臨床雑誌内科 113巻3号 (2014年3月)

2025年を見すえた心不全診療ロードマップ 突破口はどこにあるのか

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心不全は「心筋障害により心臓のポンプ機能が低下し,末梢主要臓器の酸素需要に見合うだけの血液量を絶対的に,または相対的に拍出できない状態であり,肺体静脈系または両系にうっ血をきたし,生活機能に障害を生じた病態」と定義される.心不全の診断はFramingham基準をもとに行われるが,他疾患との鑑別も容易ではなく,症状や徴候,検査所見に基づいて心不全診断を行う.とくに,早期診断にBNP,NT-proBNPを参考指標として用いることが提案されている.心不全はすべての心疾患の終末的な病態であり,その生命予後はきわめて悪い.交感神経系やレニン-アンジオテンシン-アルドステロン(RAA)系などの神経内分泌因子が病態に大きく関与しており,予後改善の点においてβ遮断薬やRAA系抑制薬が有効である.

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わが国における慢性心不全の基礎疾患として虚血性心疾患が最多で,心筋症がこれに次ぐ.心不全の半数以上を占める左室駆出率の保持された心不全(HFpEF)に対する治療はいまだ確立されていない.超高齢社会を迎えた現代日本では,今後,HFpEFに加えて高齢者の心不全,女性の心不全に対する治療の確立が急務である.

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人口構造の変遷や地域コミュニティの衰退および国民の価値観の多様性が増すなか,今後の医療介護需要に対して新たな取り組みが求められている.心不全分野にかかわる需要と供給の関係は,たとえば死亡率とおおむね同水準で医師数が増加する傾向にある.一方で,財源均衡作用の影響による報酬抑制も一部に散見され,また他領域に比べて残存する疾病負担が高く,投入される医療費も大きい状況にある.高齢者の比率増が予想される2025年に向けて,重層的な機能連携とともに,疾病予防も含む総合的な心不全マネージメントを担う診療サイトの整備が,医療提供の持続性において一つの論点と考えられる.

心筋実質に介入する 塩井 哲雄
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心不全は,複数の因子が互いに関連しあい閉鎖系を形成する非線型なシステムである.心臓の大きさの恒常性維持の仕組みの解明は,心不全病態解明の一つの鍵である.心不全の発症原因を要素に分割し,網羅的解析を行い,システムバイオロジーにより心不全を再構成することが,心不全病態解明への一つの手段である.心不全研究は,科学一般における種々の方法論実験手法を応用する場となる,これからの学問である.

心筋間質に介入する 真鍋 一郎
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心筋は,心筋細胞と間質に存在する多様な細胞,組織を構築する細胞外基質によってつくられている.心筋に存在する細胞の間には,常に密接なコミュニケーションがあり,心臓の恒常性を維持している.心不全は多彩な要因から生じるが,原因のいかんに関わらず,心筋組織構築の改変(リモデリング)が生じ,予後を規定する.リモデリングでは線維芽細胞をはじめとする間質の細胞が主要な役割を果たす.線維芽細胞の活性化や機能に介入する治療法の開発が進められている.

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高血圧による心肥大では,ミクロレベルの相対的心筋虚血が生じ,新生血管を誘導することで代償している.老化シグナルであるp53が,HIF1を介して新生血管の誘導に関与している.心筋組織においてインスリンシグナルが心肥大を惹起することで,心筋虚血が生じている.心不全時には脂肪組織においてインスリン抵抗性が生じており,高インスリン血症をきたすことで心肥大を助長している.アンジオテンシンIIやインスリンによりp53を介した老化シグナルが亢進することから,ACE/ARBなどの薬剤やインスリン抵抗性の改善が心肥大による心不全に重要である可能性が示唆される.

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心臓と腎臓には機能的連関があり,軽度の慢性腎臓病でも心血管病のリスクは高まり,心不全の病態では腎機能の低下は進行しやすい.レニン-アンジオテンシン系,カテコラミンおよびバゾプレシンなど心腎共通の体液調節因子が存在し,共通の臓器障害機序をもっている.体液因子のほか,心不全の病態では循環動態を介した心腎連関が存在する.心不全の病態では血圧の低下により腎血流が減少する.とくに腎髄質血流は血圧に強く依存することから,血圧の低下により,腎髄質血流の減少がみられる.また,下大静脈圧の上昇により腎静脈圧が上昇すると,腎うっ血により腎虚血とともにナトリウム(Na)利尿が障害される.これにより体液貯留が加速し,心腎間の悪循環が生じる.利尿薬はこの悪循環を改善させる薬剤であるが,心不全の病態ではしばしば利尿薬抵抗性がみられる.そのため,しばしば高用量の利尿薬を要する.従来多用されているfurosemideでは,腎機能低下が進行することがある.V2受容体拮抗薬は血管側より作用するため,腎機能低下症例でも効果を発揮する可能性がある.また,臓器保護を狙える利尿薬として期待されている.減塩もまた,臓器保護を期待できる体液調整法であり,患者教育も重要である.

心脳連環 岸 拓弥
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動脈圧受容器反射化学受容器反射心臓低圧受容器反射などによる「脳」の血管運動中枢を介したフィードバックシステムにより,自律神経系は循環恒常性を維持している.圧受容器反射不全は,容量耐性と腎臓での圧利尿関係を大きく悪化させる.「脳」延髄の交感神経中枢において,交感神経出力を増大させるレニン-アンジオテンシン系や酸化ストレスが心不全で活性化している.圧受容器反射刺激や迷走神経刺激の心不全における有効性が提唱されており,さらにバイオニック圧受容器反射システムや,「脳」を標的とする交感神経抑制を介した心不全治療の可能性を提唱する.

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心不全患者では運動耐容能が低下しており,予後と密接に関連している.運動耐容能低下の主因は骨格筋異常であると考えられている.萎縮,線維型の変化,代謝酵素変化,およびエネルギー代謝異常などが起こっている.どのような機序で骨格筋異常が起こるかは不明な点が多い.最近,骨格筋からさまざまな成長因子やサイトカインなどのマイオカインが分泌されていることが明らかになり,骨格筋異常の制御に関与していることが示唆されている.さらに,これらのマイオカインは心臓の機能にも影響する可能性があり,心-骨格筋連関を形成していると考えられる.

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心エコーでは,拡張能や僧帽弁逆流の評価が引き続き重要であり,術式を左右するモダリティである.心臓核医学の領域ではPETの普及により,心筋虚血の定量化とviability評価が,さらに身近になると考えられる.心臓CTでは,冠動脈FFRが応用されつつあり,低被曝でperfusionの実用化が待たれる.弁膜症診断治療へのモダリティとしても期待されている.心臓MRIは冠動脈MRAや心機能解析,造影遅延,T1マッピングなど,形態のみならず機能診断への応用が進んでおり,次世代をリードするモダリティである.この先10年間の心疾患治療における非侵襲的画像診断の役割はきわめて大きく,各モダリティを駆使したハートチームの構築が急がれる.

バイオマーカー 桑原 宏一郎 , 木村 剛
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心不全はいまだ予後不良の症候群であり,心不全の診断,予後予測,治療方針決定などに有用なバイオマーカーの探索が強く求められている.現在,脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)あるいはN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)が心不全の診断,予後予測に有用なバイオマーカーとしてその意義が確立されている.また心筋トロポニンが心不全における心筋障害のマーカーとして評価されており,そのほかさまざまな因子の心不全バイオマーカーとしての意義が検討されている.

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この半世紀の医学の進歩により,心血管疾患の治療は飛躍を遂げ,その急性期死亡は減少したが,代わって中長期的に発症してくる心不全が問題となっている.さらに,わが国では未曾有の人口高齢化によって,「心筋リモデリング(線維化)」の危険因子となる高血圧や糖尿病患者が増え,サイレントあるいは虚血と関連のない心不全を発症する患者も増加している.心不全診療に要する医療費は莫大なもので,世界的にもより効果的で効率的な心不全治療を行うことが急務であり,Stage B(無症候性左室機能障害)での予防はこれまでになく重要な位置を占めるにいたっている.

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心不全は急性から慢性まで一連の流れがあるため,当然ながら急性期対応は慢性期の状態に影響を与える.したがって,急性心不全に接するすべての関係者が,時間軸の重要性を理解し,うっ血と低心拍に対応しなければならない.この対応が臓器障害を最小限に食い止め予後改善をもたらすと考えられる.

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心不全における末期医療は,ガイドライン推奨治療を行ってもなおNYHA IV度相当の呼吸困難などの苦痛がとれない場合に対象となる.薬剤を用いる緩和ケアは医療側と患者側双方の選択肢のひとつであり,末期心不全においては通常診療と並行して考えるべきものとされる.しかしそのタイミング,投与薬剤についてエビデンスはないため,薬剤投与時には多職種チームと家族の総意が必要である.今後,高齢化社会を迎えるにあたって重要な検討課題になると思われる.

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高齢者の心不全には,左室駆出率(LVEF)の保たれた心不全が多く,高血圧を伴う電撃性肺水腫や大動脈弁狭窄症,心房細動の合併も多い.高血圧や慢性腎臓病(CKD)の合併も多く,薬物投与により副作用を起こしやすく調節が必要である.退院後の介護も見据えたロードマップを入院初期から考えておく必要がある.

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高齢者心不全を代表する病態,HFpEFは年々増加傾向にあり,超高齢者心不全の慢性期管理の鍵を握っている.HFpEFに有効な治療薬として,β遮断薬carvedilolや長時間作用型のループ利尿薬azosemideなどが期待されている.また,医学的な介入に加え,患者教育や,介護サービスの利用など,包括的な介入が問題解決の鍵を握ると考えられる.

超高齢者心不全のケア 眞茅 みゆき
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人口の高齢化に伴い,心不全患者,とくに高齢心不全患者の増加が予測される.高齢心不全患者では,基礎心疾患の治療に加え,合併疾患の治療管理,認知心理機能の評価介入,社会的問題を含めた多面的問題に対する包括的管理が求められる.循環器専門医,看護師,理学療法士,精神科医,老年病専門医,医療ソーシャルワーカーなどを含めた専門チームによる医療の推進が必要である.

都市型在宅医療の実践 横山 広行
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約300万人が高齢慢性心不全に罹患する時代に,循環器専門医だけでなく,一般医家が心不全在宅医療の足下を支える重要な役割を担うであろう.すべての心不全患者に対する均一化した包括心不全管理は,再入院死亡を十分抑制できないことが報告され,個々の症例に適合した疾病管理が求められている.高齢慢性心不全の増加により,都市部でも急性期病院での受け入れが困難になるため,入院から退院に続く心不全在宅医療の多職種連携が,再入院を抑制する唯一の方法であり,一般医家が在宅医療に積極的に関わることが求められる時代がくる.

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高齢化が進行した地方では対象人口は少ないが,それ以上に医療資源が乏しい.慢性心不全が増加しているが,患者にとって選択肢がないなかで地域の基幹病院も診療所も最善の医療を求められている.北信州地方に立地する北信総合病院では,多職種チーム医療により包括的心不全治療を提供している.これらを実現可能な形で在宅診療に引き継ぐために地域診療所との地域連携パスを導入し,包括的管理を持続するためのコメディカルパスを併用する.さらに病気をもった生活者としての在宅生活を持続的にサポートする多職種,多業種連携を促進し,地域ぐるみで生活環境を改善するための北信州心臓病地域連携包括ケア推進協議会を設立して,連携システムの構築から教育啓蒙活動を開始した.

心不全ハイブリッド治療 桃原 哲也
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心不全の治療は,年齢によって大きく分けて考える必要がある.一つは若年者の場合,最終段階の移植医療までを視野に入れた治療を必要とする.もう一つは高齢者の場合,とくに80歳以上の高齢者では,予後も大切だが,まずは,症状をなくすまたは軽減させる治療が念頭に置かれることも多くある.本稿では,増加の一途をたどっている高齢者の心不全について,外科的治療,カテーテル治療,デバイス,理学療法(リハビリテーション)を組み合わせたハイブリッド治療とその有効性や今後の方向性について,さらにハイブリッド治療を円滑になおかつ有効に行うためのハートチームについて述べる.また,重症大動脈弁狭窄症に対する「経カテーテル大動脈弁植え込み術(TAVI)」という"低侵襲治療"を中心に話題を提供する.

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心不全に合併する不整脈により心不全悪化をきたし,さらに重症不整脈を発生させることは臨床でしばしば経験される.心不全では,心筋イオンチャネルのリモデリングが生じる結果,不応期が延長し不整脈が発生しやすい素地ができる.心不全によるリアノジン受容体からのCa放出により,細胞内Caが過剰となり不整脈源性となる.心不全に合併する心室性期外収縮への抗不整脈薬による治療は,生命予後を悪化させることがある.carvedilolはリアノジン受容体を標的としCa過負荷を軽減させ,心不全進行予防および不整脈予防に寄与する.

ドジって学ぶ統計学臨床研究 凡太郎のボンボン日記

よくわかる透析療法「再」入門(number13)

Dr.徳田の英語論文 書き方のツボ 症例報告編(第3回)

学び直し診断推論(第13回)

慢性下痢 宇藤 薫

比較で学ぶ 病理診断ミニマルエッセンシャル(最終回)

胃の陥凹性病変の鑑別診断 松林 純

Photo Report

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52歳女。直腸癌の低位前方切除に対し術前にmFOLFOX6+BVを、術後に5FU+levofolinateの化学療法を受け、制吐剤として大量dexamethasoneも投与した。しかし、術後の化学療法5クール目に発熱、咽頭痛と食欲不振が出現し近医を受診、前頸部痛、頻脈と甲状腺腫大が認められたため、著者らの施設へ紹介となった。入院時、意識はJCS I-2で傾眠、咽頭発赤をはじめ、甲状腺は両葉とも7×4cmで峡部も緊満様、弾性硬で圧痛が認められた。またほか高炎症反応や甲状腺機能の軽度高値に加え、抗Tg・TPO抗体は強陽性だが抗TSH受容体抗体(TRAb)は陰性で、血清コルチゾールはショック状態に比して低値であった。以上、これらの所見を踏まえて、細胞外液補液やドーパミン持続静注、およびpiperacillin/tazobactamを開始することで意識は徐々に改善したが、頸部CTでは著しい甲状腺腫大がみられ、甲状腺エコーでは甲状腺腫大と峡部の肥厚が認められた。そこで、甲状腺穿刺吸引細胞診を行なったところ、背景にリンパ球が認められ、橋本病の急性増悪と診断、第4病日目よりloxoprofenを投与した結果、速やかに解熱となり、炎症反応と甲状腺圧痛の改善とともに甲状腺腫大も改善した。尚、最終的には血圧の上昇がみられたためドーパミンを中止し。患者は第9病日目に退院となった。

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82歳男。25歳時に肺結核、79歳時に再発性右気胸による胸腔鏡下(VATS)肺部分切除術の既往があった。今回、COPDと診断され、在宅酸素療法を受けていたが、呼吸困難が増強したため著者らの施設へ受診となった。X線では3年前に比べて網状・線状影が増強し、スリガラス影の出現がみられた。また、胸部CTでは上肺は気腫性肺嚢胞、中~下肺は肺気腫と肺線維症の混在、下肺は肺線維症部位で、大型の嚢胞陰影ほか、蜂巣肺に接してスリガラス影も認められた。以上、これらの所見を踏まえて、本症例は肺気腫合併肺線維症(CPFE)の急性増悪と診断された。以後、肺気腫に対し吸引薬のtiotropium、salmeterol xinafoate、fluticasone propionateほか、ステロイド療法としてmethylprednisolone、cefozopran hydrochloride、prednisoloneが行われた。しかし、SpO2は軽労作でも著明な低下がみられ、更に肺機能の拘束性障害も認められた。そこで、入院から27日目に呼吸リハビリテーションを行なった結果、35日目の胸部CTではスリガラス影は消褪し、38日目には%DLcoは32%に改善、間質性肺炎マーカーもそれぞれ下降し、患者は58日目に退院となった。

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41歳女。発熱と腹部不快感で受診となった。所見では右上腹部に鈍痛、低フィブリノーゲン、フェリチン上昇ほか、線溶亢進および貪食所見がみられた。またsIL-2Rも比較的高く、血球貪食症候群(HLH)の判断のもとm-PSLパルス療法施行後にPSLが投与された。更にHLH-94に従いdexamethasone(Dexa)、ciclosporin(CYA)に加えetoposide(VP-16)も追加し、CRPの陰性化とともにフェリチンは減少した。しかし、第50病日目に呼吸苦が出現、X線では左上肺野の透過性低下も認められ、CFPMとmicafunginの投与で肺炎は改善したが、第85病日目には再び右下肺野、左上肺野の浸潤影が出現し、あわせてサイトメガロウイルス陽性細胞の増加もみられ、ganciclovirが投与された。その後も127病日目にはCTで右下肺野に空洞病変が認められ、第134病日目には突然の右胸部痛が出現、X線では右胸部に2度の気胸が認められ、胸腔ドレーンによる胸水排液を培養したところ、緑膿菌が検出、CFPMで治療後にpicibanil癒着術が施行された。一方、第274病日に左股関節痛で左大腿骨頸部不全骨折を認め、疼痛コントロールに麻薬投与を開始したが、第374病日に左大腿骨骨頭壊死と診断された。CRPの上昇に各種抗生物質、抗真菌薬を投与したが改善せず、第513病日目に左大腿骨頭の臼蓋破壊の進行で緑膿菌が検出され、骨髄炎を疑い、第533病日目に左大腿部骨頭の洗浄とデブリードメントを行なった後、抗生物質入りセメントステムを挿入した。その結果、病理所見は壊死性慢性骨髄炎で、炎症改善とともに大腿骨頭置換術を施行し、患者はリハビリ後、720病日に退院となった。

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54歳女。腹部違和感と体重減少があるも放置していた。今回、健康診断で右胸水貯留を指摘され著者らの施設へ受診、腹部CTで腹水を伴う巨大な卵巣腫瘍の疑いで入院となった。所見では臍周囲から恥骨付近まで圧痛のない硬い腫瘤が触知されたほか、軽度の炎症反応、CA125の高値がみられ、胸水からclass Vの腺癌が認められた。一方、上部消化管造影では胃体上~中部大彎側の壁不整と狭窄、上部消化管内視鏡では胃体中部大彎前壁寄りに辺縁不整の3型胃癌(低分化型腺癌)が認められた。また、MRI(矢状面)では骨盤内にT1WIで子宮と同等の低信号、T2WIで高信号と低信号が不均一に混在する20×17×12cmの充実性腫瘍が確認された。以上より、本症例は胃および卵巣の組織所見より胃癌+癌性胸膜炎+Krukenberg腫瘍と診断された。そこで、S-1+CDDP療法を行なったところ、1クール終了後に胃原発巣の縮小傾向がみられたが、胸水と卵巣転移巣はSDであった。以後、1ヵ月経過でS-1+CPF11療法に変更した結果、右胸水は消失し、呼吸状態も改善した。一方、腫瘍は増大がみられたため、10ヵ月後よりweekly TXL療法が行われたが、患者はDIC状態となり、化学療法の継続は不能で治療開始から32ヵ月目にに死亡となった。

基本情報

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臨床雑誌内科
113巻3号 (2014年3月)
電子版ISSN:2432-9452 印刷版ISSN:0022-1961 南江堂

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