JIM 13巻4号 (2003年4月)

特集 健診で異常を指摘された人へのベストガイド

【一般健康診断での異常】

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Case

偶発的血尿で発見されたIgA腎症の1例

 患 者:19歳,女性.

 既往歴:特記すべきことなし.

 家族歴:特記すべきことなし.

 現病歴:中学時代から時々血尿の指摘をうけるも放置.健診にて潜血反応を指摘され,精査目的で来院.検尿にて潜血陽性(+),沈さで赤血球10~30/HPF.腎機能検査,血液検査,形態学的検査などで異常なしのため単独血尿として経過観察.血尿の増悪はなかったが,半年後の早朝尿で円柱の出現と尿蛋白0.5 g/日前後が継続して認められるようになったため,腎生検を施行,IgA腎症と診断す.予後比較的良好群のため,日常生活の制限なく外来で経過観察中である.

 地域,職場,学校で実施されるほとんどの健診において検尿は必須の検査で,試験紙法により蛋白尿,血尿,糖尿の検査が行われている.一方,腎機能の評価に有用な検査である血清クレアチニン値測定も同様に施行される.一般に,これらの検査異常で示唆される糖尿病や腎・泌尿器疾患は,急性などの特殊な場合を除けば自覚症状に乏しく,早期に発見することが困難なことも多い.したがって,健診異常をいかにとらえ,管理し,対策をたてるかは,疾患の進行や予防を考えるうえできわめて重要と思われる.

 本稿では,健診時の検尿と血清クレアチニン値異常の評価や留意点,経過観察や精密検査の必要性などの点を中心にアプローチのしかたについて述べる.なお尿糖については,糖尿病との相関やその病的意味も少ないため省略する.

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健診で高血圧と診断された白衣高血圧の1例

 患 者:42歳,女性.

 既往歴・家族歴:とくになし.

 現病歴:生来健康だが緊張しやすいタイプの中年女性.健診にて170/100 mmHg,心拍数100/分の高血圧を指摘されたが,データでは腎機能,電解質,血漿レニン活性,血漿アルドステロン,甲状腺刺激ホルモンすべて正常.ABPMでは,家庭内では正常血圧を示した.白衣高血圧症と診断し,必要時のマイナートランキライザー,β遮断薬を処方した.

 健診での血圧の異常は圧倒的に高血圧が多く,稀に低血圧が指摘される.今回は高血圧について述べる.

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健診にて発見された肺結核症の1例

 患 者:70歳,男性.

 既往歴・家族歴:特記すべきことなし.

 嗜 好:喫煙 20本/日×50年.

 現病歴:5月頃より咳嗽,喀痰の出現をみたが,軽度のため放置していた.11月の健診にて,胸部X線で左下肺野に異常陰影を指摘され,肺癌の疑いにて某がんセンターを受診した.胸部CTでは左中肺野の腫瘤状陰影と縦隔リンパ節の腫大を指摘された.喀痰抗酸菌検査では塗抹,培養ともに陰性であったが,気管支鏡検査にて左B6入口部に白苔を認め,病理的にはepithelioid granulomaであった.また,同部の洗浄液から結核菌PCR陽性となった.気管支結核,肺結核と診断され,当院に転院した.

胸部X線異常所見への対応の基本

 胸部X線などの画像検査は,生データであるフィルムが健診結果報告書に添付されていない.報告書には胸部X線所見が言葉で表現されているが,これは健診機関の医師によるすでに解釈された所見であり,報告書に基づいて相談を引き受ける側の医師には実際の画像を評価することができないことが多い.一方,専門的な立場からは,実際に胸部X線を見ないと方針決定が困難であり,この点が画像検査以外の他の健診項目と異なる.

 胸部異常所見に対する基本的考え方としては,常に悪性腫瘍を念頭において医学管理を実施することである.疑問のある時は,少なくとも過去2年分,合計3枚の胸部X線写真を持参してもらい,これらを比較することが望ましいと考える.先天性異常や良性疾患では陰影の大きさは不変である.また,石灰化は良性機転の代表的所見であり,明白な石灰化巣を認めるならば悪性腫瘍は否定的である.これに対し,活動性疾患や悪性疾患では陰影が変化し,増悪している可能性が高い.数カ月程度の観察期間でも肺癌病変が広汎に進行することがある.過去のフィルムを入手することができない場合,漫然とした経過観察は危険であり,確定診断のための速やかな精査が必要である.

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境界型糖尿病の段階で通院を中断し,2年後にケトーシスをきたして入院した2型糖尿病の1例

 患 者:43歳,男性.

 既往歴:30歳頃より脂肪肝を指摘されている.

 家族歴:糖尿病なし.

 現病歴:41歳時に職場の定期健康診断で空腹時血糖112 mg/dl,HbA1c 5.9%と精査を勧められて来院.75 gOGTTにて空腹時血糖108,1時間後199,2時間後167 mg/dlと境界型と診断された.肥満があり,食事および運動療法を指導されたが,3カ月後には受診を自己中断した.2年後の夏,口渇感と全身倦怠感が出現して久しぶりに受診したところ,随時血糖687 mg/dl,HbA1c 9.8%,尿糖4+,尿ケトン2+とケトーシスが認められ入院.インスリン療法にて血糖は安定し,退院時には食事と運動療法のみでコントロール可能となった.

 糖尿病の急増に伴い,合併症によるQOLの低下が世界的問題となっている.耐糖能異常を早期に発見するために,健診データという貴重な手がかりをどうすれば最大限に生かせるであろうか.

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高度の高コレステロール血症で狭心症を発病した1例

 患 者:34歳,男性.

 既往歴:特記すべきことなし.

 家族歴:高コレステロール血症(-),虚血性心疾患(-).

 現病歴:30歳の時,職場の健康診断にて高コレステロール血症(320 mg/dl)を指摘されるも放置.仕事上の接待や付き合いが多く,帰宅が遅いこともあり,食事療法および運動療法のいずれも実施されず.33歳にて狭心症を発病,PTCAを実施.その後,食事療法とスタチン投与にて予想以上にコレステロール値は改善.現在コレステロールは管理目標の180 mg/dl前後でコントロールされており,狭心症の再発は認めない

 血中脂質検査は,動脈硬化の進展や虚血性心疾患の予防の指標として,健康診断や人間ドックなどでは必ず実施される検査項目である.

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職場の健康診断で発見された原発性胆汁性肝硬変(PBC)の1例

 患 者:40歳,女性,独身.

 既往歴:なし.

 家族歴:肝臓疾患や膠原病はなし.

 現病歴:アルコールはほとんど飲まない.

 昭和58年の秋季健康診断の血液検査にて,初めてALP15.7(KAU),γ-GTP 96,LAP 636と異常値を示した.HBVは陰性.甲状腺検査,DIC,肝臓エコー検査でも異常を認めず.精密検査のため某公立病院を紹介した.59年1月に肝生検を受け,非A非B慢性肝炎の診断であった.しかし,59年9月の健康診断でも依然としてALPとγ-GTPが高値であったので,抗ミトコンドリア抗体を調べたところ陽性であった.前年の肝生検の組織診断につき,再検査を依頼した.その結果,PBC compatibleの診断であった.経過中,高ガンマグロブリン血症,抗核抗体陽性,高胆汁酸を示すも,ビリルビンは常に正常であった.

 治療は,昭和61年にALPとγ-GTPが急激に上昇したのでプレドニン(R)を投与するも,変化もなく中止.平成元年7月よりコルヒチン1 mgを開始し,平成8年8月よりウルソデオキシコール酸600 mgを追加した.経過中,総胆汁酸と総コレステロールは上昇するものの,ビリルビンは正常であり,症状も全く認めなかった.平成11年5月に退職となり転医した.

 退職時の検査結果はAST 90 IU/l,ALT 75 IU/l,ALP 1,264 IU/l,γ-GTP 523 IU/l,LAP 210,ビリルビン0.5 mg/dl,T.chol 297 mg/dl,TP 8.6 g/dl,IgG 2,405 mg/dl,IgM 461 mg/dl,Hg 12.4,血小板148,000,総胆汁酸373μMであった.なお,HCVは陰性である.平成15年1月現在も健在である.

 健康診断の目的は,肝臓疾患に限らず次のようなものである.

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自覚症状がなく,健診で貧血のみ指摘されて診断に至った多発性骨髄腫の1例

 患 者:73歳,男性.

 既往歴:72歳の時,胆石症.

 現病歴:1年前に軽度の貧血を指摘されていた.今回健診で著しい貧血を指摘された.

 身体所見:眼瞼結膜に貧血を認めた.

 検査所見:Hb 8.7 g/dl,RBC 268×104/μl,Ht 26.8%,WBC 8,550/μl,Plt 32.0×104/μl,MCV 100.0 fl,MCH 32.5pg,MCHC 32.5%,赤血球の連銭形成(+),骨髄検査で骨髄腫細胞が30.6%,血清蛋白免疫電気泳動でIgA(k)型M蛋白を認めた.

貧血の診断の進め方

病歴と身体所見

 健康診断で貧血を認めた患者の精査において,詳細な病歴の聴取と身体所見の把握は重要である.病歴のポイントは,①動悸・息切れなど貧血症状の有無,②いつから貧血があるか,③発熱の有無,④感染症の有無,⑤胸腹部症状,⑥尿・便の性状,⑦性器出血,痔出血および鼻出血の有無,⑧体重変化,⑨既往歴,⑩胃切除などの手術歴,⑪内服薬,⑫家族歴,などである.

 身体所見は,①浮腫,②心雑音,③リンパ節腫大,④甲状腺腫大,⑤肝脾腫,などに注意する.

【がん検診での異常】

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 本邦における胃集団検診(以下,胃集検)は1946年に開始された.平成12年度には5,826,856人が胃集検を受診している.受診者全体における胃癌発見率は約0.1%で,1年間に5,743人が胃癌を発見された1)

 本稿では,胃集検を契機に発見された胃癌症例を提示し,どのような画像所見の拾い上げが胃癌の発見に結びつくのかを解説した.実地医家の先生方が胃集検について,より理解を深めていただく一助となれば幸いである.

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自覚症状はなかったが,S状結腸にmp癌が発見された1例

 患 者:64歳,男性.

 既往歴:特記事項なし.

 現病歴:自覚症状はなかったが,人間ドック検診で便潜血検査陽性を指摘された.痔疾があるので自らは痔出血と考えていたが,医師の勧めで大腸内視鏡検査を受けたところ,S状結腸に1/3周性の腫瘍が発見された.腹腔鏡補助下手術で治療を行った結果,深達度mpの高分化腺癌で,リンパ節転移はなかった.

大腸癌検診の基本とピットフォール

 日本人に大腸癌が増加しているが,その早期発見のために地域住民を対象にしたり,職域,人間ドックなどで大腸癌検診が導入されている. その手段として免疫便潜血検査(J1)が活用されることが多い.すなわち免疫便潜血検査でスクリーニングしたのち,二次検査(精密検査)としてtotal colonoscopyまたは注腸X線検査+sigmoidoscopyを行う検診スタイルである(図1).注腸X線検査は大腸癌の好発部位である直腸やS状結腸の診断に弱点があるので,sigmoidoscopyを併用するという趣旨である.

がん検診での異常―乳癌 森本 忠興
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視・触診で異常が指摘された1例

 症例1:45歳,閉経前女性.視・触診のみによる検診で右乳房外側上部に直径2.0 cm大の腫瘤を指摘された.自覚症状は全くない.視・触診のみによる検診は2年前に受けているが,異常を指摘されなかった.

マンモグラフィで異常が指摘された1例

 症例2:55歳,閉経後女性.マンモグラフィ併用検診において,視・触診では指摘されずマンモグラフィで異常を指摘された.自覚症状は全くない.視・触診のみによる検診は1年前に受けているが,異常を指摘されなかった.

所見のみかた

 供覧症例をもとに解説を加える.一般的には,乳腺腫瘤の診断は,視・触診,マンモグラフィ,超音波検査による画像診断,細胞診,生検による組織診断により行われている.

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比較的発育の遅い肺癌の1例

 患 者:62歳,男性.

 現病歴:自治体主催の肺癌検診を初めて受診し右肺尖近くに2 cm程度の淡い不整型の陰影を指摘された.60歳まで会社で毎年健診を受けており,以前から同部位の陰影は指摘されていたが,不変とのことで精査は行われていなかった.念のため過去数年のフィルムを取り寄せたところ,陰影の大きさはきわめてわずかに増大しているのみであったが,周囲の肺血管の集束や胸膜の陥入が強くなっていた.CTにて高分化腺癌の特徴をすべて認め,気管支鏡にて腺癌細胞が証明され,右上葉切除が行われた.

 末梢の腺癌は自覚症状に乏しく,発育が遅いので,一見増大がなくても,正常構造の分析や高分解能CTでの読影で肺癌が疑われる場合には,積極的な精密検査が必要である.

肺癌検診の所見のみかた

 肺癌検診は一般に,間接または直接X線写真と喀痰細胞診,また一部ではCT撮影によって行われている.したがって,肺癌検診で異常といわれた場合に,これらのどの検査で異常であったのかを確認する必要がある.

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子宮癌検診で子宮頸癌細胞診陽性と通知を受けた未妊婦人の1例

 患 者:34歳,OL.

 主 訴:子宮癌の精査.

 既往歴:特記すべきことなし.

 現病歴:2年前に結婚し,子どもはまだいない.外陰部そう痒感と帯下異常でA産婦人科を受診し,「子宮癌検診もついでにやっておきましょうか?」と医師から言われ,軽い気持ちで子宮頸癌と体癌の検診を受ける.5年前に一度子宮頸癌検診を受け,細胞診クラスⅢaとの結果が出たことがあるが,その時の精密検査では何の異常もなく,その後,検診は受けていない.今回の検診の結果は郵送でわかるということで手続きをして帰り,2週間後「体癌検査:クラスⅡ,異常なし.頸癌検査:クラスⅢb,精密検査が必要です.できるだけ早く精密検査のために専門病院を受診して下さい.」の通知を受け,本日,子宮癌の精査目的で来院.

 子宮癌検診には子宮頸癌検診と体癌検診とがあるが,一般的にはその発生頻度からいって子宮癌検診は子宮頸癌検診と考えられている.子宮頸癌検診には老人保健事業にもとづく市町村での子宮頸癌検診のほかに職域健診,被爆者健診,人間ドックなどさまざまな健診が行われている.問診の結果,最近6カ月以内の不正性器出血を認めた者に対しては一定条件の下で子宮体癌検診が行われている.これらの一次健診で異常の拾い出しが行われ,二次検診として病変の確定のために,患者が来院する.

 本稿では紙幅の都合上,子宮頸癌検診異常者に対する,医師の対応のしかたについて述べる.

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前立腺と前立腺癌(早期診断のために)

 前立腺は,前立腺液を分泌し精子に栄養を与える役目をもつ男性の生殖器の一部で,膀胱から出ていく尿道を取り囲むように存在し,骨盤腔のなかでも低い位置にある臓器である.40歳頃より徐々に,良性の肥大症や悪性の癌などの発生母地となってくることがわかっており,これらは男性ホルモンの影響で発育・増殖していく特徴をもっている.前立腺癌は近年,日本人での発生が急激に増加している癌のひとつであり,その早期発見には,PSA(prostate specific antigen;前立腺特異抗原)というマーカー検査を主体とした地域検診や健康診断の普及が貢献している.早期の前立腺癌の場合,排尿や性機能障害などに特異的な症状が現れることはないが,進行癌になると排尿困難や血尿などの尿路症状や,転移による疼痛,神経麻痺,下肢の浮腫などが出現する.

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癌検診における腫瘍マーカーの意義

 腫瘍マーカーは,癌細胞の出現に関連して産生量が増加し,その検査が癌の診療に役立つと考えられている物質である.しかし,腫瘍マーカーは,早期癌では高値にならない場合(偽陰性)が多く,良性疾患でも高値になる場合(偽陽性)があるため,発癌のリスクが高くない人を対象に行う癌のスクリーニング(癌検診)には役立たない.これに対し,発癌のリスクが高い人を対象に行う癌検診では,腫瘍マーカーは癌の早期発見に役立つ.

 癌検診では,他のスクリーニング検査と併用して,AFP,CEA,CA19-9,PSAなどの腫瘍マーカーが測定されることが多いので,主としてこれらの腫瘍マーカーについて述べる.

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 脳疾患の早期発見を目的に日本で脳ドックが開始されたのは1988年であり,以来MRI,MRAの発達とともに急速に全国に拡大した.MRI,MRAによって,それまで認められなかった脳実質の変化や脳動脈瘤,脳血管狭窄,脳腫瘍などが非侵襲的に発見される機会が増えてきている.画像所見の解釈は専門の脳外科医,神経放射線診断医に委ねられるべきであり,一般医が,たとえば脳白質の生理的加齢変化を病的変化である脳梗塞と安易に診断し,病名を告げることは,受診者の精神的不安,ストレスを招く結果となり慎まなければならないことだと思われる.

 本稿では,脳ドックガイドラインおよび脳ドック学会に報告された全国の脳ドック集計データをもとに,無症候性脳疾患の頻度および診断と対応について概説する.

One more JIM
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Q1 臓器障害例の降圧療法のポイントを教えてください.

 A 脳血管障害例では脳梗塞の急性期には収縮期血圧は治療前値の10%降圧,脳出血は梗塞例より低め,くも膜下出血では厳格に正常血圧以下,Ca拮抗薬,ACE阻害薬,α遮断薬を使う.心機能障害例では心肥大にはACE阻害薬,心不全には利尿薬,ACE阻害薬,Ca拮抗薬,狭心症には長時間作用型のCa拮抗薬,ISA(-)のβ遮断薬.腎機能障害例では塩分と蛋白の制限が基本.慢性腎疾患の降圧目標は130/85 mmHg未満,糸球体腎炎や糖尿病性腎症では積極的に降圧する.降圧薬はACE阻害薬,Ca拮抗薬,利尿薬,アンジオテンシンⅡタイプ1受容体拮抗薬を使う.糖尿病合併症例では心血管系疾患の発症率が2~3倍高いので130/85 mmHg未満を目標.糖尿病性腎症で微量アルブミン尿があれば130~139/85~89 mmHgからACE阻害薬を投与する.降圧薬はACE阻害薬,長時間作用型Ca拮抗薬,α遮断薬である.(林田憲明→本号p310)

What's your diagnosis?4

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病 歴

 高血圧と脳梗塞後遺症で当院に通院していた68歳の男性.約半年前から徐々に進行する腎機能障害を指摘され,精査治療のため入院となった.自覚症状はとくになかったが,以前には正常であったクレアチニン値が,入院半年前には1.2 mg/dlに,さらに入院1カ月前には3.2 mg/dlへと上昇している.

 既往歴:食物・薬剤アレルギー歴なし,40歳頃から高血圧,66歳時脳梗塞.

 嗜 好:喫煙40本40年,機会飲酒.

 内服薬:trichlormethiazide,amlodipine besilate,nifedipine,doxazosin,ticlopidine.

身体所見

 身長165 cm,体重67 kg,血圧182/100 mmHg,脈拍92回整,左右差なし.体温35.8℃.貧血黄疸認めず.胸骨左縁第3肋間に駆出性雑音Ⅱ,呼吸音清.肝脾腫・腫瘤なし.臍上部に収縮期血管雑音あり.両下腿に圧痕を伴う浮腫軽度.皮膚,粘膜,関節に異常所見なし.

JIM Report ミシガン州立大学家庭医療学指導医研修プログラムに参加して(4)

地域医療研修のモデル 江村 正
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 ミシガン州立大学医学部(MSU)では3,4年生の2年間がクリニカル卒前教育であり,クリニカルクラークシップがその中心となる.3年次の家庭医療学科,内科(Basic Medicine)・外科(Junior Surgery)・小児科・産婦人科・精神科それぞれ8週間と,4年次の内科(Advanced Medicine)・外科(Senior Surgery)それぞれ4週間の計56週間が必修である.

 家庭医療学科のクリニカルクラークシップ(FP Clerkship)は外来中心である1).日本の臨床実習は病棟中心であったが,最近ようやく外来教育の重要性が指摘されつつある.そこで,第4回目はFP Clerkshipを紹介する.

地域・家庭医療学実践記(第16回)

地域での信頼作り 涌波 満
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 私の場合,地域医療の実践とは,単に地域で診療所を開設しているという意味ではありません.診療所の利用者だけを対象にするのではなく,地域住民を視野に入れ,しかも彼らが積極的パートナーとなり,保健・医療・福祉活動を行う,地域志向のケア(Community-Oriented Primary Care,以下COPC)を意味しています.COPCはプライマリ・ケアの実践をめざす者の理想的な形であり,地域住民,医療者,そして行政の強い信頼関係の上に成り立っていくものです.このCOPCについては後で取り上げることにして,今回はその基礎固めとしての活動をご紹介します.

 本誌に連載中の“かかりつけ医のための家庭医療学”の第1回で紹介されていたような地域立脚型のケア(Community-based Primary Care)としては,学校医・産業医としての活動,有効な社会資源の活用などがあげられます.

好き嫌いにかかわらず,私も他の開業医の先生方と同じように,村や医師会からの依頼を受け,気が付いてみると,診療所以外での活動をかなりしています.たとえば,私立幼児園・小学校の健康相談役,村立小学校の学校医,現行制度では嘱託医を置かなくてもよい小規模事業所の産業医的役割,村民検診活動,在宅介護支援センターの委託業務,老人保健・福祉事業の策定や運営に関する委員としての活動,要介護認定審査業務です.

かかりつけ医のための家庭医療学(第28回)

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地域資源とは

 地域資源とは,地域で利用可能な社会資源を意味する.社会資源とは福祉的な概念で,社会生活の基準を想定して現実と基準の落差を埋める必要性を社会ニーズとしてとらえ,その目的のために利用可能な資源(リソース)を社会資源とするのが一般的である.①人的資源,②物的資源,③施設資源,④設備資源に分類され,提供主体により,さらにフォーマルな社会資源とインフォーマルな社会資源とに分類されている.

在宅医療技術の進歩(第4回)

在宅における積極的治療 英 裕雄
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 1981年,居宅が医療現場として認められて以来,在宅医療は急速に進歩してきました(表1).これまで酸素濃縮器・人工呼吸器などによる在宅呼吸補助療法,経管栄養・中心静脈栄養などによる在宅栄養補助療法,人工透析や腹膜透析などの在宅透析治療,そのほかストーマや各種カテーテル,創の処置および管理,さらに自己注射管理・自己疼痛管理などが次々と保険適用となったために,現在ではほぼすべての継続維持療法は在宅でも可能な時代になったといえます.

 これら在宅療法の多くは,入院時に導入され,在宅では維持管理することが中心となりますが,もともと入院困難な在宅療養中の虚弱者に対して新たに在宅で新規療法が導入され維持管理される場合も少なくありません.これら在宅療法のほかに,通常,家族が中心になって行っている吸引や吸入などと,訪問医療者が行う末梢点滴による各種注射などさまざまな医療行為を組み合わせると,かなりの治療環境が実現できるようになったといえます.

患者の論理・医者の論理(新連載/第1回)

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 尾藤(司会) 本日は,日本の臨床疫学に関しては草の根時代から真摯に取り組んでこられた新保先生と,EBM界のスーパースターの名郷先生に囲まれて,たぶんに緊張しており,暴走などすることもあるかもしれませんが,よろしくお願いいたします.

 今日のテーマは「患者の論理・医者の論理」ということで,EBMと一見関係なさそうに思えますが,EBMをやっていくとどうしてもここは避けて通れないというところであり,このことは最近多くの方々が感じておられることだと思います.まず,EBMというものがマクマスターから発信されて,日本でも大変ポピュラーなものになってきているわけですが,感慨も含めて,その点はいかがでしょうか.

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 太田(司会) 今月のターミナルケア・カンファレンスを始めたいと思います.今月は外科のケースです.担当医の熊倉先生,プレゼンテーションをお願いします.

症例呈示

 熊倉(担当医) 患者さんは自殺企図のみられた進行期胆囊癌の57歳の男性です.プロフィールとしては,建設業の方で,奥様と二人暮らしをされており,お子さん3人は自立しています.キーパーソンは奥様でした.

 現病歴ですが,昨年8月に心窩部不快感と,高度の黄疸のために近医を受診されました.腹部CTにて胆囊内に直径2 cm大の腫瘤性病変が認められ,経皮的胆囊ドレナージが施行されました.その時の胆汁細胞診でクラスⅤが出て,胆囊癌と診断されています.ご本人,ご家族が当院での診療を希望され,同年9月6日当院外科外来を受診されました.その時緊急入院となり,9月9日の腹部CTで大動脈周囲リンパ節の転移が指摘され,stageⅣで根治手術は不可能と判断されました.その時点でご本人にもこのことを説明し,手術するか,しないかという判断を待つことになりました.結局手術はしないということで,9月13日に胆管内ステント挿入術が施行されました.ステント挿入後は減黄がみられ全身状態が改善したので,9月28日に一度退院されています.

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 症例は掌蹠に多発する有痛性結節性皮下出血(Osler結節)と反復する発熱で受診された生来健康な50歳主婦で,僧帽弁逆流音および結膜出血斑と合わせ,簡単に感染性心内膜炎の診断はついたが,血液からは予想に反してMSSAが培養された.発熱に先立ち上背部痛があったとのことで,骨シンチを撮ったところ,表紙写真上のように左前頭部にRIの異常集積を認めたため,まず頭蓋骨の病変を考えたが,病歴上頭部外傷,頭痛なく,診察上も頭皮正常,頭蓋骨に圧痛・叩打痛なく,頭蓋振盪痛もなく,神経学的にも前頭葉徴候を含めた異常は全くなかった.

 しかし心内膜炎において,脳への無症候性細菌性塞栓は珍しくないため脳MRIを撮影したところ,同部位に,表紙写真下左・右に示すごとく,造影にて輪状増強を示す膿瘍とおぼしき病変を認めたため,骨シンチにおける異常集積はこれによるものと考えられた.

基本情報

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JIM
13巻4号 (2003年4月)
電子版ISSN:1882-1197 印刷版ISSN:0917-138X 医学書院

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