看護管理 18巻8号 (2008年7月)

特集 ワーク・ライフ・バランスを実現し,成果を上げるマネジメント―多様な働き方と人事制度に焦点をあてて

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医療職の偏在,施設での人員・人材不足がいわれるなか,各施設にとって喫緊の課題である人材確保・定着のための方策として,昨今,ワーク・ライフ・バランスに関連した話題が多く聞かれるようになっている。

本特集では,ワーク・ライフ・バランスの具体的なしくみを先進的に導入し,効果を上げている施設の事例をその考え方とともに紹介してもらった。

看護職が,各個人の人生設計のなかで,専門家としてのキャリアデザインを描いて働くとき,それに沿った多様な働き方が可能な環境をどのように整備するか,と同時に,看護部として成果を上げていくためのマネジメントのあり方とのバランスを管理者がどのように図っていくかのヒントを見つけたい。

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2007年より日本看護協会では,看護職確保定着推進戦略プロジェクトという3か年事業をはじめている。小川忍氏は,看護部だけでなく,病院を挙げての取り組みが必要だとし,多様な勤務体制を独自で導入している佐藤久美子氏は,女性が働きやすい労働環境は,仕事をする人を豊かにするという。

また,鈴木紀之氏は,人員確保対策として始まった取り組みでも,激変する医療環境のなかで,今後どんなサービスを提供していくのかという視点で考えていく必要があると語る。

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1999年にリクルート ワークス研究所を立ち上げた大久保幸夫氏が,労働・雇用に興味をもった理由には,経営資源の4大要素,ヒト・モノ・カネ・情報のなかで,ヒトに関する研究を行なっている人が圧倒的に少ないことがあった。

日本企業には,他国と比べるとヒトという資源しかない,ヒトを大事にしなければならないと人材の研究をはじめたという。

そこで,大久保氏に,看護師という「人」を大事にする働き方についてお聞きしたいと考えた。

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日本看護協会(以下,日看協)は,看護職確保定着推進事業の一環として「多様な勤務形態による就業促進」に取り組んでいる22の病院を全国から選び,先行事例として同協会のホームページで公開している。

なかでも,日看協の調査項目19をすべてクリアしている福井県済生会病院では看護師の残業が減り,2007年度の離職率も8.3%と初めて10%を割った。

看護師が働きやすいワーク・ライフ・バランス(以下,WLB)とは?

その秘密を知ろうと同病院を訪ねてみた。

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福井県済生会病院がどちらかといえば看護師のキャリア開発志向にウエイトをおくワーク・ライフ・バランスを重視した病院だとすれば,福井総合病院を中核とする新田塚医療福祉センターグループは仕事と家庭,とりわけ子育てとの両立を主眼としたファミリー・フレンドリーで柔軟な勤務体制を提供している。

時間単位で子どもの看護休暇をとれるなど,画期的な施策も。

グループの複数の法人が経営する多様な施設で働く看護師を一括採用し,それぞれの施設間を行き来できる。共働きが当たり前という県民性と「いいことはやって当たり前」という組織風土のシナジー(相乗)効果である。

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はじめに

 少子高齢社会の急速な進展により,社会システムのさまざまな変革が求められている。看護職をとりまく環境においても日本看護協会では,「専門職として生活者として働く」をキーワードに働きがいと適切なワーク・ライフ・バランスの実現によって看護職の確保・定着に力を入れている。

 看護職は,女性の割合が非常に高い職業集団であるが,看護に限らず,今後の雇用や労働を考えるには女性の働き方と活用をどう実現するかが非常に重要である。いま求められているのは,単純な育児支援をはじめとした支援策だけではなく,「キャリアそのものもサポートできる」システムである1)。ここでは,「ワーク・ライフ・バランス(以下,WLB)」にフォーカスして,多様な働き方の可能性について述べたい。

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はじめに

 最近,「ワーク・ライフ・バランス(以下,WLB)」という言葉が注目を集めるようになってきた。企業戦士として「仕事人間」であった団塊の世代が定年退職を迎えるなか,「仕事だけではなく,私生活も大事にしたい」というニーズをもった若者世代が増えてきているからであろう。また,日産の業績をV字回復させた実力をもつ経営者であると同時に,ベストファーザー賞にも輝いた家庭人間でもある,日産自動車株式会社CEOのカルロス・ゴーン氏の存在も,WLBへの関心を高めている一因かもしれない。

 仕事だけでヘトヘトの私は,どうすれば彼のようにバリバリ仕事をしたうえに家庭も大事にできる体力・精神力をもてるのだろうかと感心するとともに,凡人である自分には真似のできないことだと思った。しかし,WLBの本質を考えると,仕事の充実が私生活の充実につながり,私生活の充実がさらに仕事の充実にもつながるという発想であり,すべての雇用者・従業員に当てはまるものである。

 少子化が進み人材確保が難しいなかで,雇用者側が発想を転換し,働きやすい職場環境を提供することで,よりよい人材の確保に努める必要がある。特に医療現場では看護職員の需要と供給のバランスが悪く,看護職員不足で欠員すら補充できない施設もあるほどの人手不足である。定着率を高めるためにも,WLBを真剣に考え,表面的な制度設計ではなく,組織文化として浸透させることが必要である。

 今回は,WLBの考え方を中心に,職員満足度(以下,ES)の向上や人事考課制度のポイントも交えて,医療現場におけるヒトのマネジメントについて検討してみたい。

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リクルート ワークス研究所の大久保幸夫氏のインタビューでは,キャリアデザインの形成過程とその支援のあり方,ワーク・ライフ・バランス(以下,WLB)の意義,今後の働き方について伺った。

本稿では,病院の管理者の立場から,実際にどのように看護職のキャリアを支援しているのか,WLBをどのように取り入れているのか,またWLBに何を期待しているのか,などを明らかにする目的で多様な働き方やWLBのしくみを取り入れている北野病院の松月みどり看護部長にインタビューを行なった。

さらに高平仁史人事課長に多様な雇用形態の待遇,人事考課制度について伺った。

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はじめに

 近年,日本の医療現場においては数々の医療制度改革実施のなか,医療の質の安定・向上と効率性が求められている。地方にある飯塚病院(以下,当院)は,救命救急センターを有して1次から3次までの医療を提供し,地域医療支援病院として機能している。国の政策医療に積極的に取り組んでいる元気のある病院と自認している。

 しかし,全国的な現象である医師や看護師不足は当院でもみられ,重要な問題であるととらえている。病院スタッフは,働く意義が感じられ働きやすい職場環境があれば,満足度も高く仕事の継続が可能で定着率も上がると思われる。

 アメリカの行動科学者であるフレデリック・ハーズバークは,人間の欲求には経済的欲求(衛生要因)と,心の奥底にある向上心を満たす欲求(動機づけ要因)があるといっている。その両方の欲求が満たされれば,人は何事にも意欲的に取り組むことができると思う。しかし現実には,その人の内部や外部環境により難しい面が多々あるものである。

 当院院長は,まずこの衛生要因が十分かを常に念頭においている。病院経営のトップが衛生要因を第一義的に考えているということは,働くスタッフにとってはプラスのストロークであり,意欲につながることである。これは当院の強みで,人事制度や人事考課と直結している。

 当院では2003(平成15)年に1年間を費やし,コンサルティング会社を導入し,看護部・事務部・コメディカル・組合と代表者による人事制度プロジェクトチームを結成し,抜本的な人事制度の見直しを行なった。それによって,目標管理が人事考課にまで反映するシステムに大きく変更された。その経緯と目標管理や人事考課の実際や問題点について述べてみたい。

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はじめに

 医療環境を取り巻く厳しい状況のなか,職員である人が価値を創造していく病院にとって,人事制度の再構築は重要な経営課題である。従来の年功序列型人事制度や勤務時間などの仕事の量的側面を基準にした処遇制度では,発揮された能力や成果に関わりなく給与を支払うこととなり,人件費の増大を加速させる。

 さらに,単なる年功序列型賃金体系は若手や中堅の優秀な人材を確保すること,職員のモチベーション向上を図ることに必ずしも適さない制度である。刈谷豊田総合病院(以下,当院)では,これらの問題を解決するためには仕事の質に対応する人事制度づくりが必要と考え,役割の遂行度,仕事の成果による評価・処遇を実現させるための「職群別役割等級制度」と「役割職能給」を中心とした人事管理システムを2006(平成18)年度にスタートした。

 質の高い看護を提供していくためには,看護職者の仕事への満足度を高める必要がある。多くの場合,患者満足は職員の態度や提供されるサービスの質に影響される。一方,看護職者の離職率を低減すること,言い換えれば看護職者の仕事への満足度の向上は,サービスの質の維持や向上による患者満足につながり,ひいては,病院の収益に貢献する。すなわち,看護職者の職務満足はこのような好ましい循環を生み出す出発点であると捉えることができる。

 ここ数年,社会的・経済的な環境変化により,看護職者の離職は増加傾向にある。少子化により,看護職を選ぶ若者も今後減少傾向を辿ることが予測され,病院における人的資源(看護職者)の確保は,病院が直面する大きな課題である。

 当院でも,看護師1人ひとりが「やりがい」「働きがい」を感じて仕事をすることが,組織を存続・発展させるために重要な課題であると位置づけている。ワーク・ライフ・バランス時代における「働き続けられる職場づくり」をめざした,人事制度改革についての当院の取り組みについて述べる。

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はじめに

 名古屋セントラル病院(以下,当院)は,東海旅客鉄道株式会社(以下,JR東海)の附属機関です。つまり,当院の職員はJR東海の社員ということになり,当院の人事制度もJR東海の人事制度の枠組みのなかで位置づけられています。鉄道と医療とは全く異なる業種ですから,完全に同じ人事制度が通用するわけではありませんが,安全が最重要である点,公共的サービスを提供する点で,似通った点も多々ありますし,何よりも人事制度というものが企業や事業体を円滑にそして創造的に活動させていくきわめて重要な手段である点で,共通性が見出せます。人事制度とその運用は,基本理念,すなわち企業や事業体のカルチャーを表わすものといっても過言ではないと思います。

 そうした意味で人事制度は重要です。常に現在と将来を見据えて,適時適切にブラッシュアップしなければなりません。人事制度は広範で,かつ社員の生活に直結していますから,膨大な規程類の改定作業だけでなく,労働組合などとの交渉や社員への周知徹底も必要であり,改定することはほんとうに大変です。ひとたび世のなかから大きく乖離すれば,社員の求心力はなくなり,仕事の質は急速に低下します。

 私は,JR東海に入社する前の銀行時代も4年半にわたり人事部に所属し,人事考課や異動などの業務に携わっていましたが,それと比較してもJR東海の人事制度が特殊なものと感じたことはありません。前の銀行でも今のJR東海においても,人事に携わる者として,人事制度を現実の個々の人たちに実際にどのように適用・運用していくか,そこに多大なストレスを感じ,また達成感を感じていました。

 JR東海は2006(平成18)年に人事制度を抜本的に改定しました。その概要をご紹介することで皆さんの参考になる点もいくつかあろうかと思います。また,その改定されたJR東海の人事制度の枠組みのなかで,当院はどのような対応をしようと考えているかについても,看護部門を中心に説明したいと思います。

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●組合員17万人中看護職12万人の増員運動

 「看護師をはじめとする大増員闘争」を全国で展開している日本医療労働組合連合会(以下,日本医労連)は,看護マンパワー確保のためには,日本看護協会の多様な勤務形態の普及・拡大より,むしろ看護職の絶対数を増加させ働き続けられる条件設備をめざす政治運動に力を入れている。

 5月27日東京で,日本自治体労働組合総連合(以下,自治労連)と全国大学高専教職員組合(全大教)とともに,「看護師等の人材確保に関する法律」(以下,看護師確保法)の早期改正を求める決起集会を開き,「16年前に制定された法律が看護現場の実情に合っていないことは明らか。一刻も早く改正して,患者に寄り添える行き届いた本来の看護を取り戻そう」というアピールを採択した。

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ひと口にRN(Registered Nurse)といっても,働く場は病院だけでなく,診療所やナーシングホーム,地域,企業,学校などさまざまある。

また,職種についても患者や住民の直接ケアに当たるものもあれば,管理職,教育職,研究職もある。これは日本の看護師も同じである。

しかし,アメリカのRNの働き方は日本の看護師よりももっとフレキシブルである。

本稿では,筆者が病院のスタッフナースであることもあり,病院のスタッフナースの採用・勤務・雇用形態を通して,どのようにフレキシブルであるかを紹介していく。

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はじめに

 看護の現場は「人」により成り立ち,また提供する看護の質はそれを行なう「人の質」により大きく影響される。ワーク・ライフ・バランス(以下,WLB)を実現することは,提供する看護の質を安定させ高めていくことに他ならないと,筆者は考えている。また,WLBを実現して,豊かなキャリアを継続することにより,看護師の確保と定着,そして専門性を推進し,看護サービスの質向上が可能となる。さらに,病院経営の健全化はもちろんであるが,提供する医療・看護の安全性の向上という点においても有益と考えている。

 上尾中央医科グループ協議会(以下,AMG)では,看護師の仕事と生活を両立させ働き続けられる職場づくりのためのサポートを行なっている。1975(昭和50)年の24時間院内保育システムの導入をはじめとして,キャリアアップのための研修支援体制や,年間労働時間の短縮と年間休日の増加の実現など,常に柔軟な対応の取り組みを実現してきた。

 それにより,優秀な人材が確保され,組織力アップを図ることができ,看護サービスの質向上とともに病院経営管理上の重要な役割を果たしている。そして,その実践成果が看護の価値を拡大することにつながってきた。AMGの取り組みと活動内容を紹介する。

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はじめに

 人事・賃金政策への理念は,職員満足,患者満足,経営満足,社会満足がキーワードとなり,職員満足がスタートをなすといわれる1)

 東京都済生会中央病院(以下,当院)では,2年前から職務満足度調査を実施し,職場環境改善を実施しており,満足度の向上が徐々にみられている。

 一方,患者サービス委員会では患者満足度調査を例年実施し,サービス評価を行なっている。昨年度より,調査内容,尺度を改良し,より具体的な評価,改善事項の抽出を行ない,職員研修会で提言した。患者満足度からのフィードバックは仕事の評価や貢献を実感し,職務満足と深く関連するものと考える。また,この提言が部署目標の立案のデータともなる。

 目標管理は,人事処遇システムの3つの基準(昇格・昇進・昇給)の人事評価としても,人材育成,組織風土の活性化においても意義あるものと考えている。当院では目標管理は3年目を迎えるが,人材育成,組織風土改善のねらいが大きく,人事考課とのリンクはまだ十分とはいえない。そこで,今年度から特に個人目標管理を強化し,昇格・昇進,業績評価との関連を図りたいと考えている。

 今回は,こうした取り組みの途上ではあるが,職務満足の向上に対する患者満足度調査,目標管理の現状について述べる。

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はじめに

 看護師の働き方が大きく変わるときがきている。本特集に組まれているように,看護界においても,ワーク・ライフ・バランス(以下,WLB)を実現し,そのための多様な勤務形態を整備することは,優秀な人材に対して看護職が魅力的な職業であり,ライフステージの変化に合わせて働き続けることのできる職場であることをアピールするためにも,大変重要である。

 一般に専門職といえども,長時間労働や柔軟性に乏しい就業環境では,能力を活かして意欲をもって働き続けることは難しい。ライフステージに応じて,希望するWLBも変化する。仕事中心に毎日を過ごし,夜勤もいとわず,キャリアアップのために自己啓発しいきいきと働いている人もいれば,職場では看護師,家に帰れば母親役割と妻役割をとることで充実した日々を過ごしている人もいる。みんなが一律の働き方しかできないのであれば,その職場を去るしかなくなるし,看護ケアにもバリエーションがなくなる。1人ひとり,その時々によってあり様が異なるWLBを大事にして,多様性を尊重した働き方のできる職場をつくることが,結局のところ,生産性の向上,すなわち患者によいアウトカムをもたらすことにつながる。

 本稿では,京都大学で今年2月より導入された育児短時間制度,および自己啓発などのための休業制度を紹介するとともに,後半ではダイバーシティ・マネジメントの観点から看護現場において,多様性を尊重した働き方を受け入れることの重要性について述べる。

 結論からいえば,今回の特集テーマであるWLB実現のための多様な勤務形態促進の観点では,京都大学医学部附属病院(以下,当院)は目新しい取り組みはしていない。まずは現在あるしくみを使って多様性のある働き方をすすめていきたいと考えている。

 なぜなら,人間本来の多様性を理解し,患者や家族など看護サービスの利用者の問題を想像し,共有し,共感するためには,看護者側にも多様性が求められる。夜勤ができて,フルタイムで働き,予定外の時間外勤務にもいつでも対応できる人だけの均一な集団では,組織として脆弱だからである。

 逼迫した病院財政や現状の診療報酬制度の枠組みのなかで,多様性のある働き方を実現するには困難なことが多い。しかし,できることからでも,多様性を尊重した働き方を受け入れる組織風土を着実につくることが,看護サービスの質向上のために重要であると考えている。

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現状からみた職員定着の鍵

 星総合病院(以下,当院)は福島県の中央,郡山市に位置し,JR郡山駅から徒歩7分の場所にある。1925(大正14)年に開業し,「医の心」を基盤に地域に根ざした医療,開かれた病院づくりを目標に努力してきた。市内には同じような機能をもつ財団法人病院が3施設あり,お互いに協力し合い地域の医療を支えてきた。特に当院は二次救急病院としての役割を担い,また地域医療支援病院として地域のクリニックや診療所との連携をもちながら医療を行なっている。

 全国的にも,また社会的な問題でもある看護師確保については,東北の地方都市にある当院にとって,年々厳しくなっているのが現状である。看護体制は10対1入院基本料の基準であるが,急性期の医療を担う当院としては,看護要員が十分確保されている状況には至っていない。

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はじめに

 医療法人敬愛会ちばなクリニック(以下,当院)は,標榜診療科22,1日外来患者数1200名に対応する外来機能中心のクリニックである。2002(平成14)年に急性期病院から外来機能を分離して開院した。病院ではなくクリニックだからこその課題も多い。

 医療環境が変化するなかで,「トリアージ」や「在宅療養支援」など,外来看護師の役割に対する期待も高くなり,外来強化の流れは明らかであるが,外来看護を提供する環境はまだ手つかずのままだと感じているのは筆者だけではないだろう。

 さらにクリニックでは,診療報酬上,看護師配置に対して評価がされていないことに加え,外来看護師の,夜勤ができない,子育て中で時間的制限がある,病棟勤務への適応が難しいなどの理由から,病棟とは異なる人員構成である。一見,非効率な職員構成にみられがちであるが,外来看護職員の平均年齢は37.2歳,その豊富な人生経験と看護経験を武器として力を発揮できる組織と環境をめざして取り組んできた(法人内併設の中頭病院の平均年齢は29歳)。

 今回,全員参画の組織運営と個人目標管理に加えて,人事考課を取り入れ待遇改善に結びつけることで外来看護師の職員満足向上が図れたので,当院の取り組みを紹介する。

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はじめに

 東京北社会保険病院(以下,当院)は,2004(平成16)年開設の280床の一般病院です。

 5年前は,開設に向けて人員ゼロからの出発だったので,医師の採用状況を見ながら,集客率を予想しつつ,常勤看護師の採用を行なっていました。しかし,常勤看護師が思うように集まらず,短時間勤務が可能な午前中の外来をパートタイムの看護師に担ってもらうことにしました。

 この開設時や看護基準変更時など,当院も看護師の確保には相当苦労しました。そのなかで培ったパート職員の採用,フレックスタイムや短時間労働の導入などが,現在の看護師の定着につながっているので紹介したいと思います。

 まず私の体験から――。30年前,私が妊娠したことを上司に告げると,上司は迷惑そうに「夜勤はできないわね,外来に行く?」と言いました。「いつか一人前に働くから,待っていてほしい」と,当時子育て中のスタッフみんなが思っていました。

 このような周囲に迷惑をかけるという負い目が,潜在看護師を増やしていくことにつながっているのだと思います。また,幼少期の集団生活による感染症罹患でたびたび休暇を取らざるを得ないことで,仕事への意欲も失ってしまうのではないでしょうか。さらに,昨今の医療事故報道などが仕事に向かう気持ちを萎えさせていることもあるでしょう。しかし,いまは医療に関わっていない潜在看護師のなかにも,いつかまた看護師として社会に貢献したいと思っている人は少なくないと思います。

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ワーク・ライフ・バランスが実現できる職場づくりとは

 ワーク・ライフ・バランス(以下,WLB)という考え方が看護界にも登場してきた背景には,医療の質や安全の向上が厳しく問われ,業務の煩雑さに伴う看護職員の過重労働が問題視されるなか,2006(平成18)年度の診療報酬改定に「7対1入院基本料」が新設され,各地で看護師争奪戦が始まったことに由来するのではないかと考えている。

 本来の「質の高い看護」の提供には「人材確保」「定着」「育成」が重要な課題であるが,この問題は容易に片づくものではない。新規採用者の獲得や55万人以上存在するという潜在看護師の発掘も重要課題であるが,同時にいまここに存在する看護職の定着と育成が重要な人材確保対策であることが改めて認識され始めた。

連載 看護部長から新人ナースへ,新人ナースから看護部長へ・8

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大阪市の中心近くにある北野病院(以下,当院)は,1928(昭和3)年,京都大学医学部附属の臨床医学研究施設として120床で開設され,先進医療に取り組んできた。2001(平成13)年には新病院を開設し,いまや707床の急性期総合病院となり,さまざまな医療職種の教育に力を入れている。一方,今年120人の新人看護師を受け入れた当院看護部においても,スタッフの働きやすい職場環境を重視し,看護の質向上を追求する大胆な変革を進めている。今回は,その変革リーダーである松月みどり看護部長に,独自の人材育成と組織マネジメント観についてうかがうとともに,新人のお二人にその受け手としてどのように感じているか聞いた。

基本情報

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看護管理
18巻8号 (2008年7月)
電子版ISSN:1345-8590 印刷版ISSN:0917-1355 医学書院

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