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Case
健診にて発見された肺結核症の1例
患 者:70歳,男性.
既往歴・家族歴:特記すべきことなし.
嗜 好:喫煙 20本/日×50年.
現病歴:5月頃より咳嗽,喀痰の出現をみたが,軽度のため放置していた.11月の健診にて,胸部X線で左下肺野に異常陰影を指摘され,肺癌の疑いにて某がんセンターを受診した.胸部CTでは左中肺野の腫瘤状陰影と縦隔リンパ節の腫大を指摘された.喀痰抗酸菌検査では塗抹,培養ともに陰性であったが,気管支鏡検査にて左B6入口部に白苔を認め,病理的にはepithelioid granulomaであった.また,同部の洗浄液から結核菌PCR陽性となった.気管支結核,肺結核と診断され,当院に転院した.
胸部X線異常所見への対応の基本
胸部X線などの画像検査は,生データであるフィルムが健診結果報告書に添付されていない.報告書には胸部X線所見が言葉で表現されているが,これは健診機関の医師によるすでに解釈された所見であり,報告書に基づいて相談を引き受ける側の医師には実際の画像を評価することができないことが多い.一方,専門的な立場からは,実際に胸部X線を見ないと方針決定が困難であり,この点が画像検査以外の他の健診項目と異なる.
胸部異常所見に対する基本的考え方としては,常に悪性腫瘍を念頭において医学管理を実施することである.疑問のある時は,少なくとも過去2年分,合計3枚の胸部X線写真を持参してもらい,これらを比較することが望ましいと考える.先天性異常や良性疾患では陰影の大きさは不変である.また,石灰化は良性機転の代表的所見であり,明白な石灰化巣を認めるならば悪性腫瘍は否定的である.これに対し,活動性疾患や悪性疾患では陰影が変化し,増悪している可能性が高い.数カ月程度の観察期間でも肺癌病変が広汎に進行することがある.過去のフィルムを入手することができない場合,漫然とした経過観察は危険であり,確定診断のための速やかな精査が必要である.
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