増刊号特集 ワーク・ライフ・バランスを実現し,成果を上げるマネジメント―多様な働き方と人事制度に焦点をあてて
[看護コンサルタントより]医療現場におけるマネジメントをワーク・ライフ・バランスの視点から考える
吉田 二美子
1
1株式会社F・Y・T
pp.646-653
発行日 2008年7月26日
Published Date 2008/7/26
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101263
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はじめに
最近,「ワーク・ライフ・バランス(以下,WLB)」という言葉が注目を集めるようになってきた。企業戦士として「仕事人間」であった団塊の世代が定年退職を迎えるなか,「仕事だけではなく,私生活も大事にしたい」というニーズをもった若者世代が増えてきているからであろう。また,日産の業績をV字回復させた実力をもつ経営者であると同時に,ベストファーザー賞にも輝いた家庭人間でもある,日産自動車株式会社CEOのカルロス・ゴーン氏の存在も,WLBへの関心を高めている一因かもしれない。
仕事だけでヘトヘトの私は,どうすれば彼のようにバリバリ仕事をしたうえに家庭も大事にできる体力・精神力をもてるのだろうかと感心するとともに,凡人である自分には真似のできないことだと思った。しかし,WLBの本質を考えると,仕事の充実が私生活の充実につながり,私生活の充実がさらに仕事の充実にもつながるという発想であり,すべての雇用者・従業員に当てはまるものである。
少子化が進み人材確保が難しいなかで,雇用者側が発想を転換し,働きやすい職場環境を提供することで,よりよい人材の確保に努める必要がある。特に医療現場では看護職員の需要と供給のバランスが悪く,看護職員不足で欠員すら補充できない施設もあるほどの人手不足である。定着率を高めるためにも,WLBを真剣に考え,表面的な制度設計ではなく,組織文化として浸透させることが必要である。
今回は,WLBの考え方を中心に,職員満足度(以下,ES)の向上や人事考課制度のポイントも交えて,医療現場におけるヒトのマネジメントについて検討してみたい。
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