- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
医療環境を取り巻く厳しい状況のなか,職員である人が価値を創造していく病院にとって,人事制度の再構築は重要な経営課題である。従来の年功序列型人事制度や勤務時間などの仕事の量的側面を基準にした処遇制度では,発揮された能力や成果に関わりなく給与を支払うこととなり,人件費の増大を加速させる。
さらに,単なる年功序列型賃金体系は若手や中堅の優秀な人材を確保すること,職員のモチベーション向上を図ることに必ずしも適さない制度である。刈谷豊田総合病院(以下,当院)では,これらの問題を解決するためには仕事の質に対応する人事制度づくりが必要と考え,役割の遂行度,仕事の成果による評価・処遇を実現させるための「職群別役割等級制度」と「役割職能給」を中心とした人事管理システムを2006(平成18)年度にスタートした。
質の高い看護を提供していくためには,看護職者の仕事への満足度を高める必要がある。多くの場合,患者満足は職員の態度や提供されるサービスの質に影響される。一方,看護職者の離職率を低減すること,言い換えれば看護職者の仕事への満足度の向上は,サービスの質の維持や向上による患者満足につながり,ひいては,病院の収益に貢献する。すなわち,看護職者の職務満足はこのような好ましい循環を生み出す出発点であると捉えることができる。
ここ数年,社会的・経済的な環境変化により,看護職者の離職は増加傾向にある。少子化により,看護職を選ぶ若者も今後減少傾向を辿ることが予測され,病院における人的資源(看護職者)の確保は,病院が直面する大きな課題である。
当院でも,看護師1人ひとりが「やりがい」「働きがい」を感じて仕事をすることが,組織を存続・発展させるために重要な課題であると位置づけている。ワーク・ライフ・バランス時代における「働き続けられる職場づくり」をめざした,人事制度改革についての当院の取り組みについて述べる。
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.