院、培養ではESBLsが検出された。

  • 文献概要を表示

69歳女。既往として22歳と24歳時にバラ色疹で光線療法、26歳時に甲状腺腫で甲状腺部分切除が行われた。今回、右視力の低下があり、ぶどう膜炎所見がみられた。また、胸部X線では肺門部リンパ節腫脹が認められ、サルコイドーシスが疑われたたが、ツベルクリン反応は陰性で、軽度のTSHの上昇を認められるも甲状腺機能低下症はみられなかった。一方、血清ACE値および血清リゾチームの上昇やIgMの著明な低下、sm-IgMの著明な上昇のほか、造影CTでは縦隔および肺門部に腫大したリンパ節が散見され、ガリウムシンチグラムでは肺門部および脾臓に異常(最大径約37mm)集積が認められた。以上より、本症例は臨床的にサルコイドーシスと診断され、更にIgMの持続的低下、その他の免疫グロブリンの低下が認められないことより選択的IgM欠損症と診断された。尚、目下は無治療で経過観察中である。

  • 文献概要を表示

74歳男。約3年前にS8肝細胞癌にラジオ波焼灼術(RFA)が施行されたが、翌年のCTでは肝右葉S5の腫瘍再発と右門脈腫瘍栓が認められた。ウイルスマーカーはHCV抗体が陽性、腫瘍マーカーはAFPとPIVKA-IIが著明に上昇していたほか、トランスアミラーゼおよび胆道系酵素の軽度上昇もみられた。だが、ビリルビン値やアルブミン値は正常で肝予備能は保たれていた。以上より、リザーバーを留置の上、low dose FP(5FU+CDDP)療法を施行し、約2クール後に1週間毎の投薬を繰り返した。1年後、肝細胞は縮小し、CT画像上でもviable tumorは認めず、腫瘍マーカーも低下した。しかし、リザーバー留置部位の損傷によりリザーバーを抜去したところ、約3ヵ月経過で再発が認められ、肝動脈化学塞栓療法(TACE:ミリプラ使用)を追加するも腫瘍マーカーは再上昇し、再度、左リザーバー留置の上でlow dose FP療法を開始した。だが、2度目のcisplatin動注開始から5分でショック状態を呈し、直ちにcisplatinを中止後、ステロイド投与を行なうことで30分経過でようやくショック状態は改善された。以後、これを踏まえて、cisplatinの使用を控え、5FU単独動注療法や5FU動注療法+peginterferon(FAIT)が行われたが効果なく、最終的に患者は腫瘍の増悪ともに再発から約2年4ヵ月目に死亡となった。

  • 文献概要を表示

28歳男。約4年前に交通事故による右下腿前脛骨部挫滅外傷の既往があった。今回、右下腿伸側瘢痕部が著明に腫脹したほか、右下腿前脛骨部には敷石状に扁平隆起した紅斑を認め形成外科を受診、pretibial myxedema(PTM)と診断後、著者らの内科へ紹介となった。所見では4年前にBasedow病を発症し甲状腺亜全摘を受けるも、1年5ヵ月目からはL-T4の内服を自己中断していた、このことからTSH、FT3、FT4の上昇、潜在性甲状腺機能低下症の増悪ほか、TSAbとTRAbの高値、抗HTG Abと抗TPO Abの陽性がみられた。一方、眼窩MRIではT1強調像で両眼の眼球突出、外眼筋の腫大、両眼窩内の脂肪織増生が認められた。また、右下腿前脛部の皮膚生検ではHE染色で著しい真皮乳頭層の浮腫が認められ、あわせてalcian blue染色陽性、hyaluronidase treatmentにsensitiveで膠原線維間に沈着するムチンが認められた。以上より、本症例はPTMと診断され、L-T4の補充を再開するとともに、局所にステロイド外用薬塗布が行われた。その結果、TSH低下と右下腿周囲の縮小傾向に加え、扁平隆起した紅斑局面の改が認められた。尚、患者はその後は経過良好で転勤となり転医となった。

基本情報

24329452.113.04.cover.jpg
臨床雑誌内科
113巻4号 (2014年4月)
電子版ISSN:2432-9452 印刷版ISSN:0022-1961 南江堂

文献閲覧数ランキング(
3月30日~4月5日
)